第28話 母の思い
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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〈ここは―――?〉
杏寿郎が目を覚ます、そこは一面が白かった。
〈俺は・・・どうなってしまったんだ・・・〉
杏寿郎が佇んでいると後ろから声をかけられる。
『杏寿郎』
〈・・・・?〉
振り返るとそこには母である瑠火がいた。
「母上・・・」
母がいるということは自分は死んでしまったのだろうか?
『いいえ、あなたはまだ生きていますよ』
「!」
『ここは生と死の境です、あなたが目を覚まさなければ死の世界に流されるところでした。
ですがあなたは戻ることができます、だから母が来たのです』
「『戻る』?」
『杏寿郎、あなたは母の教えを守り、父上を支え、千寿郎を導いてくれました。
母はあなたのことを誇りに思います、強く優しい子の母であることが幸せですよ』
瑠火は杏寿郎に笑いかける。
「母上・・・俺もあなたのような人に生んでもらえて幸せです」
『ありがとう、杏寿郎。
ですが母には、もう一つ思うことがあります』
「?」
『あなたは母との約束、己の責務を果たすため頑張ってくれました。
ですが、私はあなた自身の幸せも果たしてもらいたい』
「俺自身の幸せ・・・」
『そうです、一人の男性として幸せになってほしい、息子として幸せになってもらいたいのです』
「母上・・・」
『足下を見てごらんなさい』
杏寿郎が見ると波紋が広がった。
そして自分が生まれた頃から順番に流れ始める。
自分の誕生を喜ぶ父と母、三人での暮らし、剣の稽古、母の二度目の懐妊、千寿郎の誕生・・・・楽しかったあの光景だ。
『私は愼寿郎様と出会えて幸せでした、私が何度も『可愛げのない女』だと言ってもあの人は聞かなかった。
そしてある時、こう仰ったのです
『瑠火殿の表情が周りの者に分からずとも自分はわかる』と・・・
笑っているのか、泣いているのか、怒っているのか、表情からでなくても自分はわかると言ってくれました。
私はあの方のその真っ直ぐなところが愛おしく感じました、不器用でも偽らないあの直向きさが・・・』
当時の事を思い出したのだろう、瑠火は少しだが口角を上げた。
『私は残念ながらあの方の最期まで側にいることは叶いませんでした。
私がいなくなったことで愼寿郎様も変わられた、そんな大変な時期をあなたに任せたまま逝ってしまうことが母にとって心残りでした・・・。
杏寿郎、あなたは母のように心残りがあるままこの先へは行ってはなりません』
『この先』とはおそらく黄泉の国だろう、戻れるならば戻ってほしい。
瑠火はそのためにここへ来たのだ、息子の気持ちを確かめるために。
『杏寿郎、あなたは本当に心残りはありませんか?』
〈俺の心残りは――・・・〉
杏寿郎の背中に呼びかける声が聞こえる。
「煉獄さん・・・目を醒ましてくださいっ」
「ギョロギョロッ!早く起きろッ!俺と戦えよ!」
「無茶言うなっ、この馬鹿猪!!煉獄さんは重傷なんだっての!!」
〈この声は竈門少年の声・・・猪頭少年、黄色い少年もいるのか?〉
「煉獄よォ・・・さっさと戻って来いよ、また派手に任務でブチかまそうや」
「病室でそんな過激な発言はしないでください、宇随さん」
「ああ、杏寿郎・・・このように傷だらけに、さらに意識も戻っていないとは・・・南無阿弥陀仏」
〈宇随、胡蝶、悲鳴嶼さんもいるのか?悲鳴嶼さん、俺はまだ死んでないぞ!経を読むな!〉
「煉獄、こんなに早く逝くなんて許さんぞ。甘露寺も泣いている」
「うええぇ~~~んっ!!煉獄さ~~~んっ!!戻ってきてぇ~~~!!」
〈伊黒、甘露寺・・・お前たちもか、甘露寺は相変わらず表情豊かだな!〉
「煉獄さん・・・逝っちゃうの?僕・・・まだまだ一緒に戦いたいのに・・・」
「チッ・・・さっさと起きろ、この熱血馬鹿が!」
〈時透に不死川か?珍しい組み合わせだな!〉
「・・・・・」
「富岡さんも何か声をかけてあげてください」
「お前がいないと暗くてしょうがない」
「もっと別の言い方はないんですか?富岡さん(怒)」
〈富岡、わかっている!お前は口下手だからな!〉
「杏寿郎様!せっかくあなたのお役に立つために鬼殺隊に入ったのに!こんなに早く今生のお別れになるなんて・・・認めません!私は認めないですからね!!」
「アカリ、落ち着いて!煉獄さんなら大丈夫よ!」
〈アカリ、黒鉄少女、君たちも無事で何よりだ!〉
『あなたには多くの仲間がいるのですね』
「はい、柱になった後に任務を共にし、交流を深めました。皆、俺にとって素晴らしい仲間です!」
胸を張って言い切る杏寿郎に瑠火はまた問いかける。
『では、もう心残りはないですね?』
「・・・・いいえ」
瑠火の問いに首を横に振る杏寿郎。