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4年間使い続けた携帯電話を買い替える事にした。理由は電池の消耗が激しかったり、落としたりして外装がボロボロだったり。色々とあるが、決定打は店員さんにスマートフォンをオススメされたからだ。機能に何一つ不便はなかったが塗装も剥がれて少々みすぼらしくなってしまっていたし、これを機にしようと思った。
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とはいえ何が良いのかもわからないし、とりあえず店員さんのオススメから好きなカラー…赤色があるものを選ぶ。そして使い方や注意事項、初期設定なんかをしていたら来店して2時間も経っていた。
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お店を後にして帰宅。真新しいスマホは充分に充電されていないので、お店のロゴが印刷された紙袋から同じく購入したての充電器を取りだしプラグへ差し込む。
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スマホは機能を充実させるにはアプリをダウンロードしないとダメらしい。アプリをダウンロードする為のアプリを開いて目ぼしいものをピックアップする。いくつもダウンロードしたらものすごく時間がかかるので追々増やしていくこととする。とりあえず連絡ツールやフリーWi-Fiなどのダウンロードを終えてストアアプリを閉じる。
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ホーム画面には初期装備及びたった今ダウンロードしたアプリが順番に並んでいる。PCと同様に並べ替えやフォルダ作成も出来るようなので、すっきりさせたホームにしよう。
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適当にホーム画面を見つめていると画面隅に『サソリ』という真っ赤な蠍マークのアイコンがある。このようなアプリをダウンロードした記憶はないのだが…。どんなものか気になるのでクリックしてみる。変なアプリならアンインストールすればいいだけだし。
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クリックすると画面が切り替わる。真っ白の背景に赤い蠍のロゴ。一体どんなアプリなのかさっぱりわからない。よくわからないし、削除しようとした時何もなかった画面に変化が起こる。
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???
やっとか…散々待たせやがって
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画面上に勝手に文字が浮かび上がる。どうやらチャットアプリのようだ。何故だか相手はご立腹である。私は待っていて欲しいと頼んだ覚えはないのだからこんな風に言われるのは心外だ。まぁ、折角なのでコンタクトを取ってみる事にする。時間もあるし、良い暇潰しとなるだろう。月並みであるが始めの一言はこれしかあるまい。
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青子
貴方は誰?
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サソリ
俺か?俺はサソリ
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どうやらアプリ名が相手の名前らしい。さて、どんな話をするかな。
どう返信するか文を考えているとまた画面に変化が起こる。相手はせっかちな性格のようだ。 -
サソリ
画面下にマイクマークがあるだろ?それを押せ
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随分と偉そうな口ぶりである。いいだろう、此処は一つ相手の言うことを聞こうじゃないか。サソリの言うようにマイクマークを押すとOFFと書いてあった文字がONに変わる。すると、スマホから男の人の声が発せられた。
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サソリ
わざわざ文字でやり取りするなんざ面倒なんでな
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これがサソリの声か。普通にかっこいい声の持ち主だ。
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青子
最近のチャットはこんな簡単に通話出来るんだ、随分と便利になったなー!あ、私青子って言います
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ボタン一つで通話出来るようになった。スマホって凄いんだね!
で、サソリさん君は一体誰なんですか? -
サソリ
誰だと?今お前が手にしてるのが俺だ
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青子
は?
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今手にしてるのはスマホだ。サソリの言い分だとサソリはさっき購入したスマートフォンだという事になる。そんなバカな話あるか。
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青子
人を騙そうなんて…
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サソリ
青子って言ったな、お前を騙して俺に何の得がある
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青子
うっ…
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ごもっともで。
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サソリ
これも何かの縁だ…大事にしろよ?なぁ、御主人
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そんな訳で私は意思のあるスマホを手に入れました。
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