オリヴァ・愛空
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俺とあいつが同じ世界に生きている人間だと思ってない。だから俺はこんなひどいことができてしまうんだと思う。
俺と愛空は、中学のとき同じサッカークラブだった。
サッカーがそれなりにうまいやつは部活みたいな住んでいる場所で雑に選ばれた部員で構成されているやつらとはサッカーをやらず、サッカークラブに所属する。それが俺らが住んでいた地域で当たり前だったことだ。
だから俺もそれなりにサッカーができたったわけだ。
それが、いつの頃からか愛空をフォローしていた側の俺が愛空のフォローどころかあいつの影すら見えくなってしまった。
だからと言って愛空は俺に嫌味のひとつも言わずに俺との練習に付き合ってくれていた。あんまりにも実力が離れすぎていて練習相手にもならないと評されている俺のための練習に。
そんな関係に嫌気がさして、そんでもって、俺は愛空のためにならない練習を愛空にさせて、愛空の時間を食い潰しているのになんの文句も言わずに楽しそうに練習に付き合ってくれる愛空の真意がわからず、ある日俺は愛空に気持ちを打ち明けた。
「愛空はさ、どうして俺なんかと練習してくれるの」
「どしたの晋。気持ち萎えてる?」
もうボールの模様すら見えない深い夕暮れの中で、愛空が人懐こい笑みを浮かべているのがわかる。声色が、吐息がそう言っていることを示している。だからこそ怖い。行動にも、言動にも現れない説明のつかない愛空が。
「萎えてるってか……愛空さ、もう俺とは練習しないほうがいいよ」
「練習相手くらい自分で決めるよ」
「ダメだ。俺らまだ中坊で……大人の経験値から見て正しい方に行ったほうがいいと思う。意地を貫けるほど、俺ら経験値ないじゃんよ」
「なにそれ。晋……何それ……」
この声音は、失望の色。困惑の色。そして、見捨てられたと悲しむ色。それでもって、自分の気持ちを先回りされて苛立つ色。そんな感じかな。
すっかり夕闇に沈んだグラウンドは、愛空の目の色すら見分けがつかない。
付き合いが長いからさ、わかるんだよ。
でも悲しみなんて一瞬で、たくさんの時間を過ごしているうちに忘れていくから、俺はこの対応で良かったんだと思う。
よかったんだと……思うよ。
▼
すっかりサッカーから離れて、テキトーに何の目的もなく大学に進学して日々を空費している俺を、新宿アルタのバカでかい画面に映る愛空は笑うだろうか。
笑うこともなく、こいつ誰だっけ? って顔するか。そりゃそうだ。あれから何年経ったと思ってるんだか。U20って、この国の20歳未満のサッカー選手の中で上位に入るってことなんだろ? 想像もつかない。
骨に染み入る東京のビル風を全身に浴びながら帰路についた。言葉にならない感情が胸を満たしてしばらく排水できそうになくて。
あの頃俺が諦めてなければ、みたいな後悔が胃から何度もせり上がってきては舌を汚す。そんなことの繰り返しを死ぬまで続けるのだとしたら、あんまりにも苦役だ。一つの選択を誤っただけで。
あれを、一つの選択だと思っているのが甘いのかもしれない。積み重ねなんだ。愛空の真意はわからずとも上位者に練習つけてもらえる幸運をはじめに、環境は文句なかったはずだ。それなのに俺は、もう階段ですら息切れする。
SNSでは試合の様子でもちきりだ。
当然愛空の話題も紛れている。
その日は俺が愛空と肩を並べてU20で活躍する夢を見た。浅ましすぎて、一日中胃が重たかった。
俺と愛空は、中学のとき同じサッカークラブだった。
サッカーがそれなりにうまいやつは部活みたいな住んでいる場所で雑に選ばれた部員で構成されているやつらとはサッカーをやらず、サッカークラブに所属する。それが俺らが住んでいた地域で当たり前だったことだ。
だから俺もそれなりにサッカーができたったわけだ。
それが、いつの頃からか愛空をフォローしていた側の俺が愛空のフォローどころかあいつの影すら見えくなってしまった。
だからと言って愛空は俺に嫌味のひとつも言わずに俺との練習に付き合ってくれていた。あんまりにも実力が離れすぎていて練習相手にもならないと評されている俺のための練習に。
そんな関係に嫌気がさして、そんでもって、俺は愛空のためにならない練習を愛空にさせて、愛空の時間を食い潰しているのになんの文句も言わずに楽しそうに練習に付き合ってくれる愛空の真意がわからず、ある日俺は愛空に気持ちを打ち明けた。
「愛空はさ、どうして俺なんかと練習してくれるの」
「どしたの晋。気持ち萎えてる?」
もうボールの模様すら見えない深い夕暮れの中で、愛空が人懐こい笑みを浮かべているのがわかる。声色が、吐息がそう言っていることを示している。だからこそ怖い。行動にも、言動にも現れない説明のつかない愛空が。
「萎えてるってか……愛空さ、もう俺とは練習しないほうがいいよ」
「練習相手くらい自分で決めるよ」
「ダメだ。俺らまだ中坊で……大人の経験値から見て正しい方に行ったほうがいいと思う。意地を貫けるほど、俺ら経験値ないじゃんよ」
「なにそれ。晋……何それ……」
この声音は、失望の色。困惑の色。そして、見捨てられたと悲しむ色。それでもって、自分の気持ちを先回りされて苛立つ色。そんな感じかな。
すっかり夕闇に沈んだグラウンドは、愛空の目の色すら見分けがつかない。
付き合いが長いからさ、わかるんだよ。
でも悲しみなんて一瞬で、たくさんの時間を過ごしているうちに忘れていくから、俺はこの対応で良かったんだと思う。
よかったんだと……思うよ。
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すっかりサッカーから離れて、テキトーに何の目的もなく大学に進学して日々を空費している俺を、新宿アルタのバカでかい画面に映る愛空は笑うだろうか。
笑うこともなく、こいつ誰だっけ? って顔するか。そりゃそうだ。あれから何年経ったと思ってるんだか。U20って、この国の20歳未満のサッカー選手の中で上位に入るってことなんだろ? 想像もつかない。
骨に染み入る東京のビル風を全身に浴びながら帰路についた。言葉にならない感情が胸を満たしてしばらく排水できそうになくて。
あの頃俺が諦めてなければ、みたいな後悔が胃から何度もせり上がってきては舌を汚す。そんなことの繰り返しを死ぬまで続けるのだとしたら、あんまりにも苦役だ。一つの選択を誤っただけで。
あれを、一つの選択だと思っているのが甘いのかもしれない。積み重ねなんだ。愛空の真意はわからずとも上位者に練習つけてもらえる幸運をはじめに、環境は文句なかったはずだ。それなのに俺は、もう階段ですら息切れする。
SNSでは試合の様子でもちきりだ。
当然愛空の話題も紛れている。
その日は俺が愛空と肩を並べてU20で活躍する夢を見た。浅ましすぎて、一日中胃が重たかった。
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