切島鋭二郎
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切島鋭児郎は、俺が想像するヒーローそのものだった。強くて、優しくて、それでいて人間臭い。そんな人だから、俺が人を殺してしまったと連絡した時はひどく悲しんだ。
「どうしてこんなことしちゃったんだ」
「たぶんエイちゃんにはわからないよ」
太陽の表面温度は六千度を超えるという。切島鋭児郎という太陽は近づくモブ個性を全てその清らかさで燃やし尽くしてしまう。
多分クラスメイトの人たちはエイちゃんの弱いところとか、情けないところとか知っているんだろうけど、俺は知らない。いじめっ子から庇ってボコボコにされてるのに俺に嫌味ひとつ言わずに手を差し伸べてくれたエイちゃん以外のエイちゃんを知らない。知りたくもない。
そんなんだから、俺は人を殺してしまう前にエイちゃんに相談できなかった。俺が先にエイちゃんにすがることを諦めてしまったから。
けれど助けてとすがるには勇気がいる。
自分の立場が助ける側より弱いことを認めて初めて助けてと投げかけることができる。俺は、どうしようもないモブ個性で、勇気も根性もないダメ人間なのに幼馴染であるエイちゃんより劣っていることを認めてしまうことが怖かった。そんな弱いやつとエイちゃんは付き合わないだろうという先入観から、俺はエイちゃんに一言「困っていることがある」と相談できなかった。
誰より一番自分が自分の価値を信じることができなかった。自分なんかが助けてと言ったところでエイちゃんは忙しいから来てくれないはずだと決めつけた。
全て悪い方向に行ってしまった。
就職に失敗したとか、仕事がうまくいかないとか、上司が厳しい人で、ろくに眠れないとか。もっと気軽に相談できていればと今となっては遅すぎる考えをめぐらせた。
「エイちゃんにはわからないよ」
卑怯な言葉を重ねた。拒絶しているのに、追いかけてきてほしい気持ちが隠しきれないいやらしい言葉。エイちゃんは優しいから、「そんなこと言うなよ。何があったんだ」なんて聞いてくれる。そんなエイちゃんの優しさが俺を傷つける。優しさが人を傷つけるなんて、エイちゃんは考えたこともなかったろ。でもそんなこと考えてほしくない。エイちゃんはその愚直なまでのやさしさが人の凝り固まった心をとかしてあたたかい風を吹き込むんだから。
遠くで警察のサイレンが聞こえる。俺の家に向かって来ている。
「さよならだ、エイちゃん」
「駄目だ。さよならじゃない。晋、お前は……償わないと。俺がみててやるから」
「……エイちゃんにはわからないよ」
「わからないなら教えてくれよ。晋、お前ずっと勉強できたじゃねえか。俺にだって教えてくれたよな。そんな感じで、教えてくれよ。辛かったこととか、どうやって償うとか」
「そんなの、小学校の頃の話でしょ」
「でも」
「ほら警察きたよ」
「俺、字ィ下手だけどよ、手紙書くから。返事くれよ」
「気が向いたらね」
搬送途中で見た朝日が目に染み入る。強すぎる光にできた影みたいな人生だった。
2023/1/6 22時〜死体遺棄夢WEBオンリー「あなたの共犯者」展示作品③
「どうしてこんなことしちゃったんだ」
「たぶんエイちゃんにはわからないよ」
太陽の表面温度は六千度を超えるという。切島鋭児郎という太陽は近づくモブ個性を全てその清らかさで燃やし尽くしてしまう。
多分クラスメイトの人たちはエイちゃんの弱いところとか、情けないところとか知っているんだろうけど、俺は知らない。いじめっ子から庇ってボコボコにされてるのに俺に嫌味ひとつ言わずに手を差し伸べてくれたエイちゃん以外のエイちゃんを知らない。知りたくもない。
そんなんだから、俺は人を殺してしまう前にエイちゃんに相談できなかった。俺が先にエイちゃんにすがることを諦めてしまったから。
けれど助けてとすがるには勇気がいる。
自分の立場が助ける側より弱いことを認めて初めて助けてと投げかけることができる。俺は、どうしようもないモブ個性で、勇気も根性もないダメ人間なのに幼馴染であるエイちゃんより劣っていることを認めてしまうことが怖かった。そんな弱いやつとエイちゃんは付き合わないだろうという先入観から、俺はエイちゃんに一言「困っていることがある」と相談できなかった。
誰より一番自分が自分の価値を信じることができなかった。自分なんかが助けてと言ったところでエイちゃんは忙しいから来てくれないはずだと決めつけた。
全て悪い方向に行ってしまった。
就職に失敗したとか、仕事がうまくいかないとか、上司が厳しい人で、ろくに眠れないとか。もっと気軽に相談できていればと今となっては遅すぎる考えをめぐらせた。
「エイちゃんにはわからないよ」
卑怯な言葉を重ねた。拒絶しているのに、追いかけてきてほしい気持ちが隠しきれないいやらしい言葉。エイちゃんは優しいから、「そんなこと言うなよ。何があったんだ」なんて聞いてくれる。そんなエイちゃんの優しさが俺を傷つける。優しさが人を傷つけるなんて、エイちゃんは考えたこともなかったろ。でもそんなこと考えてほしくない。エイちゃんはその愚直なまでのやさしさが人の凝り固まった心をとかしてあたたかい風を吹き込むんだから。
遠くで警察のサイレンが聞こえる。俺の家に向かって来ている。
「さよならだ、エイちゃん」
「駄目だ。さよならじゃない。晋、お前は……償わないと。俺がみててやるから」
「……エイちゃんにはわからないよ」
「わからないなら教えてくれよ。晋、お前ずっと勉強できたじゃねえか。俺にだって教えてくれたよな。そんな感じで、教えてくれよ。辛かったこととか、どうやって償うとか」
「そんなの、小学校の頃の話でしょ」
「でも」
「ほら警察きたよ」
「俺、字ィ下手だけどよ、手紙書くから。返事くれよ」
「気が向いたらね」
搬送途中で見た朝日が目に染み入る。強すぎる光にできた影みたいな人生だった。
2023/1/6 22時〜死体遺棄夢WEBオンリー「あなたの共犯者」展示作品③