まだ闇側でもないベラトリックスは突然、自分に対して厳しくなったブラック家の本家の夫妻に戸惑っているだろう。


(兄様が鈍感というよりは前世のこともあるし。
両親が自分の為に動くことに期待してないんだろうね)


長年のこともあって信じたくても信じることはそう簡単に出来ないだろう。


(レギュラスもよく喋る訳でも賑やかなタイプでもないし。
僕等は好みも真逆だから。
それで喧嘩したことはないけど)


いつだってシリウスが譲っていたのだが、本人にその記憶はなかった。


「シリウス、おいで」
「…なに？」
「少し熱あるようだね。
高熱ではないようだが」
「また…？
全然平気なのに」
「具合悪くないのならいいんだけど」
「念の為、ベットに行きましょうか」
「えぇ？」


不満そうに見られて両親は宥めながらシリウスを部屋に連れて行く。


パーティーに参加しないのもシリウスのこの体質も理由だ。


「このように熱は出していたはずだが。
以前はここまで頻繁ではなかったな」
「体質が変わることもあるようですし、小さな子供の時は熱はよく出しますよ」


不貞腐れてベットに入っているシリウスは身体の年齢の年相応に見える。


「シリウスは以前も魔力が高くて質も良かったからね。
以前よりも魔力が高まっているのかもしれない。
そうなると身体に馴染むまでは安定しないのだろう」
「魔力は安定してますよ」
「それは君の能力だ。
本来は魔力暴走を頻繁にしてもおかしくはないんだよ。
もう暫くの辛抱だ」
「自分の魔力なのに？」
「説明するのは難しいんだが、これはあくまでも私の予想だ。
魔力は本来は身体の器みたいなものにあるんだよ。
君の場合はそれが魔力に比べて小さいんだ。
あくまでもイメージだ。
そうなると、どうなる？」


見た目の影響があるようで両親はシリウスに対して幼い子に話すような口調になる。


「修復…？」
「そうだ。
その為には力も必要だろう」
「それも含めて身体が慣れるのが必要ってことか。
器が修復する必要がないまでは繰り返す？」
「予感が当たれば」
「…暫くはベットの住民になるしかないってことか」


諦めてため息をつくシリウスに両親は苦笑いし、優しく頭を撫でるのだった。


「あ…っ、すまない。
起こしてしまったか？」
「アルファード…？」


記憶のことは知らないが、以前も現在も味方になってくれているアルファード。


シリウスも記憶のことはアルファードに言うつもりはない。


「何歳になっても甘えたさんだな」
「…アルファードは特別」
「ふはっ、それは嬉しいな」


シリウスが腕を伸ばすとアルファードは抱っこしてくれ、甘えるようにシリウスは首に抱きつく。


不満そうなオリオンとヴァルブルガの冷たくも強い視線にアルファードは苦笑いするしかない。


「私にだけそんな態度を取ると、君のご両親が妬いてしまうからね」
「え…？」


そんな訳無いだろうとシリウスは顔を上げ、両親と目が合う。


軽く咳払いしたオリオンがシリウスを抱える。


「父上…？」
「どうしたんだい？」
(…どうしたって。
アルファードともっと話がしたかったのに)


急に離されたらそうなるだろうなとアルファードは苦笑い。


「シリウス。
レモンのシャーベットは食べるかい？」
「…食べる」
「オリオン。
食べ物で釣るのは如何かと」
「仕方ないだろう」


オリオンの膝で渡されたレモンのシャーベットを食べる。


抵抗しても結局は降ろしてくれないので最近はシリウスが諦めていた。


(僕の年齢は分かっているはずのに。
やっぱり、見た目かな)


両親が罪悪感に駆られているとは思ってもいない。