砂藤力道
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恋ってさ、決勝戦敗退も予選敗退も同じ「フラれた」なんだよね。フラれるもなにも、恋として成立してなかったんだから参加賞すらもらえない。私が勝手に好きになって、勝手にもう手に入らないことになったことを認識して。それだけなんだ。本当に、それだけ。
さとうくんはいつも誰にでも優しかった。
その優しさが、私一人にだけ注がれるものだと勘違いしたイタい女。それが私。でも、仕方なかった。自分がみじめでも、ほんの少しでも可能性があるなら賭けたかった。そんなふうに相手の負担も考えずに「可能性に賭ける」自分に酔うのも楽しかった。恋にくらくらになっている間に出ている脳内のなんか……なんていうの? すごく気分が良くて、もしかしてなんて思いにさせる……アレが効いているうちは、楽しかった。
「そ、そっか。答えてくれて……ありがと」
「いやなんか……ごめんな……?」
最後まで砂藤くんは優しかった。
優しいというより当たり障りがいいというか。当時高校生だった彼にそこまで求めるのもひどい話だと思うけど、いまだにあのことを夢に見るのだから、少しくらいは嫌味が言いたくなる。
願いを叶えてやれなくて謝るくらいなら、叶えてほしいと思った時もあった。けれどそんな脅しじみた叶い方でつなぎ止めたとしても簡単にほどけてしまうだけだろう。だから結ばれず、糸のままであった方が繊維が剥がれることなく、傷つくことなく卒業できたのかもしれない。
命を危険に晒している状況だと吊り橋効果というものが働いてカップルができやすいという。さとうくんはびっくりするくらい早く、同僚とくっついてこの春子供が生まれるそうだ。
一人だけ、永久に目覚めることの無い悪夢の底で沈殿するだけの哀れな恋を、いつか他の誰かで温めたりするのだろうか。今はなにも考えられない。幸せを素直に祝うこともできない。
こんな恋、最初からなかった方がマシだったかもしれないと思うたび、私が砂藤くんと出会ったことを思い出す。めまいがしそうなくらい美しい思い出。棺桶まで持っていくつもりの、綺麗なまぼろし。
命をかけて誰かを救おうとする人間のなんと美しいものか。その美しい光に身を焼かれてしまった虫ケラが分相応にも光に手を伸ばして焼かれた。それだけのこと。
けれど、手を伸ばしていなかったら今でもあの時ああしていればと後悔したと思う。砂藤くんには悪いけど、あの時殺してくれた恋が今の私を作っている。枯れた花が肥料になって次の花を咲かすみたいにね。
2023年2月3日
2023年2月3日 オールジャンル失恋夢オンリーイベント「大失恋祭」前夜祭投稿作品③
さとうくんはいつも誰にでも優しかった。
その優しさが、私一人にだけ注がれるものだと勘違いしたイタい女。それが私。でも、仕方なかった。自分がみじめでも、ほんの少しでも可能性があるなら賭けたかった。そんなふうに相手の負担も考えずに「可能性に賭ける」自分に酔うのも楽しかった。恋にくらくらになっている間に出ている脳内のなんか……なんていうの? すごく気分が良くて、もしかしてなんて思いにさせる……アレが効いているうちは、楽しかった。
「そ、そっか。答えてくれて……ありがと」
「いやなんか……ごめんな……?」
最後まで砂藤くんは優しかった。
優しいというより当たり障りがいいというか。当時高校生だった彼にそこまで求めるのもひどい話だと思うけど、いまだにあのことを夢に見るのだから、少しくらいは嫌味が言いたくなる。
願いを叶えてやれなくて謝るくらいなら、叶えてほしいと思った時もあった。けれどそんな脅しじみた叶い方でつなぎ止めたとしても簡単にほどけてしまうだけだろう。だから結ばれず、糸のままであった方が繊維が剥がれることなく、傷つくことなく卒業できたのかもしれない。
命を危険に晒している状況だと吊り橋効果というものが働いてカップルができやすいという。さとうくんはびっくりするくらい早く、同僚とくっついてこの春子供が生まれるそうだ。
一人だけ、永久に目覚めることの無い悪夢の底で沈殿するだけの哀れな恋を、いつか他の誰かで温めたりするのだろうか。今はなにも考えられない。幸せを素直に祝うこともできない。
こんな恋、最初からなかった方がマシだったかもしれないと思うたび、私が砂藤くんと出会ったことを思い出す。めまいがしそうなくらい美しい思い出。棺桶まで持っていくつもりの、綺麗なまぼろし。
命をかけて誰かを救おうとする人間のなんと美しいものか。その美しい光に身を焼かれてしまった虫ケラが分相応にも光に手を伸ばして焼かれた。それだけのこと。
けれど、手を伸ばしていなかったら今でもあの時ああしていればと後悔したと思う。砂藤くんには悪いけど、あの時殺してくれた恋が今の私を作っている。枯れた花が肥料になって次の花を咲かすみたいにね。
2023年2月3日
2023年2月3日 オールジャンル失恋夢オンリーイベント「大失恋祭」前夜祭投稿作品③