赤木剛憲
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「なんだ、もういいのか」
「どうしたの? 敦子ちゃん具合悪いの?」
この兄妹はとにかく愛情深くて世話焼きだから、ただの幼馴染の私を気にかけてくれる。いつもはご飯おかわりするのにどうしたの?とおばさんまで私のこと心配してくれる。
「うん、もう大丈夫。お腹いっぱい」
私はしくしく痛む胃をさすってアピールした。デザートにスイカあるのよ?というおばさんの優しさを無碍にするようで少しだけ心が痛んだ。でも、それ以上にサクリと刺さる言葉があった。
「なんか、ミョウジの弁当でかくね?! だよな!!女の食べる弁当じゃないよな!!」
そんな、取るに足らないクラスメイトのたった一言で、私はいとも簡単に食欲を失った。
いずれ戻るだろうと思われた食欲は戻らず、お弁当箱を小さいものに変えてもらった。一段の、ひとくちで全部食べれそうなくらいちょっとだけしか入ってないお弁当。
でも別にそれでも不便じゃなかった。お母さんも、年頃の娘だからかねなんて言ってるし。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんはたくさん食べる人好きだよね?」
「どうした急に。その人にとっての適量があるから、無理にとは言わないが俺がその、食べる方だから食べない人とだと待たせてるような気になって……」
「だってホラ。敦子ちゃん。敦子ちゃんさ、なんか言われたでしょ。体型とか」
「当たらずとも、遠からずかな」
「そんな取るに足らないやつの言葉を信じないで。私や、お兄ちゃんの言葉を信じてよね」
「……そうだよね」
「やっぱスイカ食べたいよね? お兄ちゃん、よろしく」
「ああ、わかった」
ばこり、と間抜けな音を立てて大きなスイカは中のきれいな赤を晒した。たけちゃんは私よりずっと大きな手で器用にスイカを切り分けると、お皿に盛ってくれた。
「お兄ちゃん、意外とちゃんとしてるからこうやってお皿に盛ってくれるのよね」
「うんうん。仕事が丁寧なんだよね」
「意外とはなんだ」
「あっ、聞いてたんだ」
「敦子が食べなくなったと聞いたから心配したんだ」
「たけちゃんが心配なのは、デカ盛りスイーツ食べてくれる人がいなくなっちゃうからでしょ」
私がそうやってたけちゃんを試そうとすると、いつもは「そうだな。敦子が居ないと困る」なんて言うんだけど、今日はいつまでも答えが返ってこない。
「たけちゃん」
こんなたけちゃん、見たことない。いつも落ち着いてて、ものすごく感情的になることなんて片手の指で数えられるのに、私の前に座ってるたけちゃんは私の知らないたけちゃんだった。耳まで真っ赤で、何か言いたげで煮え切らない感じ。
グラスの氷が溶けてゆくのを眺めていた。多分何かいいたいのだろうから、待っている。私も同じことを考えているだろうけど、待たせてもらっている。ずるくてごめんね、と心の中で謝る。
「どうしたの? 敦子ちゃん具合悪いの?」
この兄妹はとにかく愛情深くて世話焼きだから、ただの幼馴染の私を気にかけてくれる。いつもはご飯おかわりするのにどうしたの?とおばさんまで私のこと心配してくれる。
「うん、もう大丈夫。お腹いっぱい」
私はしくしく痛む胃をさすってアピールした。デザートにスイカあるのよ?というおばさんの優しさを無碍にするようで少しだけ心が痛んだ。でも、それ以上にサクリと刺さる言葉があった。
「なんか、ミョウジの弁当でかくね?! だよな!!女の食べる弁当じゃないよな!!」
そんな、取るに足らないクラスメイトのたった一言で、私はいとも簡単に食欲を失った。
いずれ戻るだろうと思われた食欲は戻らず、お弁当箱を小さいものに変えてもらった。一段の、ひとくちで全部食べれそうなくらいちょっとだけしか入ってないお弁当。
でも別にそれでも不便じゃなかった。お母さんも、年頃の娘だからかねなんて言ってるし。
「お兄ちゃん。お兄ちゃんはたくさん食べる人好きだよね?」
「どうした急に。その人にとっての適量があるから、無理にとは言わないが俺がその、食べる方だから食べない人とだと待たせてるような気になって……」
「だってホラ。敦子ちゃん。敦子ちゃんさ、なんか言われたでしょ。体型とか」
「当たらずとも、遠からずかな」
「そんな取るに足らないやつの言葉を信じないで。私や、お兄ちゃんの言葉を信じてよね」
「……そうだよね」
「やっぱスイカ食べたいよね? お兄ちゃん、よろしく」
「ああ、わかった」
ばこり、と間抜けな音を立てて大きなスイカは中のきれいな赤を晒した。たけちゃんは私よりずっと大きな手で器用にスイカを切り分けると、お皿に盛ってくれた。
「お兄ちゃん、意外とちゃんとしてるからこうやってお皿に盛ってくれるのよね」
「うんうん。仕事が丁寧なんだよね」
「意外とはなんだ」
「あっ、聞いてたんだ」
「敦子が食べなくなったと聞いたから心配したんだ」
「たけちゃんが心配なのは、デカ盛りスイーツ食べてくれる人がいなくなっちゃうからでしょ」
私がそうやってたけちゃんを試そうとすると、いつもは「そうだな。敦子が居ないと困る」なんて言うんだけど、今日はいつまでも答えが返ってこない。
「たけちゃん」
こんなたけちゃん、見たことない。いつも落ち着いてて、ものすごく感情的になることなんて片手の指で数えられるのに、私の前に座ってるたけちゃんは私の知らないたけちゃんだった。耳まで真っ赤で、何か言いたげで煮え切らない感じ。
グラスの氷が溶けてゆくのを眺めていた。多分何かいいたいのだろうから、待っている。私も同じことを考えているだろうけど、待たせてもらっている。ずるくてごめんね、と心の中で謝る。
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