仙道が戻って来たのは学園祭が終わり、片付けもまばらな時間だった。
クラスの片付けをしている教室の窓から、仙道が校舎に入ってくるのが見えた。
今日は部活がない、なのに戻ってきたと言う事は１つしか無い。

私は自分の持ち回りは片付けて、仙道が居るであろう空き教室へ向かった。
薄暗い空き教室は、かろうじて夕焼けの光で明かりを保っていた。
窓から差し掛かる夕日の光で、仙道の表情を確認する事は出来なかった。

「‥会えた？」
「‥いや。」
「仙道に言ったのは彼女が帰ってから1時間後だからね。」
私がそう言うと、仙道は私の顔を見ずにそっかと小さい声で言った。

その表情は悲しそうであったが、いつもの薄気味悪い笑顔で隠していた。
さっきまで仙道への罪悪感はあったのに、その顔を見るとまたイライラする。
いつもいつも私は仙道のこの笑顔に虫唾がはしる。

本心を隠してヘラヘラ笑っている自分を見ている様で。

高校でレギュラーから外されても、本当の友達ならきっと奈美に泣き言を言えただろう。
だけど奈美にみっともない姿を見せたくなくて、仙道を見に来る奈美に少しでも自分がよく見える様に毎日歯を食いしばって練習していた。