チルチャック
name change
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「私が考えていたこと、言いたかったこと全部わかってくれたわ。あなたじゃなくて、マルシルさんが」
「うっ……」
「わっ……やっぱりそうなんだ、もう根本的に絶対無理、ってなったんじゃなくて」
「そう、そうなんです。マルシルさん、私……」
「でも、受け入れ先から手紙が」
マルシルにギロリと効果音がつきそうなほどキツく睨まれ、口をつぐんだ。今不貞を疑ってどうする、と言わんばかりに。
「その方、男性によくあるお名前なんですけど、女性なんです……」
「そうなると、両方とも不貞を働いたわけじゃなさそうなんじゃな」
「何を言うんですセンシさん。嫌いな男の子供三人も産みますか?」
「ごもっともだなぁ」
うちの郷土料理が作りたいとかなんとか言って、敦子の料理メモを熱心に読んでいたライオスまで話に混ざってきた。ため息のひとつでもつきたいものだが何かひとつでも間違えたら今度こそ修復ができないというのはわかる。から、黙っている。
「でもでも、敦子さん、今日のチルチャックは一味違うんです!」
「マルシルさん……?」
「ウ゛ッ……」
そんな、皆の前で言うようなことじゃないとか後でなんて言える雰囲気じゃない。けどそんな、ガキみたいな直球を今更、今更投げれるわけが……という恥の意識とプライドを擲ってでも何か言わないとと思わせるような目をしていた。俺の記憶の中の敦子そんな目をしなかった。いつもわかったふうな顔をして少し寂しそうに送り出してくれていた。
「…………敦子ッ、そ、その……」
「なんだこの香りのいい草は……臭み抜きだけじゃなくてアクセントとして良さそうだ……」
「ライオス静かに!」
「あの、敦子……、もしお前がよかったらなんだが……この家に戻ってこないか? もう危険なことはしないし、仲間の世話焼いて、その後は店をやりたいと思ってて……」
「こないかじゃなくて、来てほしいでしょ。散々練習したのに」
「ッ……? 敦子、帰ってきてほしい。不安だったこと、困ったこと聞いてやれなくて悪かった。この後の人生一緒にやって行こう?」
「マルシルさァん……ッ!!」
「えっ私?」
熱心に鍋をかき回すライオス以外の全員が同じことを思っていただろう。マルシルなのかと。
敦子といったら、マルシルの手をとって感激の涙を流している。
「この人の話聞いて、指摘してくれたのマルシルさんでしょう。ありがとう。私、本当はこの人にそういうことを言って欲しくて……でも、忙しくしているこの人に言い出せなくて……」
「いいの。敦子さん、返事してあげて」
「うんっ……! あなた、あの時に同じことを言っても結局忙しく危険な生活を繰り返してこうはならなかったと思うの。今なら私たちうまくやれると思う。これからよろしくね、あなた」
「お、おう……」
キラキラと邪悪に瞳を輝かせるマルシルを尻目に、なんとかハッピーエンドを迎えられそうだ。そうしたらまず娘たちに連絡して、それで。
「私、仲を取りもてたわ。うれしいなぁ。敦子さんもチルチャックもうれしそうだったし」
「そうだな。今回はマルシルがお手柄だ」
「そうだそうだ。ご褒美に敦子さんに習ったデザートを作ってあげよう」
fin
20240213
「うっ……」
「わっ……やっぱりそうなんだ、もう根本的に絶対無理、ってなったんじゃなくて」
「そう、そうなんです。マルシルさん、私……」
「でも、受け入れ先から手紙が」
マルシルにギロリと効果音がつきそうなほどキツく睨まれ、口をつぐんだ。今不貞を疑ってどうする、と言わんばかりに。
「その方、男性によくあるお名前なんですけど、女性なんです……」
「そうなると、両方とも不貞を働いたわけじゃなさそうなんじゃな」
「何を言うんですセンシさん。嫌いな男の子供三人も産みますか?」
「ごもっともだなぁ」
うちの郷土料理が作りたいとかなんとか言って、敦子の料理メモを熱心に読んでいたライオスまで話に混ざってきた。ため息のひとつでもつきたいものだが何かひとつでも間違えたら今度こそ修復ができないというのはわかる。から、黙っている。
「でもでも、敦子さん、今日のチルチャックは一味違うんです!」
「マルシルさん……?」
「ウ゛ッ……」
そんな、皆の前で言うようなことじゃないとか後でなんて言える雰囲気じゃない。けどそんな、ガキみたいな直球を今更、今更投げれるわけが……という恥の意識とプライドを擲ってでも何か言わないとと思わせるような目をしていた。俺の記憶の中の敦子そんな目をしなかった。いつもわかったふうな顔をして少し寂しそうに送り出してくれていた。
「…………敦子ッ、そ、その……」
「なんだこの香りのいい草は……臭み抜きだけじゃなくてアクセントとして良さそうだ……」
「ライオス静かに!」
「あの、敦子……、もしお前がよかったらなんだが……この家に戻ってこないか? もう危険なことはしないし、仲間の世話焼いて、その後は店をやりたいと思ってて……」
「こないかじゃなくて、来てほしいでしょ。散々練習したのに」
「ッ……? 敦子、帰ってきてほしい。不安だったこと、困ったこと聞いてやれなくて悪かった。この後の人生一緒にやって行こう?」
「マルシルさァん……ッ!!」
「えっ私?」
熱心に鍋をかき回すライオス以外の全員が同じことを思っていただろう。マルシルなのかと。
敦子といったら、マルシルの手をとって感激の涙を流している。
「この人の話聞いて、指摘してくれたのマルシルさんでしょう。ありがとう。私、本当はこの人にそういうことを言って欲しくて……でも、忙しくしているこの人に言い出せなくて……」
「いいの。敦子さん、返事してあげて」
「うんっ……! あなた、あの時に同じことを言っても結局忙しく危険な生活を繰り返してこうはならなかったと思うの。今なら私たちうまくやれると思う。これからよろしくね、あなた」
「お、おう……」
キラキラと邪悪に瞳を輝かせるマルシルを尻目に、なんとかハッピーエンドを迎えられそうだ。そうしたらまず娘たちに連絡して、それで。
「私、仲を取りもてたわ。うれしいなぁ。敦子さんもチルチャックもうれしそうだったし」
「そうだな。今回はマルシルがお手柄だ」
「そうだそうだ。ご褒美に敦子さんに習ったデザートを作ってあげよう」
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