龍捲風
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あれだけ人々の羨望とやっかみ、そして憎しみと愛情を一身に受けた龍兄貴、と敬称で呼ばれる人は、この城砦の死体の処理ルールに違わず廃棄される。
火葬場が別にあるから仕方がないとはいえ、便所の前に置かれ、集めにくるのも毎日というわけではないから、ひどく腐ってしまっていくのを嫌でも視界に入れなくてはならない。
ひどい暴力の跡が見える。
背中に、顔に、腕に、目に……挙げたらきりがないほどの暴力が、刀疵や打撲を表す内出血から見て取れる。目を背けたくなったが、なぜか見入ってしまった。
結局、誰にも頼らずこの国で稼いでやろうと思って故郷を飛び出してきたが、こうして誰かの傘下に入って守ってもらえていたのだとやっとわかった。
別に親みたいに構ってもらったとか、そういうのはないけど、ぼんやりと一緒にテレビを見たり、食事をとる席で一緒になれば、少し話したりもした。
天気の話、建物の修繕の話、うろちょろと我が物顔で駆け回るネズミ駆除の話、等々。
そうやって、居て当たり前だと思っていた人、そしてそれなりに力を持っていると思っていた人が、人間と人間が立てる波に攫われて、あっという間に見えなくなってしまったのだから、驚いたなんてもんじゃなかった。
それはみんなもそうだったようで、あわててはいるものの、いくところもないので……という結論は皆同じであるようだった。
彼が身につけていたもののうち、高価なものはほぼ奪われてしまっているようだ。ひしゃげたメガネだけが、申し訳程度に顔に乗っている。
死体を棺入れてももらえず、お役御免のゴミのように捨てられる遺体に落ち着かなさを感じた。無いよりはマシかと、傷だらけの顔に何度も洗って薄汚れたハンカチを乗せた。
すぐに何かしらの体液がにじんで、なかったほうが綺麗だったかもしれないくらいだった。けど、それでも嬲られた遺体を少しでもなかったことにするように、覆い隠した。このたくさんの人々が寄り集まって暮らす城を守ってくれていたひとに対する仕打ちとしては、あまりに残酷だ。
しかし、生きるために新しい城主におもねる必要がある。だから恩人を盛大に送りだすこともできない。こんな悔しいことはない。情けなくて、恥ずかしくて、申し訳ないけど何もできない。立場を気にして動き出せないことで自分の立ち位置を再確認させられるようで。
破壊し尽くされた理容院から、カミソリを一つ持ち出した。
いつか……信一たちが戻ったらこれを墓標にして、ちゃんと送り出したいから。私のために、そして龍兄貴の御霊を癒すために。
20250427
火葬場が別にあるから仕方がないとはいえ、便所の前に置かれ、集めにくるのも毎日というわけではないから、ひどく腐ってしまっていくのを嫌でも視界に入れなくてはならない。
ひどい暴力の跡が見える。
背中に、顔に、腕に、目に……挙げたらきりがないほどの暴力が、刀疵や打撲を表す内出血から見て取れる。目を背けたくなったが、なぜか見入ってしまった。
結局、誰にも頼らずこの国で稼いでやろうと思って故郷を飛び出してきたが、こうして誰かの傘下に入って守ってもらえていたのだとやっとわかった。
別に親みたいに構ってもらったとか、そういうのはないけど、ぼんやりと一緒にテレビを見たり、食事をとる席で一緒になれば、少し話したりもした。
天気の話、建物の修繕の話、うろちょろと我が物顔で駆け回るネズミ駆除の話、等々。
そうやって、居て当たり前だと思っていた人、そしてそれなりに力を持っていると思っていた人が、人間と人間が立てる波に攫われて、あっという間に見えなくなってしまったのだから、驚いたなんてもんじゃなかった。
それはみんなもそうだったようで、あわててはいるものの、いくところもないので……という結論は皆同じであるようだった。
彼が身につけていたもののうち、高価なものはほぼ奪われてしまっているようだ。ひしゃげたメガネだけが、申し訳程度に顔に乗っている。
死体を棺入れてももらえず、お役御免のゴミのように捨てられる遺体に落ち着かなさを感じた。無いよりはマシかと、傷だらけの顔に何度も洗って薄汚れたハンカチを乗せた。
すぐに何かしらの体液がにじんで、なかったほうが綺麗だったかもしれないくらいだった。けど、それでも嬲られた遺体を少しでもなかったことにするように、覆い隠した。このたくさんの人々が寄り集まって暮らす城を守ってくれていたひとに対する仕打ちとしては、あまりに残酷だ。
しかし、生きるために新しい城主におもねる必要がある。だから恩人を盛大に送りだすこともできない。こんな悔しいことはない。情けなくて、恥ずかしくて、申し訳ないけど何もできない。立場を気にして動き出せないことで自分の立ち位置を再確認させられるようで。
破壊し尽くされた理容院から、カミソリを一つ持ち出した。
いつか……信一たちが戻ったらこれを墓標にして、ちゃんと送り出したいから。私のために、そして龍兄貴の御霊を癒すために。
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