凛冴
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「兄ちゃんは才能があるからうまくできるんだ」
おそらく他の人からもたくさん投げかけられた言葉を、弟の俺から受けた冴は、すっと目を細めて俺を隣に座らせて語り始めた。
「なあ凛、そんなくだらねぇ理屈で俺にできてお前にできない理由にしちゃっていいのか?」
「だ、だめ……」
その時は本当にダメだとは思っておらず、ただ冴の気迫が怖くて、ダメなものなのだと判断した。それを見透かすように冴は、わかってねえなと続けた。手を握って引き寄せ、諭すように俺を見た。
「才能がある・ないっていうのは、できない言い訳にしやすいから二度とやるな。才能がどうのっていうならサッカーはやるな。他のことしろ」
「やだ。俺は兄ちゃんとサッカーがしたいの」
「そうか。でも自分を奮い立たせるためならいいぞ。例えば、俺は才能があるからできるんだー!とかな」
「うん。才能があるから、できる」
「そうそう。凛の才能は俺が一番よく知ってるからな」
「うん!俺も……にいちゃんが、才能があるけど努力もたくさんしているから、できるって、知ってる……」
冴は先程の冷たい侮蔑を含んだ笑みとは違う、やさしくて満足げな笑みでこちらを見遣った。
「わかってくれてうれしいよ」
===
俺の人生に、糸師冴という男が深く碇を下ろしているがために、何を語るとしてもふと蘇るタイミングが生じて、そのたび不快で苛立ちを制御できなくなる。
才能、それは他者とぶつかり合った末に磨かれるもの。ぶつかって壊れる程度のものを才能と呼ばない。技術面でも内面でも同様、削りあって残ったものを才能と呼ぶ。わかっているはずなのに、才能を定義する理屈が、糸師冴をもとにして築かれていることは間違いない。
事実として、冴という才能がそばにいたのだからそうなっても仕方がないと頭ではわかっていても、気持ちがついていかない。
まだまだ才能が育ちきっていないみたいだ。きっと育ちきったなら、こんな感情に振り回されてしまうともないだろうに。
おそらく他の人からもたくさん投げかけられた言葉を、弟の俺から受けた冴は、すっと目を細めて俺を隣に座らせて語り始めた。
「なあ凛、そんなくだらねぇ理屈で俺にできてお前にできない理由にしちゃっていいのか?」
「だ、だめ……」
その時は本当にダメだとは思っておらず、ただ冴の気迫が怖くて、ダメなものなのだと判断した。それを見透かすように冴は、わかってねえなと続けた。手を握って引き寄せ、諭すように俺を見た。
「才能がある・ないっていうのは、できない言い訳にしやすいから二度とやるな。才能がどうのっていうならサッカーはやるな。他のことしろ」
「やだ。俺は兄ちゃんとサッカーがしたいの」
「そうか。でも自分を奮い立たせるためならいいぞ。例えば、俺は才能があるからできるんだー!とかな」
「うん。才能があるから、できる」
「そうそう。凛の才能は俺が一番よく知ってるからな」
「うん!俺も……にいちゃんが、才能があるけど努力もたくさんしているから、できるって、知ってる……」
冴は先程の冷たい侮蔑を含んだ笑みとは違う、やさしくて満足げな笑みでこちらを見遣った。
「わかってくれてうれしいよ」
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俺の人生に、糸師冴という男が深く碇を下ろしているがために、何を語るとしてもふと蘇るタイミングが生じて、そのたび不快で苛立ちを制御できなくなる。
才能、それは他者とぶつかり合った末に磨かれるもの。ぶつかって壊れる程度のものを才能と呼ばない。技術面でも内面でも同様、削りあって残ったものを才能と呼ぶ。わかっているはずなのに、才能を定義する理屈が、糸師冴をもとにして築かれていることは間違いない。
事実として、冴という才能がそばにいたのだからそうなっても仕方がないと頭ではわかっていても、気持ちがついていかない。
まだまだ才能が育ちきっていないみたいだ。きっと育ちきったなら、こんな感情に振り回されてしまうともないだろうに。
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