「なのに私は今だにそれを楓に伝えられないんです。」
泣きそうなのを堪えているのだろうか、仁美の唇が震えていた。
仙道は震えてる仁美の口元に手をやる。

「‥聞きたく無かった。」
仙道はがっかりした様に片手で頭を抱えて下を向いた。
「‥すみません、勢いで話しちゃいました。」
そういえば先程流川の話は聞きたくないと言われたばかりだった。

仙道はふて腐れながら顔を上げる。
流川の話は確かに少し嫌だったが、本気で怒っている訳ではない。
むしろその前までの仁美の気持ちの方がインパクトが強すぎて、気を抜いたらにやけてしまいそうだ。

困った顔をしている仁美の顔をもう一度触る。
「いいや、今日はいっぱい時間があるから慰めて。」
そう仙道がニッコリ笑うと、仁美の顔が急速に赤くなった。
あ、今日泊まりだって今忘れてたな。

ちょうどその時に注文したパスタが来た。
仁美はぎこちない手つきでフォークを持った。
そんな仁美を見て、仙道もまた笑顔になる。
まだ今日は始まったばかりだ、2人のせっかくの時間を楽しもう。

お昼を食べた後は、駅ビルの中に今VRのシューティングゲームが入っているという事なので、そこに行ってみる事にした。