ジョンリチャ(FGO)
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遠くに潮騒のような、ざらざらとした音が聞こえる。
信じる教えでは、死後の世界はこのようなものではなく、審判ののち地獄なり天国なりに振り分けられるのだとされていたが、何にせよ薄暗く景気の悪い空間に意識のみが浮遊している感覚がある。
聴覚があるということは、ある程度の実態があると思われるが、手のひらを見ようと動かそうとしてもどこも動かず、ただ視界が下……と言えるものでもない薄靄に移動するだけだった。
視界に上下の感覚があるのは、遠くに何か建物のようなものが見えるからだ。ものがあるという指標から、視界に軸があり、それを基準にして上と下がある、というわけだ。
あの建物で審判がくだるとして、きっと私は地獄行きだろう。後世で語られる際も、地獄行きであることを説明することに困ることはあるまい。
民の血、親兄弟の血。数えきれないだけの血を流し、失敗を重ね、領土を失った。血を流すだけ流して、結果を出すことができなかった。それだけで地獄以外に行く場所はないはずだ。
歩いているにしては揺れない視界だが、確かに歩いているような速度で進む。
建物のそばに、見知った濃度の黄色い頭髪が揺れているのを見た。
「ジョン、ジョンなのか、その姿は」
「わんわん」
「なんでわかるんだって? そりゃあ、俺はお前の兄だからな」
「わふん」
「犬の姿にされるのが罰だって? 拡大解釈しすぎだろう。落ち着けって」
「わおん」
「落ち着いていられないか。それもそうだな。お前のいうとおり、この建物が地獄の門だ。この後審判があって地獄なり天国に……それもそうらしいが……俺は逃げるつもりだ」
「わお……」
「一緒に来るか? 教義から逃げるのは怖いか?」
「クーン」
「俺もだ、ジョン。またお前と進めるなら怖いものなんてない。一緒に行こう」
犬の姿は便利だ。
多くを語らずとも兄の歩みを追いかけることに胸躍らせることができる。そして、少しだけ気楽だ。兄の後ろをついて歩いていた頃を思い出す。自分が認めた人の決めたこと・これから決めることに賛成する・反対するという単純な判断だけで済むからだ。
やはり私は王になるべきではなかった。
こうして真の王たる兄を追うのが、これだけ心地いいからだ。
20260509
信じる教えでは、死後の世界はこのようなものではなく、審判ののち地獄なり天国なりに振り分けられるのだとされていたが、何にせよ薄暗く景気の悪い空間に意識のみが浮遊している感覚がある。
聴覚があるということは、ある程度の実態があると思われるが、手のひらを見ようと動かそうとしてもどこも動かず、ただ視界が下……と言えるものでもない薄靄に移動するだけだった。
視界に上下の感覚があるのは、遠くに何か建物のようなものが見えるからだ。ものがあるという指標から、視界に軸があり、それを基準にして上と下がある、というわけだ。
あの建物で審判がくだるとして、きっと私は地獄行きだろう。後世で語られる際も、地獄行きであることを説明することに困ることはあるまい。
民の血、親兄弟の血。数えきれないだけの血を流し、失敗を重ね、領土を失った。血を流すだけ流して、結果を出すことができなかった。それだけで地獄以外に行く場所はないはずだ。
歩いているにしては揺れない視界だが、確かに歩いているような速度で進む。
建物のそばに、見知った濃度の黄色い頭髪が揺れているのを見た。
「ジョン、ジョンなのか、その姿は」
「わんわん」
「なんでわかるんだって? そりゃあ、俺はお前の兄だからな」
「わふん」
「犬の姿にされるのが罰だって? 拡大解釈しすぎだろう。落ち着けって」
「わおん」
「落ち着いていられないか。それもそうだな。お前のいうとおり、この建物が地獄の門だ。この後審判があって地獄なり天国に……それもそうらしいが……俺は逃げるつもりだ」
「わお……」
「一緒に来るか? 教義から逃げるのは怖いか?」
「クーン」
「俺もだ、ジョン。またお前と進めるなら怖いものなんてない。一緒に行こう」
犬の姿は便利だ。
多くを語らずとも兄の歩みを追いかけることに胸躍らせることができる。そして、少しだけ気楽だ。兄の後ろをついて歩いていた頃を思い出す。自分が認めた人の決めたこと・これから決めることに賛成する・反対するという単純な判断だけで済むからだ。
やはり私は王になるべきではなかった。
こうして真の王たる兄を追うのが、これだけ心地いいからだ。
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