分家の当主だったのでクリーチャーも通してしまったのだろう。


「私、シリウスにそんなひどい言葉は流石に言ってないわ！」
「言ったのだろう！
仮に言ってなかったとしても、どうせ君のことだ。
キツイ言葉で言ったに決まっている！
私があれ程まで言葉には気をつけろと言っていただろう！
それに、従兄弟だとしてもブラック家を背負う次期当主に対して軽々しく呼ぶとは何事だ！
若君様、私が至らぬばかりに申し訳ない！」
(…大事になった。
こんな人だっただろうか)


シグナスがベラトリックスに怒鳴っている姿を幼いシリウスは黙って見つめていた。


「コホン…っ、もう宜しい？」
「失礼しました！」
「ベラトリックス。
まずは謝罪ではないのかしら。
仮に貴方がそう言ってなくても私達の幼い我が子を泣かせたのは事実だわ」
「…はい」
「誤解もあったのかもしれないが、それは君が日頃からシリウスに対してきちんと信頼させてなかったのでないかね。
幼いからと甘く見ていたのだろう」
「そんなこと…、いえ。
申し訳ありませんでした」

シグナスを始め、大人３人に未成年のベラトリックスは叱られて涙目で謝る姿に流石のシリウスも罪悪感が芽生える。


「…怖い」
「「えっ？」」
「若君様…？」
「そんなに大声で、冷たい眼で見ないで。
ふ…っ、えぇっん！」
「ごめんね。
シリウスに言ったのではないのよ」
「すまない、シリウス。
怖がらせるつもりはなかったんだ」


両親は泣き出す幼いシリウスに慌てて宥める。


ベラトリックスは啞然として見守るしかなかった。


自室に謹慎２週間でどうにか許してもらってベラトリックスは安堵する。


「姉様。
あんなにも年齢を離れた次期当主とはいえ、幼い子に何を言ったのですか。
あんなに普段はしっかりしているシリウスが泣くなんて」
「普段はあんなにも大人びているシリウスが泣いたとお父様から聞きました。
ベラ姉さま、残念ですわ」
(ちが〜う！)


最愛の妹達から冷たい眼で見られてベラトリックスは反論も出来ずに泣きそうになった。


「レグ。
一緒に遊ぼう」
「これ、どうしたの？」
「謝罪だって。
ベラ姉様の父様がくれたんだ」
「？？？」


ちゃっかりと謝罪の品だけは貰っているシリウスだった。


２歳のレギュラスには理解するのは難しいが、大好きな兄がご機嫌なのは分かった。


「シリウス。
レギュラスはまだお勉強中よ」
「そうなのですか？」
「貴方よりも出来ないことが沢山あるのよ」
「……っ…」
「母様が一緒に遊んであげるから。
ほら、シリウス。
こっちにいらっしゃい。
遊び方も分からないでしょう？
母様が教えてあげるわ」
「うんっ！」


幼いレギュラスと遊ぶよりも興味があるので手を繋いでレギュラスの部屋から出た。


レギュラスの泣きそうな顔に気づかないままに。


「ん〜と…」
「そうそう、上手よ」
「出来た！
これ、面白い」
「それは良かったわ」
「もう覚えたのか。
シリウスは賢いね」
「ほとんど手助けもせずにシリウスだけで完成させたのよ」
「それは凄いな」


オリオンが幼いシリウスの頭を撫でてくれた。


「……っ…」


たった１歳しか違わないのにシリウスとレギュラスの差は大きく開いていた。


それもそのはずでシリウスは記憶があるので知識もだが、魔力を操る能力も優れている。


天才な次期当主のシリウスに対し、弟のレギュラスは“劣等生”と言われていた。


それ故に両親もレギュラスに対して厳しくなるが、逆効果かもしれない。