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世間一般の男子から比べればオレは随分と早い精通をした過去がある。とはいえ、その頃の自分といえば性に関して無知で無頓着であり、父からも母からも差して何か指導を受けたり、シスイ兄さんから教授された事も特にはなかった。ただただ純新無垢な子供であり、性に縛られず、男女の違いも大人が男だ女だと口にするからそうであるのだと思うくらいで、自分ではよく分かっていなかった。そんな自分が性に目覚めるのが早かったのは、子供らしい小さな疑問を持ったからに過ぎなかった。
昔のオレは進んで弟の面倒を買っていた。本当に可愛くて好きで愛しい弟、少々手を焼く日もあって大変だが、それでもオレは弟の面倒を投げ出す日は一日もなかった。母が病院から弟を連れて自宅へ帰って来た日から、弟の風呂はオレの当番となった。まだ頭の重さにすら耐えられない首を支えながら湯船に浸かり、湯水をかければ、柔らかく張りのある肌の上を滑っていく。単語すら形成していない楽しげな音を上げる弟の成長が楽しみだった。もっともっと大きくなれば一人で湯船に入れるようになって、その日の出来事を弾ませながら会話をして、湯気を放ちながら着替えを済ませる。そんな日が来たら兄として自分は何をしてやろうか、面白い話をしようか、それとも忍術について話そうか。まだ小さな蕾の弟の将来を思い浮かべる、それがその時分の一番の楽しみだった。
それから弟はすくすくと成長していき、言葉を覚え、生活も一人で出来る事が増えていった。昔思い描いた一緒に風呂に入る夢も無事叶い、並んで浴槽に浸かるのも当たり前となった。あんなに弱々しかった小さな手は、兄さんと言って引っ張れるくらいには強くなった。頭を支えられなかった柔らかい首も、しっかりまっすぐと意思を持つようになっていた。
「ねぇ、兄さん! 体洗いっこしようよ!」
「分かった」
了承の返事をすれば「やったー!」とトーンの上がった声が室内に響く。泡をたっぷり含んだ手ぬぐいを手にした弟が「兄さん、早く背中向けて」と逸らせてくる。落ち着けと言いながら要望通り背中を向けると、待っていましたとばかりに手ぬぐいが揚々と滑り、弟からは「痒いところはないですか?」と愉快そうに紡がれる。全身を使ってしっかりと洗ってもらったところで、今度はオレの番だと手ぬぐいを渡してもらい弟の背中を綺麗にしていく。背中が終わり、次は前に向き直ってもらい首、肩、腹と順々に泡まみれになる肌と、合わせて下がるオレの手と視線。次は下半身だと視線を上げると目の前には弟の男の象徴。今までは何も感じていなかった『そこ』であるが、ふと違和感を覚えたのだ。弟の体格に対して大きいのではないかと。ぼーっと見つめるオレが不思議だったのだろう、上から兄さんとの呼び声に意識を戻されたオレは小さく謝罪をして再び腕を動かした。
それからオレは風呂のたびにオレと弟のモノを比較するようになっていた。大きさ、色、形――どれをとっても弟の方が立派に見えてしまう。それが全てを決める訳でないのは頭で分かっていても、五つ年上な自分と変わらないか少しばかり大きなそこに、何となく兄として劣っているように思えて仕方なかった。今は何も知らない弟だが、大きくなって違いに気づいてしまった時にどう感じるのだろうか、そんな事ばかり悶々と考える癖がついていた。
そんな考えに頭を悩ませていたある日の事。その日は朝から母が鼻歌を歌いながら家事をこなしていた。雰囲気を読む限りどうやら機嫌が良いらしい、そこまで母の機嫌を良くする理由は一体何だろうかと首を傾げていると、オレに気づいた母が「今日は青子ちゃんが帰ってくるのよ」と話した。
「青子ちゃん?」
「従兄弟よ。貴方が赤子以来ぶりの帰宅ですって」
楽しみだと花を飛ばす母と違って、オレは記憶のないその『青子ちゃん』に対して興味を抱かず、気のない返事をして朝食を頂く為に席に着いた。
腹も膨れたところで今日の日程をどうしようかと考えていると、扉の開く音とごめん下さいと発せられた女の人の声が家に響いた。聞き慣れない声に、朝、母が話していた『青子ちゃん』の存在を思い出す。この声の持ち主がそうなのではないかと想像を膨らませていれば、母と『青子ちゃん』らしき人の声がより近くから聞こえ、それと同時にイタチと自分の名前も呼ばれた。居間に呼ばれて中へ入れば、母と弟、そしてにこにこと人好きのする笑顔を浮かべた女の人がそこにいた。
「イタチ、彼女が『青子ちゃん』。そして、この子が長男のイタチ」
「初めまして、よろしくね」
そう言って差し出された手の平、同じくよろしくお願いしますと返して握り返せば、母よりも柔らかく、弟よりも大きく、そして何故か優しさの伝わる温もりだった。初めは彼女の話を、今はオレ達兄弟の話題になっている。テーブルには母が引っ張り出して来た幼い頃の写真が所狭しに並んでおり、時系列を交えながら思い返して話す母と、表情を綻ばせて話を聞き入る彼女。ころころと変わるその表情に飽きは来ず、だからといってずっと見つめている訳にもいかず、あたかも写真を見ている素振りを見せながら盗み見をしては、楽しそうな彼女を視界に写し続けた。その後、母の勧めで夕飯を食べて帰ってしまった『青子ちゃん』。また遊びに来ると手を振り歩き出した彼女に、朝と違って何となく惹かれている自分がいた。
それから何度も彼女は我が家に足を運んだ。買い物帰りついでに顔を見せ、母の作る料理を貰いに等、些細な理由が多かった。滞在時間も短かったり、長かったり、日によってまちまちだった。そんな平凡な日々の中で己に変化が訪れた、それは『青子ちゃん』と会話をするようになった事だ。遠目から覗くオレに「少し話そうか」と声を掛けられたのがきっかけだった。
「イタチだよね。フガクさんから聞いたよ、すっごく優秀だって」
「そんな事はないですよ」
「いやいや、私を含んだ周りにそんな人いなかったから」
自慢なんだろうね、色々とお話ししてくれたよ。弟くんも一緒に。そう言って鮮やかに笑った彼女の顔が何だか眩しいのと、褒められ慣れている筈なのに何だかこそばゆくなり、気恥しさを誤魔化すようにぎゅっとズボンを握りしめた。その日をきっかけに、オレも弟も遊びに来てくれる『青子ちゃん』と色んな事を話すようになった。弟は主にその日出来た事を彼女に報告しては、凄い凄いと頭を撫でられていた。逆にオレは自分の話をあまりせず、彼女が今まで見てきて感じた事をせがんで聞いていた。世間を渡ってきた彼女の目に写る景色は、自分の目とは違う風に写っているらしい。だから何を聞いても新鮮で、飽きもせず、次から次へと彼女の体験を聞いては想像を膨らませ噛みしめていた。
そんな楽しい日の中、母に親子検診に向かうから留守番をしていて欲しいと頼まれた。その日は特に用事もなく、修行もひと息つこうと思っていたので早々に返事をすれば、よろしくねと残して身支度を始めると弟と共に病院へと出かけて行ってしまった。シーンと静まり返る部屋を見渡すと久しぶりに一人なのかと感じさせられる。ここ数日、毎日誰かしらが家に居た。父に母、弟、そして『青子ちゃん』。話し相手に困らない日々だった、だからこそ今一人で居るのにゆっくり出来るなと思いつつ、少しばかり寂しさを覚える。こんな時に『青子ちゃん』が遊び来てくれれば……と考えるもそんなに都合良く事が起こる筈もない。母と弟が帰って来るまで何をしていようか、育児につきっきりの母の代わりに家事でもしようか、それとも先日父にもらった忍術書でも読もうか。
とりあえず何かしら行動を起こそうとしたところで、ごめん下さいと聞き慣れた声が家中に響いた。
「イタチ、遊びに来ちゃった!」
「今、母とサスケは出かけていて居ないんだ」
「そうなの?! 上がっちゃダメかな?」
顎に手を当てて「出直した方がいいかな」と呟く『青子ちゃん』。寂しさを感じていた自分にとって、彼女が来てくれたのは本当に好都合だった。
「ううん、問題ないよ」
「じゃあ二人でお留守番してようか! おじゃましまーす!」
『青子ちゃん』を招き入れ、いつもの場所である縁側へと足を向けた。台所へお茶を取りに行って縁側へ戻ると、『青子ちゃん』は何だか悲しそうな顔をしていた。普段ころころと笑う姿しか見た事がなかったからか、すごく心配に思うのと、いつもと違う憂いの表情が大人の女性に思えて仕方ない。ドキリと脈を上げ始めた心臓に自分らしさを失ったようで動転していれば、早かったねとの声が彼女から上がった。
「どうぞ」
「ありがとう」
そう言って受け取った彼女の表情はいつも見慣れている微笑みで、先程浮かべていた悲しみは幻のように消え失せてしまった。見間違えだったんじゃないかと思わせる変わりように驚くが、絶対に見間違いではないと断言出来る。ゆっくりと湯呑みに口をつけ始めた彼女に何かあったのかと問いかければ、湯呑みから口を離して首を傾げた。
「えっと、何の話?」
「さっきまで悲しそうな顔をしてたから」
「気のせいじゃない?」
「オレ達一族が見間違いなんて行為、まずあり得ないのは分かりきった事でしょう?」
「…………」
オレの間違いだと言う『青子ちゃん』に間違いはあり得ないのだと言いきれば、大きく息を吐いて「そうだよね」と諦めの混じった肯定が返ってきた。何があったのだと切り込めば悩みがあるのだと返ってくる。その悩みは何だと更に質問をぶつければ、渋すぎるコーヒーを一気飲みしたかのように歪めた顔をして口をもごつかせている。どうやら言いにくい事を自分は聞いてしまったらしい。そもそも急速に仲が良くなったとはいえ、そこまで込み入った話を必ず自分にしてくれるとは限らないと何故気が回らなかったのだろうか。それはきっと、普段の『青子ちゃん』が親しみやすくて、話しやすくて、心に温かみを覚えたからだろう。オレはオレが思う以上に『青子ちゃん』が好きなのだと今更ながら自覚し、自分の事なのに自分が分からないなんて何とも不可思議な状況に陥る日が訪れるとは、と嘲笑していれば言いにくい悩みがあるのだと呟いた。
「それはオレに、と言う事か?」
「ううん、イタチだからじゃないんだ。これは私の趣向というか欲求だから仕方ないんだけど……」
「欲求?」
「そう、欲求。まだまだお子様なイタチには分からないけど」
子供に分かるはずがないと言ってまた黙りを決めた『青子ちゃん』に対して言いようのない怒りを覚えた。確かに自分は『青子ちゃん』より年下であるのは変えようのない事実。だけど、それでも自分なりに彼女の力になりたいと思ったのに、彼女は子供相手では解決しないと言う。
「言ってみないと分からない」
「言っても無駄よ」
「無駄かどうか判断するのはオレだ」
「さすがにイタチでも無理、私には分かる」
そう言うと口をむっつりと閉じてしまった。もう何も話す事はないとしっかり表情に刻んで。それでも、オレは『青子ちゃん』の悩み事を聞き出したくてどうにか頭を回転させた。『青子ちゃん』が納得する理由を絞り出せれば、きっと話してくれるに違いないと確信しているからだ。
『青子ちゃん』は自分の意見をよく口にする白黒はっきりさせたいタイプだ。だから悪く言えば頑固なのだが、ずっと頭でっかちという訳でもない。意外にも押しに弱いところもあるのを知っている。理由は弟が彼女にお願い事を強く強くしていたのを、たまたま見たからだ。
「逆にオレだから言える事もあるだろう?」
「でも……」
「無理なら無理で諦める、だから言って見ないか? 解決までいかなくても糸口は見つかるかもしれない」
「……」
そっと手を重ねて優しく諭せば、彼女の眉間に皺が寄り唇をもごつかせている。半分くらい気持ちが揺らいでいると思われる反応にもう少しだと自分に言い聞かせた。もう少し粘れば彼女の核心に触れられる、より彼女に近づけるのだと思えば何だか温かいくすぐったさが込み上げる。
それからどちらも口を閉じたままで、『青子ちゃん』は難しい表情で地面を睨みつけ、オレは彼女の少ししっとりとした手を撫でたりゆるく握ったりを繰り返していた。未だ微動だにせず沈黙を続ける彼女の横でいつになったら陥落するのか待ちわびていれば、己を呼ぶ声が細く聞こえた。
「……引かないって約束出来る?」
「ああ、もちろんだ」
先程まで浮かべていた暗雲は消え去り、不安を滲ませた彼女の質問に返答をする。突如ギュッと強く握られた手に彼女の悩みの大きさの現れかと予想していると、欲求不満なんだとポツリと呟いた。
「それはさっきも聞いた」
「うん、まぁそうなんだけど……欲求不満でツラいんだよ」
「何の欲求なんだ?」
「…………性的欲求」
『青子ちゃん』の口から飛び出した単語が理解出来なかった、いや理解したくなかった。オレの中の『青子ちゃん』はそういったモノには一切興味がなくて、大人だけど子供と変わらない透明で純真だと思っていたから、想像とかけ離れた俗世的な部分に己の事を棚に上げて軽蔑を感じてしまった。
「イタチにはそういう悩みはないの?」
「……そういう悩み」
「うん、欲求とか性的な事で」
「年頃だし少しは興味があるでしょ?」と続けて問いかけてきた彼女の質問に、手のひらからじわりと汗が滲み出すのをひしひしと感じていた。彼女の言う悩みに心当たりがあるからだ。オレはまだ幼い弟に対して『男』として負けた気持ちを引きずっている、それは先日からずっと目から離れない『アレの大きさ』についてだ。しかし、それを彼女に言っていいのだろうか? 馬鹿正直に言ったらくだらないとか気のせいだと一蹴されてしまうのではないか、そんな不安が頭を過ぎる。どうしたものかと悩み続けるオレに『青子ちゃん』が何かあるんだと確信をついたようにニンマリと笑った。
「何をそんなに悩ませてるの? 教えてよ」
「……」
「そんなに言いづらい事なの?」
「……あぁ」
「そっかぁ……でも私の方がイタチより年上だから何かしら知ってるかもよ?」
そう言ってオレの顔を覗き込んで来た『青子ちゃん』は、「それでもまだ悩む?」と答えを急かしてくる。突如近くなった距離に狼狽えていれば、唇すれすれなところで「早く観念しなさい」と強い目で制してきた彼女にどう足掻いても無駄だと悟り、渋々と口を開いた。
「絶対に笑わないと約束してくれ」
「わかった、笑わない」
「……」
彼女から了承を得たところで、心を落ち着かせる為に息を大きく吸ってゆっくりと吐き出す。そして、一息ついてから悩み事を少し小さめに吐き出せば、目をまん丸と開いてきょとりとした表情でこちらを見つめている。何かおかしな事を口走ったのだろうかと、彼女の反応に焦りを感じていれば『青子ちゃん』の目線が下半身へと注がれた。
「見せて」
「はっ?!」
「だから見せて」
「何を言って……っ?!」
「小さいかどうか見て判断したいから」
グイグイとズボンに手をかける彼女を制しようとするが、強引に事を進める両手の方が力強く抵抗をものともしない。踏ん張って守ろうとしたズボンは最後には『青子ちゃん』の手に取られ、露出したモノを慌てて隠そうとすればその手すら囚われてしまう。ここまで執着されるとは思いもしなかったし、こんな事になるくらいならばそもそも悩み事があると打ち明けなければよかったと、己の軽率な行動に若干の後悔をしていると、彼女の喉仏が上下するのが視界に入った。
「『青子ちゃん』?」
「……ねぇ、イタチ。大きさが気になるのも分かるけど、それよりも大事な事があるんだよ」
「大事な事?」
「そう、ちゃんと反応するかどうか」
早口で言いきると、陰部目掛けて口をパックリと開くとあろう事かオレのモノを口に含んでしまった。汚いから今すぐ離すように言っても、大丈夫だからと言って聞く耳を持たない。腰を引こうとすればガッチリと太腿を押さえられてしまい動くにも動けない。微弱な抵抗を続けるオレへ気にかける素振りすら見せないで、ちゅるちゅると吸いつく彼女の唇が動くたびに、背中になんとも言い難いむず痒さが走り抜ける。今まで感じた事のない感覚に戸惑っていれば、全体を覆う生暖かさとねっとりと這う舌がまた新しい感覚を生み出す。何て表現したらいいのか言葉に詰まっていると陰部に埋まっていた頭が離れていく。少々名残惜しさを覚えていると、口を三日月にして笑う『青子ちゃん』が舌舐めずりをしながら、ちゃんと反応したねと楽しそうに笑った。
「反応……?」
ニコニコと満面の笑みを浮かべる『青子ちゃん』から、己の下腹部に目を向ければいつもと違った光景が入った。いつもはずっと俯いているそれが上向きになっている。見た事のない反応に『青子ちゃん』を見れば正常な反応だよとあっけらかんと返され、改めてまじまじと見つめるが何が正常なのか理解出来ない。助けを求めるように再び彼女を呼べば、首を傾げてオレの反応に不可思議さを覚えているようだった。
「どうしたの? 朝勃ちと一緒だよ?」
「……朝勃ちって?」
「本気で言ってるの?!」
驚愕する『青子ちゃん』には悪いけど、知らないものは知らないのだと返答すれば自分の意識とは裏腹に主に起床時に勃ち上がる症状だと簡単に説明される。今まで一度もそんな現象は起こってないと返すと、そんな事もあるのねぇと半信半疑で呟かれる。
「この状態はどうすれば治る?」
「出すもの出せば治るよ」
「出す? ……待てっ」
半分持ち上がっているモノの解決方法を聞けば、またねっとりと舌が絡んでくる。舌先で弄び、舌の根で押し付けるように舐めとる様は普段の雰囲気とは全く違う妖艶さが滲み出ており、『青子ちゃん』の見た目をした別人のようだ。どくりどくりと大きく動き出した心臓の音が全身を足早に駆け巡り、最後は集中しているモノへと集まる。まるで心臓が移動したかのようにドクドクと脈打つそこに意識を向けると、次第に腰へ広がって行く妙な感覚に支配されていく。自分の下腹部に顔を埋めて、髪を振り、手を上下に動かし、口の周りを唾液で汚しながら一心不乱に被りつく姿は、初めて出された料理を夢中に食べる幼子のように見える。ジュルジュル、ジュポジュポと彼女の口から奏でられる音が耳に入る度に、脳内で何度も何度も再生されて、合わせるように心臓がドクンと一段強く弾んだ。
「ま、待って……なんか変!」
「んー?」
何度も何度も舐められながら上下に扱かれていると、下向きだったモノが天を仰いでいる。自分の体に起こる異変に涙が浮かびそうになるが、こんな事で泣くなと叱咤しながら堪えていると咥えた状態で『青子ちゃん』が何故か嬉しそうな表情を浮かべた。
「もう少しかな?」
「何が……?」
「何だろうね? まぁ最後を迎えるまでの楽しみって事で」
何やら不穏な言葉を落とすと再び舐め始めた。舐めるだけでなく時折吸われたりもすればさっきから感じている腰への感覚が強いものへと変化する。じゅるりと吸われれば腰がびくりと震え、ジュルジュルと手で素早く扱かれれば腰が勝手に前後に動いてしまう。『青子ちゃん』がどんどんと動きを激しく大きくすればする程、腰は意思を持ったかのように動き、そして終いには尿意まで込み上げ、ずっと我慢していた涙がホロリと頬を伝った。
「出ちゃう……っ!!」
心の中で彼女に謝罪をしながら口内へと排泄していく。ただ、いつもと違って痙攣混じりで勢いよく吐き出されていったのが印象的だった。腰をビクつかせながら止まらない排泄に罪悪感と羞恥心が沸々と湧き上がる。年上の女性の口内に思いっきり吐き出してしまうなんて、何て謝ればいいのだろうかと顔に集まる熱に浮かされながら『青子ちゃん』を恐る恐る見れば、予想とは違った姿をしていた。てっきり怒りや苦悶の表情を浮かべているかと思いきや、頬を赤く染めてうっとりと余韻に浸っているように見える。
「『青子ちゃん』?」
「イタチ、どうだった?」
未だ息の上がる声で彼女を呼べば首を傾げながら感想を求められた。正直なところあの腰を這い上がってくるなんとも生々しい感覚は、始めこそこそばゆさしかなかったが後半は込み上げる排泄欲に駆られていた。吐き出した今の気持ちは、身軽になったような脱力感を覚えるような何とも形容し難い。
「あれはね『射精』っていうんだよ」
「尿じゃない……?」
「違うよ、大人に近づいてる証拠だよ」
そう言っていつものように俯いてしまったモノをひと撫でながら「満足出来たよ」と零す。彼女の欲求はどうやら解消され、力になれたのは素直に嬉しい。自分は大きさに悩んでいたが、『青子ちゃん』からすればどうだったのだろうか?
「オレはどうだった?」
「そうだね、反応、硬さ、反り具合、全く問題ないよ。それに……もう元気になってる」
ふふっと笑みを溢した彼女の手元を見れば、またゆっくりと勃ち始めている。さっき出したばかりだというのにまた処理しないといけないのかと、底が見えないそれにため息をつくと同時に『青子ちゃん』が「もっと良い事しようよ」と提案してきた。
「さっきよりももっともっと気分が良いよ」
そうしてまた勃ち始めたそれを手で扱きつつオレの上に跨ると、クチュリと鳴った水音と同時に生暖かい何かがオレを優しく包んだ。
昔のオレは進んで弟の面倒を買っていた。本当に可愛くて好きで愛しい弟、少々手を焼く日もあって大変だが、それでもオレは弟の面倒を投げ出す日は一日もなかった。母が病院から弟を連れて自宅へ帰って来た日から、弟の風呂はオレの当番となった。まだ頭の重さにすら耐えられない首を支えながら湯船に浸かり、湯水をかければ、柔らかく張りのある肌の上を滑っていく。単語すら形成していない楽しげな音を上げる弟の成長が楽しみだった。もっともっと大きくなれば一人で湯船に入れるようになって、その日の出来事を弾ませながら会話をして、湯気を放ちながら着替えを済ませる。そんな日が来たら兄として自分は何をしてやろうか、面白い話をしようか、それとも忍術について話そうか。まだ小さな蕾の弟の将来を思い浮かべる、それがその時分の一番の楽しみだった。
それから弟はすくすくと成長していき、言葉を覚え、生活も一人で出来る事が増えていった。昔思い描いた一緒に風呂に入る夢も無事叶い、並んで浴槽に浸かるのも当たり前となった。あんなに弱々しかった小さな手は、兄さんと言って引っ張れるくらいには強くなった。頭を支えられなかった柔らかい首も、しっかりまっすぐと意思を持つようになっていた。
「ねぇ、兄さん! 体洗いっこしようよ!」
「分かった」
了承の返事をすれば「やったー!」とトーンの上がった声が室内に響く。泡をたっぷり含んだ手ぬぐいを手にした弟が「兄さん、早く背中向けて」と逸らせてくる。落ち着けと言いながら要望通り背中を向けると、待っていましたとばかりに手ぬぐいが揚々と滑り、弟からは「痒いところはないですか?」と愉快そうに紡がれる。全身を使ってしっかりと洗ってもらったところで、今度はオレの番だと手ぬぐいを渡してもらい弟の背中を綺麗にしていく。背中が終わり、次は前に向き直ってもらい首、肩、腹と順々に泡まみれになる肌と、合わせて下がるオレの手と視線。次は下半身だと視線を上げると目の前には弟の男の象徴。今までは何も感じていなかった『そこ』であるが、ふと違和感を覚えたのだ。弟の体格に対して大きいのではないかと。ぼーっと見つめるオレが不思議だったのだろう、上から兄さんとの呼び声に意識を戻されたオレは小さく謝罪をして再び腕を動かした。
それからオレは風呂のたびにオレと弟のモノを比較するようになっていた。大きさ、色、形――どれをとっても弟の方が立派に見えてしまう。それが全てを決める訳でないのは頭で分かっていても、五つ年上な自分と変わらないか少しばかり大きなそこに、何となく兄として劣っているように思えて仕方なかった。今は何も知らない弟だが、大きくなって違いに気づいてしまった時にどう感じるのだろうか、そんな事ばかり悶々と考える癖がついていた。
そんな考えに頭を悩ませていたある日の事。その日は朝から母が鼻歌を歌いながら家事をこなしていた。雰囲気を読む限りどうやら機嫌が良いらしい、そこまで母の機嫌を良くする理由は一体何だろうかと首を傾げていると、オレに気づいた母が「今日は青子ちゃんが帰ってくるのよ」と話した。
「青子ちゃん?」
「従兄弟よ。貴方が赤子以来ぶりの帰宅ですって」
楽しみだと花を飛ばす母と違って、オレは記憶のないその『青子ちゃん』に対して興味を抱かず、気のない返事をして朝食を頂く為に席に着いた。
腹も膨れたところで今日の日程をどうしようかと考えていると、扉の開く音とごめん下さいと発せられた女の人の声が家に響いた。聞き慣れない声に、朝、母が話していた『青子ちゃん』の存在を思い出す。この声の持ち主がそうなのではないかと想像を膨らませていれば、母と『青子ちゃん』らしき人の声がより近くから聞こえ、それと同時にイタチと自分の名前も呼ばれた。居間に呼ばれて中へ入れば、母と弟、そしてにこにこと人好きのする笑顔を浮かべた女の人がそこにいた。
「イタチ、彼女が『青子ちゃん』。そして、この子が長男のイタチ」
「初めまして、よろしくね」
そう言って差し出された手の平、同じくよろしくお願いしますと返して握り返せば、母よりも柔らかく、弟よりも大きく、そして何故か優しさの伝わる温もりだった。初めは彼女の話を、今はオレ達兄弟の話題になっている。テーブルには母が引っ張り出して来た幼い頃の写真が所狭しに並んでおり、時系列を交えながら思い返して話す母と、表情を綻ばせて話を聞き入る彼女。ころころと変わるその表情に飽きは来ず、だからといってずっと見つめている訳にもいかず、あたかも写真を見ている素振りを見せながら盗み見をしては、楽しそうな彼女を視界に写し続けた。その後、母の勧めで夕飯を食べて帰ってしまった『青子ちゃん』。また遊びに来ると手を振り歩き出した彼女に、朝と違って何となく惹かれている自分がいた。
それから何度も彼女は我が家に足を運んだ。買い物帰りついでに顔を見せ、母の作る料理を貰いに等、些細な理由が多かった。滞在時間も短かったり、長かったり、日によってまちまちだった。そんな平凡な日々の中で己に変化が訪れた、それは『青子ちゃん』と会話をするようになった事だ。遠目から覗くオレに「少し話そうか」と声を掛けられたのがきっかけだった。
「イタチだよね。フガクさんから聞いたよ、すっごく優秀だって」
「そんな事はないですよ」
「いやいや、私を含んだ周りにそんな人いなかったから」
自慢なんだろうね、色々とお話ししてくれたよ。弟くんも一緒に。そう言って鮮やかに笑った彼女の顔が何だか眩しいのと、褒められ慣れている筈なのに何だかこそばゆくなり、気恥しさを誤魔化すようにぎゅっとズボンを握りしめた。その日をきっかけに、オレも弟も遊びに来てくれる『青子ちゃん』と色んな事を話すようになった。弟は主にその日出来た事を彼女に報告しては、凄い凄いと頭を撫でられていた。逆にオレは自分の話をあまりせず、彼女が今まで見てきて感じた事をせがんで聞いていた。世間を渡ってきた彼女の目に写る景色は、自分の目とは違う風に写っているらしい。だから何を聞いても新鮮で、飽きもせず、次から次へと彼女の体験を聞いては想像を膨らませ噛みしめていた。
そんな楽しい日の中、母に親子検診に向かうから留守番をしていて欲しいと頼まれた。その日は特に用事もなく、修行もひと息つこうと思っていたので早々に返事をすれば、よろしくねと残して身支度を始めると弟と共に病院へと出かけて行ってしまった。シーンと静まり返る部屋を見渡すと久しぶりに一人なのかと感じさせられる。ここ数日、毎日誰かしらが家に居た。父に母、弟、そして『青子ちゃん』。話し相手に困らない日々だった、だからこそ今一人で居るのにゆっくり出来るなと思いつつ、少しばかり寂しさを覚える。こんな時に『青子ちゃん』が遊び来てくれれば……と考えるもそんなに都合良く事が起こる筈もない。母と弟が帰って来るまで何をしていようか、育児につきっきりの母の代わりに家事でもしようか、それとも先日父にもらった忍術書でも読もうか。
とりあえず何かしら行動を起こそうとしたところで、ごめん下さいと聞き慣れた声が家中に響いた。
「イタチ、遊びに来ちゃった!」
「今、母とサスケは出かけていて居ないんだ」
「そうなの?! 上がっちゃダメかな?」
顎に手を当てて「出直した方がいいかな」と呟く『青子ちゃん』。寂しさを感じていた自分にとって、彼女が来てくれたのは本当に好都合だった。
「ううん、問題ないよ」
「じゃあ二人でお留守番してようか! おじゃましまーす!」
『青子ちゃん』を招き入れ、いつもの場所である縁側へと足を向けた。台所へお茶を取りに行って縁側へ戻ると、『青子ちゃん』は何だか悲しそうな顔をしていた。普段ころころと笑う姿しか見た事がなかったからか、すごく心配に思うのと、いつもと違う憂いの表情が大人の女性に思えて仕方ない。ドキリと脈を上げ始めた心臓に自分らしさを失ったようで動転していれば、早かったねとの声が彼女から上がった。
「どうぞ」
「ありがとう」
そう言って受け取った彼女の表情はいつも見慣れている微笑みで、先程浮かべていた悲しみは幻のように消え失せてしまった。見間違えだったんじゃないかと思わせる変わりように驚くが、絶対に見間違いではないと断言出来る。ゆっくりと湯呑みに口をつけ始めた彼女に何かあったのかと問いかければ、湯呑みから口を離して首を傾げた。
「えっと、何の話?」
「さっきまで悲しそうな顔をしてたから」
「気のせいじゃない?」
「オレ達一族が見間違いなんて行為、まずあり得ないのは分かりきった事でしょう?」
「…………」
オレの間違いだと言う『青子ちゃん』に間違いはあり得ないのだと言いきれば、大きく息を吐いて「そうだよね」と諦めの混じった肯定が返ってきた。何があったのだと切り込めば悩みがあるのだと返ってくる。その悩みは何だと更に質問をぶつければ、渋すぎるコーヒーを一気飲みしたかのように歪めた顔をして口をもごつかせている。どうやら言いにくい事を自分は聞いてしまったらしい。そもそも急速に仲が良くなったとはいえ、そこまで込み入った話を必ず自分にしてくれるとは限らないと何故気が回らなかったのだろうか。それはきっと、普段の『青子ちゃん』が親しみやすくて、話しやすくて、心に温かみを覚えたからだろう。オレはオレが思う以上に『青子ちゃん』が好きなのだと今更ながら自覚し、自分の事なのに自分が分からないなんて何とも不可思議な状況に陥る日が訪れるとは、と嘲笑していれば言いにくい悩みがあるのだと呟いた。
「それはオレに、と言う事か?」
「ううん、イタチだからじゃないんだ。これは私の趣向というか欲求だから仕方ないんだけど……」
「欲求?」
「そう、欲求。まだまだお子様なイタチには分からないけど」
子供に分かるはずがないと言ってまた黙りを決めた『青子ちゃん』に対して言いようのない怒りを覚えた。確かに自分は『青子ちゃん』より年下であるのは変えようのない事実。だけど、それでも自分なりに彼女の力になりたいと思ったのに、彼女は子供相手では解決しないと言う。
「言ってみないと分からない」
「言っても無駄よ」
「無駄かどうか判断するのはオレだ」
「さすがにイタチでも無理、私には分かる」
そう言うと口をむっつりと閉じてしまった。もう何も話す事はないとしっかり表情に刻んで。それでも、オレは『青子ちゃん』の悩み事を聞き出したくてどうにか頭を回転させた。『青子ちゃん』が納得する理由を絞り出せれば、きっと話してくれるに違いないと確信しているからだ。
『青子ちゃん』は自分の意見をよく口にする白黒はっきりさせたいタイプだ。だから悪く言えば頑固なのだが、ずっと頭でっかちという訳でもない。意外にも押しに弱いところもあるのを知っている。理由は弟が彼女にお願い事を強く強くしていたのを、たまたま見たからだ。
「逆にオレだから言える事もあるだろう?」
「でも……」
「無理なら無理で諦める、だから言って見ないか? 解決までいかなくても糸口は見つかるかもしれない」
「……」
そっと手を重ねて優しく諭せば、彼女の眉間に皺が寄り唇をもごつかせている。半分くらい気持ちが揺らいでいると思われる反応にもう少しだと自分に言い聞かせた。もう少し粘れば彼女の核心に触れられる、より彼女に近づけるのだと思えば何だか温かいくすぐったさが込み上げる。
それからどちらも口を閉じたままで、『青子ちゃん』は難しい表情で地面を睨みつけ、オレは彼女の少ししっとりとした手を撫でたりゆるく握ったりを繰り返していた。未だ微動だにせず沈黙を続ける彼女の横でいつになったら陥落するのか待ちわびていれば、己を呼ぶ声が細く聞こえた。
「……引かないって約束出来る?」
「ああ、もちろんだ」
先程まで浮かべていた暗雲は消え去り、不安を滲ませた彼女の質問に返答をする。突如ギュッと強く握られた手に彼女の悩みの大きさの現れかと予想していると、欲求不満なんだとポツリと呟いた。
「それはさっきも聞いた」
「うん、まぁそうなんだけど……欲求不満でツラいんだよ」
「何の欲求なんだ?」
「…………性的欲求」
『青子ちゃん』の口から飛び出した単語が理解出来なかった、いや理解したくなかった。オレの中の『青子ちゃん』はそういったモノには一切興味がなくて、大人だけど子供と変わらない透明で純真だと思っていたから、想像とかけ離れた俗世的な部分に己の事を棚に上げて軽蔑を感じてしまった。
「イタチにはそういう悩みはないの?」
「……そういう悩み」
「うん、欲求とか性的な事で」
「年頃だし少しは興味があるでしょ?」と続けて問いかけてきた彼女の質問に、手のひらからじわりと汗が滲み出すのをひしひしと感じていた。彼女の言う悩みに心当たりがあるからだ。オレはまだ幼い弟に対して『男』として負けた気持ちを引きずっている、それは先日からずっと目から離れない『アレの大きさ』についてだ。しかし、それを彼女に言っていいのだろうか? 馬鹿正直に言ったらくだらないとか気のせいだと一蹴されてしまうのではないか、そんな不安が頭を過ぎる。どうしたものかと悩み続けるオレに『青子ちゃん』が何かあるんだと確信をついたようにニンマリと笑った。
「何をそんなに悩ませてるの? 教えてよ」
「……」
「そんなに言いづらい事なの?」
「……あぁ」
「そっかぁ……でも私の方がイタチより年上だから何かしら知ってるかもよ?」
そう言ってオレの顔を覗き込んで来た『青子ちゃん』は、「それでもまだ悩む?」と答えを急かしてくる。突如近くなった距離に狼狽えていれば、唇すれすれなところで「早く観念しなさい」と強い目で制してきた彼女にどう足掻いても無駄だと悟り、渋々と口を開いた。
「絶対に笑わないと約束してくれ」
「わかった、笑わない」
「……」
彼女から了承を得たところで、心を落ち着かせる為に息を大きく吸ってゆっくりと吐き出す。そして、一息ついてから悩み事を少し小さめに吐き出せば、目をまん丸と開いてきょとりとした表情でこちらを見つめている。何かおかしな事を口走ったのだろうかと、彼女の反応に焦りを感じていれば『青子ちゃん』の目線が下半身へと注がれた。
「見せて」
「はっ?!」
「だから見せて」
「何を言って……っ?!」
「小さいかどうか見て判断したいから」
グイグイとズボンに手をかける彼女を制しようとするが、強引に事を進める両手の方が力強く抵抗をものともしない。踏ん張って守ろうとしたズボンは最後には『青子ちゃん』の手に取られ、露出したモノを慌てて隠そうとすればその手すら囚われてしまう。ここまで執着されるとは思いもしなかったし、こんな事になるくらいならばそもそも悩み事があると打ち明けなければよかったと、己の軽率な行動に若干の後悔をしていると、彼女の喉仏が上下するのが視界に入った。
「『青子ちゃん』?」
「……ねぇ、イタチ。大きさが気になるのも分かるけど、それよりも大事な事があるんだよ」
「大事な事?」
「そう、ちゃんと反応するかどうか」
早口で言いきると、陰部目掛けて口をパックリと開くとあろう事かオレのモノを口に含んでしまった。汚いから今すぐ離すように言っても、大丈夫だからと言って聞く耳を持たない。腰を引こうとすればガッチリと太腿を押さえられてしまい動くにも動けない。微弱な抵抗を続けるオレへ気にかける素振りすら見せないで、ちゅるちゅると吸いつく彼女の唇が動くたびに、背中になんとも言い難いむず痒さが走り抜ける。今まで感じた事のない感覚に戸惑っていれば、全体を覆う生暖かさとねっとりと這う舌がまた新しい感覚を生み出す。何て表現したらいいのか言葉に詰まっていると陰部に埋まっていた頭が離れていく。少々名残惜しさを覚えていると、口を三日月にして笑う『青子ちゃん』が舌舐めずりをしながら、ちゃんと反応したねと楽しそうに笑った。
「反応……?」
ニコニコと満面の笑みを浮かべる『青子ちゃん』から、己の下腹部に目を向ければいつもと違った光景が入った。いつもはずっと俯いているそれが上向きになっている。見た事のない反応に『青子ちゃん』を見れば正常な反応だよとあっけらかんと返され、改めてまじまじと見つめるが何が正常なのか理解出来ない。助けを求めるように再び彼女を呼べば、首を傾げてオレの反応に不可思議さを覚えているようだった。
「どうしたの? 朝勃ちと一緒だよ?」
「……朝勃ちって?」
「本気で言ってるの?!」
驚愕する『青子ちゃん』には悪いけど、知らないものは知らないのだと返答すれば自分の意識とは裏腹に主に起床時に勃ち上がる症状だと簡単に説明される。今まで一度もそんな現象は起こってないと返すと、そんな事もあるのねぇと半信半疑で呟かれる。
「この状態はどうすれば治る?」
「出すもの出せば治るよ」
「出す? ……待てっ」
半分持ち上がっているモノの解決方法を聞けば、またねっとりと舌が絡んでくる。舌先で弄び、舌の根で押し付けるように舐めとる様は普段の雰囲気とは全く違う妖艶さが滲み出ており、『青子ちゃん』の見た目をした別人のようだ。どくりどくりと大きく動き出した心臓の音が全身を足早に駆け巡り、最後は集中しているモノへと集まる。まるで心臓が移動したかのようにドクドクと脈打つそこに意識を向けると、次第に腰へ広がって行く妙な感覚に支配されていく。自分の下腹部に顔を埋めて、髪を振り、手を上下に動かし、口の周りを唾液で汚しながら一心不乱に被りつく姿は、初めて出された料理を夢中に食べる幼子のように見える。ジュルジュル、ジュポジュポと彼女の口から奏でられる音が耳に入る度に、脳内で何度も何度も再生されて、合わせるように心臓がドクンと一段強く弾んだ。
「ま、待って……なんか変!」
「んー?」
何度も何度も舐められながら上下に扱かれていると、下向きだったモノが天を仰いでいる。自分の体に起こる異変に涙が浮かびそうになるが、こんな事で泣くなと叱咤しながら堪えていると咥えた状態で『青子ちゃん』が何故か嬉しそうな表情を浮かべた。
「もう少しかな?」
「何が……?」
「何だろうね? まぁ最後を迎えるまでの楽しみって事で」
何やら不穏な言葉を落とすと再び舐め始めた。舐めるだけでなく時折吸われたりもすればさっきから感じている腰への感覚が強いものへと変化する。じゅるりと吸われれば腰がびくりと震え、ジュルジュルと手で素早く扱かれれば腰が勝手に前後に動いてしまう。『青子ちゃん』がどんどんと動きを激しく大きくすればする程、腰は意思を持ったかのように動き、そして終いには尿意まで込み上げ、ずっと我慢していた涙がホロリと頬を伝った。
「出ちゃう……っ!!」
心の中で彼女に謝罪をしながら口内へと排泄していく。ただ、いつもと違って痙攣混じりで勢いよく吐き出されていったのが印象的だった。腰をビクつかせながら止まらない排泄に罪悪感と羞恥心が沸々と湧き上がる。年上の女性の口内に思いっきり吐き出してしまうなんて、何て謝ればいいのだろうかと顔に集まる熱に浮かされながら『青子ちゃん』を恐る恐る見れば、予想とは違った姿をしていた。てっきり怒りや苦悶の表情を浮かべているかと思いきや、頬を赤く染めてうっとりと余韻に浸っているように見える。
「『青子ちゃん』?」
「イタチ、どうだった?」
未だ息の上がる声で彼女を呼べば首を傾げながら感想を求められた。正直なところあの腰を這い上がってくるなんとも生々しい感覚は、始めこそこそばゆさしかなかったが後半は込み上げる排泄欲に駆られていた。吐き出した今の気持ちは、身軽になったような脱力感を覚えるような何とも形容し難い。
「あれはね『射精』っていうんだよ」
「尿じゃない……?」
「違うよ、大人に近づいてる証拠だよ」
そう言っていつものように俯いてしまったモノをひと撫でながら「満足出来たよ」と零す。彼女の欲求はどうやら解消され、力になれたのは素直に嬉しい。自分は大きさに悩んでいたが、『青子ちゃん』からすればどうだったのだろうか?
「オレはどうだった?」
「そうだね、反応、硬さ、反り具合、全く問題ないよ。それに……もう元気になってる」
ふふっと笑みを溢した彼女の手元を見れば、またゆっくりと勃ち始めている。さっき出したばかりだというのにまた処理しないといけないのかと、底が見えないそれにため息をつくと同時に『青子ちゃん』が「もっと良い事しようよ」と提案してきた。
「さっきよりももっともっと気分が良いよ」
そうしてまた勃ち始めたそれを手で扱きつつオレの上に跨ると、クチュリと鳴った水音と同時に生暖かい何かがオレを優しく包んだ。
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