今、仁美に唯一触れられる箇所の様だ。
これ以上欲を出してキスしようというのなら、また拒否られるだろう。
抱きしめたい気持ちを抑えて、流川は仁美の髪の毛を持て余す。

「‥来週練習試合がある。」
いつもの来て欲しいとも何も言わない流川の言い方だ。
そのいつものぶっきらぼうな言い方に、仁美は笑った。

仁美のその笑顔を見て、また流川も笑顔になる。
「後、宮城先輩と仲良くなり過ぎ。」
思い出した様に流川がムッとした顔です言う。
あんなに綾ちゃん綾ちゃん言っているのに、やきもちをやけるのはかえって凄いと思った。

「楓、私先輩が好きなの、楓より。」
「‥聞きたくない。」
「なのにバスケだけは楓と先輩が直接対決した時にどっちに勝ってもらいたいかなんて決められないんだ。」

「聞きたくないって。」
流川はまた仁美の口に手を当てる。
ああ、仁美が何を言いたいかはもう分かる。
ーだからせめて、楓のプレイはずっと見せて。
仙道と対決した時に心から流川の応援は出来ないから。

だけどずっと応援してきた流川を、流川のプレイを生活からなくす事なんて出来ない。
流川のファンでいる事も許して欲しい。

そのたった１つの願いはそんなに悪い事なのだろうか。
ー先輩、私は先輩を全然分かっていなかった。