頂き物
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ガチャリと音を立てて部屋の扉が開かれた。部屋の主のサソリの双眸に映るのは散在する傀儡とそのための道具のみ。
傀儡は彼の生き甲斐、興趣とも言えよう。今更サソリの不躾な態度に臆する青子でもない。
「ノックの一つもできないのか。」
「せっかちな貴方に合わせたのにそんな事を投げかけられるなんて心外ですわね。」
軽口を叩きながら前回の賭け事の勝者が所望する品をサソリの目につく場所に据え置いてから伸びをした。いつ見てもサソリとデイダラの部屋は散らかって見えるが芸術家の部屋とはこんなものなのだろうか?座る場所もない部屋に響くのは傀儡を弄る音のみ。物言わぬサソリに苦笑しながら彼の背中を見つめる。
ーーいつ始めた事なのか忘却してしまったが、青子はサソリに賭け事を提案した。
芸術を追求する彼の実力が純粋に気になり、出来上がった作品を自分の身体で実験してみないか。
サソリの作った物が青子に通じればサソリの勝利、通じなければ自分の勝利。賭けの期限はなし、お互いが飽きてしまえば終わりにしよう。
言わずとも最初のうちは門前払いをくらっていたが根比べの末青子の思惑通りに進むはずだった。
それが先程のように材料を取りに行けとパシリに使われている。不満はあるが彼との接触時間を増やすためと内に抑え込ませることにしている。
今度の実験は何をする?新薬の実験か、傀儡の調整、それとも……?
賭けの対象者はこちらになんの声も掛けないということは恐らく今はお呼びではないということ。仕方ない、出直すとしよう。
お使いに出されて疲れた身体を休ませて、また適当な時間に顔を出せば要件を口にする。サソリとの付き合いはそれなりにあるため性格面もある程度は把握している。
「今度、何をするか後で伝えてください。それまで休んでおきますので。」
「ここにいろ。」
…聞き間違いだろうか?
こちらに目もくれずはっきりと口にされたが生憎青子はサソリと違い生身の身体で活動している。以前、砂隠れの里にある特殊なサボテンの棘を採取しろと命令されたものの砂漠の天気は変わりやすくその日は砂嵐が吹き荒れていた。案の定、要望の時間まで戻らなかった青子にサソリは新しい毒を注入し生死の境を彷徨わせた。賭けの実験のために色々な毒をその身に注入し抗体を造らせたり自力で解毒剤を精製する青子は文字通り死にものぐるいで治療し生還するという無茶苦茶なことをやり遂げ、それは記憶に色濃く残っている。
同じ失敗を繰り返すマヌケに成り下がる気はない。青子は苦笑しながらサソリの言葉に耳を貸さず背を向けて部屋を後にしようとドアノブに手をかけた。
「…ん?」
「逃げんなよ青子。」
手をかけた、つもりだったのが急に動作が止まった。同時にサソリはようやく傀儡に仕込みをする手を止めて青子の方に振り返ると片手からチャクラの糸を伸ばしてることを見せつけてくる。なるほど、あの一瞬で音もなく糸を通したのか。感情を露わにしないサソリの表情を読み取れず青子はいたずらっ子のような微笑を浮かべると、戯けたように肩を竦める。
「……逃げるだなんて人聞きの悪い。小娘がいたら集中できないのでしょう?」
「…根にでも持ってんのか?くだらねぇ。」
貴方の興を削ぐようなことをすれば後が恐ろしい、とは青子は口にはしなかったが小さく首を傾げた。普段の彼ならばここで「さっさと行け、小娘が。」と邪険に扱い話を打ち切るはずなのだが今回はいつもと比べると違う反応が返ってきたのが不思議で仕方ない。
考えに耽りかけるのをサソリの指が動いたことで青子は片膝をつく。
喉を鳴らして嗤いながらこちらに歩みを進めるサソリの声は弱者をいたぶるものだがどこか嬉しそうにも聞こえなくもない。
よっぽど人を嬲りたかったのか。薬漬け?それともサンドバッグ?今から起こることを想像するとロクな事は起こらない事だけは考えつく。
「それで、今度の実験は何をなさいますか?毒でしたらある程度の抗体ができあがったのでまた打ち消すかもしれませんが。サソリの腕なら解毒剤も作れないほどの猛毒が、すぐにでもできあがるでしょう。それとも、新しい傀儡の実験でしょうか?」
「残念だが、どちらでもないな。」
青子はおや、と瞬きをしながらサソリを見据える。彼の表情がニヤリと何かを狙っているもので、いつもの喉を鳴らして嗤うと悪人が似合いそうだ。
ーー今の間に脱出方法は思い付きはしたが彼の言葉通り、妙な薬を出す動作やお気に入りの傀儡を出してこない察するに息の根を止めるような事はない。
では、なにを?
「不自由な身体でよく働くお前にオレが褒美をやるって言ってんだ。」
「はっ…?褒美、ですか?」
素直に喜ぶことができないのは自分の性格に問題があるからだろうか?それとも暁にいるせい?もしくは相手がサソリだから?できれば自分の性格に問題がある事だけ抜いておきたい。
身体を糸で縛り付けられ抵抗したいところだが、そんな事をすれば完全に逃げ場を失う。顔や肩を強張らせる一瞬の隙をサソリは見逃すことはなかった。チャクラ糸を通してない手が青子の顎を持ち上げ彼女の唇を自分のもので掠めとると呆気に取られる彼女に満足そうにサソリはほくそ笑む。
もう一度、今度は堪能するように唇を押し当て正気に戻った青子は小さく嬌声を上げた。
サソリはこれが褒美だと言うつもりだろうか?
人間の持つ睡眠や食欲と言った欲を削ぎ落とした者がなぜ?意図も読めないまま間近で覗くサソリの瞳の奥からぎらついた渇望と奪取の光が見えたような気がした。作り物とは思えない強い感情を宿した眼差しに彼女は心身を絡め取られた感覚に陥り動けずにいた。
「テメェは実験体だけじゃ、もったいねぇ。」
「…と、申しますと?」
「お前の全てをオレに捧げろ。」
顎に添えられた手は不意に後頭部に移ると、サソリの肩に顔を埋めるように引き寄せられる。
反射的に身体を引こうとしたが背中にも手を添えられ逃げる事は許さない、と主張してるようにも取れた。青子は困ったように笑みを浮かべながらどう返すか思考を巡らせる。
年端もいかぬ少女ならばこうした口説き文句に頬に朱が指し慌てふためくかもしれない。このまま、サソリの甘美な囁きに酔いしれ頷きたくなるが奥歯を噛み締めて踏みとどまる。
…ここでイエスと言えば文字通りサソリに全てを捧げる事になる。それは人権すらも委ねる事になり自分が人間でありたい選択肢も彼に奪われるやもしれない。青子はふとそんな未来を予感し感傷を覚えた。サソリの身体は傀儡でも後世に自分の作品を残したいと考える人間だ。自分まで彼の作品になってはならない。きっと、後悔するだろう。
「ステキな提案ね、プロポーズと取っていいのかしら?」
伏せていた目線を頭上の男に寄せると愉快そうな笑い声となって降り注いだ。質問の有無を答えず、もう一度唇を落とされそうになるのを指を当てて制止させた。
「悪いけどそんな言葉で靡いたりしません。」
「そうじゃねぇと、遊び足らねぇな。」
ふ、と小さく甘い息を漏らして青子はサソリの身体に腕を回した。
彼と言葉を交わし触れ合っているだけで満ち足りた気分になれるがそうした素振りを見せはしまいと微笑を作ると不遜な笑顔を返してくる。
「青子、賭けの追加だ。」
「奇遇ね、私も同じ事を考えてたの。ルールは落とされた方が負け、はどうかしら?」
「オレがテメェのような小娘に落ちるとでも言うつもりか?」
「その言葉、貴方にそっくり返すわサソリ。」
ほんの数秒触れてるだけで青子は徐々に身体の力が抜けていくのを感じた。このまま安らぐ訳にはいかないと離れるために動くとサソリから止められる。いつもの賭けの方は猛毒漬けの為に此処にとどまり休めと告げて。
サソリは視線を揺らしながら青子の身体を強く抱き寄せながら口元が開き言葉を紡ぐ。聞こえるか聞こえないかの声量で虚空に呟かれたが耳聡く聞き取れた青子は敢えて小さく首を傾げた。
「……なにか言いました?」
「…なんでもねぇ。」
そっと囁かれた言葉を聞き返せばサソリの腕の力が増した。少し痛むが、顔を見るなと忠告しているのかもしれないと青子はそう自分に言い聞かせながら自分も顔を押し付けた。
底意地の悪い彼には、簡単に落ちたり靡いたりせずにいるのがきっといい。欲しいものは奪って手に入れるのが暁のやり方だ。それは彼も自分も然り。
根比べの末、先に折れるのは自分なのか彼なのか。長く秘めてる想いを自分はあとどれくらい辛抱できるのか定かではないがまだ告げる訳にもいかない。
「サソリ。」
とんとん、と人差し指でサソリの頭を小突けば抱き寄せられる力が弱まった。上目遣いで見つめながら自らも顔を寄せてサソリの唇に触れる。
「ご褒美、なのでしょう?」
「小娘が偉く出たな青子。」
柔らかく悪戯っ子のように笑ってみせれば視線をそらしながら青子の髪を撫でられる。
照れているようだ。
醜態を隠すように挑発的に見下ろすサソリの眼差しに、青子はいとおしさを感じながら顔を真っ赤にしながら笑った。
きっとこの勝負の勝敗はサソリが勝ちを確信する要因を見せてしまったが、それは自分も同じ。
『お前に落とされるなら考えてやってもいい。』
その言葉がどうか、貴方を慕う気持ちと同じでありますように、と青子はもう一度サソリに唇を落とした。
傀儡は彼の生き甲斐、興趣とも言えよう。今更サソリの不躾な態度に臆する青子でもない。
「ノックの一つもできないのか。」
「せっかちな貴方に合わせたのにそんな事を投げかけられるなんて心外ですわね。」
軽口を叩きながら前回の賭け事の勝者が所望する品をサソリの目につく場所に据え置いてから伸びをした。いつ見てもサソリとデイダラの部屋は散らかって見えるが芸術家の部屋とはこんなものなのだろうか?座る場所もない部屋に響くのは傀儡を弄る音のみ。物言わぬサソリに苦笑しながら彼の背中を見つめる。
ーーいつ始めた事なのか忘却してしまったが、青子はサソリに賭け事を提案した。
芸術を追求する彼の実力が純粋に気になり、出来上がった作品を自分の身体で実験してみないか。
サソリの作った物が青子に通じればサソリの勝利、通じなければ自分の勝利。賭けの期限はなし、お互いが飽きてしまえば終わりにしよう。
言わずとも最初のうちは門前払いをくらっていたが根比べの末青子の思惑通りに進むはずだった。
それが先程のように材料を取りに行けとパシリに使われている。不満はあるが彼との接触時間を増やすためと内に抑え込ませることにしている。
今度の実験は何をする?新薬の実験か、傀儡の調整、それとも……?
賭けの対象者はこちらになんの声も掛けないということは恐らく今はお呼びではないということ。仕方ない、出直すとしよう。
お使いに出されて疲れた身体を休ませて、また適当な時間に顔を出せば要件を口にする。サソリとの付き合いはそれなりにあるため性格面もある程度は把握している。
「今度、何をするか後で伝えてください。それまで休んでおきますので。」
「ここにいろ。」
…聞き間違いだろうか?
こちらに目もくれずはっきりと口にされたが生憎青子はサソリと違い生身の身体で活動している。以前、砂隠れの里にある特殊なサボテンの棘を採取しろと命令されたものの砂漠の天気は変わりやすくその日は砂嵐が吹き荒れていた。案の定、要望の時間まで戻らなかった青子にサソリは新しい毒を注入し生死の境を彷徨わせた。賭けの実験のために色々な毒をその身に注入し抗体を造らせたり自力で解毒剤を精製する青子は文字通り死にものぐるいで治療し生還するという無茶苦茶なことをやり遂げ、それは記憶に色濃く残っている。
同じ失敗を繰り返すマヌケに成り下がる気はない。青子は苦笑しながらサソリの言葉に耳を貸さず背を向けて部屋を後にしようとドアノブに手をかけた。
「…ん?」
「逃げんなよ青子。」
手をかけた、つもりだったのが急に動作が止まった。同時にサソリはようやく傀儡に仕込みをする手を止めて青子の方に振り返ると片手からチャクラの糸を伸ばしてることを見せつけてくる。なるほど、あの一瞬で音もなく糸を通したのか。感情を露わにしないサソリの表情を読み取れず青子はいたずらっ子のような微笑を浮かべると、戯けたように肩を竦める。
「……逃げるだなんて人聞きの悪い。小娘がいたら集中できないのでしょう?」
「…根にでも持ってんのか?くだらねぇ。」
貴方の興を削ぐようなことをすれば後が恐ろしい、とは青子は口にはしなかったが小さく首を傾げた。普段の彼ならばここで「さっさと行け、小娘が。」と邪険に扱い話を打ち切るはずなのだが今回はいつもと比べると違う反応が返ってきたのが不思議で仕方ない。
考えに耽りかけるのをサソリの指が動いたことで青子は片膝をつく。
喉を鳴らして嗤いながらこちらに歩みを進めるサソリの声は弱者をいたぶるものだがどこか嬉しそうにも聞こえなくもない。
よっぽど人を嬲りたかったのか。薬漬け?それともサンドバッグ?今から起こることを想像するとロクな事は起こらない事だけは考えつく。
「それで、今度の実験は何をなさいますか?毒でしたらある程度の抗体ができあがったのでまた打ち消すかもしれませんが。サソリの腕なら解毒剤も作れないほどの猛毒が、すぐにでもできあがるでしょう。それとも、新しい傀儡の実験でしょうか?」
「残念だが、どちらでもないな。」
青子はおや、と瞬きをしながらサソリを見据える。彼の表情がニヤリと何かを狙っているもので、いつもの喉を鳴らして嗤うと悪人が似合いそうだ。
ーー今の間に脱出方法は思い付きはしたが彼の言葉通り、妙な薬を出す動作やお気に入りの傀儡を出してこない察するに息の根を止めるような事はない。
では、なにを?
「不自由な身体でよく働くお前にオレが褒美をやるって言ってんだ。」
「はっ…?褒美、ですか?」
素直に喜ぶことができないのは自分の性格に問題があるからだろうか?それとも暁にいるせい?もしくは相手がサソリだから?できれば自分の性格に問題がある事だけ抜いておきたい。
身体を糸で縛り付けられ抵抗したいところだが、そんな事をすれば完全に逃げ場を失う。顔や肩を強張らせる一瞬の隙をサソリは見逃すことはなかった。チャクラ糸を通してない手が青子の顎を持ち上げ彼女の唇を自分のもので掠めとると呆気に取られる彼女に満足そうにサソリはほくそ笑む。
もう一度、今度は堪能するように唇を押し当て正気に戻った青子は小さく嬌声を上げた。
サソリはこれが褒美だと言うつもりだろうか?
人間の持つ睡眠や食欲と言った欲を削ぎ落とした者がなぜ?意図も読めないまま間近で覗くサソリの瞳の奥からぎらついた渇望と奪取の光が見えたような気がした。作り物とは思えない強い感情を宿した眼差しに彼女は心身を絡め取られた感覚に陥り動けずにいた。
「テメェは実験体だけじゃ、もったいねぇ。」
「…と、申しますと?」
「お前の全てをオレに捧げろ。」
顎に添えられた手は不意に後頭部に移ると、サソリの肩に顔を埋めるように引き寄せられる。
反射的に身体を引こうとしたが背中にも手を添えられ逃げる事は許さない、と主張してるようにも取れた。青子は困ったように笑みを浮かべながらどう返すか思考を巡らせる。
年端もいかぬ少女ならばこうした口説き文句に頬に朱が指し慌てふためくかもしれない。このまま、サソリの甘美な囁きに酔いしれ頷きたくなるが奥歯を噛み締めて踏みとどまる。
…ここでイエスと言えば文字通りサソリに全てを捧げる事になる。それは人権すらも委ねる事になり自分が人間でありたい選択肢も彼に奪われるやもしれない。青子はふとそんな未来を予感し感傷を覚えた。サソリの身体は傀儡でも後世に自分の作品を残したいと考える人間だ。自分まで彼の作品になってはならない。きっと、後悔するだろう。
「ステキな提案ね、プロポーズと取っていいのかしら?」
伏せていた目線を頭上の男に寄せると愉快そうな笑い声となって降り注いだ。質問の有無を答えず、もう一度唇を落とされそうになるのを指を当てて制止させた。
「悪いけどそんな言葉で靡いたりしません。」
「そうじゃねぇと、遊び足らねぇな。」
ふ、と小さく甘い息を漏らして青子はサソリの身体に腕を回した。
彼と言葉を交わし触れ合っているだけで満ち足りた気分になれるがそうした素振りを見せはしまいと微笑を作ると不遜な笑顔を返してくる。
「青子、賭けの追加だ。」
「奇遇ね、私も同じ事を考えてたの。ルールは落とされた方が負け、はどうかしら?」
「オレがテメェのような小娘に落ちるとでも言うつもりか?」
「その言葉、貴方にそっくり返すわサソリ。」
ほんの数秒触れてるだけで青子は徐々に身体の力が抜けていくのを感じた。このまま安らぐ訳にはいかないと離れるために動くとサソリから止められる。いつもの賭けの方は猛毒漬けの為に此処にとどまり休めと告げて。
サソリは視線を揺らしながら青子の身体を強く抱き寄せながら口元が開き言葉を紡ぐ。聞こえるか聞こえないかの声量で虚空に呟かれたが耳聡く聞き取れた青子は敢えて小さく首を傾げた。
「……なにか言いました?」
「…なんでもねぇ。」
そっと囁かれた言葉を聞き返せばサソリの腕の力が増した。少し痛むが、顔を見るなと忠告しているのかもしれないと青子はそう自分に言い聞かせながら自分も顔を押し付けた。
底意地の悪い彼には、簡単に落ちたり靡いたりせずにいるのがきっといい。欲しいものは奪って手に入れるのが暁のやり方だ。それは彼も自分も然り。
根比べの末、先に折れるのは自分なのか彼なのか。長く秘めてる想いを自分はあとどれくらい辛抱できるのか定かではないがまだ告げる訳にもいかない。
「サソリ。」
とんとん、と人差し指でサソリの頭を小突けば抱き寄せられる力が弱まった。上目遣いで見つめながら自らも顔を寄せてサソリの唇に触れる。
「ご褒美、なのでしょう?」
「小娘が偉く出たな青子。」
柔らかく悪戯っ子のように笑ってみせれば視線をそらしながら青子の髪を撫でられる。
照れているようだ。
醜態を隠すように挑発的に見下ろすサソリの眼差しに、青子はいとおしさを感じながら顔を真っ赤にしながら笑った。
きっとこの勝負の勝敗はサソリが勝ちを確信する要因を見せてしまったが、それは自分も同じ。
『お前に落とされるなら考えてやってもいい。』
その言葉がどうか、貴方を慕う気持ちと同じでありますように、と青子はもう一度サソリに唇を落とした。
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