友達じゃなくなる夜
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治は 私の幼馴染で 大切な友達で 心の拠り所やった
仕事で嫌なことがあったり 最近付き合い始めた彼氏と何かある度に つい連絡をしてしまう
治は そんな私の元に 必ず駆けつけてくれる
嫌な顔せず話を聞いてくれて それだけで救われる夜は今まで 何度もあった
今夜だってそう
コンビニの駐車場に停めた車の中で 治が買ってくれた温かいコーヒーを飲みながら 彼氏の話を聞いてもらってる
「また知らん女と連絡取っとったんやけど。浮気やんな」
「2回目やっけ?」
「いや、3回目」
「ふぅん。せやけど、そいつんこと好きなんやろ」
「好き、やな たぶん」
迷いが出た
今までやったら「うん」ってはっきり言うてたと思う
なんやろう ちょっと疲れてるんかも知れへん
「そいつ ひかりのことほんまに好きやと思う?」
治の言葉に 痛いところを突かれた そんな気分
「そら、好きやろ。だから付き合うてるんちゃうん?いつも 好きやて言うてくれるし」
思わず ムキになって返した
「ほんまに大事や思っとったら ひかりを悲しませるようなこと せんやろ」
治の言うとることド正論やねんな
だから痛い
あんまり ここまではっきり言われたことないかも
もしかしたら今日 治の機嫌あんま良くなかったんかもしれんとか 疲れとるんかなとか
急に呼び出してしもたけど ほんまは嫌やったとか
色々考えられるけど
なんも言い返されへんでシュンとしとる私を 治は黙って見とった
呆れられてるんかも知れへん
会話が 途切れた後 静かに車を走らせた治
いつもみたく 家まで送ってくれるんやと思う
私は窓から見える 夜の街の明かりをぼーっと眺めていた
私の家の前に着いて
「ありがとう」ってお礼を伝える
家まで送ってくれたこと
すぐ会いに来てくれたこと
話を聞いてくれたことに対するお礼
ほんまに 治には 感謝してもしきれへん
こうやって ちょっとくらい気まずくなっても
たぶん私はまた すぐ治に連絡してしまう
『ほな、また』
いつもみたいにそんな感じで バイバイするって思ってた
車から降りようとする私の手を 握るようにした治
「えっ?」
そのままグイッと引き寄せられる
もう片方の手は 私の後頭部を思いっきり掴んどった
唇には 柔らかい感触
キスされたんやなって やっと理解が追いついた時 ゆっくりと唇は離された
なんで?
治 一体どういうつもりなん
驚いて声が出えへん
「お前も したったらええやん」
「な、にを」
さっきまであんなに近づいとったのに
今は私に顔を背けて 窓の外を見とる治
「そいつ 困らせること」
治が したいこと 全然わからへん
「彼氏のこと困らせて 何か変わるん?」
「なんも変わらへんやろな。何遍でも許すから 同じことするんやろ」
それはたぶん 私の彼氏のことを言うとるんやろう
浮気を繰り返されてること 私が全部包み隠さず話すから 治は知ってる
「なんで こんなことするん。私のこと 好きでもないのに、治、なんで…」
ひどく動揺してる私に
「男なんかみんな一緒や。ひかりの男もそうやんか。好きやなくてもキスもできるし 抱ける」
「最低。意味、わからん」
「俺からしたら、なんぼ浮気されても許すお前の方が意味わからんわ」
なんでそんな言い方するん
治に こんなこと言われたん初めてやった
こんな言い方するくせに
なんであんな優しいキスすんねん
「俺は一回の浮気も許さんで」
それ どういう意味なん
意味わからん ほんまにわからん
「もう俺んこと頼るな。彼氏と仲良うやれや」
衝撃やった
なんか 怒らせてしもたんやろなって思ったんやけど 直接的な原因がわからん
何より今は 治にこんなん言われたショックが大きくて何も考えられへん
頭の中 真っ白や
なんで
なんでそんなん言うん?って思ったけど
『ほな、また』そんな言葉ももちろんあるわけない
静まり返る車内
私は逃げるように車から出て 家に入った
キス されて
あんなん言われて
もう友達で おられへんの
なんで
ひどく気が動転して 家に入るなりポロポロと涙が溢れた
長年一緒におった大切な友人の一人
治は 私の心の拠り所やった
なんでなん?
なんで 失わなあかんかったんやろ
私 そない悪いこと言うた?なんか怒らせてしもた?
翌日になり おはようって何気ないLINEを送ってみたけど返事が来ることはない
既読すらつかへんかった
胸が締め付けられるみたいに 苦しい
何が あかんかったんやろう
わからんまま 時間だけが過ぎていった
彼氏との関係はますます悪化した
大切にされてへんかもしれへん
ふと思い浮かぶ治のこと
治と話したい
寂しい
彼氏と喧嘩したり 泣かされたり それとはまた違う 初めて味わう 孤独のような寂しさが私を襲った
今やったら あの時治が言うてたこと ちょっとはわかる
「私のこと 好き?」
そんなこと 彼氏に聞くのもアホらしく思えた
結局私は 自ら別れを選んだのだった
怖くて しばらく見てへんかった 治とのLINE
以前送った数通のメッセージは既読がついていた
ブロック されてるわけではなさそうや
私は 意を決して 治にメッセージを送信する
「今日 会われへんかな?」
珍しく返信がきた
久しぶりに会う治
いつもとおんなじ車内の香り
いつもとおんなじコンビニの駐車場
いつもとちょっと違うんは 治の態度が よそよそしいことくらいや
「あの日 なんであんなことしたん?」
思い切って 聞いてみる
「なんでわからへんねん」って
やっぱり 治はあの日の答えを教えてはくれへん
怖くて 彼氏の話は一言も出せへんかった
治の方から それを聞いてくることもなかった
なんやろう
気まずいし 特に会話もない
前みたいに笑い合える関係に戻りたい
大切な友人やった治を 私は失いたくない
「友達として、また仲良ぅできへんやろうか」
「無理やろ」
なんで そんなん言うん
なんで私にキスなんかしたん
あんなん無かったら こんなことなってへんやん
「じゃあなんであの日あんなことしたんか 答えてや」
少し 声を荒げてしまう
「忘れて」
「え?」
「あの日のこと忘れたら、また友達としてやっていけるんとちゃう」
やっぱり 治は答えを教えてくれへんの
でも私は 治と友達やったあの頃に戻りたい
せやから ブンブンと首を縦に振って 治の要求を飲んだ
あんな夜 無かったことにしたらええ
私は 治を 大切な友達を失いたくない
それからは積極的に治を誘って 少し開いてしまった距離を縮めるように 何度も会うた
逆に 治は私と距離を取ろうとしてる そんな気がした
でも 今までみたいに戻りたかった私は 何度も「友達として」でええから「治のこと 大切やねん」そんな気持ちを伝えて
治も そんな私に また少しずつ心を許してくれたんか
ほんの少しずつやけど 前みたいな距離感で 一緒に居ってくれるようになった
嬉しい めっちゃ嬉しい
それでもな 何かが前と違うんよ
私は それに気付いてしまった
私の心や
治のさりげない仕草 笑顔 それが私をドキドキさせとるもんやっちゅうことに
今 ようやく気付いた
こんな気持ちもそうやし 治を失いたくないって必死になった気持ちもそうや
元カレの時には 感じたことのないもんやねん
明らかに 元カレに対するもんと違う感覚
どうしようもない
私 治のことを好きなんや
そうと気付いてからは 触れたい
そんな気持ちが強くなった
会いたい 近くにおりたい 触れられたい
治と キス したい
あの夜のことを無かったことにしたらええと思っとった
無理やねん
無かったことにせんとってほしい
私は できひん
あの夜が 治のキスが 私の心を変えてしまった
もう ほんまに 友達で おられへんようになる
「話がある」
いつもとおんなじ車内の香り
いつもとおんなじコンビニの駐車場
いつもと違うんは この恋に気付いてしまった私の心
「どないしたん、改まって」
柄にも無く 緊張してるんが治にも伝わったんやろう
さっき 治が買ってくれたカフェオレのカップを 何度も何度も 触る
「ごめん」
「何が、ごめんなん?」
「私、あの日のこと 忘れられへん」
治の表情が固まる
もう 友達ではおられへん
「治はあのキスを忘れてって 言うたけど、無かったことにせんとってほしい。私は治のことが好きやねん」
私の告白を 治は黙って聞いとった
「治にとっては 悪ふざけとか悪戯とか魔がさしたとか そんなんやったんかもしれへんけど 私はちゃうよ。あの日からずっと治のこと考えてる。治が好き」
「あほやなぁ」
そんな声がしたと思ったら ガバッとすごい勢いで抱きしめられた
「悪ふざけでも 悪戯でも 魔がさしたわけでもないで」
「ほな、なんでなん」
治の胸に顔を押しつけられとるから くぐもった声しか出ぇへん
なぁ治 お願いや
ええ加減 答えを 教えて
「ひかりの男の話、聞くん しんどなってん。腹立ってきて我慢できへんかった。ひかりのことが好きやから」
「嘘」
「嘘とちゃう。ずっと、好きやった」
嬉しい
治の背中に回した手に力を込めると 治はそれに応えるよう 私のことを抱きしめる腕の力をより一層強めた
「彼氏、どないしてん」
「あの後、すぐ別れた」
「早よ言わんかい。何のために連絡せんかったと思てんねん」
「知らんよ、そんなん。わからへんやろ」
「もう逃さへんけど」
「うん」
「俺は 一遍でも浮気したら許されへんけど」
「せんよ」
「俺はひかりのこと悲しませたりせぇへん」
「そうやと思うわ」
「気付くん、遅ない?」
「もう、ごめんって」
少し離された身体
治の手が私の頬に触れる
あの夜とおんなじ コンビニの駐車場
あの夜とおんなじ 重なる唇
あの夜と違うんは 今度こそ互いに気持ちを確認するような 優しく 温かい口づけ
私たちの関係は 友達から恋人になった
それから治は 今まで以上に私を大切にしてくれた
友達やった頃と違うことは当たり前にある
それが照れくさかったりするし 戸惑ったりもある
せやけど それら全部が愛おしく思えた
友達やなくなった夜
それも全部 かけがえのない愛しい記憶
仕事で嫌なことがあったり 最近付き合い始めた彼氏と何かある度に つい連絡をしてしまう
治は そんな私の元に 必ず駆けつけてくれる
嫌な顔せず話を聞いてくれて それだけで救われる夜は今まで 何度もあった
今夜だってそう
コンビニの駐車場に停めた車の中で 治が買ってくれた温かいコーヒーを飲みながら 彼氏の話を聞いてもらってる
「また知らん女と連絡取っとったんやけど。浮気やんな」
「2回目やっけ?」
「いや、3回目」
「ふぅん。せやけど、そいつんこと好きなんやろ」
「好き、やな たぶん」
迷いが出た
今までやったら「うん」ってはっきり言うてたと思う
なんやろう ちょっと疲れてるんかも知れへん
「そいつ ひかりのことほんまに好きやと思う?」
治の言葉に 痛いところを突かれた そんな気分
「そら、好きやろ。だから付き合うてるんちゃうん?いつも 好きやて言うてくれるし」
思わず ムキになって返した
「ほんまに大事や思っとったら ひかりを悲しませるようなこと せんやろ」
治の言うとることド正論やねんな
だから痛い
あんまり ここまではっきり言われたことないかも
もしかしたら今日 治の機嫌あんま良くなかったんかもしれんとか 疲れとるんかなとか
急に呼び出してしもたけど ほんまは嫌やったとか
色々考えられるけど
なんも言い返されへんでシュンとしとる私を 治は黙って見とった
呆れられてるんかも知れへん
会話が 途切れた後 静かに車を走らせた治
いつもみたく 家まで送ってくれるんやと思う
私は窓から見える 夜の街の明かりをぼーっと眺めていた
私の家の前に着いて
「ありがとう」ってお礼を伝える
家まで送ってくれたこと
すぐ会いに来てくれたこと
話を聞いてくれたことに対するお礼
ほんまに 治には 感謝してもしきれへん
こうやって ちょっとくらい気まずくなっても
たぶん私はまた すぐ治に連絡してしまう
『ほな、また』
いつもみたいにそんな感じで バイバイするって思ってた
車から降りようとする私の手を 握るようにした治
「えっ?」
そのままグイッと引き寄せられる
もう片方の手は 私の後頭部を思いっきり掴んどった
唇には 柔らかい感触
キスされたんやなって やっと理解が追いついた時 ゆっくりと唇は離された
なんで?
治 一体どういうつもりなん
驚いて声が出えへん
「お前も したったらええやん」
「な、にを」
さっきまであんなに近づいとったのに
今は私に顔を背けて 窓の外を見とる治
「そいつ 困らせること」
治が したいこと 全然わからへん
「彼氏のこと困らせて 何か変わるん?」
「なんも変わらへんやろな。何遍でも許すから 同じことするんやろ」
それはたぶん 私の彼氏のことを言うとるんやろう
浮気を繰り返されてること 私が全部包み隠さず話すから 治は知ってる
「なんで こんなことするん。私のこと 好きでもないのに、治、なんで…」
ひどく動揺してる私に
「男なんかみんな一緒や。ひかりの男もそうやんか。好きやなくてもキスもできるし 抱ける」
「最低。意味、わからん」
「俺からしたら、なんぼ浮気されても許すお前の方が意味わからんわ」
なんでそんな言い方するん
治に こんなこと言われたん初めてやった
こんな言い方するくせに
なんであんな優しいキスすんねん
「俺は一回の浮気も許さんで」
それ どういう意味なん
意味わからん ほんまにわからん
「もう俺んこと頼るな。彼氏と仲良うやれや」
衝撃やった
なんか 怒らせてしもたんやろなって思ったんやけど 直接的な原因がわからん
何より今は 治にこんなん言われたショックが大きくて何も考えられへん
頭の中 真っ白や
なんで
なんでそんなん言うん?って思ったけど
『ほな、また』そんな言葉ももちろんあるわけない
静まり返る車内
私は逃げるように車から出て 家に入った
キス されて
あんなん言われて
もう友達で おられへんの
なんで
ひどく気が動転して 家に入るなりポロポロと涙が溢れた
長年一緒におった大切な友人の一人
治は 私の心の拠り所やった
なんでなん?
なんで 失わなあかんかったんやろ
私 そない悪いこと言うた?なんか怒らせてしもた?
翌日になり おはようって何気ないLINEを送ってみたけど返事が来ることはない
既読すらつかへんかった
胸が締め付けられるみたいに 苦しい
何が あかんかったんやろう
わからんまま 時間だけが過ぎていった
彼氏との関係はますます悪化した
大切にされてへんかもしれへん
ふと思い浮かぶ治のこと
治と話したい
寂しい
彼氏と喧嘩したり 泣かされたり それとはまた違う 初めて味わう 孤独のような寂しさが私を襲った
今やったら あの時治が言うてたこと ちょっとはわかる
「私のこと 好き?」
そんなこと 彼氏に聞くのもアホらしく思えた
結局私は 自ら別れを選んだのだった
怖くて しばらく見てへんかった 治とのLINE
以前送った数通のメッセージは既読がついていた
ブロック されてるわけではなさそうや
私は 意を決して 治にメッセージを送信する
「今日 会われへんかな?」
珍しく返信がきた
久しぶりに会う治
いつもとおんなじ車内の香り
いつもとおんなじコンビニの駐車場
いつもとちょっと違うんは 治の態度が よそよそしいことくらいや
「あの日 なんであんなことしたん?」
思い切って 聞いてみる
「なんでわからへんねん」って
やっぱり 治はあの日の答えを教えてはくれへん
怖くて 彼氏の話は一言も出せへんかった
治の方から それを聞いてくることもなかった
なんやろう
気まずいし 特に会話もない
前みたいに笑い合える関係に戻りたい
大切な友人やった治を 私は失いたくない
「友達として、また仲良ぅできへんやろうか」
「無理やろ」
なんで そんなん言うん
なんで私にキスなんかしたん
あんなん無かったら こんなことなってへんやん
「じゃあなんであの日あんなことしたんか 答えてや」
少し 声を荒げてしまう
「忘れて」
「え?」
「あの日のこと忘れたら、また友達としてやっていけるんとちゃう」
やっぱり 治は答えを教えてくれへんの
でも私は 治と友達やったあの頃に戻りたい
せやから ブンブンと首を縦に振って 治の要求を飲んだ
あんな夜 無かったことにしたらええ
私は 治を 大切な友達を失いたくない
それからは積極的に治を誘って 少し開いてしまった距離を縮めるように 何度も会うた
逆に 治は私と距離を取ろうとしてる そんな気がした
でも 今までみたいに戻りたかった私は 何度も「友達として」でええから「治のこと 大切やねん」そんな気持ちを伝えて
治も そんな私に また少しずつ心を許してくれたんか
ほんの少しずつやけど 前みたいな距離感で 一緒に居ってくれるようになった
嬉しい めっちゃ嬉しい
それでもな 何かが前と違うんよ
私は それに気付いてしまった
私の心や
治のさりげない仕草 笑顔 それが私をドキドキさせとるもんやっちゅうことに
今 ようやく気付いた
こんな気持ちもそうやし 治を失いたくないって必死になった気持ちもそうや
元カレの時には 感じたことのないもんやねん
明らかに 元カレに対するもんと違う感覚
どうしようもない
私 治のことを好きなんや
そうと気付いてからは 触れたい
そんな気持ちが強くなった
会いたい 近くにおりたい 触れられたい
治と キス したい
あの夜のことを無かったことにしたらええと思っとった
無理やねん
無かったことにせんとってほしい
私は できひん
あの夜が 治のキスが 私の心を変えてしまった
もう ほんまに 友達で おられへんようになる
「話がある」
いつもとおんなじ車内の香り
いつもとおんなじコンビニの駐車場
いつもと違うんは この恋に気付いてしまった私の心
「どないしたん、改まって」
柄にも無く 緊張してるんが治にも伝わったんやろう
さっき 治が買ってくれたカフェオレのカップを 何度も何度も 触る
「ごめん」
「何が、ごめんなん?」
「私、あの日のこと 忘れられへん」
治の表情が固まる
もう 友達ではおられへん
「治はあのキスを忘れてって 言うたけど、無かったことにせんとってほしい。私は治のことが好きやねん」
私の告白を 治は黙って聞いとった
「治にとっては 悪ふざけとか悪戯とか魔がさしたとか そんなんやったんかもしれへんけど 私はちゃうよ。あの日からずっと治のこと考えてる。治が好き」
「あほやなぁ」
そんな声がしたと思ったら ガバッとすごい勢いで抱きしめられた
「悪ふざけでも 悪戯でも 魔がさしたわけでもないで」
「ほな、なんでなん」
治の胸に顔を押しつけられとるから くぐもった声しか出ぇへん
なぁ治 お願いや
ええ加減 答えを 教えて
「ひかりの男の話、聞くん しんどなってん。腹立ってきて我慢できへんかった。ひかりのことが好きやから」
「嘘」
「嘘とちゃう。ずっと、好きやった」
嬉しい
治の背中に回した手に力を込めると 治はそれに応えるよう 私のことを抱きしめる腕の力をより一層強めた
「彼氏、どないしてん」
「あの後、すぐ別れた」
「早よ言わんかい。何のために連絡せんかったと思てんねん」
「知らんよ、そんなん。わからへんやろ」
「もう逃さへんけど」
「うん」
「俺は 一遍でも浮気したら許されへんけど」
「せんよ」
「俺はひかりのこと悲しませたりせぇへん」
「そうやと思うわ」
「気付くん、遅ない?」
「もう、ごめんって」
少し離された身体
治の手が私の頬に触れる
あの夜とおんなじ コンビニの駐車場
あの夜とおんなじ 重なる唇
あの夜と違うんは 今度こそ互いに気持ちを確認するような 優しく 温かい口づけ
私たちの関係は 友達から恋人になった
それから治は 今まで以上に私を大切にしてくれた
友達やった頃と違うことは当たり前にある
それが照れくさかったりするし 戸惑ったりもある
せやけど それら全部が愛おしく思えた
友達やなくなった夜
それも全部 かけがえのない愛しい記憶
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