第29話 兄から・・・
名前変換
この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
詳しくは設定、注意書きをお読みください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「じゃあ俺は帰るぜ、あんまり長居したら杏寿郎が疲れるだろうからな」
「ハハハ・・・すまない、気を遣わせて」
「いいや、またボチボチ様子を見に来るぜ、またな」
そう言って那津蒔が退室しようとすると千寿郎が着いてきた。
「お見送りします!」
「気にすんな、兄貴の傍にいてやれ」
「で、でも・・・」
「那津蒔殿」
「?」
「千寿郎もあなたと話がしたいのだろう、見送らせてやってくれないか?」
杏寿郎は弟の心を察したのだろう。
「・・・・」
那津蒔も千寿郎がソワソワしているのに気づく。
「わかった・・・じゃあ、来てくれるか?千寿郎」
「あ、はい!兄上、少し席を外します!」
「ああ、行っておいで」
兄に告げて嬉しそうに那津蒔の隣りを歩く千寿郎。
――――――――――――――
~千寿郎視点~
最初は杏寿郎とは違う快活さを持っている人だと感じた、歳が上だからかもしれないが兄よりも大人の余裕があり、気さくな人だと思った。
「那津蒔さん、この度は本当にありがとうございました」
「律儀だな、お前も兄貴もそんなに礼ばっか言ってると首が可笑しくなるぜ?」
「でも本当に感謝しているんです!那津蒔さんや海野家の皆さんが動いてくださらなければ・・・兄はこの世にいなかったかもしれないのです。
こればかりは何度お礼を言っても足りません!」
幼い頃に母を亡くし、今、兄も亡くすかもしれないという思いをした千寿郎にとって心から安心しているのだろう。
「お前は良い子だな」
「え?」
「俺が『痛い思いをして血を抜くことになるが協力してもらえるか?』って聞いたら二つ返事で了承しただろ?
それくらい家族を大事にしてるってことだ、お前も経験したように血を抜く時は危険が付き物だ、ましてやお前はまだ子供だ。
そんなにたくさんは取れないができるだけは取っておきたい。
だから俺もギリギリまで調整した、血を抜き過ぎて弟が死んじまったら本末転倒だからな」
那津蒔は千寿郎の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「お前は強い男だぜ」
「!」
千寿郎は心から嬉しさが込み上げた、今まで兄の背中を見て育ち、憧れ、自分も同じくらい強く立派な剣士になりたいと日々鍛錬していた。
でも成果は出なかった、自分には兄のような素質はない。
ならばせめて兄がいない間、家を守ることはできるようになりたい。千寿郎は鍛錬を続けるのと並行で屋敷の内部の仕事をやってきた。
そして今回、兄が命の危機に立っていると聞いて剣技ではなく、血を提供することを選んだ。
自分にできることはそれくらいしかないと思っていたからだ。
それでも不安があった、血液を託しても兄が助からなかったらどうすればいいかと・・・でも、那津蒔は約束を守ってくれた。
『兄を必ず助ける』という約束を・・・そしてその約束は自分の協力もあって成しえたことだと彼は言った。
「ありが・・・ござっ・・ますっ」
千寿郎は自然と泣いていた、初めて自分の力で何かを達成した気持ちになったからだ。
「頑張ったな、つらかったな、怖かったな」
血を抜くため痛い思いをしたが頑張った、兄が瀕死と聞いてつらかった、意識を戻らないと聞いて怖かった、他にもたくさんの気持ちが千寿郎の心にあった事だろう。
那津蒔も次男だ、上の兄弟もいるし下の兄弟もいる。どちらも死ぬような目に遭えば今の千寿郎と同じ感情を抱くのは当然だ。
千寿郎の姿を見て自身も救われたような気がした。
――――――――――――――
「じゃあな」
「はい、またいらしてください」
「ああ、お前も無理するなよ?」
「はい!」
蝶屋敷の門で千寿郎は手を振って那津蒔と別れた、背中に帰路の無事の願いを込めた言葉を送りながら・・・。
続く