荼炎
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「ふーん。何でもいいなりになるんだ。今、お父さんのことを恨んでいるヴィランがいたらなんていうだろうね」
「燈矢♡ 何でも言ってくれ♡♡」
昼を少し過ぎたくらいの時刻だというのに、お互いの顔が窺い知れないほどに、暗い。広くさびしい家の中には、意図的に閉め切り、他を遠ざける部屋がある。鍛錬を嫌がる焦凍がよくその部屋に入れられていた。
様子がおかしいお父さんをこの部屋に叩き込んだのは正解だったかもしれない。好きなだけ貶めてやれたのに、結局エンデヴァーとしての名誉を守ってしまった。なんだかんだ、俺は、誰よりもエンデヴァーに憧れて、ああなりたいと願った。だからこそ、あれ以上にいじめてやりたいとは思わなかった。
何でもしてやる、と言われたら逆に何も思いつかなかった。自分の名誉が家族の犠牲をもとにして築かれたものを明かせ……というのは俺がもうやったし、それを悔やんで自死した風の遺書を書け(その後は俺が遺体を燃やす)とか、色々考えつくことはついたが、どれも実行に移すのはためらいを覚えた。
俺がエンデヴァーの名誉が何でできているかを明かしたことで、お父さんの「怖い風貌だけど実直な仕事ぶりをするヒーロー」という見られ方を汚すことができた。けれど、あれだけ関心のなさを全面に出された子供時代と、その結果である臨死を経てから、何かしてほしいと願うことはなかった。小さい頃は実力を認めてほしいとか、あったけど。今は別に。期待をするだけ心が壊れるって、幼いながらに地獄を這いずった経験から学んだ。
「そうだなぁ。じゃあ……俺のこと、ぎゅっとしてよ」
お父さんは驚いた様子で、こちらの顔を覗きこんできた。
「そんなことでいいのか?」
「そんなことって言うなよ。焦凍が生まれてから、冬美ちゃんも夏くんもしてもらえなくなったのに」
「そうだったか。ごめんな。覚えてもいなくて」
「ほんとだよ。絶対、許さないからな。覚えてもないなんて」
「ああ、ああ。燈矢。ごめんなあ」
「お前なんか、お前なんか……俺のこと認めないお前なんか、嫌いになって、無視したかった……。捨てたかった……」
「そうだよな。俺も気づけなかった。子供を熱心に育てているつもりで、こんなに熱心に思ってもらえるのは……親の方だったなんて」
「わかってんじゃねえか……もう遅すぎるけど、お父さんには残された時間が……あるだろ。幸せになんかなるな。ハッピーエンドなんて来ない。せいぜい、炙られてろよ。子供を死なせたっていう……地獄の炎にさ。ぜったい地獄行きなんだから、予習しときなよ」
「ああ、そうだな。せっかく燈矢が誘ってくれたんだ。もう、断らない」
「ふん。ばーか。嫌い」
嫌い嫌いと口から転げ落ちるが、帰ってくるのは心地よい返事だけだ。いいなりになるって言うから、もっと的外れな答えしか返ってこないと思っていたけど、意外と普段のお父さんくらいよくわかっている回答がくる。
この、夏場は暑さすら感じる……筋肉が放つ熱が心地よくて、眠気が押し寄せる。こんな火傷だらけの身体では、眠気がくる時間をコントロールすることなんてできやしない。だから仕方ないんだ。この眠気に逆らわず、眠りにつくことにした。このまま目覚めず逝けたなら、偽物だとはいえ幸福な眠りといえるのかもしれない。
20251014
#2025荼炎・燈炎すごろく遊び 参加作品
「燈矢♡ 何でも言ってくれ♡♡」
昼を少し過ぎたくらいの時刻だというのに、お互いの顔が窺い知れないほどに、暗い。広くさびしい家の中には、意図的に閉め切り、他を遠ざける部屋がある。鍛錬を嫌がる焦凍がよくその部屋に入れられていた。
様子がおかしいお父さんをこの部屋に叩き込んだのは正解だったかもしれない。好きなだけ貶めてやれたのに、結局エンデヴァーとしての名誉を守ってしまった。なんだかんだ、俺は、誰よりもエンデヴァーに憧れて、ああなりたいと願った。だからこそ、あれ以上にいじめてやりたいとは思わなかった。
何でもしてやる、と言われたら逆に何も思いつかなかった。自分の名誉が家族の犠牲をもとにして築かれたものを明かせ……というのは俺がもうやったし、それを悔やんで自死した風の遺書を書け(その後は俺が遺体を燃やす)とか、色々考えつくことはついたが、どれも実行に移すのはためらいを覚えた。
俺がエンデヴァーの名誉が何でできているかを明かしたことで、お父さんの「怖い風貌だけど実直な仕事ぶりをするヒーロー」という見られ方を汚すことができた。けれど、あれだけ関心のなさを全面に出された子供時代と、その結果である臨死を経てから、何かしてほしいと願うことはなかった。小さい頃は実力を認めてほしいとか、あったけど。今は別に。期待をするだけ心が壊れるって、幼いながらに地獄を這いずった経験から学んだ。
「そうだなぁ。じゃあ……俺のこと、ぎゅっとしてよ」
お父さんは驚いた様子で、こちらの顔を覗きこんできた。
「そんなことでいいのか?」
「そんなことって言うなよ。焦凍が生まれてから、冬美ちゃんも夏くんもしてもらえなくなったのに」
「そうだったか。ごめんな。覚えてもいなくて」
「ほんとだよ。絶対、許さないからな。覚えてもないなんて」
「ああ、ああ。燈矢。ごめんなあ」
「お前なんか、お前なんか……俺のこと認めないお前なんか、嫌いになって、無視したかった……。捨てたかった……」
「そうだよな。俺も気づけなかった。子供を熱心に育てているつもりで、こんなに熱心に思ってもらえるのは……親の方だったなんて」
「わかってんじゃねえか……もう遅すぎるけど、お父さんには残された時間が……あるだろ。幸せになんかなるな。ハッピーエンドなんて来ない。せいぜい、炙られてろよ。子供を死なせたっていう……地獄の炎にさ。ぜったい地獄行きなんだから、予習しときなよ」
「ああ、そうだな。せっかく燈矢が誘ってくれたんだ。もう、断らない」
「ふん。ばーか。嫌い」
嫌い嫌いと口から転げ落ちるが、帰ってくるのは心地よい返事だけだ。いいなりになるって言うから、もっと的外れな答えしか返ってこないと思っていたけど、意外と普段のお父さんくらいよくわかっている回答がくる。
この、夏場は暑さすら感じる……筋肉が放つ熱が心地よくて、眠気が押し寄せる。こんな火傷だらけの身体では、眠気がくる時間をコントロールすることなんてできやしない。だから仕方ないんだ。この眠気に逆らわず、眠りにつくことにした。このまま目覚めず逝けたなら、偽物だとはいえ幸福な眠りといえるのかもしれない。
20251014
#2025荼炎・燈炎すごろく遊び 参加作品
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