病める時も健やかなる時も愛してくれる侑くんの話
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「なに これ」
流れてきたwebニュース そのページを開いて 彼氏である侑の目の前にスマホを叩きつけるように置いた
内容は熱愛報道 お相手は最近売り出し中のモデルや
個室で食事してたとか 親密そうやったとか書かれとって 一緒に数枚の写真も載ってた
これが初めてとちゃう 今までも何回かこういうことがあって 見て見ぬふりもできへん私はその度毎回問い詰めて 結局勘違いやとか大袈裟に書かれてただけやとかで仲直りすんねんけど
もうこれ何回目やねん もうちょい気ぃつけぇやて思うやん 頭痛いわ
その画面をサッとスクロールして 内容を理解したであろう侑
「知らんわ しょーもな」
そう言ってスマホを突き返してきた
写真まで撮られとるくせに 何をしらばっくれとんねんて 私のイライラは収まらへん
「知らんとちゃうやろ 火のないとこに煙は立てへん。写真もあるし しかも相手の子 否定してへんらしいやん」
「知らんて この女の名前も知らんわ。こんなもん俺んとこ来たら否定するだけやし」
侑は悪びれることなく そう言い切った
なんかちょっと慣れてしまってる感じとか 呆れたように笑っとるんも腹立つわ
侑曰く二人で食事に行ったわけやないし 連絡先聞かれたけど交換もしてへんって
いつもならそこまで説明されたら引き下がるし たぶんこの話は終わるんやけど
今日はちゃうねん
気持ちが荒ぶって鎮まらへんの なんや情緒が乱れとる
「言い訳ばっかしもうええねん」って
突き放すみたいにきつく言うたったら ぶわっと涙が溢れ出て なんや気分まで悪なってきた
怒ってるからか 暑い エアコンの温度設定 下げたいくらいや
「この子のほうが私より可愛えしな。スタイルもええし」
「はぁ?」
「有名人同士やし 色々 こう…合うんとちゃう?」
侑はちゃうて言うてるのに 勝手に想像しては余計なことばっかり口走ってまう
「せやから何も無いて言うとるやん しつこない?」
呆れた表情を浮かべた侑にきつく言い返されても 感情をコントロールする機能がぶっ壊れとるみたいで 自分のことやのに止められへん
「もうええし。私なんかいらんやろ」
「何を言うとんねん。なぁ、どないしたん?」
私の様子がおかしいことに気づいたんやろう
「そない疑うんやったら 見たらええわ」
侑が自分のスマホを差し出してくる
無表情で 私の目をじっと見て 様子を伺ってる
「そういうこと 言うてるんとちゃうねん…」
そう言いながらもスマホを受け取って ラインのトーク画面や着信履歴を見て ほっと胸を撫でおろす
私の知らん女の名前や 怪しいやりとりは無い
こんなもん 既に消してる可能性だってある
せやのに 見せてもらって 簡単に信じて それで安心して 何してるんやろ あほみたいやなって思うんやけど
なんかちょっと気済んでまうんが 癪やわ
こういうことがしたかったんとちゃうのに
「なんもないやろ? なぁ?」
そう言って後ろから抱き締められたら まぁええか って やっといつもみたいなそんな気持ちになった
一時的に落ち着いても イライラはまたすぐやってくる
好きな人の息遣いとか 足音すらあかんようになるとか 想像もできへんかった
ここでようやく 原因に気づく
侑とは高校の時から一緒におる
同棲してからは半年くらいが経った
長い期間 それなりに仲良うやってる
けど それは【ある時】を除けばっちゅうことに 最近気付いてん
それは私の生理前
この時期 侑が遠征で家におらん時以外は大体喧嘩になる
PMS 月経前症候群
ここ最近 この症状がひどすぎてイライラがやばい
いつからやろう 体質が変わったんか その時の体調で変わってくるんかはわからん
生理前は毎月や もう普通でおられへん
「いらんこと言うんやったら話しかけんといてくれん」
いつもなら聞き流せることも こうやってきつい言い方をしてしまったり
「なんやねん その言い方」
侑がこうやって怒るのも わかる
あんな言い方しかできへん私が悪いんやけど 今はどうしようもなくて
イライラと悲しいのを交互に繰り返してる感じやねん
こんなこと 男の侑に言うてもわかるわけない
「なん? また生理前?ほんっま機嫌悪なるよな 前からこんなんやったっけ?」
「前より…最近 きつなった。めっちゃしんどなるねん」
これはほんまにそう 今まではもうちょっとマシやった 体質の変化もあるかもしれへんけど 侑と一緒に住むようになってから悪化した気する
距離が近くなった分 曝け出せることも増えて もしかしたら気持ちの緩みとか 甘えてしまってる部分もあるんかもしれへん
「…侑にはこのつらさわからへんやろ」
「そないいしんどいんやったら仕事休めや」
「今日は休まれへんの。大事な会議あんねん」
「身体より大事なもんらないやろ」
「侑はまともに働いたことないからわからへんやろ」
こんなん言うたらあかんことやん
言うてからハッとする
当たり前やんか 侑は普通の会社員とは違う
バレーで結果を出すんが仕事やもん 私なんかより社会人として凄くて立派な位置におるのに そんなことわかってんのに完全に私の八つ当たりで失言してしもてるねん
言いたくないこと 言いすぎて嫌になる
自分でも抑えられへん
これは侑にキレられてもしゃあない そう思って身構える
「ひかり 薬飲んだ?」
予想外の言葉が返ってきた
「…飲んだ」
生理遅れとるんもあるんか いつもより気分が重い
通っとる婦人科で処方してもらった薬は飲んでるのに効果を感じへん
「仕事行くん?」
「遅刻して行こうと思ってる」
「俺 あっちの部屋でおるからなんかあったら言うて」
それがええと思う 今めっちゃイライラしとるし正直 私なんかの横で居らんほうがええと思う
せやのに一人にせんとってほしい
めっちゃ勝手やけど
「なんで別の部屋行くん そんなに一緒におりたないん?」
たぶん侑なりの気遣いやったのに 私は悪い方に考えて またこんなこと口走ってまう
「はぁ?だってひかり イライラしとるやろ 一緒におっても喧嘩なるだけやん」
「私と居るんが嫌なん?」
ほんまに勝手なこと言うとる わかってる
でもどんな自分も受け入れてほしい こんな時こそ余計にそう思う
「いや、そんなんとちゃうやん」
「そんなに居りたないんやったら私 もう出るわ」
遅刻するつもりやったけど さっさと家出たろと思った
「ちょぉ待ち ほんまやばいで自分」
ソファから立ち上がった途端 腕を掴まれて身動き取れへんようになった
別に何も悲しくない
そんな怒るようなところでもない
なんでやろ ぼろぼろ涙溢れてきて止まらへん
泣くとこちゃうねん
侑が気を遣ってるんやろうなってわかってしまって それを申し訳ないとは思うんやけど 素直にありがとうやごめんを言える状態やない
ホルモンバランスの乱れって皆 簡単に さも当たり前のように言うとるけど こんなにおかしくなるん?
今の自分 めっちゃ醜いと思うんやけど 皆こないなるん?
侑のこと好きやのに 八つ当たりみたいになって やめたいのに 思うようにならへんの
なんなん ほんましんどい
「泣かんとってくれ。すまん …どないしたらええかわからん。お手上げや」
そう言ってぎゅーっと強く抱きしめてくれる
嗅ぎ慣れた侑の匂いに じんわりと心が温まるような感覚
こうやって落ち着いても やっぱり一時的なもんで また落ち込んだりイライラしたりを繰り返す
それも わかってる
なるべく侑に迷惑かけたくない 終いに愛想つかされそうや
結局この日は仕事を休んで 私は自ら寝室に閉じこもった
気分が優れやん
何も食べんと暗い部屋で一人落ち込んで
私なんか居ってもしゃあないとか 居らんほうがええとか 侑に釣り合ってないし 侑にはもっとええ子居るし
そんなネガティブな思考が止まらへんようになった
重い身体を起こして リビングに戻ると
「食欲あるん?何やったら食えそう?」
優しく聞いてくれる侑がおって 申し訳ないし なんかまた泣きそうになった
「まだ食欲ないから」
水を汲んで ソファに座る
「はぁ どないしよ …仕事休んでしもた」
それなりに経験もあって 重要な仕事も任せてもらってるのに 自分めっちゃ無責任なんちゃうかなって また落ち込む
「ええやろ 別に」
「大事な会議あるんわかっとって 体調管理もできへん人間は社会人としてあかんやろ」
「そんなん言うてもしゃあないやん」
まぁ そうやねんけど 会議に参加できるような状態と違ったし
ほんまに どうしようもなかったねんけど
「そない頑張らんでも。あかん時は思いっきり自分甘やかしたらええやん」
侑が優しいの なんかちょっと気持ち悪いな そんなこと考えたら自然と口元は緩む
「なん笑っとんねん」
「侑が優しすぎて 変な感じすんのやもん」
「はぁ?俺はいつも優しいやろ」
そう言って 隣に座る侑
「私 めんどいやんな。ほんまごめん」
「どないしたん。えらい素直やんか」
肩を抱き寄せるようにしたと思ったら 私の髪の毛をくるくると弄って遊んでる
「生理前にしんどなるん、だんだんひどなっとるし 思ってへんこと言うてもたり 最低やん。こんなんやったら 侑に愛想尽かされるんちゃうかって」
「何を言うとんねん。もう謝らんでええから 嫌なこと考えんと楽にしとき」
「気ぃつけるから… 嫌いに、ならんとって…」
「アホか!ならへんわ。 いっときのもんやし 自分の意思でどないすることもできへんのやろ?しゃあないやんか」
「でも、毎月嫌やろ?」
「まぁ めんどいわな。やたらキレられて意味わからんし」
ほんまその通りやねん
侑は しゅんとする私のほっぺを ツンツンして 遊んでる
「めんどいけど 毎月相手したるやん」
「う… 、侑 大好き…」
「優しい俺に感謝せぇよ」
そんなこと言って 笑ってる
優しくて かっこよくて 誰よりすごくて ほんまにええ彼氏や思う
モテすぎて女寄ってきたり それでニュースなったり 時々言い方きつかったり機嫌よくないとか あるけど
それでも 私にはもったいないくらいの 最高の男やねん
「ひかりは女の子やから甘えとったらええねん。男の俺にはわからへん大変なこと いっぱいあるんやろ」
「ん」
「ひかりにはいつか元気な赤ちゃん産んでもらわなあかんし、病院はちゃんと行ってな。無理せんと 身体、一番大事にしてや」
正直 今はまだ結婚とか出産とか考えられへんけど この人の子どもやったらいつか欲しいと思うし 命懸けで産んでもええと思う
こんな風に言うてくれるんも 嬉しいんよ
この日 ゆっくり身体を休めとったら 夜中に生理がきて
夜が明けたら 嘘のように晴れやかな気持ちになっとった
「侑おはよう〜」
朝 まだ眠る侑に飛びついてキスを落とす
「おぉ …はよ…。って 別人やん」
そう 自分でも驚くくらい 昨日とは表情も違う 声のトーンも違う
身体の重さ 怠さ 鬱々とした気持ち そんなんも全部どっか飛んでったみたいに気分がいい
生理特有の鈍い痛みはあるけど あの感情の重さとか気分の悪さを思うと これくらいなんともない
「…今回も大変ご迷惑をおかけしまして」
「ほんまに ひかりちゃんは困った子ぉやで。こんな手ぇかかる女 しらん」
侑は呆れたようにそう言うけど 私のことを抱き寄せるその手は やっぱり優しい
「そんなん言うけど 、侑もめっちゃ機嫌悪い時あるからお互い様やん」
「そんなこと……、あるな」
「あ、自覚あるんや。よかったわ」
「たまに きつい言い方してまう時あるなぁて」
「それもお互い様なので」
いつもより丁寧に作った朝食をテーブルに並べる
「めっちゃうまそうやなぁ」
侑に ありがとうの気持ちを込めたつもり
二人で朝食をとりながらする たわいのない会話
こんな なんでもない時間が 幸せやなぁと思う
意地張ったり恥ずかしかったりで 素直に言われへんことっていっぱいある
「なぁ 侑?」
「ん?」
「ありがとう」
言葉にして ちゃんと伝えるのって照れくさい
でも 伝えなあかんなと思う 私が甘えられる存在でいてくれるのって 普通でも当たり前でもないやん
「それもお互い様やろ」
俺も感謝しとるよ そんな言葉と共に
いたずらな笑顔を浮かべた侑に
つられて 私も微笑み返した
流れてきたwebニュース そのページを開いて 彼氏である侑の目の前にスマホを叩きつけるように置いた
内容は熱愛報道 お相手は最近売り出し中のモデルや
個室で食事してたとか 親密そうやったとか書かれとって 一緒に数枚の写真も載ってた
これが初めてとちゃう 今までも何回かこういうことがあって 見て見ぬふりもできへん私はその度毎回問い詰めて 結局勘違いやとか大袈裟に書かれてただけやとかで仲直りすんねんけど
もうこれ何回目やねん もうちょい気ぃつけぇやて思うやん 頭痛いわ
その画面をサッとスクロールして 内容を理解したであろう侑
「知らんわ しょーもな」
そう言ってスマホを突き返してきた
写真まで撮られとるくせに 何をしらばっくれとんねんて 私のイライラは収まらへん
「知らんとちゃうやろ 火のないとこに煙は立てへん。写真もあるし しかも相手の子 否定してへんらしいやん」
「知らんて この女の名前も知らんわ。こんなもん俺んとこ来たら否定するだけやし」
侑は悪びれることなく そう言い切った
なんかちょっと慣れてしまってる感じとか 呆れたように笑っとるんも腹立つわ
侑曰く二人で食事に行ったわけやないし 連絡先聞かれたけど交換もしてへんって
いつもならそこまで説明されたら引き下がるし たぶんこの話は終わるんやけど
今日はちゃうねん
気持ちが荒ぶって鎮まらへんの なんや情緒が乱れとる
「言い訳ばっかしもうええねん」って
突き放すみたいにきつく言うたったら ぶわっと涙が溢れ出て なんや気分まで悪なってきた
怒ってるからか 暑い エアコンの温度設定 下げたいくらいや
「この子のほうが私より可愛えしな。スタイルもええし」
「はぁ?」
「有名人同士やし 色々 こう…合うんとちゃう?」
侑はちゃうて言うてるのに 勝手に想像しては余計なことばっかり口走ってまう
「せやから何も無いて言うとるやん しつこない?」
呆れた表情を浮かべた侑にきつく言い返されても 感情をコントロールする機能がぶっ壊れとるみたいで 自分のことやのに止められへん
「もうええし。私なんかいらんやろ」
「何を言うとんねん。なぁ、どないしたん?」
私の様子がおかしいことに気づいたんやろう
「そない疑うんやったら 見たらええわ」
侑が自分のスマホを差し出してくる
無表情で 私の目をじっと見て 様子を伺ってる
「そういうこと 言うてるんとちゃうねん…」
そう言いながらもスマホを受け取って ラインのトーク画面や着信履歴を見て ほっと胸を撫でおろす
私の知らん女の名前や 怪しいやりとりは無い
こんなもん 既に消してる可能性だってある
せやのに 見せてもらって 簡単に信じて それで安心して 何してるんやろ あほみたいやなって思うんやけど
なんかちょっと気済んでまうんが 癪やわ
こういうことがしたかったんとちゃうのに
「なんもないやろ? なぁ?」
そう言って後ろから抱き締められたら まぁええか って やっといつもみたいなそんな気持ちになった
一時的に落ち着いても イライラはまたすぐやってくる
好きな人の息遣いとか 足音すらあかんようになるとか 想像もできへんかった
ここでようやく 原因に気づく
侑とは高校の時から一緒におる
同棲してからは半年くらいが経った
長い期間 それなりに仲良うやってる
けど それは【ある時】を除けばっちゅうことに 最近気付いてん
それは私の生理前
この時期 侑が遠征で家におらん時以外は大体喧嘩になる
PMS 月経前症候群
ここ最近 この症状がひどすぎてイライラがやばい
いつからやろう 体質が変わったんか その時の体調で変わってくるんかはわからん
生理前は毎月や もう普通でおられへん
「いらんこと言うんやったら話しかけんといてくれん」
いつもなら聞き流せることも こうやってきつい言い方をしてしまったり
「なんやねん その言い方」
侑がこうやって怒るのも わかる
あんな言い方しかできへん私が悪いんやけど 今はどうしようもなくて
イライラと悲しいのを交互に繰り返してる感じやねん
こんなこと 男の侑に言うてもわかるわけない
「なん? また生理前?ほんっま機嫌悪なるよな 前からこんなんやったっけ?」
「前より…最近 きつなった。めっちゃしんどなるねん」
これはほんまにそう 今まではもうちょっとマシやった 体質の変化もあるかもしれへんけど 侑と一緒に住むようになってから悪化した気する
距離が近くなった分 曝け出せることも増えて もしかしたら気持ちの緩みとか 甘えてしまってる部分もあるんかもしれへん
「…侑にはこのつらさわからへんやろ」
「そないいしんどいんやったら仕事休めや」
「今日は休まれへんの。大事な会議あんねん」
「身体より大事なもんらないやろ」
「侑はまともに働いたことないからわからへんやろ」
こんなん言うたらあかんことやん
言うてからハッとする
当たり前やんか 侑は普通の会社員とは違う
バレーで結果を出すんが仕事やもん 私なんかより社会人として凄くて立派な位置におるのに そんなことわかってんのに完全に私の八つ当たりで失言してしもてるねん
言いたくないこと 言いすぎて嫌になる
自分でも抑えられへん
これは侑にキレられてもしゃあない そう思って身構える
「ひかり 薬飲んだ?」
予想外の言葉が返ってきた
「…飲んだ」
生理遅れとるんもあるんか いつもより気分が重い
通っとる婦人科で処方してもらった薬は飲んでるのに効果を感じへん
「仕事行くん?」
「遅刻して行こうと思ってる」
「俺 あっちの部屋でおるからなんかあったら言うて」
それがええと思う 今めっちゃイライラしとるし正直 私なんかの横で居らんほうがええと思う
せやのに一人にせんとってほしい
めっちゃ勝手やけど
「なんで別の部屋行くん そんなに一緒におりたないん?」
たぶん侑なりの気遣いやったのに 私は悪い方に考えて またこんなこと口走ってまう
「はぁ?だってひかり イライラしとるやろ 一緒におっても喧嘩なるだけやん」
「私と居るんが嫌なん?」
ほんまに勝手なこと言うとる わかってる
でもどんな自分も受け入れてほしい こんな時こそ余計にそう思う
「いや、そんなんとちゃうやん」
「そんなに居りたないんやったら私 もう出るわ」
遅刻するつもりやったけど さっさと家出たろと思った
「ちょぉ待ち ほんまやばいで自分」
ソファから立ち上がった途端 腕を掴まれて身動き取れへんようになった
別に何も悲しくない
そんな怒るようなところでもない
なんでやろ ぼろぼろ涙溢れてきて止まらへん
泣くとこちゃうねん
侑が気を遣ってるんやろうなってわかってしまって それを申し訳ないとは思うんやけど 素直にありがとうやごめんを言える状態やない
ホルモンバランスの乱れって皆 簡単に さも当たり前のように言うとるけど こんなにおかしくなるん?
今の自分 めっちゃ醜いと思うんやけど 皆こないなるん?
侑のこと好きやのに 八つ当たりみたいになって やめたいのに 思うようにならへんの
なんなん ほんましんどい
「泣かんとってくれ。すまん …どないしたらええかわからん。お手上げや」
そう言ってぎゅーっと強く抱きしめてくれる
嗅ぎ慣れた侑の匂いに じんわりと心が温まるような感覚
こうやって落ち着いても やっぱり一時的なもんで また落ち込んだりイライラしたりを繰り返す
それも わかってる
なるべく侑に迷惑かけたくない 終いに愛想つかされそうや
結局この日は仕事を休んで 私は自ら寝室に閉じこもった
気分が優れやん
何も食べんと暗い部屋で一人落ち込んで
私なんか居ってもしゃあないとか 居らんほうがええとか 侑に釣り合ってないし 侑にはもっとええ子居るし
そんなネガティブな思考が止まらへんようになった
重い身体を起こして リビングに戻ると
「食欲あるん?何やったら食えそう?」
優しく聞いてくれる侑がおって 申し訳ないし なんかまた泣きそうになった
「まだ食欲ないから」
水を汲んで ソファに座る
「はぁ どないしよ …仕事休んでしもた」
それなりに経験もあって 重要な仕事も任せてもらってるのに 自分めっちゃ無責任なんちゃうかなって また落ち込む
「ええやろ 別に」
「大事な会議あるんわかっとって 体調管理もできへん人間は社会人としてあかんやろ」
「そんなん言うてもしゃあないやん」
まぁ そうやねんけど 会議に参加できるような状態と違ったし
ほんまに どうしようもなかったねんけど
「そない頑張らんでも。あかん時は思いっきり自分甘やかしたらええやん」
侑が優しいの なんかちょっと気持ち悪いな そんなこと考えたら自然と口元は緩む
「なん笑っとんねん」
「侑が優しすぎて 変な感じすんのやもん」
「はぁ?俺はいつも優しいやろ」
そう言って 隣に座る侑
「私 めんどいやんな。ほんまごめん」
「どないしたん。えらい素直やんか」
肩を抱き寄せるようにしたと思ったら 私の髪の毛をくるくると弄って遊んでる
「生理前にしんどなるん、だんだんひどなっとるし 思ってへんこと言うてもたり 最低やん。こんなんやったら 侑に愛想尽かされるんちゃうかって」
「何を言うとんねん。もう謝らんでええから 嫌なこと考えんと楽にしとき」
「気ぃつけるから… 嫌いに、ならんとって…」
「アホか!ならへんわ。 いっときのもんやし 自分の意思でどないすることもできへんのやろ?しゃあないやんか」
「でも、毎月嫌やろ?」
「まぁ めんどいわな。やたらキレられて意味わからんし」
ほんまその通りやねん
侑は しゅんとする私のほっぺを ツンツンして 遊んでる
「めんどいけど 毎月相手したるやん」
「う… 、侑 大好き…」
「優しい俺に感謝せぇよ」
そんなこと言って 笑ってる
優しくて かっこよくて 誰よりすごくて ほんまにええ彼氏や思う
モテすぎて女寄ってきたり それでニュースなったり 時々言い方きつかったり機嫌よくないとか あるけど
それでも 私にはもったいないくらいの 最高の男やねん
「ひかりは女の子やから甘えとったらええねん。男の俺にはわからへん大変なこと いっぱいあるんやろ」
「ん」
「ひかりにはいつか元気な赤ちゃん産んでもらわなあかんし、病院はちゃんと行ってな。無理せんと 身体、一番大事にしてや」
正直 今はまだ結婚とか出産とか考えられへんけど この人の子どもやったらいつか欲しいと思うし 命懸けで産んでもええと思う
こんな風に言うてくれるんも 嬉しいんよ
この日 ゆっくり身体を休めとったら 夜中に生理がきて
夜が明けたら 嘘のように晴れやかな気持ちになっとった
「侑おはよう〜」
朝 まだ眠る侑に飛びついてキスを落とす
「おぉ …はよ…。って 別人やん」
そう 自分でも驚くくらい 昨日とは表情も違う 声のトーンも違う
身体の重さ 怠さ 鬱々とした気持ち そんなんも全部どっか飛んでったみたいに気分がいい
生理特有の鈍い痛みはあるけど あの感情の重さとか気分の悪さを思うと これくらいなんともない
「…今回も大変ご迷惑をおかけしまして」
「ほんまに ひかりちゃんは困った子ぉやで。こんな手ぇかかる女 しらん」
侑は呆れたようにそう言うけど 私のことを抱き寄せるその手は やっぱり優しい
「そんなん言うけど 、侑もめっちゃ機嫌悪い時あるからお互い様やん」
「そんなこと……、あるな」
「あ、自覚あるんや。よかったわ」
「たまに きつい言い方してまう時あるなぁて」
「それもお互い様なので」
いつもより丁寧に作った朝食をテーブルに並べる
「めっちゃうまそうやなぁ」
侑に ありがとうの気持ちを込めたつもり
二人で朝食をとりながらする たわいのない会話
こんな なんでもない時間が 幸せやなぁと思う
意地張ったり恥ずかしかったりで 素直に言われへんことっていっぱいある
「なぁ 侑?」
「ん?」
「ありがとう」
言葉にして ちゃんと伝えるのって照れくさい
でも 伝えなあかんなと思う 私が甘えられる存在でいてくれるのって 普通でも当たり前でもないやん
「それもお互い様やろ」
俺も感謝しとるよ そんな言葉と共に
いたずらな笑顔を浮かべた侑に
つられて 私も微笑み返した
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