凛冴
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冴が一度だけサッカーを休んで、家族で出かけたことがある。親戚の集まりの類は全てスキップしていた冴が、一日だけほかの子供みたいに、俺と海で遊んだ。
確か、試合が中止になってしまった日だったはず。
拍子抜けした両親は、冴の体力をどこかで削らないと寝付けないと踏んだのか、近くの海に連れてきてくれた。
俺も、冴も今日で世界が終わるのかと思うくらいの勢いで全力で遊んだ。波に逆らい、突っ込み、跳ね返され、昼寝をし、スイカを食べて民宿に泊まった。
冴はサッカーを一日だけ忘れて、俺とたくさん遊んでくれた。
楽しい思い出、というカテゴリのフォルダにはその日のことがいつまでも燦然と輝いていて、いつまで経っても更新されない。
冴が行ってしまってから、両親が気を遣ってくれてどこかに行こうか?などと誘ってはくれたが、俺は俺でサッカーを始めたらそれに打ち込んでいたので不満、というわけではない。
ただ、あまりにもそこにしまってある思い出が美しすぎて現状との落差に苦い思いが湧いてくる。
またいつか、兄ちゃんとおでかけできる日なんて来るだろうか。俺の兄ちゃんは、俺が思う一番かっこいい人なんだからこんなことでふてくされて酷い言葉をかけてくるなんて思いもしなかったから、もう少ししたら凛、言い過ぎてごめんな……なんていう手紙が来るかもしれない。
なんていう根拠のない都合のいい妄想を抱いてから、数えるのも億劫なくらいの日数が過ぎた。結局、俺たちは言葉でわかりあうことなくフィールドで存在価値を賭けてボールを奪い合っている。
心配そうに見守る両親の顔がちらりと見えた。
殺す、という言葉しか強く非難するための言葉を持たない俺は、ただ自分の頭や身体を動かしてプレーで打ち勝つことでこの言葉にし難い失望に似た何かをぶつけている。
そんなことをしているうちは、エゴじゃ無い……自分のためにサッカーをしていないのかもしれないと思ったのは試合終了後に潔世一を褒めた言葉を聞いてそう思った。そういえば兄ちゃんは、俺のためにサッカーをするなと行っていた。
そんなこと言われても、わからないよ。兄ちゃんとサッカーしたくて始めたのに。
みじめったらしく泣きすがることもできず、ただ制御できない感情だけが残った。結局、兄ちゃんに与えられた感情が俺を突き動かす。
助けて兄ちゃん、俺、どうしたって兄ちゃんの言う通りにできない。
20240504
確か、試合が中止になってしまった日だったはず。
拍子抜けした両親は、冴の体力をどこかで削らないと寝付けないと踏んだのか、近くの海に連れてきてくれた。
俺も、冴も今日で世界が終わるのかと思うくらいの勢いで全力で遊んだ。波に逆らい、突っ込み、跳ね返され、昼寝をし、スイカを食べて民宿に泊まった。
冴はサッカーを一日だけ忘れて、俺とたくさん遊んでくれた。
楽しい思い出、というカテゴリのフォルダにはその日のことがいつまでも燦然と輝いていて、いつまで経っても更新されない。
冴が行ってしまってから、両親が気を遣ってくれてどこかに行こうか?などと誘ってはくれたが、俺は俺でサッカーを始めたらそれに打ち込んでいたので不満、というわけではない。
ただ、あまりにもそこにしまってある思い出が美しすぎて現状との落差に苦い思いが湧いてくる。
またいつか、兄ちゃんとおでかけできる日なんて来るだろうか。俺の兄ちゃんは、俺が思う一番かっこいい人なんだからこんなことでふてくされて酷い言葉をかけてくるなんて思いもしなかったから、もう少ししたら凛、言い過ぎてごめんな……なんていう手紙が来るかもしれない。
なんていう根拠のない都合のいい妄想を抱いてから、数えるのも億劫なくらいの日数が過ぎた。結局、俺たちは言葉でわかりあうことなくフィールドで存在価値を賭けてボールを奪い合っている。
心配そうに見守る両親の顔がちらりと見えた。
殺す、という言葉しか強く非難するための言葉を持たない俺は、ただ自分の頭や身体を動かしてプレーで打ち勝つことでこの言葉にし難い失望に似た何かをぶつけている。
そんなことをしているうちは、エゴじゃ無い……自分のためにサッカーをしていないのかもしれないと思ったのは試合終了後に潔世一を褒めた言葉を聞いてそう思った。そういえば兄ちゃんは、俺のためにサッカーをするなと行っていた。
そんなこと言われても、わからないよ。兄ちゃんとサッカーしたくて始めたのに。
みじめったらしく泣きすがることもできず、ただ制御できない感情だけが残った。結局、兄ちゃんに与えられた感情が俺を突き動かす。
助けて兄ちゃん、俺、どうしたって兄ちゃんの言う通りにできない。
20240504