トガ茶
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骨も残さずいなくなってしまった、笑顔が素敵な女の子。あの子のことを思い出すたびに痛む、というより……もっとこうしたかったとタラレバが顔を出す。そんなぐじゅぐしゅといつまでもカサブタになって治っていく気配はない。
トガの親御さんは行方知れずだし、中学の同級生は一様に口をつぐむ。彼女のことを無かったことにしたいみたいに。別にそれに怒りたいわけじゃないけど、なんだろう、まだ名前がつけられない気持ちが私の中にわだかまっている。
みんなあのこのこと、忘れていんだろうけど、私は全然そうじゃなくて。私は、あのこのことを誰かに伝えたい。笑顔が素敵な、私が救えなかった女の子のことを。どうしたって結論なんか出ないのに、あのこのこと、どうしたら一番いい方法で今も隣で笑ってくれるように出来たかな、とか、とりとめのない気持ちの吐き出しに付き合ってほしい。
自分じゃどうにも出来ない思考の奔流に呑まれるとき、なんかやっぱり……手を合わせる仕草に落ち着きを覚える。
まだまだ復興の余地ばかりだけど、劇的な勢いでみんなが立ち直っていく。傷はいつかカサブタができてなくなっていくみたいに、みんなの力を合わせて素敵な街ができてゆく。いつか石碑なんかができて、みんなの団結の印として、思い出になってゆく。
その流れの速さに気持ちが追いつかなくて悲しく思う日もあるけど、こういう祈りとかお墓とかは残された人が気持ちを乱さないために・乱れた気持ちを巻き直すためにあると思う。
だからこそ、私はトガのお墓として、何かモノが欲しいと考えた。
色々と考えた結果、壊されたトガの実家の燃え殻から出てきた、変身ヒロインもののアニメのキーホルダーをお墓とすることとした。
三百円均一のマットな金メッキが貼ってあるトレイに置いて、お香立てを置いた。遺影になりそうなものは無い。ワイドショーとか言葉を選ばない雑誌などが使っている写真は使いたくなくて。
キーホルダーのメッキは冷たいのに、トガヒミコに触れたときの熱を思い出す。脂を含んだ血の感触。
「ほんとにしたかったのは恋バナ……まあ恋バナしても楽しいと思うけど、ヒミコちゃんのことが聞きたかったな」
「どんな食べ物がすき? 海と山ならどっちが好き? どんな時にうれしいと思う? カラオケで何歌う……?」
「虚空に話しかけてて、変ですって笑うかな」
「でも、そうでもしないと気持ちにオチがつかなくてさぁ……」
「愛は地球を救ったかもだけど、ヒミコちゃんのことは救ってくれなった……私はヒミコちゃんの命を救えなかった……」
「うえーん。無限に落ち込める」
瀬呂くんの好きが高じてお香メーカーとコラボした時のお香を引っ張り出して、火をつけた。立ち昇る煙と、昔実家の仏間で嗅いだ香りはなぜだか気持ちを落ち着けてくれた。
「ヒミコちゃんに死後の世界があるんなら、穏やかでいて。私がばあちゃんになってそっちに行った時、遊ぼう」
ヒミコちゃんのお墓はもちろん何も答えない。
でもヒミコちゃんに伝えたたかったこと伝えた気になれるだけでも、気の持ちようが全然違う。句読点マル、を自分の中に打てるような気がする。
句読点マルを打った後も、次の章が始まる。忘れたり、思い出になったりはしない。カサブタはいつまでもカサブタのままかもしれないけど、それでもいい。時にはカサブタを見て揺れる気持ちを、私は愛しているから。その揺れる気持ちの向こう側にいる彼女のことを、私は好きだと思うから。
20240802
トガの親御さんは行方知れずだし、中学の同級生は一様に口をつぐむ。彼女のことを無かったことにしたいみたいに。別にそれに怒りたいわけじゃないけど、なんだろう、まだ名前がつけられない気持ちが私の中にわだかまっている。
みんなあのこのこと、忘れていんだろうけど、私は全然そうじゃなくて。私は、あのこのことを誰かに伝えたい。笑顔が素敵な、私が救えなかった女の子のことを。どうしたって結論なんか出ないのに、あのこのこと、どうしたら一番いい方法で今も隣で笑ってくれるように出来たかな、とか、とりとめのない気持ちの吐き出しに付き合ってほしい。
自分じゃどうにも出来ない思考の奔流に呑まれるとき、なんかやっぱり……手を合わせる仕草に落ち着きを覚える。
まだまだ復興の余地ばかりだけど、劇的な勢いでみんなが立ち直っていく。傷はいつかカサブタができてなくなっていくみたいに、みんなの力を合わせて素敵な街ができてゆく。いつか石碑なんかができて、みんなの団結の印として、思い出になってゆく。
その流れの速さに気持ちが追いつかなくて悲しく思う日もあるけど、こういう祈りとかお墓とかは残された人が気持ちを乱さないために・乱れた気持ちを巻き直すためにあると思う。
だからこそ、私はトガのお墓として、何かモノが欲しいと考えた。
色々と考えた結果、壊されたトガの実家の燃え殻から出てきた、変身ヒロインもののアニメのキーホルダーをお墓とすることとした。
三百円均一のマットな金メッキが貼ってあるトレイに置いて、お香立てを置いた。遺影になりそうなものは無い。ワイドショーとか言葉を選ばない雑誌などが使っている写真は使いたくなくて。
キーホルダーのメッキは冷たいのに、トガヒミコに触れたときの熱を思い出す。脂を含んだ血の感触。
「ほんとにしたかったのは恋バナ……まあ恋バナしても楽しいと思うけど、ヒミコちゃんのことが聞きたかったな」
「どんな食べ物がすき? 海と山ならどっちが好き? どんな時にうれしいと思う? カラオケで何歌う……?」
「虚空に話しかけてて、変ですって笑うかな」
「でも、そうでもしないと気持ちにオチがつかなくてさぁ……」
「愛は地球を救ったかもだけど、ヒミコちゃんのことは救ってくれなった……私はヒミコちゃんの命を救えなかった……」
「うえーん。無限に落ち込める」
瀬呂くんの好きが高じてお香メーカーとコラボした時のお香を引っ張り出して、火をつけた。立ち昇る煙と、昔実家の仏間で嗅いだ香りはなぜだか気持ちを落ち着けてくれた。
「ヒミコちゃんに死後の世界があるんなら、穏やかでいて。私がばあちゃんになってそっちに行った時、遊ぼう」
ヒミコちゃんのお墓はもちろん何も答えない。
でもヒミコちゃんに伝えたたかったこと伝えた気になれるだけでも、気の持ちようが全然違う。句読点マル、を自分の中に打てるような気がする。
句読点マルを打った後も、次の章が始まる。忘れたり、思い出になったりはしない。カサブタはいつまでもカサブタのままかもしれないけど、それでもいい。時にはカサブタを見て揺れる気持ちを、私は愛しているから。その揺れる気持ちの向こう側にいる彼女のことを、私は好きだと思うから。
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