凛冴
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「母さん、この鉢植えにしてる茶碗」
「ああそれ? 冴が昔使ってたやつよ。懐かしいでしょ。冴のと同じかいいって大泣きしたのよ、あなた。この前、凛のはあなた割って、指切っちゃった。アレと同じやつね」
「……そうだったっけ」
「そうよぉ。なんでもお兄ちゃんと一緒がいいって。そういえば、今月末冴が帰ってくるみたいなんだけど、凛はあのお部屋から出てこれるの?」
「いや、出れない」
「そうなの、残念ね。冴には凛が会いたがってたって伝えておくからね」
「いや、いい。俺が必要だと思ってたら伝えるから」
「どうしたのよ、その程度のことも伝えたくないの?」
「……伝えたくない……」
「あら、まぁ…… 思春期の男の子同士のケンカって大変ね」
「……気を遣わせてごめん」
「あ、いいのよ。気が済むまでやりなさい。そういう、なんて言ったらいいかしらね……反抗期みたいな……愛着を持っていたものに疑問を持って反発することも、凛にとって大事だと思うの。だからいいのよ。好きだけバチバチしなさい」
「ありがとう……」
「うん。お母さん、お父さんも凛のこと応援してるからね。やりたいようにやりなさい。失敗しちゃったり、よそ様にご迷惑をかけてしまったら、お母さんもお父さんも一緒に謝ってあげるから、言うのよ」
「そんなこと起こらないようにするよ」
「できるかしらね〜。凛、結構自分の気持ちを上手に言葉にできないじゃない。受け取り手のことを考えてお話しするのよ」
「うっ……わ、わかったよ」
俺たち兄弟の一番近くにいた・一番長い時間を過ごした大人というだけあって母の指摘の鋭さは、数日悩んでしまうほどだ。ブルーロックに入って物理的な距離ができたことで母の言葉を小分けにして受け取れるようになったのは良かったかもしれない。
こっそり自室から、あの時破り捨てた写真の破片を集めた封筒を持ってきた。
激情のまま破り捨てた写真の破片を集めるのは、あんまりにも滑稽だったが、冷静になったら「いつか仲直りをしたとき、修繕された写真を見て笑い話になるかもしれない」という期待を持ってしまって、行動に至った。今から思い返すと、その行動はものすごく滑稽で、哀れに見える。
誰にも見つからないように、カバンの奥底にねじ込んだ。いつかまたこれが日の目を見るころには、冴は泣いて縋って「俺が悪かった、間違ってた。もし凛さえよければまた二人でストライカーて一番になろう」なんて言うかもしれない、なんて。
20240323 ワンライ お題 傷
「ああそれ? 冴が昔使ってたやつよ。懐かしいでしょ。冴のと同じかいいって大泣きしたのよ、あなた。この前、凛のはあなた割って、指切っちゃった。アレと同じやつね」
「……そうだったっけ」
「そうよぉ。なんでもお兄ちゃんと一緒がいいって。そういえば、今月末冴が帰ってくるみたいなんだけど、凛はあのお部屋から出てこれるの?」
「いや、出れない」
「そうなの、残念ね。冴には凛が会いたがってたって伝えておくからね」
「いや、いい。俺が必要だと思ってたら伝えるから」
「どうしたのよ、その程度のことも伝えたくないの?」
「……伝えたくない……」
「あら、まぁ…… 思春期の男の子同士のケンカって大変ね」
「……気を遣わせてごめん」
「あ、いいのよ。気が済むまでやりなさい。そういう、なんて言ったらいいかしらね……反抗期みたいな……愛着を持っていたものに疑問を持って反発することも、凛にとって大事だと思うの。だからいいのよ。好きだけバチバチしなさい」
「ありがとう……」
「うん。お母さん、お父さんも凛のこと応援してるからね。やりたいようにやりなさい。失敗しちゃったり、よそ様にご迷惑をかけてしまったら、お母さんもお父さんも一緒に謝ってあげるから、言うのよ」
「そんなこと起こらないようにするよ」
「できるかしらね〜。凛、結構自分の気持ちを上手に言葉にできないじゃない。受け取り手のことを考えてお話しするのよ」
「うっ……わ、わかったよ」
俺たち兄弟の一番近くにいた・一番長い時間を過ごした大人というだけあって母の指摘の鋭さは、数日悩んでしまうほどだ。ブルーロックに入って物理的な距離ができたことで母の言葉を小分けにして受け取れるようになったのは良かったかもしれない。
こっそり自室から、あの時破り捨てた写真の破片を集めた封筒を持ってきた。
激情のまま破り捨てた写真の破片を集めるのは、あんまりにも滑稽だったが、冷静になったら「いつか仲直りをしたとき、修繕された写真を見て笑い話になるかもしれない」という期待を持ってしまって、行動に至った。今から思い返すと、その行動はものすごく滑稽で、哀れに見える。
誰にも見つからないように、カバンの奥底にねじ込んだ。いつかまたこれが日の目を見るころには、冴は泣いて縋って「俺が悪かった、間違ってた。もし凛さえよければまた二人でストライカーて一番になろう」なんて言うかもしれない、なんて。
20240323 ワンライ お題 傷