デンレゼ
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※問答無用平和時空
「デンジくん、お熱あるでしょ」
「え?!無いよ!無い!元気!」
「体温計、見せて。はかったやつ」
「い、いやだ!だって熱あったら福袋買えねーし」
「デンジくん、ちがうよね。お熱出てたらみんなもお熱になっちゃうから、お家で寝て治すんだよ」
「ギギ……」
「あ、こら、歯を食いしばらないの。この前歯が欠けたばっかりじゃん」
「でも……」
「そうだ、デンジくん。おかゆ作ってあげる。食べさせてあげる」
「レゼが?!」
「そうだよ。私の手作りおかゆ、食べてほしいなぁ……♡」
「ま、福袋は通販でも買えるしな!!」
「そうだよ。アウトレットセールもあるから、またおでかけしよう」
「わかった。絶対だ。おでかけしよう」
「うん。絶対ね」
なんとか説得して、寝間着に着替えさせた。無印良品のパシャマに、蓄光ワッペンをつけてあげたやつ。ワッペン買ってきて縫いつけただけなのに、咽せるほどのおおはしゃぎだった。
口から出まかせでおかゆを、と言ったけど日本のおかゆなんて作ったことない。教育の一環で、単なる食事以上の意味を持つ場合がある、ってことだけ知っている。
鍋に出汁をとって、炊いた米を煮るらしい。鍋の水が温まるまでの間にリンゴをきってあげることにした。
本当はウサギなんかじゃなくて複雑なものも切れるけど、ウサギにしておいた。
「デンジくん、調子どう」
「布団に入ったらすごい熱出てきたような気がする。知らなかった。俺が熱出てたなんて」
「体温計見た感じ三十八度だったし、普通に熱が出てるよ」
「でも、楽しみパワーのほうが強かったのに……」
「楽しみでも、みんなのために我慢できてえらかったねデンジくん。ウサギさんもエライって言ってくれてるよ」
上体を起こしたデンジくんにフォークに刺したリンゴを差し出すと、いつもよりだいぶおとなしく咀嚼している。
「じゃあ、おかゆ作ってくるからね」
「バーベキューソース味がいい」
「えー、バーベキューソース?おかゆはお腹を休める食べ物だから、しょつぱくない味にするよ」
「ンエ……」
いままでなら、そんなまずそうなもん食べない、と言いそうなものだけど私は言われたことがない。思ったことをすぐ口に出すデンジくんにも、私にそんなことを言ったら傷つく、とわかっているのかもしれない。
コトコトとやさしい音を立てて煮立つおかゆの湯気を眺める休日なんて、いままでの生活からすると考えられない。この生活に慣れてしまった今振り返ると、昔の生活の悲惨さに眩暈がする。けどもう、私はしあわせになっていい。過去を振り払うように目を閉じて、ポコポコと泡立つおかゆを前に突っ立っている。
「デンジくん、たまごのおかゆだよ」
「わぁ〜い……」
声に元気がない。
さらに熱が上がったらしく、顔が赤くなっている。
「食べたら解熱剤飲んで、氷枕して寝ようね」
「うん……」
「ほらデンジくん、あーんして」
息を吹きかけて冷ましたおかゆを口に運んでやったらもくもくと咀嚼し始めた。ちょっとホッとした。おかゆがちゃんと作れたみたいで。
「おいしいかも。味がないわけじゃない。なんか、味はある」
「そう、出汁の味だよ。デンジくん」
「へー、いいな。出汁」
もちゃもちゃ、と決してお行儀がいいわけではない音を立てて、デンジくんはおかゆを完食した。解熱剤が武器人間に効くかはわからないけど、私には効くからもしかしたらという気持ちであげてみた。
「氷枕きもちいーな。さっぱりする」
「デンジくんがお熱出てる証拠だよ。早くよくなりますように」
「うん。早く治してレゼとおでかけするんだ。服とか、靴とか
。レゼなんでも似合うから、なんでも着てほしい」
「その前にデンジくんのコート買おう。デンジくんコート無しで冬を越そうとしてるんだもん。そっちの方が優先」
「えー……」
「寒いのほっとくとまたお風邪ひいちゃうよ」
「それはヤダ!」
「うんうん。おでかけ楽しみだね。今日と明日は最低でもゆっくりしてね」
「わかった。レゼごめんな。おでかけナシになっちゃって」
「いいの。デンジくん早く元気になってね」
「大丈夫!」
そんな咳のど鼻水熱、すべて出しているのに説得力はない。けどなぜか苛立たない。底なしの明るさの中に残る冷たい過去がそうさせるのかもしれない。
一人になると途端にやることがなくなる。テレビも本も興味がわかない。料理の本なら少し読む気になるので読んでいるが、それもデンジくんが喜びそうかそうでないか、で見分けている。自分の価値観を育てるより先に素敵なひとと出会った私は、それからどうやって自分に出会っていけばいいだろう。
20260112
「デンジくん、お熱あるでしょ」
「え?!無いよ!無い!元気!」
「体温計、見せて。はかったやつ」
「い、いやだ!だって熱あったら福袋買えねーし」
「デンジくん、ちがうよね。お熱出てたらみんなもお熱になっちゃうから、お家で寝て治すんだよ」
「ギギ……」
「あ、こら、歯を食いしばらないの。この前歯が欠けたばっかりじゃん」
「でも……」
「そうだ、デンジくん。おかゆ作ってあげる。食べさせてあげる」
「レゼが?!」
「そうだよ。私の手作りおかゆ、食べてほしいなぁ……♡」
「ま、福袋は通販でも買えるしな!!」
「そうだよ。アウトレットセールもあるから、またおでかけしよう」
「わかった。絶対だ。おでかけしよう」
「うん。絶対ね」
なんとか説得して、寝間着に着替えさせた。無印良品のパシャマに、蓄光ワッペンをつけてあげたやつ。ワッペン買ってきて縫いつけただけなのに、咽せるほどのおおはしゃぎだった。
口から出まかせでおかゆを、と言ったけど日本のおかゆなんて作ったことない。教育の一環で、単なる食事以上の意味を持つ場合がある、ってことだけ知っている。
鍋に出汁をとって、炊いた米を煮るらしい。鍋の水が温まるまでの間にリンゴをきってあげることにした。
本当はウサギなんかじゃなくて複雑なものも切れるけど、ウサギにしておいた。
「デンジくん、調子どう」
「布団に入ったらすごい熱出てきたような気がする。知らなかった。俺が熱出てたなんて」
「体温計見た感じ三十八度だったし、普通に熱が出てるよ」
「でも、楽しみパワーのほうが強かったのに……」
「楽しみでも、みんなのために我慢できてえらかったねデンジくん。ウサギさんもエライって言ってくれてるよ」
上体を起こしたデンジくんにフォークに刺したリンゴを差し出すと、いつもよりだいぶおとなしく咀嚼している。
「じゃあ、おかゆ作ってくるからね」
「バーベキューソース味がいい」
「えー、バーベキューソース?おかゆはお腹を休める食べ物だから、しょつぱくない味にするよ」
「ンエ……」
いままでなら、そんなまずそうなもん食べない、と言いそうなものだけど私は言われたことがない。思ったことをすぐ口に出すデンジくんにも、私にそんなことを言ったら傷つく、とわかっているのかもしれない。
コトコトとやさしい音を立てて煮立つおかゆの湯気を眺める休日なんて、いままでの生活からすると考えられない。この生活に慣れてしまった今振り返ると、昔の生活の悲惨さに眩暈がする。けどもう、私はしあわせになっていい。過去を振り払うように目を閉じて、ポコポコと泡立つおかゆを前に突っ立っている。
「デンジくん、たまごのおかゆだよ」
「わぁ〜い……」
声に元気がない。
さらに熱が上がったらしく、顔が赤くなっている。
「食べたら解熱剤飲んで、氷枕して寝ようね」
「うん……」
「ほらデンジくん、あーんして」
息を吹きかけて冷ましたおかゆを口に運んでやったらもくもくと咀嚼し始めた。ちょっとホッとした。おかゆがちゃんと作れたみたいで。
「おいしいかも。味がないわけじゃない。なんか、味はある」
「そう、出汁の味だよ。デンジくん」
「へー、いいな。出汁」
もちゃもちゃ、と決してお行儀がいいわけではない音を立てて、デンジくんはおかゆを完食した。解熱剤が武器人間に効くかはわからないけど、私には効くからもしかしたらという気持ちであげてみた。
「氷枕きもちいーな。さっぱりする」
「デンジくんがお熱出てる証拠だよ。早くよくなりますように」
「うん。早く治してレゼとおでかけするんだ。服とか、靴とか
。レゼなんでも似合うから、なんでも着てほしい」
「その前にデンジくんのコート買おう。デンジくんコート無しで冬を越そうとしてるんだもん。そっちの方が優先」
「えー……」
「寒いのほっとくとまたお風邪ひいちゃうよ」
「それはヤダ!」
「うんうん。おでかけ楽しみだね。今日と明日は最低でもゆっくりしてね」
「わかった。レゼごめんな。おでかけナシになっちゃって」
「いいの。デンジくん早く元気になってね」
「大丈夫!」
そんな咳のど鼻水熱、すべて出しているのに説得力はない。けどなぜか苛立たない。底なしの明るさの中に残る冷たい過去がそうさせるのかもしれない。
一人になると途端にやることがなくなる。テレビも本も興味がわかない。料理の本なら少し読む気になるので読んでいるが、それもデンジくんが喜びそうかそうでないか、で見分けている。自分の価値観を育てるより先に素敵なひとと出会った私は、それからどうやって自分に出会っていけばいいだろう。
20260112
1/2ページ