魔力覚醒したら教わることも沢山あるのは勿論だが、両親はレギュラスに対して今まで以上に厳しかった。


「…レグ」
「兄様…」
「大丈夫か？」


小さく頷き、俯いているレギュラスにシリウスは優しく頭を撫でた。


「父様と母様は僕が優秀じゃないから嫌いなの？」
「違うよ、レグ」
「兄様のように僕は優秀じゃないから。
家庭教師の先生だって。
シリウス様は一度だけで出来ていたって」
「僕とレグでは考え方が違う。
僕は本能というのか、感覚が分かるんだ。
レグはきちんと覚えてきちんと納得してから魔法を使いたいんだろう？
レグの方が集中力もあるし、僕とは得意分野が違うんだ」
「兄様は初級の魔法はクリアしてるって」
「たった１歳だとしても、僕とレグは違う人間だ。
得意分野も考え方だって違う。
出来なくて当たり前なんだよ。
どうして出来ないのか、どうしたら出来るのか。
想像して魔法を使うんだ。
魔法に想像力…、イメージは必要なんだよ」


レギュラスにとってシリウスは一度も自分を拒絶せずに優しくしてくれる存在だった。


両親よりも信頼していると言ってもいい程だ。


「今すぐに理解が出来なくてもいい。
父様と母様はレグが嫌いなんかじゃないよ。
レグは僕よりも魔力も強くないし、経験を積ませようとした結果的に厳しくなってるんだ。
外で恥をかかないようにね。
今更、僕のように甘やかすのが照れるんだよ。
レグも甘え下手だからな」
「…兄様が甘えん坊なんですよ」
「んなっ！
否定は…、しないけど」


ずっと冷たくされていたから甘やかしてくれる両親にべったりと甘えている自覚はある。


「僕が言いたいのは、僕の真似なんてしなくていいから。
レグの得意なこと、好きなことを覚えればいいんだよ」
「…好きなこと」
「大人だって間違うこともあるんだ。
父様と母様だって、1人の人間なんだからさ。
感情だってあるさ。
自分で考えてどうするのか覚えろよ。
ホグワーツに行くようになれば、ここに居るように守ってはもらえないし。
自分で考えて行動しないとならないことがあるんだ」


幼い弟にはまだ難しいだろうと思いながらも少しでも自分を大切にして欲しくて諭す。


(魔力も高くて、両親に大切にされてる僕が言うとまるで嫌味のようだな。
でも、きっとレグなら分かってくれるはずだから。
あとは両親の考えが少しでもいい方向に行けば良いんだけど。
僕が言うと今はレギュラスが泣きついたんだろうと逆効果になりそうだし。
暫くは様子を見ていた方が良いかな。
酷いようなら、クリーチャーが報告してくれるはずだし)


以前は不仲だったが、今は反抗もせずに悪口も言わないシリウスなのでクリーチャーとの仲も良好だ。


勿論、当主であるオリオンの命じることが第一だが、それ以外ならば問題ない。


大切なレギュラスの為ならクリーチャーも言うだろう。


「久しぶりですね“若君様”」
「うげ…っ」
「３週間ぶりでしょうか」
「ベラ…姉様。
お元気、でしたか？」
「お陰様で。
何か言うことは？」
「…ごめんなさい」


オリオンの背に隠れて逃げたりしていたが、それも限界で遂にベラトリックスに掴まれた。


「それで？
私がそんなに憎かったか？」
「え…？」
「私はあんたの邪魔だったのかい？」
(そっちにいくのか)


予想外のことにシリウスは凝視してしまう。


「妹達にも信頼はガタ落ちだし、どう足掻いても私は信頼されてないようだからね。
素直に言ってくれ」
「…両親の愛情を試したかったんだ。
僕もあそこまで大騒ぎになるとは予想外だった」
「はぁ？」
「厳しかったから。
僕の為なのも、本家の嫡男だということも理解している。
両親が僕をどう思っているのか、ただ一言で良いから言葉が欲しかった」
「あんた、馬鹿なのか？
賢いくせに…っ」
「自分でもそう思うよ」
「まぁ、そうだね。
しっかりしているけれど。
まだ幼い子だもんね」


ベラトリックスの優しい声と頭を撫でる手にシリウスは瞬きして見つめる。


「怒ってないの？」
「素直に謝ってくれたし、恨まれてないならそれでいい。
私はこういう性格だからね。
気づかないうちにあんたを傷つけて憎まれていたのではないかと気がかりだった。
少しやり方を間違えただけさ。
まぁ、私も疑われるようなことを多々していたからね」


もっと叱られて酷いことをされると思っていたシリウスは戸惑う。