山田利吉
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あの人は、僕に「そういうことは好きな人にやるんですよ」と教えてくれたからそうしただけなのに、なんでこんな顔をしているのか、すぐにはわからなかった。
お花を見て素敵だなと思ったり、美味しいご飯屋さんだったり、よく効く薬だったり。そういうのを共有して素敵だということを一緒に……感じてみたかったんだけど。利吉さんは「そういうのを男にはしないんですよ」とだけ言った。
「でも、利吉さん」
「でもじゃない。晋くん。理屈ではないんですから解りなさい」
「なんで、そんなのひどい。僕には利吉さんしか」
「それは一時の気の迷いですから」
「違う、そんなことない」
僕のいうことを知らない理屈で封じ込めようとしてくる利吉さんが、なんだかダサく感じて「利吉さんなんて大嫌い、バカ」なんてちゃちい捨て台詞吐いた。
「だって、僕知ってるんです。利吉さんがお殿様に迫られてたこと」
「なっ……!」
「逃げれたんですか?あのあと」
「……」
「男でも、男を好きになっていいんだって思ったし、僕の方があんなやつより利吉さんのこと大事にできます」
「違うよ。その理屈は間違ってるよ」
「なにが違うんです」
「迫られて自分の意思で受け入れたか、そうでないか。それって全然違うよね」
「違う……」
「わかった?えらいね。晋は」
いつまでガキだと思ってるんだ。貞操を狙ってるってのに。気安く頭撫でてんじゃねーぞと思ったけど、普通にうれしいから黙ってなでられた。
「そうやってガキをかわすために褒め言葉使うんだから」
「そう、晋が知ってるなら言っちゃおうかな。……あいつにしてやられてから本当に男が怖い。父上でさえ。怖くてたまらない。そういう目で見られていることに嫌悪感がある」
淀んだ目で僕を見てくる利吉さん。この人こんな顔できたんだ、というくらい陰鬱な表情に、ラブい話なんてしている場合じゃないと思い始めてしまってたじろいだ。
僕の気持ちってそんなメーワクでキショいんだろうか。僕と一緒にご飯やさん言ってくれたのも、野の花を受け取って綺麗だね、今度これが生えてた所にピクニックに行こうかと誘ってくれたこともあったけど、お誘いあったからと調子に乗っていただけで、実はキモくて嫌だったのかな。
「うう……」
「晋のことが嫌い、っていうことじゃないんだ」
「嫌悪感あるのに?」
「うーん、そういう目で見て欲しくないだけで」
「でも僕は利吉さんのこと、そういう目で見てるよ。そういう目ってあんまりわからないんだけど、加害がしたいんじゃない。一方的に奪いたい訳でもない。ただ好きだよを交換したいんだ……」
「……そこはもう曲がらないんだね」
「うん。もう絶対無理。利吉さん、僕利吉さんのこと大好き。超大事にするよ。真剣だから。そんな、無理やり押し付ける奴なんかのと一緒にしないで欲しいけど、利吉さんから見たら一緒に見えるんだもんね。そこは僕が説得できそうなところ?絆されてくれる?」
「……す、少しずつなら……」
僕はため息をついて、目を伏せた利吉さんを見た。目を逸らすほど嫌なのに、絆されてくれちゃうなよ。
「もう、利吉さん甘すぎるよ。嫌なら嫌って言ってね。そうしたらもう顔出さない。遠くの国で暮らして二度と会わないようにする」
そうやって少し過剰に言ってみたら、唇を軽く噛みしめて、別離を想像したみたいだ。離れるのはもっと嫌なんだ。なんだか少しうれしかった。まだ希望がありそうで。
「それは……嫌だな」
「うん。僕も離れるのは嫌だ。だから嫌だと思われない範囲でじっくり絆されて」
「結果は約束できないよ。知らない女の人と突然祝言あげちゃうかも」
「そんなの、わかってるよ。大丈夫。そうなったら変わらず先輩後輩でいるよ」
明らかにホッとした顔しやがって。可愛いからって調子乗るなよ。あーチューしたい。悪い僕が顔を出して、距離感なんて飛び越えてめちゃくちゃえっちなことしたい。でもそんなことしたら普通に殺されちゃうし、別に利吉さんのこと傷つけたいわけじゃないしね。
「じゃ、仲直りのご飯にしよう。今日は僕が奢ります」
「晋みたいな未熟者に奢られるようになるとはな……」
「文句あるんですか〜?」
いつもの軽口を叩き合ったあたりで、安心したのか顔色が良くなってきた。あんな真っ青を通り越して土みたいな顔色になるくらい嫌な思い出ほじくり返してごめんね。でもそんなに男に迫られるの嫌なのに、僕が息できる場所を作ってくれてありがとね。大好き。利吉さん。
20250215
お花を見て素敵だなと思ったり、美味しいご飯屋さんだったり、よく効く薬だったり。そういうのを共有して素敵だということを一緒に……感じてみたかったんだけど。利吉さんは「そういうのを男にはしないんですよ」とだけ言った。
「でも、利吉さん」
「でもじゃない。晋くん。理屈ではないんですから解りなさい」
「なんで、そんなのひどい。僕には利吉さんしか」
「それは一時の気の迷いですから」
「違う、そんなことない」
僕のいうことを知らない理屈で封じ込めようとしてくる利吉さんが、なんだかダサく感じて「利吉さんなんて大嫌い、バカ」なんてちゃちい捨て台詞吐いた。
「だって、僕知ってるんです。利吉さんがお殿様に迫られてたこと」
「なっ……!」
「逃げれたんですか?あのあと」
「……」
「男でも、男を好きになっていいんだって思ったし、僕の方があんなやつより利吉さんのこと大事にできます」
「違うよ。その理屈は間違ってるよ」
「なにが違うんです」
「迫られて自分の意思で受け入れたか、そうでないか。それって全然違うよね」
「違う……」
「わかった?えらいね。晋は」
いつまでガキだと思ってるんだ。貞操を狙ってるってのに。気安く頭撫でてんじゃねーぞと思ったけど、普通にうれしいから黙ってなでられた。
「そうやってガキをかわすために褒め言葉使うんだから」
「そう、晋が知ってるなら言っちゃおうかな。……あいつにしてやられてから本当に男が怖い。父上でさえ。怖くてたまらない。そういう目で見られていることに嫌悪感がある」
淀んだ目で僕を見てくる利吉さん。この人こんな顔できたんだ、というくらい陰鬱な表情に、ラブい話なんてしている場合じゃないと思い始めてしまってたじろいだ。
僕の気持ちってそんなメーワクでキショいんだろうか。僕と一緒にご飯やさん言ってくれたのも、野の花を受け取って綺麗だね、今度これが生えてた所にピクニックに行こうかと誘ってくれたこともあったけど、お誘いあったからと調子に乗っていただけで、実はキモくて嫌だったのかな。
「うう……」
「晋のことが嫌い、っていうことじゃないんだ」
「嫌悪感あるのに?」
「うーん、そういう目で見て欲しくないだけで」
「でも僕は利吉さんのこと、そういう目で見てるよ。そういう目ってあんまりわからないんだけど、加害がしたいんじゃない。一方的に奪いたい訳でもない。ただ好きだよを交換したいんだ……」
「……そこはもう曲がらないんだね」
「うん。もう絶対無理。利吉さん、僕利吉さんのこと大好き。超大事にするよ。真剣だから。そんな、無理やり押し付ける奴なんかのと一緒にしないで欲しいけど、利吉さんから見たら一緒に見えるんだもんね。そこは僕が説得できそうなところ?絆されてくれる?」
「……す、少しずつなら……」
僕はため息をついて、目を伏せた利吉さんを見た。目を逸らすほど嫌なのに、絆されてくれちゃうなよ。
「もう、利吉さん甘すぎるよ。嫌なら嫌って言ってね。そうしたらもう顔出さない。遠くの国で暮らして二度と会わないようにする」
そうやって少し過剰に言ってみたら、唇を軽く噛みしめて、別離を想像したみたいだ。離れるのはもっと嫌なんだ。なんだか少しうれしかった。まだ希望がありそうで。
「それは……嫌だな」
「うん。僕も離れるのは嫌だ。だから嫌だと思われない範囲でじっくり絆されて」
「結果は約束できないよ。知らない女の人と突然祝言あげちゃうかも」
「そんなの、わかってるよ。大丈夫。そうなったら変わらず先輩後輩でいるよ」
明らかにホッとした顔しやがって。可愛いからって調子乗るなよ。あーチューしたい。悪い僕が顔を出して、距離感なんて飛び越えてめちゃくちゃえっちなことしたい。でもそんなことしたら普通に殺されちゃうし、別に利吉さんのこと傷つけたいわけじゃないしね。
「じゃ、仲直りのご飯にしよう。今日は僕が奢ります」
「晋みたいな未熟者に奢られるようになるとはな……」
「文句あるんですか〜?」
いつもの軽口を叩き合ったあたりで、安心したのか顔色が良くなってきた。あんな真っ青を通り越して土みたいな顔色になるくらい嫌な思い出ほじくり返してごめんね。でもそんなに男に迫られるの嫌なのに、僕が息できる場所を作ってくれてありがとね。大好き。利吉さん。
20250215