相澤消太
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「マニキュアの色の出方が知りたい」
「自分のでやれ」
「他人のやる方がやりやすいから。足でいいから。貸して」
ため息と、差し出された片足。もう一つの足は無くなっちゃった。自分で切り落としたんだって。世界のために死ねるタイプの人なんだ。この人は。どこか冷めたような目で他を眺めているのに、教師なんていう自己犠牲で辞書を引いたら出てきそうな職についているだけある。
そして片目も無くなっちゃった。興味本位でアイパッチを外して眼球があったところをなぞった。そこには用なしの球体が鎮座していた。痛い?と聞いたらなにも感じない と返ってきた。瞼の触覚だけらしい。眼球を押したときに感じる圧迫感と、片側の視界がほぼないらしい。日常生活でも困りそうなのに一瞬の判断がモノをいう命のやりとりなんて無理でしょ、と言いたかった。
独特のシンナー臭が鼻をつく。同じ空間にいるから消太も同じ匂い嗅いでいるのかと思うと少しうれしい。こんな平和で、無害な昼下がりは珍しいから、このような同じ体験が、うれしい。ささやかすぎると思うけど、無理を言わない。私は理解のある彼女だから。決してわがまま言わない。仕事と私どっちが好きなのなんて言わない。
自分の首を絞めるだけだとわかっているから。
「引退して、もう戦わないで済むところに住もうよ」
理解のある彼女の皮を脱ぎ去って裸の私がそこにいた。理解を上回ってしまったんだ。もうこの人を戦いの場においておけないという自我が。どこにそんなところがあるのか?と笑われてしまえばおわりだ。
「……あいつらが卒業したらな」
「え?」
「敦子から言ったんだろ」
「そうだけど」
言ってみるもんだな。いいこのフリして我慢するのはときには良くないのかもしれない。つるりとした紺碧が五つ並んでいる。爪が大きいからデコったらもっと映えるだろうけどそれは邪魔になりそうだからやめた。落とすのを忘れて同僚に揶揄われたというのは別のお話。
「自分のでやれ」
「他人のやる方がやりやすいから。足でいいから。貸して」
ため息と、差し出された片足。もう一つの足は無くなっちゃった。自分で切り落としたんだって。世界のために死ねるタイプの人なんだ。この人は。どこか冷めたような目で他を眺めているのに、教師なんていう自己犠牲で辞書を引いたら出てきそうな職についているだけある。
そして片目も無くなっちゃった。興味本位でアイパッチを外して眼球があったところをなぞった。そこには用なしの球体が鎮座していた。痛い?と聞いたらなにも感じない と返ってきた。瞼の触覚だけらしい。眼球を押したときに感じる圧迫感と、片側の視界がほぼないらしい。日常生活でも困りそうなのに一瞬の判断がモノをいう命のやりとりなんて無理でしょ、と言いたかった。
独特のシンナー臭が鼻をつく。同じ空間にいるから消太も同じ匂い嗅いでいるのかと思うと少しうれしい。こんな平和で、無害な昼下がりは珍しいから、このような同じ体験が、うれしい。ささやかすぎると思うけど、無理を言わない。私は理解のある彼女だから。決してわがまま言わない。仕事と私どっちが好きなのなんて言わない。
自分の首を絞めるだけだとわかっているから。
「引退して、もう戦わないで済むところに住もうよ」
理解のある彼女の皮を脱ぎ去って裸の私がそこにいた。理解を上回ってしまったんだ。もうこの人を戦いの場においておけないという自我が。どこにそんなところがあるのか?と笑われてしまえばおわりだ。
「……あいつらが卒業したらな」
「え?」
「敦子から言ったんだろ」
「そうだけど」
言ってみるもんだな。いいこのフリして我慢するのはときには良くないのかもしれない。つるりとした紺碧が五つ並んでいる。爪が大きいからデコったらもっと映えるだろうけどそれは邪魔になりそうだからやめた。落とすのを忘れて同僚に揶揄われたというのは別のお話。