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急に強くなった無一郎の手に気を取られると、フッと無一郎の顔が近くなった。

次の瞬間、無一郎の唇が自分の唇に触れているのが分かった。

優しく触れるだけの口付けに、ゆずははゆっくりと目を瞑った。
伸ばした腕を無一郎の首に巻きつけて、柔らかい無一郎の髪の毛に触れると、離れない様にぎゅっと抱きしめる。


無一郎の唇はすぐに離れたけど、頬に唇を滑らせて、涙を拭う様にゆずはの瞼に優しく触れた。


「…当たり前だけど、分かってるよね」
「うん…もちろん…」

こうして抱き合って、心を満たす相手が他にいる訳が無い。

「無一郎さんだけ…。こんなに気持ちが優しくなれて、時々痛くなるのも全部無一郎さんだけだよ」


自分も同じ様に思っていた事を、ゆずはが代弁してくれて、無一郎はとても満足そうに笑った。



「……無一郎さん…忘れてるかもしれないけど…」
「うん、忘れてたけど、気が付いているよ」


そう言った無一郎の腕の中で、ゆずはは無一郎の着物に顔を埋めて、その視線から逃れる。

2人を黙って？見守って？（唖然として）いるのは、今日訓練のある継子達だった。
絶対にあり得ない光景に、魂が抜かれた様に呆然と佇んでいた。


「大丈夫だよ、記憶が無くなるくらい扱けばいいから」


ゆずはを隠す様に抱きながら、無一郎はニヤッと笑って覗き見している継子達を見た。
無一郎の視線に、継子達は悪寒を感じ、すぐにこの記憶を消したいと願うのだった。


可哀想だけれども今日は継子達より、回されている無一郎の腕を止める方が難しいとゆずはは思った。
思い切り、無一郎を抱き締めて、もう一度2人で唇を合わせる。