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とある昼下がりのこと。
宇理水月湖の底の方では、この地を護る龍神「宇理汀龗神」こと宇理さまが、とても幸せそうに眠っていました。
山をも軽々ひと呑みにしてしまえるその大きな大きな口からは、豪快な寝息が湖中に轟き、ぽっかりと開いた鼻孔からは、巨大な渦が巻き起こっていました。
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さぞかし水面の方は大変な事になっているのでは…と心配になりますが、そこは宇理さまの神使たちが上手にバランスを取り、いつもの平穏が保たれていました。
でも、そんな時でも予想外の事は起こるもので… -
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宇理さま
グゴゴゴゴゴ………グォゴゴゴゴ…………う〜ん……お団子……そんなに…たくさん……良いのぉ?ムニャゴゴ……
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
主さま…いつもながら凄まじい迫力ですな。やはり龍神たる者、力と生命力の象徴として、この地に生きる全ての生き物たちにその威厳を知らしめ……うんぬんかんぬん…
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華雅水(かがみ)

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華雅水(かがみ)
えへへ…主さま、お団子を食べる夢を見てるだぎゃ?可愛いんだぎゃぁ!
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
ぬ!?華雅水よ!主さまに対して可愛いとはなんだ!不敬であるぞ!
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華雅水(かがみ)

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華雅水(かがみ)
ぎゃ?フケイ…ってなんだぎゃ?ウマいんだぎゃそれは?
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
ぐ…お主は本当に主さまの神使としての自覚はあるのか!いつもいつも自由奔放に動き回りおってからに!大体…くどくど…
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
うふふ……ミトさんは今日も平常運転ね。でも、ガミちゃん同様に、私も主さまはとても可愛いと思いますわ。
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
ぬ!咲水までそのようなことを申すか…全く二柱揃いも揃って…
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
うふふ…とても雄々しいお顔をしてはいるけれど、子どものような所もあって、私は形上は主さまとは呼んではいるけれど、お友だちだとも思っていますわ。
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
な、なんと!と、友だち…だと!?け、けしからん!我らはあくまで主さまの神使として…
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
ふふ……きっと主さまも私たちの事をお友だちと思ってくださっているはずですわ。それに、ミトさんも本当は主さまともっともっと仲良くなりたいのでしょう?
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
な、何を申すか!わ、私はだな……と、それよりもだ!華雅水はどこへ行ったのだ?
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
うふふ……知らないですわ。
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
ぬぅ〜…これから主さまの御牙磨きをせねばならぬ頃合いというに…
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
ふふ…ミトさんのお話が長いから、どこかへ行っちゃったのかしら?
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
ぬぬ…そもそもあやつは自由過ぎるのだ!全く…
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
もしかすると先に向かっているのかもしれないですわね。前も主さまのお口の中で遊んでいたし…
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
なんたること…主さまに失礼な事をしておらねば良いが…
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その頃…水砥瀨のお小言から逃げてきた華雅水は、ひと足先に宇理さまの中へとやって来ていました。
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宇理さま

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宇理さま
グオオオオ………グオオオオ…………
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華雅水(かがみ)

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華雅水(かがみ)
ぎゃぎゃ…主さまのお口はやっぱりでぇ〜〜っかいだぎゃ!牙だけでも山みたいにおっきいだぎゃあ…
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宇理さまの牙の真下からその先端を見上げる華雅水。
大きな牙と比べると、華雅水はまるでゴマ粒のようです。
華雅水はスイスイと泳いで牙の上に降り立つと、持っていたブラシでせっせと牙を磨き始めます。 -
華雅水(かがみ)

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華雅水(かがみ)
ぎゃ〜…デカすぎて一日じゃ終わらないんだぎゃ。他の二人にも手伝ってほしいぎゃ…一体どこで何をしているんだぎゃ…
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やれやれと首を振ってお掃除を続ける華雅水でしたが…
突然、宇理さまの舌が大きく波打ち、その衝撃で華雅水は牙の上から舌の上へと流されてしまいました。 -
華雅水(かがみ)

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華雅水(かがみ)
ぎゃぎゃ〜!波々すごいだぎゃ〜!主さまのベロの上…柔らかいだぎゃ。飛び跳ねると楽しいんだぎゃ♪
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宇理さまの舌の上を楽しそうに歩き回り、終いには飛び跳ねて遊び始める華雅水。
その頃、他の二柱はというと… -
水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
主さまのお顔の近くまでやって来たは良いが…華雅水は一体どこに居るのだ?
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
う〜ん……
あ!居ましたわ!やっぱり主さまのお口の中でしたわ! -
水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
ぬぅ…抜け駆けとはけしからん!我らもすぐに向かうぞ!
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と、意気込む水砥瀨たちでしたが……
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宇理さま
「 グォオオオオオオオオオオオオオオオ…………!!!!!!!!」
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突然、宇理さまが大きく唸り声を上げたかと思うと、周囲の水が勢い良く宇理さまの口の中へと吸い込まれ、ニ柱もその流れに巻き込まれ、グングンと引き寄せられていきます。
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宇理さま

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宇理さま
ムニャムニャ……お団子…たくさん食べたら……喉が渇いちゃった…ゴゴゴ……
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ゴク!ゴク!ゴク!ゴク……!!
寝ぼけたまま、宇理さまはその大きな大きな口で、大量の水を飲み込み始め、周囲を泳いでいた沢山の魚や巨大生物たちも、お口の奥に広がる喉の暗がりへと、次々と飲み下されて行きます…。
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
ぬわぁああ!!!な、なんたること!!主さま…よもや我々まで呑み込むおつもりか!
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
きゃっ!スリル満点ですわね!でも大丈夫よ?もし呑み込まれても、きっと主さまはちゃんと吐き出してくれるから…
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
はぁ…はぁ……しかし、主さまも以前申し訳なさそうにしておられたが…以前呑み込まれた時は、危うく魚たちと共に消化されかけたぞ…主さまの腹の中で果てるのは神使冥利に尽きる…のやもしれぬが……それはそうと、華雅水のやつはどうしたのだ?
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
そういえば……見当たらないわねぇ?うふふ……もしかして……
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
まさか………
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華雅水(かがみ)

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華雅水(かがみ)
ぎゃ?
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
ぬわぁああ!!?お、驚かせるでない!後ろから急に現れおって…
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華雅水(かがみ)

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華雅水(かがみ)
ぎゃっぎゃ♪ミトさんビックリしたぎゃ?それよりほら!主さまのベロ!でーーっかいだぎゃ!
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突然現れた華雅水に驚かされ、ドキドキが収まらない水砥瀨の前で、宇理さまの舌の上を飛んだり跳ねたり、更にはゴロゴロと転がり始める華雅水。
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
……!!なんとうらや……けしからん!!すぐさまその悪戯をやめよ!我々の仕事は主さまの牙を……
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またもや水砥瀨のお小言が始まりそうになったその時……
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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!!
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水砥瀨(みとせ)

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水砥瀨(みとせ)
!!
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咲水(さくみ)

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咲水(さくみ)
♪
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華雅水(かがみ)

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華雅水(かがみ)
??
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ゴッッックン!!!!!
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なんということでしょう!宇理さまは寝ぼけて、口の中に居た三柱を呑み込んでしまいました…
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しばらくして……
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宇理さま

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宇理さま
ふぁあああああああああああ…………
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宇理さま

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宇理さま
う〜ん……よく寝たぁ……華雅水〜…水砥瀨〜…咲水〜…おはよう〜…あれ?みんな何処にいるのかな…?
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寝ている間に三柱を呑み込んだとは露知らず、寝ぼけ眼で辺りをキョロキョロと見回す宇理さまなのでした…。
ちなみに、このあと三柱とも、無事に宇理さまのお腹から脱出する事が出来ましたとさ。
お後がよろしいようで…。
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