そのまま退場になるが、花道のダンクは会場に大きな余韻を残したままだった。
そのまま試合は終了して、湘北は決勝リーグ進出を手に入れた。

試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、会場が大きな歓喜に溢れた。
仁美は立ち上がり、体を乗り出して湘北を見る。
ベンチに戻る流川が仁美を見上げる。
仁美は流川が見た事のない笑顔をしていた。
流れている涙はきっと嬉し涙だろう。

緊張の糸が切れて、涙が止まらない。
声を上げて泣いても気づかれないほどの声援の中で仁美は自分の腕に顔を覆った。
ーおめでとう楓。
今まで見てきた流川のプレイが思い出される。

純粋に今は、流川の勝利をお祝いしたい。

そんな二人を仙道は複雑な気持ちで見ていた。
もちろん湘北が勝って嬉しい気持ちと、仁美が涙を流してまで嬉しがる気持ちが複雑に入り組んでいた。
ーよくも泣かしてくれたな。

仙道は流川を見ながら口角を上げた。
そして湘北翔陽戦の余韻が残るコートに入る。
次は自身のシード戦である、仙道の夏の大会がやっと始まる。

彦一と田岡はそのままベンチへと向かい、その場所は陵南のベンチ入り出来なかった選手の応援席と化した。
関係者以外居づらい場所だが、仙道との関係を知っている部員達は、仁美に一番試合が見れる席を用意する。