オリヴァ・愛空
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さわやかな朝日が目にぶっ刺さって目が開けられない。
南向きのマンションとのことなのでそれほど日差しが強くはないはずだけど、今日は何故だか目を開けたくない理由があるみたい。昨日あんなに散々エッチなことしたのにいまだに認めたくないとは俺も往生際が悪い。
愛空は全然そんなことないらしく、甲斐甲斐しく朝ごはんなんてつくっている、そんなにおいがする。
目玉焼きとソーセージ、白いご飯とお味噌汁。これを目にして感謝が湧かないやつなんかいないよ。少なくとも俺はそうだよ。
「愛空〜!ありがとう、俺こういうのすっごく好き」
「よかった。何かける?っても醤油かソースくらいしかないけど……」
「お醤油ください」
「はい」
愛空がつけたテレビでは、昨日のサッカーの様子をダイジェストで放映している。その主要メンバーが何で俺と朝食とってるんだよ、といまだに受け入れられず脳内でツッこんでしまう。
「そういえばなんだけど、なんでこの家に俺のちんこにピッタリのゴムがあるわけ?」
「俺がアナニーするときにおもちゃにつけてるやつと偶然サイズが一緒だっただけ」
「あっそういうこと……」
「流石にそれは偶然だよ。合わなかったら買いに行こうと思ってた」
「そんなことしてたら二度と勃たない」
「ダメ。晋が尿道炎になるんだよ」
「そっか……なったことなくてわからなかったけど、幸運だっただけなんだ」
「そうだよ。尿道炎からちんこが使い物にならなくなるなんて悲しいでしょ」
「うん。俺はこのちんこと添い遂げたい」
「何言ってんの」
俺の世迷いごとの相手をしてくれた愛空は、俺が着てきたパーカーを素肌の上に着るという見るもの全てエロく見えてしまう中坊のような今の俺には刺激が強すぎることをしでかした。
愛空としては特に理由があったわけでもなく、単に今日がゴミの日だったので外に出るときのほんの少しの社会性として服を着たらしい。
俺の精液がだぶだぶに入ったゴムが二、三個ゴミ袋にまとめられ、若干の恥ずかしさを感じる。なんか、溜まってたみたいで。実際ご無沙汰だったんだけどさ。
「わ、見てゴム。ぱんぱんじゃん…♡」
「やめろ引っ張り出すな」
「しかも三個も。どんだけ盛ってんのよ」
「しゃーないじゃん……いじんなよ……」
「いじけないで。昨日は楽しかったねってことだよ」
「うん……」
愛空の胸(おっぱいではない。ぷよぷよとした感触は確かにあるがおっぱいよりハリがある。胸筋というやつだ)に顔を埋められて抱きしめられてしまうと、それ以上何もいう気になれなくなってしまう。人類皆おっぱいには勝てないのだ。
「ゴミ捨て行ってくるね」
「はーい」
ぼんやりと昨日のことを考えてしまうと照れ臭すぎて叫びたしそうになってしまう。三年分くらい好き好き言ったし、愛空は俺のどんなお気に入りのシコネタよりエロかったし。征服欲も満たされたし最高だった。
友達だったにしては盛り上がりすぎたような気もする。まぁでも五年以上は離れ離れだったんだから妥当と言えば妥当かもしれない。
そもそも妥当もクソもない。俺の感情、愛空の感情を一般論と比較してふさわしいかなどと測らなくてもいいはずなんだ。
一度大人の言うことや、妥当という感覚に全てを委ねて愛空を手放して遠ざけたのだから、今度は上手にそばに居れたらと思う。
そんな真面目とバカエロをせわしなく行き来する俺の思考をしってか知らずか、愛空はいろんな液体で湿ったシーツを洗濯して、マットレスを干している。
「今度から愛空がテレビに映った時にどんな顔したらいいかわからないや」
「いまもうニヤニヤしてるけど」
「そうかな……」
そんなつもりはなかったけど、そうらしい。気持ち落ち着けないと帰れないなと思いつつ、隣に座る愛空を振り払って帰るなんてできないとも思う。
「愛空、今度いつ空いてる?」
「んー、夜はいつもここ帰ってくるけど」
「そうなんだ。……通い妻って実は合理的だったのかも。生活空間は別れてるけど一緒に過ごしたい的な要望に適ってる」
「そうなのかも! 晋、通い妻してよ。鍵は作るから」
「その辺の鍵屋さんにつくってもらえないの?」
「カードキーだから。管理会社さんに言わないと」
「……ふーん」
そういやここ、高級マンションなんだった。鍵複製し放題の賃貸とは違うみたいだ。
「鍵できたら連絡するね」
離れ難いというのがここまでわかるのも珍しい。目が泳いでいて、別にお前がいなくても平気だよという強がりで取り繕うとしても俺のシャツの裾を掴んで離さない。
俺もバレバレなんだろうか。終電間近に改札で吹き溜まっているカップルみたいだ。月曜までに帰ればいいのだから今出なくてもいいのが違うけど。そんなんだからダラダラと居続けてしまう。部屋の掃除とか、ちょっと大学のあれそれとかしないといけないのに。
「帰んないと」
「わかってるよ」
このやりとりも何回やったかわからない。わかってるって言いながら離してくれないんだもん。
メディアやうわさで聞く愛空の様子と違いすぎて面食らう。もっと他人に対して冷たくて、去るもの追わずらしいって言うのを、この前ネットで見た。愛空と付き合ってた?女の子が本当に適当に扱われた!って怒ってる投稿。今の感じだと、めんどくさくて離さないのは愛空の方だけど。
「じゃ、鍵ができなくても来て」
「わかった。また連絡するから」
「うん」
やっと離してもらえた。
もう昼も過ぎてぽかぽかと暖かい日差しが現実に引き戻してくる。あれは非日常で、俺は俺が選んだくだらない日常に帰らないといけないんだ。愛空と一緒に居た時間はなんとなく自分のことも特別にしてくれたような気がしていたけどそうではなく、自分は自分で特別にならないといけないんだと思い直した。
ほんの少し自分とは違う世界の人間と関わっただけでキリッとしちゃうんだから、真面目に通い妻したほうがいいのかもしれない。
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愛空のインスタか恋愛脳バリバリになってしまうのかも、と思っていたけど意外とそうでもなかった。その代わりLINEがそんな感じになった。相変わらずインスタは淡白な感じだけど、LINEは付き合いたての中学生みたいだ。毎日おはようおやすみのLINEが来たり、何してんの、とかくだらないLINEが来たり。中学生と違うのはエッチな自撮りが来ることぐらい。陰毛がチラ見するくらいパンツをおろしてとか、口の前で指で丸つくるアレとか。
「愛空さぁ、俺が愛空のこと裏切ってこれが流出したらどうすんの?」
「……なんでそんなこと言うの」
左右で違う目の色がぎらりと瞬いたような気がする。そんな怖い顔しないでほしい。
「浮かれてるのかもしれないけど、こういうのは誰にもしちゃダメだよ。危ないの」
「ふーん。そうなんだ……」
「いやエッチな自撮りはうれしいけどさ、うれしいけどさぁ……」
「男の乳首でもいいんだ」
「あのねぇ……さらっと上裸になるのと意味ありげな目線でTシャツめくるのはまたニュアンスが違うのわかる?あとはそう言えば乳首めちゃくちゃ感じてたよなぁって思い出したときにチンチンにグッとくるのわかる?」
「なんとなくわかるかも」
「ならよい。乳首ならなんでもいいってわけではないの」
完全に話を逸らされたような気がする。こういう……流出したら社会的にまずそうな写真を好きになったら送ってしまうのはいま矯正しておかないとまずいと思いつつ、エッチな自撮りは正直ありがたい。悩ましい気持ちを抱えつつ、愛空の胸に顔を埋めるように抱きしめられると頭からまじめな俺が溶けて消えていってしまう。アホだから。おっぱいに勝てなくて。
「俺、別に名前が俺のこと貶めたくてこれを流出させたら流出させたこともそうだけどそんなに俺のこと嫌いになったんだって傷つくかも」
「いや別に俺はそんなこと、いくら嫌いになってもしないけどさ……俺だけにしときなよって……」
「わかってるよそれくらい」
「わかってるならいいけど……」
なんか心配だな。これから愛空には素晴らしい未来が待っているのでくだらないことで煩わしい思いをして欲しくないんだよね。
煩わしい思いっていうのは、いまこの社会情勢でロッカーが個別に別れていない状態で行うことが多いチームスポーツで男の恋人がいるってこととか、俺みたいなモブ野郎と付き合ってることも含まれるのかもしれない、と思ったらずっしりと気分が重くなったけど、愛空が本当にうれしそうに俺をおっぱいで締め落とそうとしているのを見てどうにか折り合いをつけれたらな、と思う。愛空と一緒に居られる未来を想像したいと思った。
2023年12月20日