オリヴァ・愛空
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嫌な夢を見た。
愛空が男が好きだってことがバレてしまう夢。
そりゃあ同性愛が異性愛と同じ立ち位置にいたらこれは全然悪夢じゃないんだけど、そうじゃないから、これは悪夢。インターネットで散々噂されて、どっちが挿れる方とか、男が好きっていうならチームメイトにもムラムラしちゃうのかな、等。否定するのも訂正するのも、肯定するのも面倒だし、そんなこと異性愛だったら明かさなくていいと配慮が受けれるものたち。
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そんな俺のモヤつきを知らない愛空は俺がぼんやり講義を聞き流している間に球を蹴り合いフィールドを駆け回って帰ってくる。そんでもって合鍵ができたから早く来てと急かしてくる。
「カードキーってホテルでしか使ったことないから逆になくしそう」
「財布に入れときなよ」
「うん」
ぼろっちい財布を出すのが少しだけ恥ずかしかった。愛空の財布はなんか知らんけどブランドものっぽくて、持ち物の質・透けて見える金額で彼我の差が見えてしまうととたんに卑屈な気持ちが顔を出す。俺って愛空と釣り合わないんじゃないのかなって。
一度自分から身を引いたといえば聞こえがいいけど、追いかけることすら諦めてしまうとその時の思考の癖がついてしまっているみたいで、なんだか自分でも変だと思う。愛空のことが好きなら側に居たいよ大好きだよ、って言えばいいのに、素直にそう思っていればいいのに釣り合う釣り合わない、という他人から見たら俺らのことを考えてしまう。
「眉間のシワ」
「えー 気づかなかった」
「俺に、もう愛空とは練習しないほうがいいと思う、って言った時の晋もそんな顔してた。悲しそうなのに、眉間にシワよせて笑ってたよ」
「変な顔ってこと」
「そうとも言う」
なんて茶化して笑う愛空のこと、好きなら好きってちゃんと言わないと。言わないと……
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あのときはテンション上がってご飯作ったけど基本めんどいとのことで外に食べに行くことにした。
「なんかこう、栄養バランスとか……いいのそういうの」
「チートデーていうものがあって、好きなもの食べていい日があるんだよ」
「そんな素晴らしい日を俺とでいいの……?!」
「卑下しな〜い そういうのうれしくない」
「は、は〜い」
連れてきてくれたお店はいわゆる町中華という風情の、清潔感は×寄りの△、味は◯みたいなお店だった。
「チャーハンは食べたいけど半チャーハンも食べられないかも」
「じゃあ俺が三分の二、晋が一食べることにする?」
「わーうれしい。ありがと。卵スープと、あとなんか肉」
「俺、青椒肉絲と酢豚がいいな。分けよう」
「よしそれで行こう」
待っている間くだらない話をした。帰りに牛乳忘れずに買いたいとか、爪切らないととか。昔の話もするけど、最近は愛空も俺の立場をわかってくれてるような言動も増えてきた。あの時は想像つかなかったな。こんな……中学生のときとはまた別の関係性。
あのときは、本気で俺が愛空と一緒に上手くなるっていう選択肢はないと思っていた。チームのためにとか、先輩のためにとか後輩のためにとかコーチや親のためにとか。俺は俺のためにサッカーができていたのかな、なんて今更ながら思い至る。誰にも相談せずに、俺の中だけで俺の価値を決めて、決断する。せっかく愛空と楽しい時間を過ごしているはずなのに嫌な気持ちばかり顔を出す。
そんなモヤつきも、料理が運ばれてくれば湯気といっしょに溶けていく。俺が単純なやつでよかった。
「おいしいね」
「でしょ。家の近くに美味しいお店があると良い」
「だよね」
「もう晋、俺のヒモになっちゃえばいいのに。俺責任持って一生養うよ」
「それはダメー。これがコンプで壊れる」
「そっか」
なんか納得したようで、わしわしと炒飯をかきこんでいる。これだけ景気良く食べてるのを見るだけで元気が出る。し、見てるだけでお腹いっぱいになる。
「おいしかったね」
「うん。愛空が通う理由わかった」
「またいこうね」
「また、ね」
またっていつ、みたいなめんどくさいこと言いそうになってどうにかとどまった。これから愛空はブルーロックとかいうお部屋でサッカー漬けになるっていうじゃん。今度は愛空が俺を置いていくんじゃんなどなど、信じられないくらい僻みっぽくてダサい考えて頭がいっぱいになってしまった。
愛空はそんな俺のモヤモヤをも把握しているみたいで、何も言わずにお風呂を沸かしてくれた。
「な、なに……?」
「メンタルが落ち込むときは寝るに限る」
うちの三倍くらいありそうなつやつやのバスタブに身を委ねていると寝るに限るってのもアリだなという気持ちになった。そうだよな。もう大人なんだからメンタルの世話は自分でできるようにならなきゃ、と思いつつなんかいい匂いのする入浴剤とか入れてもらったりして、世話してもらうのも悪くないかもなんて思った。いけない。ヒモにならないと決心したばかりなのに。
「いいんだよ。晋はうちでかわいいペットとして生きても。俺がずーっとかわいがってあげるよ」
「だから……それじゃ……ダメ……」
「寝たいなら寝ればいいのに」
「といいつつ寝かせようとしているやつのチンチンをシコるな〜言動が一致してないよ〜」
「正しくは(シコって血流を促して身体あっためてから)寝るに限る、なんだよね。わかるでしょ? それもだし、お腹いっぱいになっらムラムラしてきたでしょ?」
「またそうやっておっぱいに物を言わせて言うこと聞かせようとして…… とはいえ一度勃ってしまったものはしまえないしなぁ……」
「晋は寝ててもいいよ♡」
「俺はディルドじゃないし……」
「めんどくせーやつ。まぁそこがかわいいんだけど……」
「悔しいなおっぱいに逆らえなくて」
「いいんだよ、別に逆らわなくて。プライドとか、こうあるべきとかのことは一旦忘れよう?」
「うん……」
そこから先はもう、先ほどまでの悩みのことなんて忘れちゃうほどバカでエロだった。愛空の喘ぎ声は相変わらずうるさいし、けどやっぱり喘ぎ声がある方が張り合いがあっていい。エッチなことしてるな感があるし。汗でしっとりした身体をさすりながらぶつぶつお話しした。
「ケツとおっぱいはでかければでかいほどいいなぁ」
「さっきのしかめ面なくなってよかった。むしろ知性がマイナス振り切ってる」
「メンタルがしょぼくれたらエッチなことしてもいいなぁ」
「そうだね、大丈夫。俺がブルーロックに行ってもエッチな自撮りたくさん送ってあげるからね」
「ありがとうございます……」
「よしよし。カードキーに俺の背番号シール貼ってあげるね、
さびしくないよ」
「うん……」
「あーー置いていきたくない。ペット同伴ダメなのかな」
「だからペットじゃないっての! 愛空、大好きだからね、元気にするんだよ」
「大丈夫! 俺が一番になってくるから。浮気すんなよ!」
と言ってほっぺにチューしてくれたけど、やすりみたいに髭がささって痛い。でもしばらくこれができなくなるかと思ったらさびしくなってたくさんジョリジョリしておいた。
不安に思うことがあるけど、こいつとなら大丈夫。そんな気にさせてくれる。
せっかく思いが通じたかと思ったら離れちゃったけど、大丈夫かなと一抹の不安はある。けど多分、大丈夫。
2024年1月8日