第23話 悪夢
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「夢を見ながら死ねるなんて・・・幸せだよね」
魘夢は先頭車両にいた、目的はもちろん『鬼狩りの始末』である。
「お願いします・・・言われた通り、切符を切って眠らせましたっ・・・。
どうか、私も早く眠らせてくださいっ、死んだ妻と娘に会わせてください・・・お願いします、お願いしますっ・・・」
涙を流しながら請うているのは杏寿郎たちの切符を切ったあの車掌だ。
「いいとも、良くやってくれたね」
車掌の目の前には手首だけの手があり、話している。
「お眠り、家族に会える良い夢を」
呪文のように唱えると車掌は糸がプツンと切れたように倒れた。
「君たちはもう少し待ってて、あと少しすれば眠りが深くなる。
勘のいい鬼狩りは殺気や鬼の気配で目を醒ましてしまうから、ゆっくり近づいて縄を繋ぐ時も体に触れない様に気を付けるんだよ。
俺はしばらく先頭車両から動けないから、準備が整うまで頑張ってね、幸せの夢をみるために」
「「「「「はい」」」」」
手首の前には虚ろな顔の男女が五人。
「どんなに強い鬼狩りだって関係ない、人間の原動力は心だ、精神だ。
『精神の核』を破壊すればいいんだよ、そうすれば生きる屍だ、殺すのも簡単。
人間の心なんてみんな同じ、硝子細工みたいに脆くて弱いものさ」
先頭車両にいる魘夢は手首がない、あの手首は魘夢の体から離れ、術を施していたものだった。
そうとは知らずに炭治郎たちは眠ってしまっている、そして夢をみる。
善逸は故郷で禰豆子と仲も睦まじく暮らしている夢、伊之助は炭治郎たちを子分にして騒ぐ夢、そして炭治郎は家族と一緒に暮らしている夢、そして杏寿郎は――・・・。
気付くと杏寿郎は屋敷の中で座っていた。
知っている、ここは自分の家だ。
〈俺は何をしに来た?〉
ふと目の前を見ると寝そべった父の背中が見える。
〈そうだ、父上への報告だ・・・柱になったことを〉
「柱になったから何だ?くだらん・・・どうでもいい、どうせ大したものにはなれないんだ、お前も俺も」
喜ばしい事であるのにも関わらず父の口から出たのは辛辣な言葉だった。
それを静かに受け止めて杏寿郎は部屋を出た。
「兄上」
そこへ自分と同じ顔をした少年がやってくる、弟の千寿郎だ。
「父上は喜んでくれましたか?俺も柱になったら父上に認めてもらえるでしょうか?」
訊ねてくる弟への杏寿郎の表情は無かった。
父は昔はああではなかった、鬼殺隊の柱にまでなったのだ。
情熱があり、自分たちにも熱心に剣術を教え、育ててくれた人が・・・・ある日突然、剣士を辞めてしまった。
二十歳になった今でも杏寿郎には分からない、千寿郎はもっとだろう。
千寿郎は物心をつく前に母を病気で亡くし記憶がほとんどない。そして父はあの状態だ。
「・・・・・・」
下手な嘘はつくまいと真実を話すことにした。
「正直に言う、父上は喜んでくれなかった!『どうでもいい』とのことだ」
兄の言葉に千寿郎が落ち込んでいるのがわかる。
「しかし!そんなことで俺の情熱は無くならない!心の炎が消えることはない!俺は決してくじけない!
そして千寿郎、お前は俺とは違う!お前には兄がいる、兄は弟を信じている、どんな道を歩んでもお前は立派な人間になる!燃えるような情熱を胸にな!」
兄の言葉に千寿郎は泣いていた。
「頑張ろう!頑張って生きていこう!寂しくとも!」
兄弟はお互いを抱きしめていた。
――――――――――――――――
「縄で繋ぐのは腕ですか?」
「そう、注意されたことを忘れないで」
その頃、魘夢の指示を受けた男女五人は炭治郎たちの腕に各々縄を繋げていた、そして自分の腕にも縄を結び、呼吸をした。
大きく、ゆっくりと・・・数を数えながら、そうすると縄で繋いだ相手の夢に入れる。
眠り鬼・魘夢の見せる夢は無限に続いているわけではない。
夢を見ている者を中心に円形となっている、夢の外側には『無意識の領域』があり、そこに『精神の核』があるのだ。
これを破壊されると持ち主は廃人と化す。
〈あった!壁だわ!〉
無意識の領域と夢の隔たりの壁は触れられる、その壁を裂いて入り込むのだ。
〈早くコイツの『精神の核』を破壊して、私も幸せな夢を見せてもらうんだ!〉
杏寿郎の夢に入り込んだ少女は無意識の領域に足を踏み入れた。
そこはとても熱い、炎が散り散りになって燃えている。そして中心には赤い『精神の核』がある。これを破壊すればすべてが終わる。
少女が持っていた刃物を振り上げた時だ。
「!」
杏寿郎が少女の首を掴んだ。
通常、眠り鬼の術に落ちているとき、人間は身体を動かすことができない。
意識と肉体が完全に切り離され、夢に閉じ込められているためだ。
しかし、杏寿郎は動いた・・・本能で察知したのだ、破壊されれば自分は戦闘不能になるということを本能で悟ったのだ。