ジョンリチャ(FGO)
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兄上が矢傷に倒れた、と聞いてからはあっという間に亡くなってしまった。
戦に明け暮れていた人だから小さな傷は絶えない人であったが……まだヒトではあったらしく、矢傷ゆえかの高熱でうなされていた。
「兄上、調子のほどは」
「あ、ジョンか……」
いつものような元気はなく、身体を一人で起こすことも難しい様子だった。背中を支えてやることなんて、この人が生きているうちにすることはないと思っていた。
「どうにもだるくてな。先日から熱が下がらない。潮時かもしれないな」
「そんな、弱気なことを」
「弱気なものか。現実の話だ。俺はここで死ぬだろう」
「……」
「そんな泣きそうな顔をするな。大丈夫だジョン。俺が死んでもお前が健やかであるよう見守っているからな」
「現世などにこだわらず、早く審判を受けて地獄にお行きになるといいでしょう」
「そうか、さすがジョン。ジョンは気遣いすぎて疲れているのではないか。お前は肉親の死を前に冷静に皮肉を言えるようなやつだったかな」
「……そういうところですよ」
「すまないな、ジョン。心やさしいお前を残して逝くのは俺も悲しいよ」
「わかっているなら、許して差し上げます」
数日でやつれた兄の頬骨が、柔らかな春の日差しを受けて影を落としている。これがあの、天真爛漫な兄の末路とは。どれだけ血に塗れようと、私が兄を思い出す時にまぶたの裏に浮かべるのは、幼い私の手を引いて底なしの明るさを振り撒いて笑う姿だった。きっとそれが覆されることはないだろう。
「やさしいな、ジョンは。呆れているのかもしれないな」
「ふふ、それもわかっているなら、私から申し上げることはありません」
「私、だなんて。昔は僕って言っていたのに。かわいかったな、あの頃は」
「兄上も、物語に魅入られるまではまだ人間味がありましたよ」
「はっはっは」
「面白いと思って笑っていませんね」
「笑っていないぞ!呼吸をしているだけだ!」
「そのようで。そんなおふざけができるのであればお元気ですね」
笑ったにしては呼吸が漏れているだけのように聞こえていた。それを誤魔化すのも下手すぎる。
「大丈夫だ。また必ずどこかで巡り会えるだろう」
「面白いことをおっしゃいますね」
「そうであった方が面白いだろう」
「……そうですね」
兄に再度会う時など想像すらできないが、兄が必ずというのなら少しだけ考えてみる。
それこそ地獄で再開ではないだろうか。追い求めるあまり暴虐を働いた兄と、失政を繰り返した弟。笑えないが、その時になったら笑い合おうと思う。我々底知れぬ悪を極めたなと。
20260517
戦に明け暮れていた人だから小さな傷は絶えない人であったが……まだヒトではあったらしく、矢傷ゆえかの高熱でうなされていた。
「兄上、調子のほどは」
「あ、ジョンか……」
いつものような元気はなく、身体を一人で起こすことも難しい様子だった。背中を支えてやることなんて、この人が生きているうちにすることはないと思っていた。
「どうにもだるくてな。先日から熱が下がらない。潮時かもしれないな」
「そんな、弱気なことを」
「弱気なものか。現実の話だ。俺はここで死ぬだろう」
「……」
「そんな泣きそうな顔をするな。大丈夫だジョン。俺が死んでもお前が健やかであるよう見守っているからな」
「現世などにこだわらず、早く審判を受けて地獄にお行きになるといいでしょう」
「そうか、さすがジョン。ジョンは気遣いすぎて疲れているのではないか。お前は肉親の死を前に冷静に皮肉を言えるようなやつだったかな」
「……そういうところですよ」
「すまないな、ジョン。心やさしいお前を残して逝くのは俺も悲しいよ」
「わかっているなら、許して差し上げます」
数日でやつれた兄の頬骨が、柔らかな春の日差しを受けて影を落としている。これがあの、天真爛漫な兄の末路とは。どれだけ血に塗れようと、私が兄を思い出す時にまぶたの裏に浮かべるのは、幼い私の手を引いて底なしの明るさを振り撒いて笑う姿だった。きっとそれが覆されることはないだろう。
「やさしいな、ジョンは。呆れているのかもしれないな」
「ふふ、それもわかっているなら、私から申し上げることはありません」
「私、だなんて。昔は僕って言っていたのに。かわいかったな、あの頃は」
「兄上も、物語に魅入られるまではまだ人間味がありましたよ」
「はっはっは」
「面白いと思って笑っていませんね」
「笑っていないぞ!呼吸をしているだけだ!」
「そのようで。そんなおふざけができるのであればお元気ですね」
笑ったにしては呼吸が漏れているだけのように聞こえていた。それを誤魔化すのも下手すぎる。
「大丈夫だ。また必ずどこかで巡り会えるだろう」
「面白いことをおっしゃいますね」
「そうであった方が面白いだろう」
「……そうですね」
兄に再度会う時など想像すらできないが、兄が必ずというのなら少しだけ考えてみる。
それこそ地獄で再開ではないだろうか。追い求めるあまり暴虐を働いた兄と、失政を繰り返した弟。笑えないが、その時になったら笑い合おうと思う。我々底知れぬ悪を極めたなと。
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