記憶の隙間(仮)
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昔から現実なのにどこか現実味がない気がしていた。
それゆえに両親は厳しさよりもいつだってシリウスを優先的に意思を尊重してくれていた。
(そうか…、そういうことだったのか。
私には記憶がふたつある。
だから、こちらの世界に違和感があっていつまでも現実味がなかったのか)
今になって思い出しても何も出来ないなと敷地内の湖を眺めながら苦笑いしてしまう。
(ブラック家で生まれて嫡男として正当な人生を歩んで来たと言うべきなのか。
こちらの世界の記憶が残っていて助かったけれど)
湖を眺めながら座り込み、空を見上げると満月だった。
(前世と呼ぶべきなのか。
違うことも多々ある。
こちらの世界にはヴォルデモートはいない。
代わりに父の友人の“トム・リドル”がいる。
セブルス・スネイプの代わりに“セブルス・プリンス”がいる。
大きな力が動いたとしか見えないんだよな)
誰か自分以外にも記憶持ちがいるのかもしれない。
「シリウス。
会場から居なくなっていたから心配したわ」
「…母上。
空気を吸ってたんだ」
「酔いましたか?」
「そうじゃない。
星を見ていたんだ。
今日は空気が澄んでるから」
「だとしても声を掛けて出なさい。
そんな薄着では風邪を引いてしまうよ」
「…主催者が抜け出していいんですか?」
「誰のせいだと思ってるんだ」
ヴァルブルガに大判ストールを掛けられ、オリオンにはコツンと額を優しく小突かれた。
「そろそろ戻ろう。
具合が良くないならば、休憩室に居ても構わないから」
「嫡男なのに?」
「我々の息子だ。
そのくらいは許される」
(許されるというか、脅すとも言うけれど)
気分ではないので両親の気遣いに甘えて休憩室に向かう。
未成年のように休憩室の前まで見送られるのは苦笑いするしかなかった。
(この休憩室も以前にはなかったんだよな)
トム・リドルにもセブルスにも今は会いたくなかったので安堵する。
シリウスはブラック家の嫡男で生まれ、スリザリン生として首席で卒業した。
ホグワーツではマルフォイ家の若君当主でスリザリンの監督生のルシウスと婚約者であるブラック家の分家の娘のナルシッサに支えられて来た。
ルシウスが卒業した後はナルシッサ始め、分家や貴族の者達がシリウスの私生活も含めてサポートしていた。
(セブルスとリーマスはスリザリンとグリフィンドールの枠を越えて友人だし。
セブルスがいれば、魔法薬の面は問題ないだろう。
交流がないから今もリーマスが狼男なのかさえも分からないんだよな)
密かに調べなくてはいけないことが盛り沢山でシリウスはズキズキと頭が痛む。
(…頭が重たい。
さっき、記憶を取り戻したばかりだからな)
頭の痛みと倦怠感に上着を脱ぎ、ネクタイを外すとベットに横になる。
「…シリウス。
挨拶には来れそうか?」
「少し熱があるわね。
動けそう?」
「父上…母上…」
「短くて構わないから。
少しだけ耐えてくれ」
「…大丈夫」
いつの間にか寝ていたようでシリウスは起き上がる。
心配そうな視線に微かに笑いながらも正装を整えてもらい、休憩室から出る。
(何の挨拶したのかさえも覚えていない。
視界がグラグラする)
優しく頭を撫でられ、シリウスは意識を手放す。
「ん…っ」
「シリウス。
目が覚めました?
まだ少し熱はあるようね」
「母上…?」
「無理して起きなくていいわ。
まだ辛いのでしょう?」
朦朧とする意識と起き上がるのも辛い程の倦怠感。
ヴァルブルガに支えられながら水を飲み、もう一眠りする。
次に目覚めた時は深夜で意識はハッキリしていた。
「シリウス。
起き上がれそうかい?」
「…父上」
「朝よりは良くなったね。
大丈夫、悪い病気ではないさ。
ホグワーツを卒業して気が張っていたものから解放されたのだろうね。
成人していても君は私達の息子なんだよ。
もっと頼って甘えなさい」
オリオンの気遣うような声と優しく頭を撫でる手にシリウスは涙が流れた。
懐かしさと恋しくて嗚咽が溢れ、泣き止みたいのに止まらなかった。
「大丈夫だよ、シリウス。
気づいてやれなくて本当にすまなかった」
違うと言いたいのにそれも言えずに嗚咽が溢れ、オリオンに抱擁されていた。
それゆえに両親は厳しさよりもいつだってシリウスを優先的に意思を尊重してくれていた。
(そうか…、そういうことだったのか。
私には記憶がふたつある。
だから、こちらの世界に違和感があっていつまでも現実味がなかったのか)
今になって思い出しても何も出来ないなと敷地内の湖を眺めながら苦笑いしてしまう。
(ブラック家で生まれて嫡男として正当な人生を歩んで来たと言うべきなのか。
こちらの世界の記憶が残っていて助かったけれど)
湖を眺めながら座り込み、空を見上げると満月だった。
(前世と呼ぶべきなのか。
違うことも多々ある。
こちらの世界にはヴォルデモートはいない。
代わりに父の友人の“トム・リドル”がいる。
セブルス・スネイプの代わりに“セブルス・プリンス”がいる。
大きな力が動いたとしか見えないんだよな)
誰か自分以外にも記憶持ちがいるのかもしれない。
「シリウス。
会場から居なくなっていたから心配したわ」
「…母上。
空気を吸ってたんだ」
「酔いましたか?」
「そうじゃない。
星を見ていたんだ。
今日は空気が澄んでるから」
「だとしても声を掛けて出なさい。
そんな薄着では風邪を引いてしまうよ」
「…主催者が抜け出していいんですか?」
「誰のせいだと思ってるんだ」
ヴァルブルガに大判ストールを掛けられ、オリオンにはコツンと額を優しく小突かれた。
「そろそろ戻ろう。
具合が良くないならば、休憩室に居ても構わないから」
「嫡男なのに?」
「我々の息子だ。
そのくらいは許される」
(許されるというか、脅すとも言うけれど)
気分ではないので両親の気遣いに甘えて休憩室に向かう。
未成年のように休憩室の前まで見送られるのは苦笑いするしかなかった。
(この休憩室も以前にはなかったんだよな)
トム・リドルにもセブルスにも今は会いたくなかったので安堵する。
シリウスはブラック家の嫡男で生まれ、スリザリン生として首席で卒業した。
ホグワーツではマルフォイ家の若君当主でスリザリンの監督生のルシウスと婚約者であるブラック家の分家の娘のナルシッサに支えられて来た。
ルシウスが卒業した後はナルシッサ始め、分家や貴族の者達がシリウスの私生活も含めてサポートしていた。
(セブルスとリーマスはスリザリンとグリフィンドールの枠を越えて友人だし。
セブルスがいれば、魔法薬の面は問題ないだろう。
交流がないから今もリーマスが狼男なのかさえも分からないんだよな)
密かに調べなくてはいけないことが盛り沢山でシリウスはズキズキと頭が痛む。
(…頭が重たい。
さっき、記憶を取り戻したばかりだからな)
頭の痛みと倦怠感に上着を脱ぎ、ネクタイを外すとベットに横になる。
「…シリウス。
挨拶には来れそうか?」
「少し熱があるわね。
動けそう?」
「父上…母上…」
「短くて構わないから。
少しだけ耐えてくれ」
「…大丈夫」
いつの間にか寝ていたようでシリウスは起き上がる。
心配そうな視線に微かに笑いながらも正装を整えてもらい、休憩室から出る。
(何の挨拶したのかさえも覚えていない。
視界がグラグラする)
優しく頭を撫でられ、シリウスは意識を手放す。
「ん…っ」
「シリウス。
目が覚めました?
まだ少し熱はあるようね」
「母上…?」
「無理して起きなくていいわ。
まだ辛いのでしょう?」
朦朧とする意識と起き上がるのも辛い程の倦怠感。
ヴァルブルガに支えられながら水を飲み、もう一眠りする。
次に目覚めた時は深夜で意識はハッキリしていた。
「シリウス。
起き上がれそうかい?」
「…父上」
「朝よりは良くなったね。
大丈夫、悪い病気ではないさ。
ホグワーツを卒業して気が張っていたものから解放されたのだろうね。
成人していても君は私達の息子なんだよ。
もっと頼って甘えなさい」
オリオンの気遣うような声と優しく頭を撫でる手にシリウスは涙が流れた。
懐かしさと恋しくて嗚咽が溢れ、泣き止みたいのに止まらなかった。
「大丈夫だよ、シリウス。
気づいてやれなくて本当にすまなかった」
違うと言いたいのにそれも言えずに嗚咽が溢れ、オリオンに抱擁されていた。