第25話 上弦の鬼
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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『母はもう長くは生きられません、強く優しい子の母になれて幸せでした』
母はあまり感情を表には出さない人だったが杏寿郎は大好きだった、とても慈愛に満ちていて、尊敬した女性だった。
『あとは頼みます』
「『人間』では『鬼』には勝てない?全てが『無駄』だと?」
燃やせ―――・・・
「そんなことはない・・・俺はお前を倒す!」
燃やせ、己の心に宿る魂の炎を―――・・・
「俺は自分の責務を全うする!!ここにいる者は誰も死なせない!!」
一瞬で多くの面積を根こそぎ抉り斬る・・・
〈炎の呼吸、奥義―――〉
杏寿郎が構えた、体に宿る闘気が上昇する。
「素晴らしいッ・・・まだ上がるのか!この闘気、素晴らしいぞ!!それほどの傷を負いながら、その気迫!その精神力!一部の隙も与えないその構え!!
やはり、お前は鬼になれ!杏寿郎!!俺と永遠に戦い続けよう!」
「玖の型――『煉獄(れんごく)』!」
「『術式展開!破壊殺・滅式!』」
杏寿郎の姿が炎と共に猗窩座に突進する。
「煉獄さーんっ!!」
炎の渦が二人の周囲の広範囲を焼き尽くし、抉り取っている。
炭治郎と伊之助からは炎の後の塵と砂煙しか見えない。
「・・・・」
ようやく見えた杏寿郎の姿、刀を振り下ろしきっていった。
「ぐっ・・・!」
しかし体に負担をかけたせいで腹部から出血し、膝をついてしまう。
〈鬼はっ・・・上弦の鬼は!?〉
抉り取られ、熱を帯びた地形の上に猗窩座は倒れている。
ただし、頸を斬るまでには至らず、右半身が失われていた。
「っ・・・!」
猗窩座自身も驚いている、これほど人間に追いつめられたことがあっただろうか?
まして右半身が消し飛ぶほどの深手を負わされたことなど・・・。
「つっ!」
抉り斬られた右半身から出血する、しかし熱のせいか回復が遅い。
「猗窩座・・・これでも『人間は鬼に勝てない』と言えるか!?」
杏寿郎は痛む体に鞭を打って立ち上がる。
〈負ける?俺が?〉
猗窩座の脳裏に『敗北』の二文字が過る。
「鬼は悲しい生き物だ」
「!?」
「ある少女が言っていた、鬼は『人間の負の感情によって生み出される悲しい生き物』だと・・・猗窩座、お前は何のために『強さ』を求めた?」
〈・・・俺の『強さ』が何のためだと?〉
猗窩座の腰から下が再生した。
〈この『強さ』を俺が求めた理由・・・・〉
左腕だけで体を起こして杏寿郎を見る猗窩座。
強さを求めるのに理由などあるものか・・・弱ければ死ぬ、守れない、それだけだ。
だから自分は強さを求めた、何者にも負けない力を!技を!体を!
「!」
猗窩座はそこであることに気付く、自分の守りたかったものとは何だったのか?
チリン―――
「!」
「終わりだ」
雪の呼吸・玖の型――『積雪の舞(せきせつのまい)』
いつの間に近づいてきたのか霧香が背後に現れる。
〈俺が死ぬのか・・・死ぬ?死ぬ・・・〉
「うおあァァァ――っ!!」
「つっ・・・!」
ズシャッ―――!!
「!?」
「!」
「・・・くっ」
「ゼェー・・・ゼェー・・・」
「つっ!霧香――――っ!!」
霧香が刀を振り下ろす前に猗窩座の右腕が再生し、そのまま霧香の腹部を貫いた。
「ぐっ・・・」
「俺が死ぬことはないっ・・・死ぬのはお前たちだ!
死にたくなければ『鬼』になると言うんだ!お前たちは選ばれし強き者だ!!」
「何度も言わせるなっ・・・!」
「!」
ドッ!
霧香の日輪刀が猗窩座の頸に斬り込まれる。
「わたしはっ・・・鬼にはならないっ・・・!
鬼はもう・・・生み出されていいものじゃない・・・っ!!」
霧香は泣いている、それは猗窩座に攻撃された負傷の痛みからではない。
今まで『鬼』に堕ちるまで追いつめられた人間を悲しんでの涙だ。