荼炎
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いつだかのハロウィンに、エンデヴァーの仮装をしたことがある。
お母さんに無理を言って作ってもらったスーツはとてもお気に入りで、出来上がってハロウィンが過ぎた後もことあるごとに着ていた。夏くんとやるヒーローごっこでは、他の子とやるようにオールマイトが活躍するのではなく、エンデヴェーが活躍するものでみんなとやると合わないところがあるので、こうして兄弟でやつている。でも夏くんは、みんなとオールマイトが活躍する方に参加したがっていた。幼心にも、清廉潔白で誰よりも優しいエンデヴァーが出てくるごっこ遊びに違和感を抱いていたんだろう。
これを着ているところをお父さんに見せたくて、寝ないで待っていたことがあった。
「お父さん!!お帰りなさい!!」
「……燈矢か、どうしたんだこんな遅くに」
「あ……これね、お母さんが作ってくれたから見て欲しくて」
「そうなのか、俺のヒーロースーツか……あまり冷にわがままを言って困らせるなよ」
「はい……」
そう言って風呂場に消えていくお父さんの背中を、恨めしい気持ちで見ていた。
それより、自分が失敗作として生まれた運命を恨み、それを覆したいと強く願った。
その願いは、ひとつたりとも思った形にならなかった。
その上、エンデヴァーグッズが市販されるようになった。エンデヴァーが犯した罪は他人を害するものではなく、家族を害するものであったからか、簡単に雪がれた。ずっとずっと昔、親を殺す方が他人を害する殺人より罪が重かった時代があったそうだ。それと似ている。
まばゆい功績の影の部分、偉業を讃える銅像の土台としての俺……今ごろ作ってよかったと思っているんじゃないか。そのほうがお気に入りのお人形がより輝くだろ。
そうでもないと逆に辛い。マジで生まれてきた意味が見出せなくて。何にも面白くない、笑える要素が一個もない。
悔しくて狂いそうになる夜もあれば、あそこで死んでいればと噛みちぎる舌がないので歯軋りをする夜もある。はたまた家族が揃って面会に来てくれた時のことや、焦凍と戦った時に家族が揃った時のことを思い出すこともある。
俺には時間が有り余りすぎている。
後悔の時間も、諦めの時間も、美しい思い出を引っ張り出してはもう戻らないと嘆く時間も。お父さんが会いに来る時だけ俺は人間に戻って会話をする。それ以外の俺はただの泥だ。何も為せず、狂った情緒を持て余すだけのあわれな泥。
ハロウィンの興奮に巻き込まれてボロボロになったお父さんを嘲ってたら、そんなことを思い出してしまった。
毎日会いにきてくれるこの人のこと、許したいような、許したくないような。自分でも持て余す感情を胸に灯して、お父さんはここ以外のところへ帰って行った。
またな、と言って。
お母さんに無理を言って作ってもらったスーツはとてもお気に入りで、出来上がってハロウィンが過ぎた後もことあるごとに着ていた。夏くんとやるヒーローごっこでは、他の子とやるようにオールマイトが活躍するのではなく、エンデヴェーが活躍するものでみんなとやると合わないところがあるので、こうして兄弟でやつている。でも夏くんは、みんなとオールマイトが活躍する方に参加したがっていた。幼心にも、清廉潔白で誰よりも優しいエンデヴァーが出てくるごっこ遊びに違和感を抱いていたんだろう。
これを着ているところをお父さんに見せたくて、寝ないで待っていたことがあった。
「お父さん!!お帰りなさい!!」
「……燈矢か、どうしたんだこんな遅くに」
「あ……これね、お母さんが作ってくれたから見て欲しくて」
「そうなのか、俺のヒーロースーツか……あまり冷にわがままを言って困らせるなよ」
「はい……」
そう言って風呂場に消えていくお父さんの背中を、恨めしい気持ちで見ていた。
それより、自分が失敗作として生まれた運命を恨み、それを覆したいと強く願った。
その願いは、ひとつたりとも思った形にならなかった。
その上、エンデヴァーグッズが市販されるようになった。エンデヴァーが犯した罪は他人を害するものではなく、家族を害するものであったからか、簡単に雪がれた。ずっとずっと昔、親を殺す方が他人を害する殺人より罪が重かった時代があったそうだ。それと似ている。
まばゆい功績の影の部分、偉業を讃える銅像の土台としての俺……今ごろ作ってよかったと思っているんじゃないか。そのほうがお気に入りのお人形がより輝くだろ。
そうでもないと逆に辛い。マジで生まれてきた意味が見出せなくて。何にも面白くない、笑える要素が一個もない。
悔しくて狂いそうになる夜もあれば、あそこで死んでいればと噛みちぎる舌がないので歯軋りをする夜もある。はたまた家族が揃って面会に来てくれた時のことや、焦凍と戦った時に家族が揃った時のことを思い出すこともある。
俺には時間が有り余りすぎている。
後悔の時間も、諦めの時間も、美しい思い出を引っ張り出してはもう戻らないと嘆く時間も。お父さんが会いに来る時だけ俺は人間に戻って会話をする。それ以外の俺はただの泥だ。何も為せず、狂った情緒を持て余すだけのあわれな泥。
ハロウィンの興奮に巻き込まれてボロボロになったお父さんを嘲ってたら、そんなことを思い出してしまった。
毎日会いにきてくれるこの人のこと、許したいような、許したくないような。自分でも持て余す感情を胸に灯して、お父さんはここ以外のところへ帰って行った。
またな、と言って。