凛冴
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「冴、どうしちゃったのかしらね。あんなに凛のこと大事にしてたのに喧嘩でもしたの?」
母はあの場にいなかった。だから事情を知らない。自分に言い聞かせた。第三者から事情を見せつけられると、あれが本当のことだったと思い知らされる。唇を噛んで、どうにか言葉を繋いだ。
「そうなんだ。でもいつかはまた昔みたいに戻れると思うから。心配しないで」
「でも、あの子帰国してもうちに帰らないのよ。凛からも言っておいてね」
「わかった」
心にも無いことを俺を応援してくれている親に言うのは心苦しかった。そして、自分でも無理だとわかっていることを説明するのは単純に苦しかった。俺だってどうしてあんなことに……あんなに兄ちゃんと技量の差が生まれてしまったのか今はまだわからない。元通りになれるかなんかわからない。
けど、壊れてしまったとしても俺たちはまた新しい関係になれた。
俺は兄ちゃんの才能を引き立たせる存在から同じステージで喰らい合う敵同士になれた。俺たちはまだこれからなんだ。お母さんにはまだ説明できないし、もちろん帰国した時に帰ってくるよう言えるような関係でもない。正しくは、そうじゃなくなった。
涙なんか出ない。腹に渦巻く加害欲求に似た深く冷たい怒りだけが俺を突き動かしていた。冴が言うような、「俺のためにサッカーをするな」はまだ叶えられそうにない。俺はまだ、冴への怒りを燃やしてサッカーをしている。
2024.3.2
母はあの場にいなかった。だから事情を知らない。自分に言い聞かせた。第三者から事情を見せつけられると、あれが本当のことだったと思い知らされる。唇を噛んで、どうにか言葉を繋いだ。
「そうなんだ。でもいつかはまた昔みたいに戻れると思うから。心配しないで」
「でも、あの子帰国してもうちに帰らないのよ。凛からも言っておいてね」
「わかった」
心にも無いことを俺を応援してくれている親に言うのは心苦しかった。そして、自分でも無理だとわかっていることを説明するのは単純に苦しかった。俺だってどうしてあんなことに……あんなに兄ちゃんと技量の差が生まれてしまったのか今はまだわからない。元通りになれるかなんかわからない。
けど、壊れてしまったとしても俺たちはまた新しい関係になれた。
俺は兄ちゃんの才能を引き立たせる存在から同じステージで喰らい合う敵同士になれた。俺たちはまだこれからなんだ。お母さんにはまだ説明できないし、もちろん帰国した時に帰ってくるよう言えるような関係でもない。正しくは、そうじゃなくなった。
涙なんか出ない。腹に渦巻く加害欲求に似た深く冷たい怒りだけが俺を突き動かしていた。冴が言うような、「俺のためにサッカーをするな」はまだ叶えられそうにない。俺はまだ、冴への怒りを燃やしてサッカーをしている。
2024.3.2