馬狼照英
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
うちのチームは馬狼で持ってるようなものだった。そのぶん態度デカかったけど、そうなって当たり前だった。俺たちの世界は、あのとき馬狼を中心に回ってたんだ。
だから馬狼がいま世界で戦えるようになるように有名な選手、俺みたいなのでも知ってる人に教わって……この前なんかアンダー20を打ち負かしてしまった彼らがさらに強くなっていく。ほんとうに世界に牙をたてるつもりなんだ。ひとりのエースで世界を変えるつもりなんだ。
子供のころの身の程を知らないデカすぎる夢をそのまま持ち続ける奴だけが高みにいける。そんなの叶いっこないよというモブどもの戯言を真に受けずに天に手を伸ばし続けたものだけが、星に手が届くのだ。きっとそうだ。
それだけじゃない。彼らには俺にはないものを持ってあそこにいる。だからああやって馬狼と肩を並べて戦えるやつらが少し、いやかなり羨ましい。馬狼に信頼されて、チームメイトとして扱ってもらえるんだろ? それだけですごい。多分馬狼は、俺たちのこと球を馬狼に集めるだけのわら人形がなんかだと思ってると思ってた。
だから、馬狼に連絡とったとしても無視される想定だった。なのに、返事が返ってきた。その上、会ってくれることになった。
「あ、晋さんってあのひと?」
あの謎空間に閉じ込められていた仲間と思しきひとたちと一緒だった。なんか見たことある人たちばかりだ。
「ば、蜂楽選手ですよね。はじめまして。俺、ミョウジ晋です」
「俺のこと知ってるんだ! サッカー好きなの?」
「ええまあ……」
この残酷ともいえる無邪気さが蜂楽選手にはあると聞く。元チームメイトが証言!蜂楽選手の素顔!みたいな番組で見た。
「俺らね、馬狼の友達がいるって信じられなくて一緒に着いてきたの。よかったら一緒してもいいかな?」
「もちろんです。蜂楽選手、それに皆さんみたいなサッカー上手な人たちと過ごせるなんて」
「うれしい、って顔じゃねえけどな」
「馬狼、そんなことないよ」
「俺らの代だと晋、お前が一番真面目にサッカーしてただろ。そんなお前がただ単に俺を呼んだとは思えねえな」
「……馬狼、お前他人のことなんて石ころ以下だと思ってるやつだと思ってたのに、俺のこと見てたのか?」
「気持ち悪いこと言うな。視界に入ってただけだ」
「俺さ、馬狼は笑うかもしれないけど、サッカー続けてて……今度アンダー20の選考受けるんだ。だからその……また馬狼とサッカーできたらいいなって思って」
「……それって、馬狼のこと追いかけてたってことですか?」
「潔選手ですよね!姉がファンです……!顔が良すぎるって話を毎日聞いてます」
「えっあっ……ありがとうございます……」
「馬狼を追いかけてたっていうか、馬狼って、いらないと思ったやつのことすごい冷たい目で見るし、雑に扱うんですよ。でもなんかそれが悔しくて」
「……いいじゃねえか。足引っ張ったしたら殺すからな」
「馬狼こそ、自分や自分の仲間だけが進化してるなんて思うなよ。ブルーロックプロジェクトはおんなじポジションを育ててるって言うけど、俺みたいな他ポジション十人とやるんだからね」
そう、その興味をひくおもちゃを見つけたときのお前の顔。その顔が見たかったんだよ。
「馬狼じゃなくて、俺が晋さんとプレイすることになるから、俺と仲良くしよ。馬狼みたいな昔の男はほっといてさ」
「蜂楽さん、そんなこと言って大丈夫ですか? 他のメンバーの目線怖いんですけど」
「いーのいーの。目線が怖くてもジツリョクなくっちゃ」
こんな口先も実力も競り合うメンバーがいるのはうらやましい。人のことうらやましがってる場合ではないけど。
「じゃあサッカーしよう。晋さんもそのつもりなんですよね?」
「できたらそうしたいです」
「はっ。たまの休みもサッカーかよ。俺たちほんとにサッカー好きだな」
「かっこつけてるけど、馬狼楽しそうだよ。ずっと馬狼だけが強かったけど、そうじゃない環境って刺激的なんでしょ」
「まあな。お前みたいなしょぼいカスばっかりよりはマシだな」
「馬狼にやさしい言葉なんて期待してないけどさぁ……」
「でも、サッカーに言葉ってあんまいらなくない?」
「蜂楽のくせに、たまにはいいこと言うじゃねえか」
そう。久しぶりの言葉も、サッカー楽しんでるか?も、元気にしてるか?とか、会えてうれしいとかも、いらない。ただこの球を追いかけているときにだけ俺たちは雄弁に語り合える。そして、分かり合える。
ストライカーというひとつの輝きでフィールドを埋め尽くそうっていうなら傲慢だ。俺だって、俺たちだって指咥えて眺めてるわけじゃないんだ。サッカーはひとりでやるスポーツじゃない。だから俺だって、夢を見ることができる。
2023年1月27日
だから馬狼がいま世界で戦えるようになるように有名な選手、俺みたいなのでも知ってる人に教わって……この前なんかアンダー20を打ち負かしてしまった彼らがさらに強くなっていく。ほんとうに世界に牙をたてるつもりなんだ。ひとりのエースで世界を変えるつもりなんだ。
子供のころの身の程を知らないデカすぎる夢をそのまま持ち続ける奴だけが高みにいける。そんなの叶いっこないよというモブどもの戯言を真に受けずに天に手を伸ばし続けたものだけが、星に手が届くのだ。きっとそうだ。
それだけじゃない。彼らには俺にはないものを持ってあそこにいる。だからああやって馬狼と肩を並べて戦えるやつらが少し、いやかなり羨ましい。馬狼に信頼されて、チームメイトとして扱ってもらえるんだろ? それだけですごい。多分馬狼は、俺たちのこと球を馬狼に集めるだけのわら人形がなんかだと思ってると思ってた。
だから、馬狼に連絡とったとしても無視される想定だった。なのに、返事が返ってきた。その上、会ってくれることになった。
「あ、晋さんってあのひと?」
あの謎空間に閉じ込められていた仲間と思しきひとたちと一緒だった。なんか見たことある人たちばかりだ。
「ば、蜂楽選手ですよね。はじめまして。俺、ミョウジ晋です」
「俺のこと知ってるんだ! サッカー好きなの?」
「ええまあ……」
この残酷ともいえる無邪気さが蜂楽選手にはあると聞く。元チームメイトが証言!蜂楽選手の素顔!みたいな番組で見た。
「俺らね、馬狼の友達がいるって信じられなくて一緒に着いてきたの。よかったら一緒してもいいかな?」
「もちろんです。蜂楽選手、それに皆さんみたいなサッカー上手な人たちと過ごせるなんて」
「うれしい、って顔じゃねえけどな」
「馬狼、そんなことないよ」
「俺らの代だと晋、お前が一番真面目にサッカーしてただろ。そんなお前がただ単に俺を呼んだとは思えねえな」
「……馬狼、お前他人のことなんて石ころ以下だと思ってるやつだと思ってたのに、俺のこと見てたのか?」
「気持ち悪いこと言うな。視界に入ってただけだ」
「俺さ、馬狼は笑うかもしれないけど、サッカー続けてて……今度アンダー20の選考受けるんだ。だからその……また馬狼とサッカーできたらいいなって思って」
「……それって、馬狼のこと追いかけてたってことですか?」
「潔選手ですよね!姉がファンです……!顔が良すぎるって話を毎日聞いてます」
「えっあっ……ありがとうございます……」
「馬狼を追いかけてたっていうか、馬狼って、いらないと思ったやつのことすごい冷たい目で見るし、雑に扱うんですよ。でもなんかそれが悔しくて」
「……いいじゃねえか。足引っ張ったしたら殺すからな」
「馬狼こそ、自分や自分の仲間だけが進化してるなんて思うなよ。ブルーロックプロジェクトはおんなじポジションを育ててるって言うけど、俺みたいな他ポジション十人とやるんだからね」
そう、その興味をひくおもちゃを見つけたときのお前の顔。その顔が見たかったんだよ。
「馬狼じゃなくて、俺が晋さんとプレイすることになるから、俺と仲良くしよ。馬狼みたいな昔の男はほっといてさ」
「蜂楽さん、そんなこと言って大丈夫ですか? 他のメンバーの目線怖いんですけど」
「いーのいーの。目線が怖くてもジツリョクなくっちゃ」
こんな口先も実力も競り合うメンバーがいるのはうらやましい。人のことうらやましがってる場合ではないけど。
「じゃあサッカーしよう。晋さんもそのつもりなんですよね?」
「できたらそうしたいです」
「はっ。たまの休みもサッカーかよ。俺たちほんとにサッカー好きだな」
「かっこつけてるけど、馬狼楽しそうだよ。ずっと馬狼だけが強かったけど、そうじゃない環境って刺激的なんでしょ」
「まあな。お前みたいなしょぼいカスばっかりよりはマシだな」
「馬狼にやさしい言葉なんて期待してないけどさぁ……」
「でも、サッカーに言葉ってあんまいらなくない?」
「蜂楽のくせに、たまにはいいこと言うじゃねえか」
そう。久しぶりの言葉も、サッカー楽しんでるか?も、元気にしてるか?とか、会えてうれしいとかも、いらない。ただこの球を追いかけているときにだけ俺たちは雄弁に語り合える。そして、分かり合える。
ストライカーというひとつの輝きでフィールドを埋め尽くそうっていうなら傲慢だ。俺だって、俺たちだって指咥えて眺めてるわけじゃないんだ。サッカーはひとりでやるスポーツじゃない。だから俺だって、夢を見ることができる。
2023年1月27日
1/1ページ