呼吸が楽になり、シリウスは安堵の息をつく。


「大丈夫そうだな」
「シリウス！」
「もう問題ないよ」
「…よかった。
考え過ぎるのもいけないわ。
貴方は深く考えすぎてしまうから」
(マクゴナガル教授にもフリットウィック教授にもよく言われていたっけ。
深く考えすぎて魔力も守りに入り過ぎていると。
それがなくなれば、もっと君は素晴らしい魔法使いになれる。
寮は違うのに僕個人のこともよく見てくれていた)


懐かしく思い出し、自分が思っている以上に支えられているんだと改めて実感した。


「兄様。
体調は大丈夫なのですか？」
「シリウス。
今日くらいは安静にしていてもいいんですよ」
「大丈夫です。
眠ってばかりでも良くないし」
「そう。
無理はしないでくださいね」
「体調悪くなったらすぐに言いなさい」
「…はい」


相変わらずの過保護だとシリウスは苦笑いする。


子供扱いが過ぎると思うが、言っても無駄なのでもう諦めるしかない。


「食欲はあるかい？
ほかのものを用意させても構わないからね」
「同じもので大丈夫です。
いつもよりは量は少なめで」
「では、そのように」
「承知しました」


チキンは脂身が少ない部位で用意されていて、長年の屋敷妖精は理解しているようだ。


「シリウス。
食事をしたらもう少し休んで来なさい。
大丈夫かとは思いますが、今日は安静にしているんですよ」
「…はい」


何歳なんだと甘やかされてシリウスは苦笑いするしかない。


「しばらくはのんびり過ごしてなさい」
「そうします」
「レギュラスは分かっているかと思いますが、休暇でも勉強を疎かにしないように」
「はい」


レギュラスに対して両親は作法や勉学についてシリウスよりも厳しい。


それは将来的にレギュラスは家を出る身というのも理由としては大きいのだろう。


シリウス卒業後にレギュラスも監督生には選ばれたが、首席にはなれなかった。


「コホン…っ」


レギュラスに対する説教にシリウスが咳払いし、いつも止めている。


安堵してレギュラスは少しだけ肩の力が抜け、シリウスと目が合うと微かに笑う。


「兄様、レギュラスです。
起きてますか？」
「レグ…？
入って構わないぞ」
「寝てましたか？」
「ん〜…へぇき。
どうした？」
「…先程はありがとうございました」
「どういたしまして。
両親はおまえに厳しいからな。
僕には激甘なくせに」
「それは兄様が優秀だし、僕は今年も首席じゃなかったから。
幻滅、したんだと…思う」
「…レグ。
そんなことないさ」


落ち込んでるレギュラスはシリウスは起き上がり、肩をポンポンと優しく叩いた。


「シリウス。
調子は如何…、レギュラス。
お兄様の邪魔をしては」
「母上、僕が呼んだんだ。
卒業後のスリザリンの様子が知りたくて」
「そうですか。
レギュラス、成績が下がるようならクィディッチはやめて頂きますよ」
「それは…っ」
「それが嫌ならば、きちんとブラック家の直系の者に相応しい成績を」
「…はい」


シリウスは小さなため息をつき、レギュラスの後ろ姿を見つめるしか出来なかった。


自分が庇ってばかりいると余計に両親の当たりが強くなってしまうから。