この秘密は墓場まで持っていくわ
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それから数日が経った
終わりの見えんかったあの悪阻地獄 そのピークをやっと過ぎた気がする 少しやけど 気持ち悪さが和らいどる このままマシになってくれたらええなぁ
夕方までに仕事を終わらせて 妊婦検診に向かった
あんな状況で心配やったけど お腹の子は順調に育っとった
生命ってすごいなぁ そんなことをぼんやり思う
これが手で 足で…エコーを見て微笑む 唯一 幸せを感じて 心が安らぐ時間やった
その後 スーパーで食べれそうな食材を選ぶ やらなあかん仕事が山積みや 楽にインスタントで済ませたい せやけど お腹の子の為にも ちゃんと自炊したほうがええんやろなぁ そんなことを思いながら 適当な材料を少しだけ買って帰路に着く
昼の仕事の売上 予約の管理したりSNSの更新 備品の発注
夜の仕事も行かな そろそろママに連絡せなあかんなぁ お腹が目立ってくるギリギリまで働きたい
引っ越すとこを探したり 侑の試合のチケットを取ったり 体調が良くなったらなったで やることってようさんある
家に着いて アパートの階段を2階に上がる
部屋に着く前に 鍵を取り出そうと 鞄をごそごそと漁る
「なんで連絡してこうへんねん」
その声がしたほうを見ると 私の部屋の前 この古いアパートには不似合いな男が立っとる
そうやな たしかに私 また連絡するて言うて あの日帰らせたわ
でも あれは嘘
もう会うつもりなかってんもん
「平気で嘘つくんやめや」
平気で嘘ついとるて 誰のために 言うとる思てんねん
私みたいな女に関わらん方がええのに なんで家まで来るかな
何が侑を ここまでさせるんか 私にはわからん
とにかく こんなわけのわからん寂れたアパートは似合わんを通り越してもう滑稽やわ
「帰って」
「なんで俺のこと避けるん? なんで俺に嘘つくん?夜の仕事辞めろ言うたやろ?」
答えにくい質問やな それに答えやなあかん理由てなに
「帰らへんのやったら警察呼ぶわ」
脅しのつもりやった 軽く上げた左手 持っとったスマホは一瞬で奪われる
「俺 彼女と別れとるしお前以外と会うてへんて言うたやん なんで信じてくれへんねん」
まだその話しとったん?
って思ったけど そういえばあの日 そんな話したわ
侑に本命の女がおって 私が遊び…やと思ってたら違った そんな否定から始まって
なんや気分悪かったからはっきり覚えてへんけど
全部あの女の人のせいにしたろ思たんやった
だからて 突然 家に来る?
こんな家に何度も来てほしないねん
近隣の目もあるし 一応侑は有名人や
あんまり外でゴタゴタしたないほんまにこの家にあげたないんやけど しゃあない
部屋の鍵を開けたら 当たり前に勝手に入ってきた
「スマホ返して」
「俺のこと避けとる理由 言うたら返したるわ」
狭い部屋やから 侑がおったら圧迫感がすごい
渋々椅子を渡す
何を言うたら 満足して帰るんやろうか
何も言えんなぁ 侑のほうをみたら 眉間に皺寄せて なんとも言えん顔しとる たぶん私も似たような表情しとると思う
「俺 また振られるん?」
侑から出たんは 思ってもない言葉やった
またて 昔のこと言うとるんやろうか
「振られる てなに 私ら別に付き合うてへんかったやん」
「それ ほんまに言うとるん」
突然左手を掴まれて 戸惑う
「俺は好きやなかったら あんなに連絡せぇへんし 会えへん」
それ なんで一緒におる時に言うてくれへんかったん
そしたらもうちょっと 前向きに色々考えられたかもしれん
「ひかりは違うん?好きやないのに 俺とおったん?」
好きに決まっとるやろ
せやけどな 私が身の程知らずなんよ それはあの頃から一緒 なんも変わらへん事実や
私と侑は 誰が見ても釣り合えへんの
これ以上ないその理由を 教えたるわ
「私な 身寄りがおらんねん」
侑はそれがどないしたん? とでも言うような表情を浮かべる
「で?」
でって……
「他の子みたいに 普通とちゃうねんで」
「で?」
「仕事も 長いこと夜しとったから 良くないイメージ持つ人多いやろし」
そんなんも調べたらすぐわかる世の中やし 簡単に拡散されて あることないこと言われる時代や 色々めんどいやろ
「で?」
なんやねん その だから何?みたいなん
なんなん
こわいわ
なんでこっちが追い詰められとるみたいに言葉失うねん
ほなとっておき出したるわ
これはな 墓場まで持っていくって決めとったんやで 嘘とちゃう 覚悟しとった
侑のせいやで 全部侑のせい
さすがに「で?」では済まんこと言うたるわ
「子どもおる」
「は?どこに」
「お腹に。もう4ヶ月…なるなぁ」
言うてしもた
侑の顔見れん
お願いや
それ俺の子とちゃうやろとか言わんといて
それやったら「で?」言われるほうがマシやわ
返ってくる言葉が怖くて 言うてしもたこと後悔する
「認知もしていらん 絶対誰にも言わん
何もしてくれんでええ
私 こんなボロいとこ住んどるけど 今まで貯めとったお金もあるし 幸い 昼の仕事も軌道に乗ってきとるし 困ったら夜のバイトもあるし…
何もしてくれんでええ」
でもほんまは
子どもには お父さんすごい人なんやで かっこええんやでて 言いたいわ
半年に一回でもええ 会うてやってほしい
お父さんもあんたのこと愛しとるでって 言うたりたい
どれもこれも 言えん
言葉を飲み込むように口を押さえた
子どもデキた言うたら さすがに逃げるやろ
自分が蒔いた種やったとしても 厄介ごとに巻き込まれたくないやろうし 侑の立場上アウトなこともあるやろう
掴んでた私の左手 その指に撫でるよう触れた
「認知?がなんやて…なんで一人で育てるん前提なん」
「せやからさっき言うたやん 私みたいな女と 侑は釣り合わへん」
「それは俺が決めることや」
まだ顔は見られへん 侑の綺麗な指先を見つめる
「もう体調良うなったん?」
そう聞かれて 小さく頷く
あん時のあれ 悪阻やったって わかったんやろうか
「俺の子とちゃうやろて 言わんの?」
「なんでやねん 俺の子以外に誰おんねん 身に覚えありすぎるわ」
ちゃうん?て首傾げるから「ちゃうことない」て答える
「だって 他の男と寝とったかもしれへんやん」
「ないやろ」
「侑 私のこと 軽い女や思てへんの?」
「思たことないわアホ」
何を言うとんねん そう言いたげな表情
「あれで遊んどるんやったら下手すぎるやろ 震えとったし」
何の話⁉︎言いたいことがわかってしまって 顔が熱くなる
下手って失礼やな 誰かと比べるんやめて
そんな 言い返せそうな言葉は一応思いつくけど それが今 適切かはわからへん
「一人で育てるて 勝手に決めんな
なんでお前はいつも俺やったらあかんねん」
勝手に決めんなとかは言われてもしゃあないとして
「いつもて何」
「高校ん時 俺と別れてすぐ ちゃう男と付き合うとった」
あぁ そうやったなぁ
もう相手の名前も思い出されへんけど 田中くん?山田くん? なんやったっけ
侑と別れる理由欲しさに ちゃう男と付き合おうとしたんやった
結局あの後も 浮気したやの乗り換えたやのなんやの 侑のファンの女に叩かれて散々やったけど
「あれは 侑のことを忘れる為やで」
「わけわからん」
わからんでええわ 今更やし
侑がそんなこと 今もまだ覚えとるんが意外やった
「普通とちゃうとか イメージが悪いとか 全部どうでもええねん 俺がひかりを好きやったら それでええやろ」
なんでそんなに嬉しい言葉ばっかりくれるん
「偶然会うた時 運命や思たわ たぶん俺 この先この子と一緒におるなて そんな気したんやけど」
俺だけなん?て
そう たぶんそれは侑だけやねん
「私には 一緒に居れる未来が全く見えんかった」
正直にそう伝えると少し寂しそうに笑う
「せやけど 俺のこと好きやろ?」
耐えられへん ぼろっぼろに涙溢れてる 当たり前に好きなんバレるやんこんなん
「…好きやなぁ」
めちゃくちゃ 好き 身の程知らず わかっとる でもこればっかりはどうしようもないねん
「ほな これからは 俺と一緒におる未来しか見えへんようにしたる」
強い眼差し 冗談で言うとるようには 見えへん
「身寄りおらへんことの何が悪いん? 今まで一人でよぁ頑張ったなて褒めるとこやろ」
そう言うて 頭を優しく撫でてくれた
「これからは俺がおったるし こいつもおるで」
身の程知らずやって言わへんの
俺の子とちゃうって言わへんの
それどころか未来まで見せてくれる言うん
この子のことも 好きな人を想う気持ちも
誰にも言えへんて秘密にして 墓場まで持っていくつもりやったんやけど
「ひかりのことも この子のことも 俺が絶対幸せにしたる」
誰よりも愛の深い男のおかげで その必要はなくなってしまった
終わりの見えんかったあの悪阻地獄 そのピークをやっと過ぎた気がする 少しやけど 気持ち悪さが和らいどる このままマシになってくれたらええなぁ
夕方までに仕事を終わらせて 妊婦検診に向かった
あんな状況で心配やったけど お腹の子は順調に育っとった
生命ってすごいなぁ そんなことをぼんやり思う
これが手で 足で…エコーを見て微笑む 唯一 幸せを感じて 心が安らぐ時間やった
その後 スーパーで食べれそうな食材を選ぶ やらなあかん仕事が山積みや 楽にインスタントで済ませたい せやけど お腹の子の為にも ちゃんと自炊したほうがええんやろなぁ そんなことを思いながら 適当な材料を少しだけ買って帰路に着く
昼の仕事の売上 予約の管理したりSNSの更新 備品の発注
夜の仕事も行かな そろそろママに連絡せなあかんなぁ お腹が目立ってくるギリギリまで働きたい
引っ越すとこを探したり 侑の試合のチケットを取ったり 体調が良くなったらなったで やることってようさんある
家に着いて アパートの階段を2階に上がる
部屋に着く前に 鍵を取り出そうと 鞄をごそごそと漁る
「なんで連絡してこうへんねん」
その声がしたほうを見ると 私の部屋の前 この古いアパートには不似合いな男が立っとる
そうやな たしかに私 また連絡するて言うて あの日帰らせたわ
でも あれは嘘
もう会うつもりなかってんもん
「平気で嘘つくんやめや」
平気で嘘ついとるて 誰のために 言うとる思てんねん
私みたいな女に関わらん方がええのに なんで家まで来るかな
何が侑を ここまでさせるんか 私にはわからん
とにかく こんなわけのわからん寂れたアパートは似合わんを通り越してもう滑稽やわ
「帰って」
「なんで俺のこと避けるん? なんで俺に嘘つくん?夜の仕事辞めろ言うたやろ?」
答えにくい質問やな それに答えやなあかん理由てなに
「帰らへんのやったら警察呼ぶわ」
脅しのつもりやった 軽く上げた左手 持っとったスマホは一瞬で奪われる
「俺 彼女と別れとるしお前以外と会うてへんて言うたやん なんで信じてくれへんねん」
まだその話しとったん?
って思ったけど そういえばあの日 そんな話したわ
侑に本命の女がおって 私が遊び…やと思ってたら違った そんな否定から始まって
なんや気分悪かったからはっきり覚えてへんけど
全部あの女の人のせいにしたろ思たんやった
だからて 突然 家に来る?
こんな家に何度も来てほしないねん
近隣の目もあるし 一応侑は有名人や
あんまり外でゴタゴタしたないほんまにこの家にあげたないんやけど しゃあない
部屋の鍵を開けたら 当たり前に勝手に入ってきた
「スマホ返して」
「俺のこと避けとる理由 言うたら返したるわ」
狭い部屋やから 侑がおったら圧迫感がすごい
渋々椅子を渡す
何を言うたら 満足して帰るんやろうか
何も言えんなぁ 侑のほうをみたら 眉間に皺寄せて なんとも言えん顔しとる たぶん私も似たような表情しとると思う
「俺 また振られるん?」
侑から出たんは 思ってもない言葉やった
またて 昔のこと言うとるんやろうか
「振られる てなに 私ら別に付き合うてへんかったやん」
「それ ほんまに言うとるん」
突然左手を掴まれて 戸惑う
「俺は好きやなかったら あんなに連絡せぇへんし 会えへん」
それ なんで一緒におる時に言うてくれへんかったん
そしたらもうちょっと 前向きに色々考えられたかもしれん
「ひかりは違うん?好きやないのに 俺とおったん?」
好きに決まっとるやろ
せやけどな 私が身の程知らずなんよ それはあの頃から一緒 なんも変わらへん事実や
私と侑は 誰が見ても釣り合えへんの
これ以上ないその理由を 教えたるわ
「私な 身寄りがおらんねん」
侑はそれがどないしたん? とでも言うような表情を浮かべる
「で?」
でって……
「他の子みたいに 普通とちゃうねんで」
「で?」
「仕事も 長いこと夜しとったから 良くないイメージ持つ人多いやろし」
そんなんも調べたらすぐわかる世の中やし 簡単に拡散されて あることないこと言われる時代や 色々めんどいやろ
「で?」
なんやねん その だから何?みたいなん
なんなん
こわいわ
なんでこっちが追い詰められとるみたいに言葉失うねん
ほなとっておき出したるわ
これはな 墓場まで持っていくって決めとったんやで 嘘とちゃう 覚悟しとった
侑のせいやで 全部侑のせい
さすがに「で?」では済まんこと言うたるわ
「子どもおる」
「は?どこに」
「お腹に。もう4ヶ月…なるなぁ」
言うてしもた
侑の顔見れん
お願いや
それ俺の子とちゃうやろとか言わんといて
それやったら「で?」言われるほうがマシやわ
返ってくる言葉が怖くて 言うてしもたこと後悔する
「認知もしていらん 絶対誰にも言わん
何もしてくれんでええ
私 こんなボロいとこ住んどるけど 今まで貯めとったお金もあるし 幸い 昼の仕事も軌道に乗ってきとるし 困ったら夜のバイトもあるし…
何もしてくれんでええ」
でもほんまは
子どもには お父さんすごい人なんやで かっこええんやでて 言いたいわ
半年に一回でもええ 会うてやってほしい
お父さんもあんたのこと愛しとるでって 言うたりたい
どれもこれも 言えん
言葉を飲み込むように口を押さえた
子どもデキた言うたら さすがに逃げるやろ
自分が蒔いた種やったとしても 厄介ごとに巻き込まれたくないやろうし 侑の立場上アウトなこともあるやろう
掴んでた私の左手 その指に撫でるよう触れた
「認知?がなんやて…なんで一人で育てるん前提なん」
「せやからさっき言うたやん 私みたいな女と 侑は釣り合わへん」
「それは俺が決めることや」
まだ顔は見られへん 侑の綺麗な指先を見つめる
「もう体調良うなったん?」
そう聞かれて 小さく頷く
あん時のあれ 悪阻やったって わかったんやろうか
「俺の子とちゃうやろて 言わんの?」
「なんでやねん 俺の子以外に誰おんねん 身に覚えありすぎるわ」
ちゃうん?て首傾げるから「ちゃうことない」て答える
「だって 他の男と寝とったかもしれへんやん」
「ないやろ」
「侑 私のこと 軽い女や思てへんの?」
「思たことないわアホ」
何を言うとんねん そう言いたげな表情
「あれで遊んどるんやったら下手すぎるやろ 震えとったし」
何の話⁉︎言いたいことがわかってしまって 顔が熱くなる
下手って失礼やな 誰かと比べるんやめて
そんな 言い返せそうな言葉は一応思いつくけど それが今 適切かはわからへん
「一人で育てるて 勝手に決めんな
なんでお前はいつも俺やったらあかんねん」
勝手に決めんなとかは言われてもしゃあないとして
「いつもて何」
「高校ん時 俺と別れてすぐ ちゃう男と付き合うとった」
あぁ そうやったなぁ
もう相手の名前も思い出されへんけど 田中くん?山田くん? なんやったっけ
侑と別れる理由欲しさに ちゃう男と付き合おうとしたんやった
結局あの後も 浮気したやの乗り換えたやのなんやの 侑のファンの女に叩かれて散々やったけど
「あれは 侑のことを忘れる為やで」
「わけわからん」
わからんでええわ 今更やし
侑がそんなこと 今もまだ覚えとるんが意外やった
「普通とちゃうとか イメージが悪いとか 全部どうでもええねん 俺がひかりを好きやったら それでええやろ」
なんでそんなに嬉しい言葉ばっかりくれるん
「偶然会うた時 運命や思たわ たぶん俺 この先この子と一緒におるなて そんな気したんやけど」
俺だけなん?て
そう たぶんそれは侑だけやねん
「私には 一緒に居れる未来が全く見えんかった」
正直にそう伝えると少し寂しそうに笑う
「せやけど 俺のこと好きやろ?」
耐えられへん ぼろっぼろに涙溢れてる 当たり前に好きなんバレるやんこんなん
「…好きやなぁ」
めちゃくちゃ 好き 身の程知らず わかっとる でもこればっかりはどうしようもないねん
「ほな これからは 俺と一緒におる未来しか見えへんようにしたる」
強い眼差し 冗談で言うとるようには 見えへん
「身寄りおらへんことの何が悪いん? 今まで一人でよぁ頑張ったなて褒めるとこやろ」
そう言うて 頭を優しく撫でてくれた
「これからは俺がおったるし こいつもおるで」
身の程知らずやって言わへんの
俺の子とちゃうって言わへんの
それどころか未来まで見せてくれる言うん
この子のことも 好きな人を想う気持ちも
誰にも言えへんて秘密にして 墓場まで持っていくつもりやったんやけど
「ひかりのことも この子のことも 俺が絶対幸せにしたる」
誰よりも愛の深い男のおかげで その必要はなくなってしまった