第1話 雪の剣士
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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『霧香が水の呼吸を会得するのは難しいかもしれん。
海野家は異形の術の中で『水』の属性を持つ一族だが・・・それであるが故に、水の呼吸と霧香の中にある異形の呼吸が噛み合っていない様に思える』
鱗滝師匠の言葉が脳裏を過る。
『三年も修練しているのにまだ呼吸が会得できないとはな』
『水の呼吸は五大要素の中でも比較的に会得しやすいはずなのに、それすらもできないなんて・・・術ばかりではなく剣の能力も劣るのかしらね』
『五大呪術家一門始まって以来の落ちこぼれだな』
他門の陰口、修練の途中に逃げ出す者も剣術は合わなかったというだけで本家の術は比較的に優れていて、特に家名に汚すことはなかった。
しかし、自分は術も剣技も未熟な半端者・・・こんな自分に存在する価値などあるのだろうか・・・。
そんなことを考えている霧香の頬に冷たい感触がした。
「雪だ・・・」
空からユラユラと雪が降ってくる。
霧香は弾かれて転げ落ち、倒れた状態で空を見上げた。
「真菰・・・」
『霧香』
同じ女の子だったけど妹のように幼く可愛い印象だった真菰、修練の段階は違ったが本当に姉妹のように過ごした。
だが彼女はもういない・・・もうこの山で会うことは叶わないのだ。
「・・・・・つっ・・」
泣いた、この山に来てから初めて大声で泣いた。
肺に冷たい空気が入ってくるが関係ない、真菰はもっと辛い思いをして死んだのだ。
痛かっただろう、苦しかっただろう・・・どうして自分はこんなにも無力なのだ。
呼吸も型も会得できる見込みもないまま修練を続けている。
でも続けずにはいられないかった。
『いつか会得できる、自分は人よりも遅いだけだ、山下りも体捌きも剣術の基本も時間がかかったけど、ここまで身につけられた。
呼吸も型も遅くなっても会得できる、そして真菰と一緒に選抜を受けて生き残って合格するんだ』
「――――――二人で、受けて・・・生き残って・・・」
そうだ、もう『二人』ではなくなってしまったんだ。
私は一人に・・・なってしまった・・・。
真菰は死んでしまった、もう傍にはいてくれない・・・。
なら私はどうする?
裏の陰陽師としての器も才覚もなく、鬼狩りの剣士としての能力もない・・・。
なら、家に帰ってもただの恥さらしだ。
私の手は刃こぼれした刀を握り、刃を自分の首へ当てようとしていた。
「もう・・・疲れた・・・」
首に刃を当てて、引こうとした時・・・強い力で手を掴まれた。
「・・・・」
『何してる?』
「・・・・」
『ダメ、そんなことしたら許さない』
忘れられない声、聴きたかった声・・・。
「真菰・・・?」
真菰がいる、自分の目の前に・・・。
「どう、して・・・死んだって・・・」
『俺たちがここに帰ってこないと思ったのか?ふざけるなっ!鱗滝さんの子である俺たちが!』
薄い橙色の髪の少年が私の刀を素手で握っている。
「つっ・・・!」
『俺たちの魂はいつもここにいる、狭霧山に・・・鱗滝さんとその子らと一緒に』
『私の帰って来る場所もここだよ、鱗滝さんも霧香も私の家族だもん』
私はまた泣いてしまった、何を疑っていたのか・・・彼女は、ちゃんと帰ってきてくれた。
肉体は滅びても心は一緒だ、それなのに私は何をしようとしていたのだろうか・・・。
『それよりお前、今、死のうとしただろう?』
「・・・・えーっと、君は・・・・」
『俺は錆兎、お前の兄弟子だ。質問に答えろ、お前、自害しようとしたのか?』
「・・・・うん」
『馬鹿野郎!!』
「ひいっ!!」
『お前は覚えが遅い上に頭も空っぽなのか!?あぁ!?』
錆兎がもの凄い形相で睨んでくる。
「だって・・・もう、どうしたらいいのか、わからなくなっちゃったんだもん・・・」
『『?』』
「呼吸も型も覚えられない・・・そんな私がここにいて頑張っても、何にもならないよ」
また涙を浮かべる私の傍に真菰が座り込む。
『霧香、私はあなたが『剣士に不向き』とは思わない』
「え?」
『鱗滝さんがね、言ってたんだ』
――――――――――――――――
それは霧香とは別の日に真菰が鱗滝と修練をしていた時のことだ。
「ねえ、鱗滝さん」
「何だ?」
「霧香、大丈夫だよね?私より体得する時間は遅いけど霧香も水の呼吸を覚えられるよね?」
その真菰の問いに鱗滝が渋い顔をしたそうだ、実際は面をしてるから見えたわけではないのだが、面越しでも真菰には伝わったようだ。