第1章 ちいさな箱に人生を詰めて
10 Curiosity killed the cat.
「あー、うん。リデルくんのこと話したよー?」
悪びれる様子もなく、マリーゴールドはそう言って笑った。ゆるくカールした髪をいじりながら「ダメだった?」と見上げてくる彼女に、思わず言葉に詰まってしまう。
「……だめ……というか、えっと……少しおどろいたんだ。あんな……」
「まあー……ね。どうせ急に出てくるーみたいな派手な演出、したんでしょ?」
昨夜の摩訶不思議な登場をした吸血鬼の姿を思い出しながら、リデルは小さく頷いた。
不思議な現象にも慣れている方だとは思っていたけれど、さすがに虚空から現れる吸血鬼なんてものには、一夜明けた今でも困惑を抱えていた。あの登場と言動を思い出して眉をひそめるリデルを見て、マリーゴールドは楽しそうに笑う。
「アーガストが行くかもって、言っといた方がよかったね。ごめんねー」
「あ、いや、ううん……。それで、アーガストって……」
あの吸血鬼――アーガスト・ブルーシャーフは、リデルのことを「マリーゴールドに聞いた」と言っていた。それならば目の前の彼女は、あの吸血鬼とある程度は親しいということなのだろうか。突然現れて嵐のように去っていった彼について、なにか知っていることがあればと言いかけたリデルを制するように、マリーゴールドは口を開いた。
「アタシもあんまり詳しくはないんだけどね、たまに顔合わせるだけだし。なにしてるかわかんないんだよねー。昼間なにしてんのかも別に……あんな感じのとーっても騒がしい性格で、あと吸血鬼ってことくらいしか知らないの」
「じゃ、なんにも知らねえってことかよ」
へらっと笑った彼女に対して、突如鋭い言葉が向けられる。言葉の主であるマグレヴァーは、相変わらず不機嫌を隠そうともしない。
今日はいつもより機嫌が悪いのは、きっと昨夜の出来事のせいだろう……なんてことをリデルはぼんやり考えていた。他人を受け入れず排除したがる彼の性質については身を持って知っているけれど、それにしてもアーガストにはずいぶん敵意を向けていた様子だった。昨夜消化し損ねた不満をぶつけるように向けられた切っ先を、マリーゴールドは「厳しいなー」と軽く受け流す。
「そうだけどね。でも別に、なにも知らなくてもお喋りはできるでしょ? 騒がしくておもしろい吸血鬼。それだけわかってればいいと思うけど」
「……大体、その吸血鬼なんてのも馬鹿げてるだろ。魔法だかなんだか知らねえが、こっちは不法侵入されたんだぞ」
「えー? あはは。今は吸血鬼避けの手段なんてないし、しょうがないんじゃない? まあほんとに嫌ならそう言ったらやめる……かも?」
「かもってなんだよ」
「だってアタシ、そんなにあの人のこと知らないし。会いに行くとは言ってたけど、そんな風に押し入るとはアタシだって思ってなかったし」
衝撃的な初対面を果たしたばかりの自分たちよりは気安いようだけれど、マリーゴールドもアーガストについて詳しいわけではないらしい。あの不思議な力や掴めない言動について、なにか理解に繋がる糸口があればと思ったものの、どうやらそううまくはいかないようだった。
「お前に聞いてもなんの意味もねえな。ったく……」
「んー、じゃあさ、アタシ以外の意見も聞いてみる?」
ぱちりとウインクを向けられて、マグレヴァーは長い前髪の奥の瞳を瞬かせた。その意味を確かめるよりも先に、マリーゴールドは明るい声をあげる。
「ねーターリア。聞きたいことあるんだけど」
「なに急に」
振り返ったのはターリアだった。チョコレート菓子を食べ続けながらも、視線をこちらに投げてくる。以前向けられた冷たい言葉が忘れられないリデルは、ほんの少しだけ体を固くしてしまう。そんなリデルを視界にとらえた途端に、その瞳は警戒したように細められた。
「アーガストのこと。君も話したことあるよね?」
「……ああ、あの意味わかんないヤツ」
最後の一つを食べきった様子のターリアは、緩慢とした伸びと共にそう言った。可愛らしい顔立ちと仕草には相反してきつい言葉に若干怯んでいると、彼女はこちらに体の向きを変える。
そこからは止まらなかった。
「ナルシストでうるさくて、なんか、なんで他のヤツらはあんなのが好きなの? って感じ。ジョーシキ通じないし、偉そうだし、自分勝手で。自分がルールみたいな? あたしああいうのキライ。あとフツーにうるさい。声デカいし」
口を挟む隙間もなく続けられる、無数の不満。話すことなどないと言いたげな態度からは想像できない様子に、リデルはあっけにとられる他なかった。いつも必要最低限の言葉だけを落としている彼女からは、想像できない姿だったものだから。
「なんか好かれてるみたいだけど、あんなんただの変な不良じゃん。おせっかいだしめんどくさいし、他人のこと考えろって感じだよね。ヤダって言ってんのに寄ってくるし、なんかあいつの周りの連中キモいから近寄ってほしくないんだけど。てかなんかさー? このオレがお前を気に入ったから仲良くしてやるーみたいな態度取ってこない? アレなんなの? ウザくない? どんだけ偉いのって感じ! ねえアンタはどう思う!?」
マシンガントークの末、その矛先が向けられたのはリデルだった。
ここで選ぶ言葉を間違えれば、その不満の行き先がすべて自分へと切り替わる――そんな未来を予期させる視線に晒され、リデルは言いようのない緊張に包まれていた。けれどあまり長考していても、それはそれでターリアの苛立ちは自分へと向かう、ような気もする。
「え、えーっと……」
「あはは、自分がルールなのは君もでしょー」
「はあ!?」
形のいい眉を歪めて、ターリアはなにかを反論しようとして、結局なにも思いつかなかったようで。
「うるさい! バカ!」
そんな言葉だけを残して、ふいっと顔を逸らした。そんな彼女を気にする様子もなく、マリーゴールドは軽やかに笑う。
「拗ねちゃった」
「だ、大丈夫? あんなに怒って……」
「んー? 大丈夫大丈夫。別に怒ってないよ、あれ」
そうは見えなかったのだけれど、他人の間にある関係性に口を出すのはお門違いかもしれない。そんな思いから口を噤んだリデルに「それよりさ」と少女の明るい声がかかった。
「ターリアはああ言ってたけど、アタシは別に……そんな悪い人じゃないと思ってるよ。アーガストのこと。だから、もうちょっと付き合ってあげてくんない?」
ね、と投げかけられた微笑みに逆らえず、リデルは思わず首を縦に振っていたのだった。
◆
結局、アーガストのことはなにもわからなかった。けれど、自分の常識の範疇外にいる不思議な種族のことなんて、いくら話を聞いてもいくら考えても理解できるわけがないのかもしれない。
――彼は「また」と言っていた。今度会うときには、と。その言葉には嘘がないように思えて、きっと再び目の前に現れるのだろうという確信があった。
こちらから接触することなんてできない以上、なるべくマグレヴァーの機嫌がいいときに出てきてくれたらいいんだけど。
「んだよ」
「いや、なんでも……」
そう思いながら隣を見上げれば、視線を感じたのか色違いの瞳がリデルを見下ろす。そこにはいまだに苛立ちがこもっていて、リデルはひそかに胃を痛めた。昨日から疲弊してばかりだから、今日は少しだけゆっくりできれば……そんなことを考えながら、寮の扉を開いた途端に異変に気が付いた。
「……な、なんか、暗い……?」
室内がやけに薄暗い。太陽が煌々と照らす時間ではないけれど、寮の中は不気味なほど暗く静まり返っていた。その静けさと暗さは、深夜を思わせるもので。先ほどまで通ってきた道には、橙へと変わりかけている陽の光が差していたはずなのに。
なにかがおかしい。そして、そのおかしさへの予想がついていないわけではない。リデルはそれが自分の勘違いであるようにと願いながらリビングへ繋がるドアを開けるしかなかった。
「よ! 結構遅かったな。学校ってこんなに時間がかかるもんか?」
その予想は残念なことに、見事に的中していた。
色素の薄い肌と髪、闇に溶けるかのような黒い服。そしてこの暗闇の中でもまばゆく輝く、透き通るような青の瞳。
「……ああ、違うな。先にこっちか。おかえり! 邪魔してるぞ!」
まるでここにいることが当たり前かのように、アーガスト・ブルーシャーフは笑った。どう考えても不法侵入であるにも関わらず。
「……お前……来んなっつっただろ」
「ははっ、聖水でも用意しておけって言っただろ?」
先に動いたのはマグレヴァーだった。先日からずいぶんアーガストを警戒している様子の彼は、そう言い捨ててリビングへと歩を進める。
暗い室内に不思議と足がすくんで、リデルはその場から動けずにいた。
「また不法侵入かよ」
「悪いとは思ってるぞ。……けどさ、素直に玄関で待っても入れてくれないだろ」
「んなの当たり前だ、この不審者」
相変わらず触れることなく椅子を動かし、歩くことなく椅子の元へ移動する。本来であればいくらおどろいても足りないであろう動作にも、リデルもマグレヴァーもそれほど感情を動かされずにいた。
「カーテンは開けるなよ? 昨日も言っただろ、オレは太陽が」
先日も聞いた吸血鬼の弱点のことだろう。それを言い終わるよりも先に、軽い音が響く。一瞬明るい光が差し込んで、けれどすぐに室内は再び闇に包まれた。
カーテンは中途半端に開けられたまま。それでも窓の外から見える景色は、まるで太陽を失ったかのような暗闇だ。夜というにも不自然な色に塗りつぶされているのも、きっと彼の魔法の力なのだろう。当のアーガストはちらりと窓へ視線を投げると、ほっとしたように肩の力を抜いた。そしてすぐさま、マグレヴァーへ怒りを差し向ける。
「……おい! 殺す気か!?」
「殺し損ねたな」
そう言ったマグレヴァーは、暗闇に染まった窓の外を眺めて短く舌打ちをする。
「で? これはなんだよ」
「なにと言われてもな。日光が入らないようにした、としか」
「……どうなってんだよ」
「さあな? 理論は知らん! お前がカーテン閉めてくれんなら、こんなことしなくていいんだが?」
マグレヴァーは、まるで苦虫を噛み潰したような表情で考え込んだ様子だった。けれど再び、ため息とともに軽い音が鳴る。その様子に目を細めたアーガストがぱちんと指を鳴らすと同時に、リビングの照明がゆっくりと点灯した。
「……すごい……。魔法って、こんなことまで出来るんだ」
「最近の家電は出来ないものの方が多いけどな。魔法で動かすにも、物の方が言うこと聞くつもりがなかったら使えないし」
思わずこぼれた言葉を拾って、アーガストは呆れを含ませた声で返事をしてくる。少しの間埃をかぶった照明を見上げていた彼は、リデルの視線に気が付いたのか微笑んでみせる。
「電気を通すにも、色々通り道が必要だろ? それと同じだ。魔法で物を動かすには、魔力を通す回路がいる。……昔は魔法が当たり前だったから、魔力回路があって当たり前だったんだけどな。最近はそうでもないから、色々不便なんだよなー」
魔法が身近だった割に、アーガストの語る事情なんてリデルはまったく知らなかった。父親は日常生活には魔法を持ち込んでいなかったのだから、当たり前といえば当たり前ではあるのだけれど。
「……あれ、じゃあ寮は……」
「そ。ここは使える……ずいぶん古いらしいな、この建物は」
外観や家具、それからやけにぎしぎしと嫌な音を立てる床などからわかってはいたものの、実際にそれを指摘されると少し来るものがあった。
「魔法が現役だった頃に建てられたんだろうな……普通は魔力通さないように改装するもんだけど。オレとしては助かるけどな!」
満足そうな笑い声をあげるアーガストに、リデルは曖昧な返答をすることしかできなかった。彼に合わせるようにどうにか絞り出した愛想笑いも気にしないようで、青い瞳はきらきらと輝いている。
そもそもどうしてここにと聞きそびれたけれど、聞いたところで大した返答は得られないだろうと思えて。
「……えっと。それでアーガストは……なにか、用事とかが……?」
「ああ、そうだな! 言っただろ、おもしろいもんを見せてやるって」
そういえばそんなことも言っていたような、いないような。早くも記憶の隅にしまわれていたその言葉を思い出すのと同時に、リデルの心にはちょっとした興味が生まれていた。
もしかしたら魔法でなにか見せてくれるのかもしれない、なんて期待を込めたその気持ちは、次第に膨らんでいく。魔法と共に暮らしていた割に、自分は魔法もそれを使う父親のこともなにも知らない。せめて魔法のなんたるかだけでも知ることが出来れば……そんな思いは、日に日に強くなっていた。
「そんなもんはどうでもいい。こいつが居座る気なら、俺はもう行くからな」
「まあまあまあ、そう言うなって」
そう言いながら、アーガストはなにかを引き寄せるような仕草を見せる。悪戯っぽい表情の彼が視線を向ける先は、リビングから去ろうとしたマグレヴァーだ。軽い笑いを漏らしたアーガストが手繰り寄せるように手を動かすと。
「……ぐえ……っ、おい、なに……っ」
まるで持ち上げられるかのように、かすかにマグレヴァーの足が浮いた。シャツを引っぱられているせいか苦しそうな声をあげている彼は、そのまま移動させられて、ぽすりと椅子に腰かけた。どう考えても自分の意志ではないそれも、魔法なのだろう。
「昨日も言っただろ? オレはお前とも仲良くしたいんだ」
「俺はしたくねえけど」
親し気に距離を詰めるアーガストに対し、マグレヴァーはまるで虫でもはらうかのような仕草を返す。長い前髪に隠れてわかりにくいけれど、色違いの瞳は相変わらず不満そうだった。近寄られたくないとでも言いたげだ。
「つか、お前が気に入ってんのはアレだけだろ。じゃあ俺に関わる必要ねえだろ」
顔をそむけつつ吐かれた言葉に、アーガストは特にダメージを受けていないようだった。むしろリデルの方が、少しだけ刺されてしまう。――「アレ」って僕のことか、なんて。
「俺は魔力だかなんだかは知らねえし、だったら……」
「拗ねるなって! オレはお前のこともおもしろい奴だって思ってるぞ!」
「はあ!? んでそうなんだよ、おい、寄るな!」
からっとした声は、多少の疑問だったら吹き飛ばしてしまうかのような明るさを持っていた。マグレヴァーに対する答えとしては、少しずれている気もするけれど。それでもアーガストの言動には、その場に立ち込める暗雲を強制的に吹き飛ばす力があるように思えた。
「別に、リデルのことが知りたいのも魔力の有無が理由ってだけじゃないしな」
「えっ、そうなんだ」
ふとこぼれた言葉に、反射的に声が出ていた。彼がリデルに興味を示しているのは、魔法がどうだとか魔力がどうだとか、そういうことの影響だと思っていたものだから。魔力がなければわからない、閉ざされたはずの空間に足を踏み入れた……その事実だけが、アーガストに引っかかっているものだと。
「それじゃあ…………どうしてこんなに……えっと、気にかけてもらえるのか……」
「気にかける? それは少し違うな」
マグレヴァーから視線を外し、青い瞳がこちらを捉える。この隙にと離れようとした人間を、アーガストは指先一つで再び座らせた。マグレヴァーを一瞥もせずに捕えてしまうその様子には、制圧という言葉が似合っているように思える。
「前も言っただろ。オレはマリーから、おもしろい奴がいると聞いてお前に会いに来た。で実際、お前はオレの常識が通用しない変な奴だった! それは魔法のことだけじゃない、お前の内面もそうだ……うまく言えないが……。とにかく、だからだよ」
「……だ、だから?」
「オレは、オレの思い通りにならない人間が好きなんだ」
思い通りにならない人間が好き。その意味は、リデルにはよくわからなかった。まばたきを繰り返すリデルを前に、アーガストは滔々と語る。
「だが世間の連中はそうじゃない――だから退屈だ。オレはいつだって完璧で、世界はオレを中心に回ってる。なんだって手に入るし、魔法を使えばできないことなんかない……それも悪くはないけどな」
その退屈を思い出すかのように、アーガストは静かに言った。
伏せられた瞳には影が落とされて、その眉は不満を訴えるかのようによせられる。明るい笑顔ばかり見ていたからだろうか、整った顔立ちの彼が見せる憂いに満ちた表情は、少しだけ怖かった。けれどそれも一瞬のことで、次の瞬間にはまばゆい光が瞳に宿る。向けられた笑顔は、底なしに明るいものだった。
「このオレが主役なんだから、もっと派手に! もっと刺激に満ちているべきだ! そうだろ?」
その言葉に対し、どう反応するべきかはわからなかったけれど。曖昧に、うんともううんとも言えない相槌をうったリデルのことは気にせず、アーガストは言葉を続ける。
「だが、さすがに刺激のネタも尽きてきてな。そんなときお前の話を聞いた。本当にマリーが言うような奴なら……」
その先が紡がれることはなかった。
言わなくてもわかるだろうとでも言いたげに向けられた微笑みには、「かっこいい」という褒め言葉がふさわしい。その笑顔に背中を押されるように、思わずリデルは話し出していた。
「……それなら……それなら、いつでも遊びに来てくれたら……」
こんなことを言ったのは生まれて初めてだった。
人が嫌いというわけではない。むしろ、他者との関わりや会話に飢えている方だという自覚はあった。素直にそう言うことができないのは、ただ単におそれているからだ。
踏み入らずに、薄氷をなぞるべきだと思っていた。それが、父親との関わり方の正解だったから。
――わたしは、あなたともっと仲良くなりたいの。
それでも思い出すのは、あの日少女が自分へと向けた言葉。不思議と心に残り続けるのは、そう言われたとき言いようもない嬉しさを感じたから、なのかもしれない。
「本当か!?」
「う、うん。そんなに楽しいものはないけど……」
「いや、お前たちがいるならどこだって楽しい! ありがとな!」
太陽のような笑顔を向けられて、リデルは少し身を引いてしまう。照らされることには慣れていない。できるならば、自分は差し込む光を日陰から眺めていたかった。
それでも自分から日の下へと歩みを進めたのだという落ち着かなさとくすぐったさが相まって、曖昧に下手な笑みを浮かべた。
「……おい、勝手に決めるなよ。俺は……」
「そんな寂しいこと言うなって! 仲良くしたいって言っただろ?」
口を開こうとしたマグレヴァーを遮り、快活な声が響く。先ほどから、二人はずっとこのようなやり取りをしているような気がした。
「うざ……。俺と仲良くしてなんのメリットがあんだよ」
「人付き合いはメリットじゃないだろ。……お前はオレを好きじゃない! から、好きだ!」
「は?」
「大体の連中は、オレのことが好きだろ? そうじゃない奴はめずらしい。お前も、オレの常識が通用しない変な奴ってことだ!」
「……意味わかんねえ……」
その声は相変わらず冷たかったけれど、最初のような刺々しさはだいぶ薄れているような気がした。