猫の額ほどの狭い庭だったが、俺たち兄弟には思い入れがある。
　冴が学校で育てていた朝顔を持って帰って観察日記をつけていたのがうらやましく思っていた。それを真似て朝顔の絵を描いていたことを、毎年何をしなくても種と花とを繰り返している朝顔を見て思い出した。
　そんな思い出が、冴とのあたたかな思い出が多すぎて、この家は想像以上に気が散る空間になってしまった。
　だから、ブルーロックプロジェクトが全寮制と聞いた時は大きく心が揺らいだ。
　
　柱につけた傷、サイズが合わなくなったお下がりの制服、あるじが帰らなくなった二段ベッド、学習机、トロフィーや盾の数々。
　それら全てが俺の神経を逆撫でする。かといって親にこれを捨てろとわがままを言うわけにはいかない。
　だから、俺がここから離れる理由ができてよかった。思い出が、ここには多すぎて。