相澤消太
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ずっと昔から二人は好き同士で、ずっと仲が良くて、幸せに暮らしましたとさ。おしまい。
と、なればどんなによかっただろうか。現実はもっと紆余曲折で、七転び八起きで、七転八倒……最後のは少し違うけど、現実は笑えるくらいでこぼこの道を歩まないとならないらしい。高校時代から付き合っている奴らなんて全員結婚していて……まあヘテロだから結婚できるっていうのもあるけど、なんだかんだ気心知れてて仲が宜しいことで。
俺と、俺の愛しの相澤君は全然そんなことなくて喧嘩ばかりで、いいになっても高校時代と変わらない喧嘩頻度ってどうなのようと思う。もっとイチャイチャだったりラブラブだったりあっていいと思うけど、倦怠期ってやつを何度か繰り返しているうちに、お互いがいることが当たり前になっていてそのありがたみが薄れてしまっていたんだと思う。お互いに。
高校時代は美しい思い出になっている。今までよりずっと身体が薄くて、頼りなげな少年だった消太のことを守ってやらないとと思っていた。ヒーロー科の同級生で守る守らないなんて馬鹿らしいと今ではそう思うけれど、当時は本気だった。
そりゃあ生まれてからずっと一緒にいたんだ。保育園も、小中高と一緒。それが離れていくことに耐えられなかった。消太が色々なきっかけを経て可能性を広げていくところを見て、置いていかれると察した俺は何を考えたか恋愛を持ち出した。自分の価値を損ないたくないから、好きだと言った。何言っんだと振られて終わるはずの関係は、俺も、なんて耳まで真っ赤になりながら真摯に返された言葉で十年以上の延長戦に突入している。恥も外聞もない執着、それは恋と俺は俺に言い訳してこの関係が死ぬまで付き合おうと思っている。
ああ、今少年時代の消太に会いたいな、なんて言ったら昨日飲んだビールの空き缶が飛んでくる。過去の自分にすら嫉妬する恐ろしいほどの嫉妬深さは付き合ってから知った。俺がヤリチン……性に奔放だからっていうのもあると思うけど、それにしたって。一度ほんの出来心で他の男と寝たことがバレたことがあったが、チンコ切り落とすか切腹か選ばされるかと思った。まあそれはもちろん比喩なんだけど、そのくらいの恐怖を感じた。俺だって伊達にプロやっているわけじゃないのに。
===
晋は俺のこと嫉妬深いとかなんとかいうが、問題は晋の方にあると思っている。病的なほど尻軽な晋がキスマークだらけで二日酔いだとかなんとか言って寝転んでいるのを見て、何度もこいつとは手を切ろうと思っているが、なぜかそれができない。一緒にいた時間があまりにも長く、こいつがいない生活を少しも想像できないでいるからだ。ただ、こいつが他所の香りを纏ってくるたびに心臓の芯から冷えていく感覚がある。それだけはなんどそんな場面にあっても慣れない。数少ない友人にいわせると、それは悲しいということらしい。そのくせ謝る時の声音は怖いほどやさしく、それに絆されたのは両手の数を超える。なんで泣いてるの、なんてアホ丸出しの言動にも苛立ちより先に悲しみがくる。俺はこいつをどうしたって引き止めてはおけないんだという事実が深々と染み入るからだろう。
「ねー、なんで泣いてんのー」
わからないならそのまま転がってろ、と蹴りを入れるとうれしそうに笑ってる。
「もう黙れよ、それか死ね」
「あっ、いけないんだー。死ねって言ったらいけないんだー」
「死んでくれた方がいい。そうしたらもう悲しまなくて済む」
「そんなにー?」
「わからないなら早く死ね」
「うーっ」
不毛だ、そんなことは自分が一番よくわかっている。
===
なんで泣いているかなんて俺が一番よくわかっている。
でも泣いてくれるっていうの、俺はうれしいんだよって言ったら今度こそ殺されるので黙ってるけど、メソメソしている消太を抱えて眠りにつくのが一番幸せ。俺だけ地獄行き。いつまでも一緒にいたいけどそれだけが無理だなと思っている。
「大好きだよ」
これは本当。いっつも信じてもらえないけれど、俺の真心そのままあげると本気で思っている。
「ウソつけ」
「ウソじゃないって」
ここまでいつもと同じ。その後なあなあになって明日になったら元通り。そんで俺はまた消太を泣かすというわけ。
「……もうそんなんことしないでくれよ」
「え」
「もう他のやつと寝るな」
いつもと違う動きをするとプログラムは止まってしまうらしいけど、それと同じく俺は回答を止めてしまった。
「努力します」
「そうじゃなくて、もうしないと言え」
珍しく食い下がるので、俺も答えに窮してしまった。自信がないのだ。消太が俺以外の世界を見ようとするのが怖くてたまらない。その恐怖心から逃れるために消太を傷つけ続けなければと、傷付けさせてくれるうちは俺から離れていかないと半ば強迫観念にかられている。消太のこと嫉妬深いとかいっておきながらこれだ。
「…………もうしません」
無言で小指を絡めてくるので、つられてゆびきりげんまん、と唱えた。切られるのは首か、チンコか、腹か。どれであってもおかしくない。けれどその約束がうれしい。俺を縛ろうとする約束が、うれしい。
「この約束で、切るのは、縁だからな」
「う」
「最後だ。泣くのも、傷つくのも」
「それができないから、いつも泣いてるのに切れる?縁」
「……首切れば、縁も切れるだろ」
「こわいよー……」
「なんとも思ってないから今までこんなことできたんだろ」
「そんなことないよ……」
「言い訳したいなら、してみろ」
「消太の泣き顔が好き♡」
「……やっぱり今すぐ死ね」
半ば本気だったんだろうけど、俺がずっとヘラヘラしてたからやる気無くしてしまったらしく、解放された。
「消太の初めてのコロシ、俺だね」
「心底気色悪いな」
いつもの消太らしい言動になってきたので、もう大丈夫なんだろう。傷ついても復帰が早いのが消太のいいところだ。
「大好きだよ」
「お前の言葉は信用できない」
「本心なのになあ」
口では信じてないとか言っても、行動が伴っていない。俺が後ろから抱きついても振り払わないし。大概、馬鹿だな。こんな男やめとけばいいのに。
と、なればどんなによかっただろうか。現実はもっと紆余曲折で、七転び八起きで、七転八倒……最後のは少し違うけど、現実は笑えるくらいでこぼこの道を歩まないとならないらしい。高校時代から付き合っている奴らなんて全員結婚していて……まあヘテロだから結婚できるっていうのもあるけど、なんだかんだ気心知れてて仲が宜しいことで。
俺と、俺の愛しの相澤君は全然そんなことなくて喧嘩ばかりで、いいになっても高校時代と変わらない喧嘩頻度ってどうなのようと思う。もっとイチャイチャだったりラブラブだったりあっていいと思うけど、倦怠期ってやつを何度か繰り返しているうちに、お互いがいることが当たり前になっていてそのありがたみが薄れてしまっていたんだと思う。お互いに。
高校時代は美しい思い出になっている。今までよりずっと身体が薄くて、頼りなげな少年だった消太のことを守ってやらないとと思っていた。ヒーロー科の同級生で守る守らないなんて馬鹿らしいと今ではそう思うけれど、当時は本気だった。
そりゃあ生まれてからずっと一緒にいたんだ。保育園も、小中高と一緒。それが離れていくことに耐えられなかった。消太が色々なきっかけを経て可能性を広げていくところを見て、置いていかれると察した俺は何を考えたか恋愛を持ち出した。自分の価値を損ないたくないから、好きだと言った。何言っんだと振られて終わるはずの関係は、俺も、なんて耳まで真っ赤になりながら真摯に返された言葉で十年以上の延長戦に突入している。恥も外聞もない執着、それは恋と俺は俺に言い訳してこの関係が死ぬまで付き合おうと思っている。
ああ、今少年時代の消太に会いたいな、なんて言ったら昨日飲んだビールの空き缶が飛んでくる。過去の自分にすら嫉妬する恐ろしいほどの嫉妬深さは付き合ってから知った。俺がヤリチン……性に奔放だからっていうのもあると思うけど、それにしたって。一度ほんの出来心で他の男と寝たことがバレたことがあったが、チンコ切り落とすか切腹か選ばされるかと思った。まあそれはもちろん比喩なんだけど、そのくらいの恐怖を感じた。俺だって伊達にプロやっているわけじゃないのに。
===
晋は俺のこと嫉妬深いとかなんとかいうが、問題は晋の方にあると思っている。病的なほど尻軽な晋がキスマークだらけで二日酔いだとかなんとか言って寝転んでいるのを見て、何度もこいつとは手を切ろうと思っているが、なぜかそれができない。一緒にいた時間があまりにも長く、こいつがいない生活を少しも想像できないでいるからだ。ただ、こいつが他所の香りを纏ってくるたびに心臓の芯から冷えていく感覚がある。それだけはなんどそんな場面にあっても慣れない。数少ない友人にいわせると、それは悲しいということらしい。そのくせ謝る時の声音は怖いほどやさしく、それに絆されたのは両手の数を超える。なんで泣いてるの、なんてアホ丸出しの言動にも苛立ちより先に悲しみがくる。俺はこいつをどうしたって引き止めてはおけないんだという事実が深々と染み入るからだろう。
「ねー、なんで泣いてんのー」
わからないならそのまま転がってろ、と蹴りを入れるとうれしそうに笑ってる。
「もう黙れよ、それか死ね」
「あっ、いけないんだー。死ねって言ったらいけないんだー」
「死んでくれた方がいい。そうしたらもう悲しまなくて済む」
「そんなにー?」
「わからないなら早く死ね」
「うーっ」
不毛だ、そんなことは自分が一番よくわかっている。
===
なんで泣いているかなんて俺が一番よくわかっている。
でも泣いてくれるっていうの、俺はうれしいんだよって言ったら今度こそ殺されるので黙ってるけど、メソメソしている消太を抱えて眠りにつくのが一番幸せ。俺だけ地獄行き。いつまでも一緒にいたいけどそれだけが無理だなと思っている。
「大好きだよ」
これは本当。いっつも信じてもらえないけれど、俺の真心そのままあげると本気で思っている。
「ウソつけ」
「ウソじゃないって」
ここまでいつもと同じ。その後なあなあになって明日になったら元通り。そんで俺はまた消太を泣かすというわけ。
「……もうそんなんことしないでくれよ」
「え」
「もう他のやつと寝るな」
いつもと違う動きをするとプログラムは止まってしまうらしいけど、それと同じく俺は回答を止めてしまった。
「努力します」
「そうじゃなくて、もうしないと言え」
珍しく食い下がるので、俺も答えに窮してしまった。自信がないのだ。消太が俺以外の世界を見ようとするのが怖くてたまらない。その恐怖心から逃れるために消太を傷つけ続けなければと、傷付けさせてくれるうちは俺から離れていかないと半ば強迫観念にかられている。消太のこと嫉妬深いとかいっておきながらこれだ。
「…………もうしません」
無言で小指を絡めてくるので、つられてゆびきりげんまん、と唱えた。切られるのは首か、チンコか、腹か。どれであってもおかしくない。けれどその約束がうれしい。俺を縛ろうとする約束が、うれしい。
「この約束で、切るのは、縁だからな」
「う」
「最後だ。泣くのも、傷つくのも」
「それができないから、いつも泣いてるのに切れる?縁」
「……首切れば、縁も切れるだろ」
「こわいよー……」
「なんとも思ってないから今までこんなことできたんだろ」
「そんなことないよ……」
「言い訳したいなら、してみろ」
「消太の泣き顔が好き♡」
「……やっぱり今すぐ死ね」
半ば本気だったんだろうけど、俺がずっとヘラヘラしてたからやる気無くしてしまったらしく、解放された。
「消太の初めてのコロシ、俺だね」
「心底気色悪いな」
いつもの消太らしい言動になってきたので、もう大丈夫なんだろう。傷ついても復帰が早いのが消太のいいところだ。
「大好きだよ」
「お前の言葉は信用できない」
「本心なのになあ」
口では信じてないとか言っても、行動が伴っていない。俺が後ろから抱きついても振り払わないし。大概、馬鹿だな。こんな男やめとけばいいのに。