第29話 兄から・・・
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「兄上!」
「ああ、千寿郎。今日も来てくれたか」
「はい!」
千寿郎は毎日、杏寿郎の見舞いに来ていた。
杏寿郎はさすがに疲れるだろうと思い、時々でいいと言うのだが千寿郎はきかなかった。
〈よもやよもやだ・・・少々、心配させ過ぎたか〉
自分が逆の立場ならと考えると千寿郎の気持ちもわかる。
千寿郎は着替えを持って来たり、時には花瓶の花を取り替えたりと世話をする。
我が弟ながらよくやってくれていると微笑ましく見ていた杏寿郎。
「よお、兄弟で微笑ましいな」
「あ!那津蒔さん!」
那津蒔が顔を出した、観世水の羽織を着ているということは仕事帰りだろうか・・・。
「どうだ?調子は?」
「うむ、少しずつだが動けるようになってきた・・・しかし、まだ時間がかかるようだ」
「まあ、あれだけ出血して骨折して内傷を負ってたらな~。もどかしいだろうがゆっくりやることだ」
「ああ・・・」
那津蒔は千寿郎が持って来てくれた椅子に腰かける。
「今日は二つ伝えることがあってきた。
まずは霧香のことだ、あいつのことは心配するな、峠は乗り越えた」
「つっ・・・本当か?」
「ああ、手術した後の数日は容態が不安定だったが香炉家の医師の協力もあって乗り切ったぜ。頑張ったぞ、あいつは・・・」
「それを聞いて安心した、別々の場所に搬送されたと知らされたのでずっと気になっていた」
「だろうな。お前の場合、すぐにでもすっ飛んで来そうだもんな」
すっかりお見通しのような那津蒔。
「ただ、まだ意識は戻ってない・・・眠り続けてる。
医師の話では目覚めても良い頃なんだが、何かが霧香の意識を戻すのを遮っているようだ」
いつもは杏寿郎と同じくらい快活な那津蒔だが今は寂しそうだ。
「気長に待つさ、妹は必ず帰って来てくれる・・・俺はそう信じる。
だからお前もちゃんと治してから来い、いいな?さもないと妹はお前にはやらねぇ」
「む?」
「親父に言ったんだろ?『霧香(あいつ)を嫁にくれ』って」
「聞いたのか?」
「俺と兄貴はな」
『当主とその側近だし』と付け加えて那津蒔は言った。
「親父が霧香の婿に選ぶ男の条件は聞いたよな?お前はそれを受け入れた、だがその証は立ててねえ、今はその『証を立てる機会』だと思え。
きちんと治して来たら認めてやる、その前にそもそもお前が死んでたら一切お前の家とは関わらせないがな」
目が本気だ。
「うむ、約束は果たす。必ず完治してから霧香を迎えに行こう」
「そうしてくれ、そしてもう一つはお前の親父さんのことだ」
「父上?」
「ああ、お前・・・家に戻ったら親父さんにちゃんと礼言っとけよ。
今回、お前の手術の時に使われた血液には親父さんのものもあったんだ」
「!?」
杏寿郎は驚いている、千寿郎もだ。
「さすがに千寿郎の血液だけじゃあ足りなかった、子供の血を抜くには危険が付きもんだ。
日を別けて取らせてもらったが元々多くは取れないと思っていたからな。
だからお前の親父さんにも協力してくれるように頼みに行ったんだ」
「いつ?」
「お前が任務に向かった翌々日の夜だ、親父が話に行った」
「瀬津寿殿が?」
「俺みたいな青二才が言っても聞かないだろう?だから面識があって尚且つ事情も知ってる親父に行ってもらったんだよ。
効果は覿面だった、翌日には『了承』の返事が来た。おかげでお前の手術に間に合わせることができたってわけだ」
「父上が俺のために・・・」
杏寿郎はいつも酒を飲んで怒鳴ってばかりいるあの父が自分の血を提供してくれたことにじんわりと心が熱くなる。
「数日、断酒してもらったからカリカリしてたと思うが許せよ。そうでもしないと血液中に酒が残っちまうからな」
「では、僕のところへ来た日の翌日には父と話をしていたってことですか?」
「ああ、親父の杏寿郎を生かしてやりたい気持ちが強かったからな。それでなるべく手を打っておきたいと俺たちに頭下げに来てたよ。
それで兄貴も俺も妹がまた泣かされるのも嫌だから率先して動いてたってわけだ」
「そうか・・・ありがとう、瀬津寿殿にも礼を言っておいてくれ」
「おう、伝えとくぜ」
那津蒔はそう言うと立ち上がった。