第23話 悪夢
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「・・・・・・っ」
バキバキと護衛の男の血管が浮き出る。
「勇翔さん、ダメ!!」
「ぐがあああァァ―――!!」
椛の制止は間に合わず、勇翔は花婿に襲いかかった。
胸倉を掴み、壁に叩きつけると顔面を何度も殴りつける。
骨が砕け、歯が折れ、眼球が潰れても勇翔は止まらない。
「がほっ・・・」
男が絶命した後も殴り続けた。
「ふふふ・・・五大呪術家の一門から鬼が出てはもうお終いだな」
「!」
女が愉快そうに笑っている。
「あなたは・・・まさか」
「はははっ、私に構っているとあの男がどうにかなってしまうぞ・・・まあ、我が血に逆らえるものなどいるわけがないが、せいぜい頑張ることだ」
そう言って女は消えた。
椛はすぐに勇翔の元へ駆け寄って抱きついた。
「勇翔さんっ、もういい!もういいのっ!!」
殴り続けていた花婿を無造作に床に落として動きを止める勇翔。
「もみ・・じ・・さま・・・」
これが勇翔が鬼になった経緯、霧香が鬼への考えを変えるきっかけになった事件だ。
「勇翔さん・・・」
「・・・・・ああ、霧香ちゃんか」
その後、狭霧山に文が来たので詳細を知るため霧香は海野家に戻った。勇翔は人を襲わない確信が持てないため結界で拘束されている。
「ごめんね、俺のせいでこんなことに・・・それに霧香ちゃんも悪く言われてしまって・・・」
「ううんっ・・・!そんなことないっ!
勇翔さんは姉さんを守ってくれたんだもん!あの最低な男から守ってくれたんだもん!勇翔さんは悪くない!!
私はたとえ鬼になっても勇翔さんを嫌いになんてならないよ」
泣きながら霧香は勇翔の閉じ込められている陣の前で叫んだ、この人は何も悪くない・・・悪くないのに・・・。
それを聞いた勇翔は微笑んでいた。
何故あの人はあんな風に笑えるのだろうか、鬼にされ、もしかしたら殺されるかもしれないのに。
「いいんだよ、霧香ちゃん。俺は殺されても・・・俺はあの人を守れたこと後悔はしてないから、それが鬼になったとしてもね」
なんていう男だ、己の身を鬼にさせられたというのに『本望』だと笑顔で言ったのだ。
〈どうやったらそんな考えになるのかわからないわ!鬼は人を喰う恐ろしいものなんだから!〉
少女は夢から逃げるように壁を探す、そして一瞬触っていた場所が弾かれた。
〈ここだわ!〉
刃物を使って入り込む。
そこは晴れた地に雪が降り積もっているというなんとも不思議な場所だった。
どこまでも雪原が広がり、山々の間から陽が射している。
そして自分の踏んでいる雪は少しも冷たくない・・・。
ホワン・・・ホワン・・・
雪原の中に『精神の核』がある、半分が黒く、半分白いそれは本当に硝子細工のように透き通っていた。向こう側の景色が見える。
〈これがあの人の精神の核・・・〉
近づこうとすると丸い白いものが少女と核の間に浮かんできた。
「!」
その丸い白いものは一つではない、いくつも浮かび上がり、核を守るように囲む。
〈な、何なの?これは・・・〉
『これは珍客、私の愛しい子の中(心)に入り込んでくるものがいるとは・・・』
「!?」
どこからか声が聞こえる。
無意識の領域には通常誰もいないはずだ、ある種の本能が異常なまでに高いもの以外は・・・。
少女がキョロキョロしていると真上から声がする。
『私と晴明の愛しい子の中に入ってきたお前は何者だ?見たところ普通の人間のようだが・・・』
「つっ!」
水気を帯びた美女がゆらりゆらりと降りてくる。
「あ、あなた・・・いったい・・・」
『問うているのは私の方だ、お前は何者だ?』
「わ、わた・・・」
言葉が出ない。
この女は人間ではない、しかも下手をすれば殺される。
『お前・・・』
鼻をスンと鳴らす女。
『なるほど、眠り鬼に誑かされた人間か』
クスクスと笑う。
『お前たち人間は鬼にとっては駒も同然だというのに・・・悲しいかな、儚い夢を追い求めるか』
「え?」
『所詮は強欲な魂の人間から成された鬼、己の楽しみ以外は取るにならぬ。
お前もこの子(霧香)の心が破壊できぬときは早々に切り捨てられるであろう』
「そんな・・・だって、約束した・・・」
『その鬼が約束を守る器量だとお前は思ったか?』
「・・・っ」
『そうであろう、私も晴明に言われて気づいた。
面白いことに人間と鬼で違わないところは内面の有り様が外見に滲み出るということ・・・お前に約束をした鬼と私の愛しい子を守る『この者』たちと何が違うか、その目で見てみるが良い』
少女は霧香の精神の核の周りに集まる白いものを見る。
ぼんやりとしていたものが形になる。
「つっ!?」
それは『鬼』だ、しかし人間のように表情豊かな鬼たち。
『この者たちは代々私の愛しい子たちを守ってきた使役鬼たち。
死した後、魂の一部をこうして自分が守ってきた者の家族たちの器に残すのだ』
信じられない・・・鬼がこんなにも人間に心を通わせることができたなんて、自分の両親を喰い殺した鬼はとても恐ろしかったのに・・・。