私のことを溺愛してたはずの侑くんが好きと言ってくれなくなった日
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侑くんはびっくりするほど優しいねん
私の思い違いとかやなくて 友人は口を揃えてそう言う
侑くんのプライベートなことを彼女の私がベラベラと喋るんは絶対にあかん 信用できる友人と恋バナになった時 聞かれたことだけに答えるようなスタンスでおるんやけど
侑くんの話になる度
「嘘やろ 優しすぎへん? 意外すぎるけど めちゃくちゃええ彼氏やん!」
一言目に返ってくるのは 大体が こんな驚きの言葉
あの派手な外見とのギャップで 余計にそう思われるんかもしれへんけど
遊んでそうとか 軽薄そうと思われがちな侑くんは そのイメージとは裏腹に 私にはひたすら甘かった
でも昔からそうなんかと言われるとそれはちょっと違う
学生時代なんか 今よりは明らかに尖ってた
時が経ち大人になって 侑くんがプロのバレーボール選手になってから 私達の関係は少し変わった
たぶん 一緒に過ごす時間が少ないことが理由の一つやと思う
多忙な侑くんの予定に合わせるのは 当然いつも私の方
侑くんはバレーの試合やったり遠征で忙しく 家に居る時間は決して多くない
海外に行ってしばらく帰って来んこともある
そんなことは理解してるつもりやし この状況に私も慣れつつあるから何も気にすることやない
私は 侑くんが大好きなバレーを楽んどるところが好きや プロとして頑張っとる侑くんのことを人として尊敬もしてる
そんな侑くんと一緒に居れることだけで 幸せやと思ってる
私なりに 日常の中でその気持ちを伝えてるつもりやねんけど 侑くんはたぶん私に申し訳ないと思ってるんやろう
確かに会えへん日が続く時は 寂しいと感じることもある
でもそんなもん 侑くんの大変さや 状況を思うとほんまになんてないことやねん
せやから そない気にしてくれんでええねんけどなぁ
溺愛
そんな言葉がふさわしいくらいの愛情を 今では私に注いでくれてる
侑くんの言動から それが十分に伝わってくるから 私は幸せやねん
例えば ご飯を頑張って作った日には
「ひかりちゃん 今日の飯もうますぎるわ えっ?このデザートも手作りなん?天才やな」
毎回こうやってベタ褒めしては 作ったもんを残さんと食べてくれるし
私が残業で遅くなった日には
「ひかりちゃん頑張りすぎや 無理せんでええよ 飯まだやろ? ひかりちゃんがしんどなかったら食べに行かへん?」
私の食べたいもんを聞いて ご馳走してくれるからつい甘えてしまうし
職場や友人との飲み会の帰りには
「俺が迎えに行ったるから 待っとき」
侑くんは有名やし もし誰かに見つかったら騒ぎになるからやめてください …って思うんやけど絶対毎回迎えに来るから 今ではもう 飲み会に誘われても何かと理由をつけてなるべく行かへんようにしとる
深夜 コンビニへ行くと言ったら
「あかん 俺もついていく」
そう言って絶対に一人で外へ出してくれへん コンビニはマンション降りてすぐやから 徒歩1分やで!?
大丈夫や言うても全くきかへん
まだあるねん
出かける為に化粧をしてたら
「これ以上可愛くなってどないすんねん」
メイクしとる時にめちゃくちゃ視線感じて なんやと思ったら 突然そんなことを言い出すから笑ってまう そんで準備にどれだけ時間がかかろうと 文句言うたりせんと待ってくれとる
着替える時に服が決まらんで悩んどったら
「どっちでもええ どっちもめちゃくちゃ可愛い」
ってちょっとキレ気味で言うてくるんおもろいし 選んでくれるんかと思ったら 可愛い可愛い褒めるだけ褒めて結局なんも決まらへんの 最終的に露出の少ない方を勧めてくるんやけど そのやりとりが楽しかったりする
とにかく侑くんは 私のことをまるでお姫様みたいに大切にしてくれる
飽きるほど「可愛い」「好きや」て言うてくれるから 自分に自信がない私も 自己肯定感がめっちゃ上がるねん
そんな風に私を溺愛してくれとる侑くんの様子が 今日はちょっとおかしい
もしかして 会社で なんかあったんやろうか
いつもより確実に口数が少ない
私と侑くんはいつも 帰宅時間が揃いそうな日は一緒にお風呂に入るようにしてる
今日は家に帰ったら 私になんの連絡もないまま 侑くんは先にシャワーを済ませてしまっていた
時々ある気まぐれかもしれへん そう思って何も言わんかったけど ちょっとモヤっとしてしもた
そんで これはたまたまやねんけど 今日は晩御飯の品数が少なくなってしまった 何品も用意する余裕が無かった
そのせいか いつもみたく目をキラキラさせて 褒めてくれることもない
「おいしい?」
こっちがそう聞いてやっと「おん めっちゃうまいで」
そんな言葉が返ってきた
褒めてくれへんけど いつもと変わらず残さんと食べてはくれる
なんやおかしいなぁ そう思いながらも問い詰めたりせんと いつも通りに過ごす
晩御飯の後片付けを済ませたあと「お風呂 いってくるなぁ」と告げた
いつもなら入浴が済んどっても「俺も一緒に行く」って後ろをついてきたり 当たり前のように勝手に湯船に飛び込んできたりする
でも今日は やっぱりちゃうねんな
「おん」って それだけ
録画かな? テレビでバレーの試合を見とって こっちを見るそぶりすらない
絶対 絶対おかしいねん
侑くんが 変や
お風呂から上がった後 侑くんが転がっとるソファに座りにいく
隣に座ったら いつも大体くっついてくる
今日もあっというまに膝の上を奪われてしまうんやけど それもほんの数分のこと
侑くんはすぐに身体を起こして キッチンの方へ行ってしまった
「明日 出かけたい言うてたやんな?」
「うん いい?」
「ええよ」
明日の起床時間やったり 行く場所の話をちょっと打ち合わせした後
「俺 先に寝るわ」
そう言ってあっさり寝室に向かってしまった
しかも いつも二人で一緒に寝る部屋やなくて 自分の部屋のほう
キスすらせんと 行ってしまった
びっくりしとるんとショックで なんや胸が痛なってきた
侑くんが自室で一人寝るのは 試合の前日くらいで それ以外はほとんどない 明日は完全にオフやのに なんで?
やっぱり なんかあったんやろうか バレーのこととかかな?
調子が良うないとか 最近そんな話は聞いたことないし 心配いらんくらい 絶好調やと思っとったけど
考えたくないけど もしかして
私に飽きてしまったんやろうか
気になって 妙に目が冴えてしまう
そんなことを思い始めたらなかなか寝つけず 深夜まで暗い部屋で一人 スマホを触って気を紛らわせた
そして翌朝
「ひかりちゃん 起きや」
目を開けると 上半身裸の侑くんが居って びっくりして身体を起こす
ストイックな侑くんのことや おそらく早朝から外を走ってきたんやろう
シャワーを浴びたとこやろうか 濡れた髪から水滴がぽた と落ちて シーツに溢れて広がった
すごい色気やねん 触れたくなるやん 不意に手を伸ばそうとした
侑くんは私が起きたことを確認すると 隣から退いて部屋を出ていってしまった
まって 意味がわからへん 思考が停止する
やっぱり 私がなんかしたんやろうか かまってもらわれへんのは めちゃくちゃ寂しくて 悲しい
「…もうこんな時間やん」
慌ててベッドから降りて 洗面所に向かって身支度を始めた
やっぱり今朝も いつもと様子が違った
私の方が起きるん遅い日は 勝手に布団に潜り込んできて「好き」「愛しとる」「可愛え」 そんなことを散々囁かれて 朝っぱらから濃い甘い時間を過ごすんやけど
今日はそんな気配全くなかった
出かける予定があったからかな
あっさりしたもんや
いや まぁこれが本来あるべき姿なんかもしれへんけど
私が急いでメイクをしとる間も こっちに見向きもせずスマホを触っとった
服何着ようかな これかこれ…どっちにしよ 悩んだけど いつもみたいに侑くんに聞くのはやめた
またいつもとちゃう態度を目の当たりにして 傷つきたくないわ
「ひかりちゃん 今日もめっちゃ可愛え」
いつもなら 玄関出る前にはそう言って必ず抱きしめてキスをしてくれる
でも 今日は当たり前にそれもない
侑くんは「ほないこか」って あっさり玄関を出た
別に喧嘩してるわけとちゃう 普通に話もするし つまらんことで笑い合うたりする
せやけど 明らかに普段とちゃうん
ちやほやされたいわけやない けど急にこんなん 不安になる
この日は買い物に付き合うてもらった
買った荷物はいつもと変わらず全部持ってくれる
「ひかりちゃん 疲れてへん?」
私が歩き疲れてへんかとか そういうのを気にしてくれるんも相変わらずや
ほら 侑くんは優しいねん
せやけど いつもと違うのはなんでなん
その理由が知りたい
私のことが好きやなくなったんやったら そんなつらいことないけど それならそうと 言うてほしい
私は 今から 侑くんのことを試す
せっかくのデートやのに 胸の中がもやもやしとって 心から楽しまれへんやん
ストレートに聞いてもよかったかもしれへんけど こんなやり方しかできへん私のことは どうか許してほしい
ピタリと足を止めた
それに気づいた侑くんは私の方を振り返る
「疲れたわけやないけど、ちょっと しんどいかも」
もちろん 嘘や
しんどいって言うたら 侑くんどないするやろって
めんどくさいって思うやろか 嫌な顔するかな?
あっさり ほな帰ろやって言うやろか
それともいつもみたいにめちゃくちゃ心配して 甘やかして たくさんの愛をくれるやろうか
嘘をつくのも 試すのもよくないって わかっとるんやけど ごめんな
「は?」
侑くんの綺麗な顔が歪む 眉間に深く皺を寄せて 私に近付いてきた
「どないしたん? しんどいて…」
「ちょっと 熱っぽいかも。頭ぼーっとするし」
「ほんまに?」
侑くんは突然 自分の右手を私の額に当てた
「…! 侑くんっ 誰に見られてるかわからんから…」
慌ててその手を退けようとするけど それを阻止されてしまう
「熱は無さそうやけどな ちょぉ座ろ いける?歩ける?」
侑くんは近くにあったベンチに私のことを座らせた
「飲みもん買うてきたる 何飲みたい?」
「いや あの 大丈夫やから」
「大丈夫とちゃうやろ」
「ちょっと休んだら マシになるかもしれへん」
「無理せんでええよ 今日は帰ろ?な? 買い物やったらまたいつでも来れるやん」
ちゃうねん
ほんまはしんどいとか嘘やし
「まだなんか欲しいもんあった?ネットで買えるやつやったら後で…」
「そうやなくて せっかくのお出掛けやし 侑くんの買い物まだ全然してへんやん」
「何言うてんねん そんなんどうでもええわ ひかりちゃんしんどいんやろ 無理させたない」
ベンチに座る私の肩を抱くようにして 顔を覗き込んでくる侑くん
「っちゅうか俺が帰りたいねん せやから今日は帰ろや なっ?」
これはたぶん 私が帰るって言い出しにくいと思って気を使ってくれとるんやろう
侑くんは 私のこと 本気で心配してくれてる
そんなこと この侑くんの顔見てたら嫌でもわかるわ
もう 十分やわ
こんなに想ってくれとるし 相変わらず優しくしてくれるのに
なんで昨日から変やったん?
ここから先は ストレートにいかなわからへんわ きっと
「侑くん 大丈夫やから もうよくなった」
「へ?」
「もう元気なった」
「ほんまに?しんどいの治ったん?」
「ごめん 嘘 …身体はしんどないねん 気持ちが なんかちょっとしんどかっただけ」
「え…なん? なんかあった…?」
侑くんは なんのこと?と言わんばかりの顔 そして心配そうに私のことを見つめた
「侑くん もしかしたら私のこともう好きやないかもしれへんって」
「はぁ⁉︎」
いつも以上に大きな声 周りの人の視線が一気に私達に集中する
しーっと人差し指を口に当てて侑くんに見せる
「すまん」
侑くんは小声でそう言って 帽子を深く被り直した
「昨日は可愛いて言うてくれへんかったし キスもしてくれへんかった 侑くん もう私に飽きたんかなって」
さっきまでそう思ってた けど 絶対ちゃうねん
飽きたり 好きやない人間のこと さっきみたいに本気で心配したりせぇへん
今みたいに優しい目で こんな愛しそうに見つめてきたりせぇへん
「アホか そんなことあるわけないやろ」
気ぃ悪くしたやろうか そう思ったけど 全然ちゃう 侑くんの表情は優しい
「会社でな 社員の女の子らが言うとったねん」
「?」
「あんまり好き好き言われすぎたら 女は冷めるねんって」
そう言うた侑くんは ちょっとばつの悪そうな顔
「俺 たぶんひかりちゃんに好き言い過ぎとるやん 一緒におったらくっつきたなるし ほんっまに可愛いから素直に可愛い言うたりたいし」
恥ずかしそうに口元を隠した侑くん
「ひかりちゃんと居れる時間は ひかりちゃんのこと めちゃくちゃ甘やかしたろと思とるから」
久しく見たことないほどに 顔は真っ赤や
「ひかりちゃんに冷められたら 嫌やんか」
「まって なに その可愛い理由…」
思わず侑くんの腕を掴む
「私が冷めるわけないやん」
いつもよりちょっと大きな声が出てしまう
また周囲の視線がこちらに向けられて 今度は侑くんが 人差し指を口元に当てて 苦笑い
「ごめん…侑くん。私な 侑くんが可愛い言うてくれるんめちゃくちゃ好きやねん。昨日みたいなんは嫌や
いつもの優しい侑くんがええん。大好き。最高の彼氏やと思ってる」
「…もー なんやねん」
私の言葉を聞いて 侑くんは頭を抱えた
「試すようなことしてごめん」
「ちゃうやん それ俺やんか。まぁでも結果としてはアリなんか だってひかりちゃん…俺のことめちゃくちゃ考えてくれたんやんな?」
「アリとちゃう ナシや! 昨日みたいなんはもう嫌や言うてるやん。私と侑くんの間に そんな駆け引きみたいなんいらん。私は 私のこといっぱい愛してくれる侑くんがええ」
そう言って侑くんを睨みつけると
「わかった、ごめんて」
侑くんに頭をぽんぽんとされる
「…ひかりちゃん 今日はもう帰ろか」
「えっ? 私もう大丈夫やって…」
「俺が大丈夫とちゃう 。昨日の分もひかりちゃんのこと抱きしめたい いっぱい可愛いて言うたりたいねん」
片手に大量のショッパーを持った侑くん もう片方の空いた手で私の手を取り 引っ張るようにした
「帰るで ひかりちゃん」
誰に見られとるかわからへん 頭の片隅でそんなことを思うんやけど 繋がれた手を 離したくなかった
いつもやったら人目を気にして「侑くん あかんよ」って言うんやけど
今日はもうええわ
こうやって 手繋いだまま外を歩くんは いつぶりやろうか
いつもより ほんの少し早足になってしまう帰り道
待て ができへんのは私も一緒みたいやねん
家に着くまでにも 数え切られへんほどの愛を囁いてくれた侑くん
今日の私は昨日の分も 一層笑顔にさせられてしまうのだった
私の思い違いとかやなくて 友人は口を揃えてそう言う
侑くんのプライベートなことを彼女の私がベラベラと喋るんは絶対にあかん 信用できる友人と恋バナになった時 聞かれたことだけに答えるようなスタンスでおるんやけど
侑くんの話になる度
「嘘やろ 優しすぎへん? 意外すぎるけど めちゃくちゃええ彼氏やん!」
一言目に返ってくるのは 大体が こんな驚きの言葉
あの派手な外見とのギャップで 余計にそう思われるんかもしれへんけど
遊んでそうとか 軽薄そうと思われがちな侑くんは そのイメージとは裏腹に 私にはひたすら甘かった
でも昔からそうなんかと言われるとそれはちょっと違う
学生時代なんか 今よりは明らかに尖ってた
時が経ち大人になって 侑くんがプロのバレーボール選手になってから 私達の関係は少し変わった
たぶん 一緒に過ごす時間が少ないことが理由の一つやと思う
多忙な侑くんの予定に合わせるのは 当然いつも私の方
侑くんはバレーの試合やったり遠征で忙しく 家に居る時間は決して多くない
海外に行ってしばらく帰って来んこともある
そんなことは理解してるつもりやし この状況に私も慣れつつあるから何も気にすることやない
私は 侑くんが大好きなバレーを楽んどるところが好きや プロとして頑張っとる侑くんのことを人として尊敬もしてる
そんな侑くんと一緒に居れることだけで 幸せやと思ってる
私なりに 日常の中でその気持ちを伝えてるつもりやねんけど 侑くんはたぶん私に申し訳ないと思ってるんやろう
確かに会えへん日が続く時は 寂しいと感じることもある
でもそんなもん 侑くんの大変さや 状況を思うとほんまになんてないことやねん
せやから そない気にしてくれんでええねんけどなぁ
溺愛
そんな言葉がふさわしいくらいの愛情を 今では私に注いでくれてる
侑くんの言動から それが十分に伝わってくるから 私は幸せやねん
例えば ご飯を頑張って作った日には
「ひかりちゃん 今日の飯もうますぎるわ えっ?このデザートも手作りなん?天才やな」
毎回こうやってベタ褒めしては 作ったもんを残さんと食べてくれるし
私が残業で遅くなった日には
「ひかりちゃん頑張りすぎや 無理せんでええよ 飯まだやろ? ひかりちゃんがしんどなかったら食べに行かへん?」
私の食べたいもんを聞いて ご馳走してくれるからつい甘えてしまうし
職場や友人との飲み会の帰りには
「俺が迎えに行ったるから 待っとき」
侑くんは有名やし もし誰かに見つかったら騒ぎになるからやめてください …って思うんやけど絶対毎回迎えに来るから 今ではもう 飲み会に誘われても何かと理由をつけてなるべく行かへんようにしとる
深夜 コンビニへ行くと言ったら
「あかん 俺もついていく」
そう言って絶対に一人で外へ出してくれへん コンビニはマンション降りてすぐやから 徒歩1分やで!?
大丈夫や言うても全くきかへん
まだあるねん
出かける為に化粧をしてたら
「これ以上可愛くなってどないすんねん」
メイクしとる時にめちゃくちゃ視線感じて なんやと思ったら 突然そんなことを言い出すから笑ってまう そんで準備にどれだけ時間がかかろうと 文句言うたりせんと待ってくれとる
着替える時に服が決まらんで悩んどったら
「どっちでもええ どっちもめちゃくちゃ可愛い」
ってちょっとキレ気味で言うてくるんおもろいし 選んでくれるんかと思ったら 可愛い可愛い褒めるだけ褒めて結局なんも決まらへんの 最終的に露出の少ない方を勧めてくるんやけど そのやりとりが楽しかったりする
とにかく侑くんは 私のことをまるでお姫様みたいに大切にしてくれる
飽きるほど「可愛い」「好きや」て言うてくれるから 自分に自信がない私も 自己肯定感がめっちゃ上がるねん
そんな風に私を溺愛してくれとる侑くんの様子が 今日はちょっとおかしい
もしかして 会社で なんかあったんやろうか
いつもより確実に口数が少ない
私と侑くんはいつも 帰宅時間が揃いそうな日は一緒にお風呂に入るようにしてる
今日は家に帰ったら 私になんの連絡もないまま 侑くんは先にシャワーを済ませてしまっていた
時々ある気まぐれかもしれへん そう思って何も言わんかったけど ちょっとモヤっとしてしもた
そんで これはたまたまやねんけど 今日は晩御飯の品数が少なくなってしまった 何品も用意する余裕が無かった
そのせいか いつもみたく目をキラキラさせて 褒めてくれることもない
「おいしい?」
こっちがそう聞いてやっと「おん めっちゃうまいで」
そんな言葉が返ってきた
褒めてくれへんけど いつもと変わらず残さんと食べてはくれる
なんやおかしいなぁ そう思いながらも問い詰めたりせんと いつも通りに過ごす
晩御飯の後片付けを済ませたあと「お風呂 いってくるなぁ」と告げた
いつもなら入浴が済んどっても「俺も一緒に行く」って後ろをついてきたり 当たり前のように勝手に湯船に飛び込んできたりする
でも今日は やっぱりちゃうねんな
「おん」って それだけ
録画かな? テレビでバレーの試合を見とって こっちを見るそぶりすらない
絶対 絶対おかしいねん
侑くんが 変や
お風呂から上がった後 侑くんが転がっとるソファに座りにいく
隣に座ったら いつも大体くっついてくる
今日もあっというまに膝の上を奪われてしまうんやけど それもほんの数分のこと
侑くんはすぐに身体を起こして キッチンの方へ行ってしまった
「明日 出かけたい言うてたやんな?」
「うん いい?」
「ええよ」
明日の起床時間やったり 行く場所の話をちょっと打ち合わせした後
「俺 先に寝るわ」
そう言ってあっさり寝室に向かってしまった
しかも いつも二人で一緒に寝る部屋やなくて 自分の部屋のほう
キスすらせんと 行ってしまった
びっくりしとるんとショックで なんや胸が痛なってきた
侑くんが自室で一人寝るのは 試合の前日くらいで それ以外はほとんどない 明日は完全にオフやのに なんで?
やっぱり なんかあったんやろうか バレーのこととかかな?
調子が良うないとか 最近そんな話は聞いたことないし 心配いらんくらい 絶好調やと思っとったけど
考えたくないけど もしかして
私に飽きてしまったんやろうか
気になって 妙に目が冴えてしまう
そんなことを思い始めたらなかなか寝つけず 深夜まで暗い部屋で一人 スマホを触って気を紛らわせた
そして翌朝
「ひかりちゃん 起きや」
目を開けると 上半身裸の侑くんが居って びっくりして身体を起こす
ストイックな侑くんのことや おそらく早朝から外を走ってきたんやろう
シャワーを浴びたとこやろうか 濡れた髪から水滴がぽた と落ちて シーツに溢れて広がった
すごい色気やねん 触れたくなるやん 不意に手を伸ばそうとした
侑くんは私が起きたことを確認すると 隣から退いて部屋を出ていってしまった
まって 意味がわからへん 思考が停止する
やっぱり 私がなんかしたんやろうか かまってもらわれへんのは めちゃくちゃ寂しくて 悲しい
「…もうこんな時間やん」
慌ててベッドから降りて 洗面所に向かって身支度を始めた
やっぱり今朝も いつもと様子が違った
私の方が起きるん遅い日は 勝手に布団に潜り込んできて「好き」「愛しとる」「可愛え」 そんなことを散々囁かれて 朝っぱらから濃い甘い時間を過ごすんやけど
今日はそんな気配全くなかった
出かける予定があったからかな
あっさりしたもんや
いや まぁこれが本来あるべき姿なんかもしれへんけど
私が急いでメイクをしとる間も こっちに見向きもせずスマホを触っとった
服何着ようかな これかこれ…どっちにしよ 悩んだけど いつもみたいに侑くんに聞くのはやめた
またいつもとちゃう態度を目の当たりにして 傷つきたくないわ
「ひかりちゃん 今日もめっちゃ可愛え」
いつもなら 玄関出る前にはそう言って必ず抱きしめてキスをしてくれる
でも 今日は当たり前にそれもない
侑くんは「ほないこか」って あっさり玄関を出た
別に喧嘩してるわけとちゃう 普通に話もするし つまらんことで笑い合うたりする
せやけど 明らかに普段とちゃうん
ちやほやされたいわけやない けど急にこんなん 不安になる
この日は買い物に付き合うてもらった
買った荷物はいつもと変わらず全部持ってくれる
「ひかりちゃん 疲れてへん?」
私が歩き疲れてへんかとか そういうのを気にしてくれるんも相変わらずや
ほら 侑くんは優しいねん
せやけど いつもと違うのはなんでなん
その理由が知りたい
私のことが好きやなくなったんやったら そんなつらいことないけど それならそうと 言うてほしい
私は 今から 侑くんのことを試す
せっかくのデートやのに 胸の中がもやもやしとって 心から楽しまれへんやん
ストレートに聞いてもよかったかもしれへんけど こんなやり方しかできへん私のことは どうか許してほしい
ピタリと足を止めた
それに気づいた侑くんは私の方を振り返る
「疲れたわけやないけど、ちょっと しんどいかも」
もちろん 嘘や
しんどいって言うたら 侑くんどないするやろって
めんどくさいって思うやろか 嫌な顔するかな?
あっさり ほな帰ろやって言うやろか
それともいつもみたいにめちゃくちゃ心配して 甘やかして たくさんの愛をくれるやろうか
嘘をつくのも 試すのもよくないって わかっとるんやけど ごめんな
「は?」
侑くんの綺麗な顔が歪む 眉間に深く皺を寄せて 私に近付いてきた
「どないしたん? しんどいて…」
「ちょっと 熱っぽいかも。頭ぼーっとするし」
「ほんまに?」
侑くんは突然 自分の右手を私の額に当てた
「…! 侑くんっ 誰に見られてるかわからんから…」
慌ててその手を退けようとするけど それを阻止されてしまう
「熱は無さそうやけどな ちょぉ座ろ いける?歩ける?」
侑くんは近くにあったベンチに私のことを座らせた
「飲みもん買うてきたる 何飲みたい?」
「いや あの 大丈夫やから」
「大丈夫とちゃうやろ」
「ちょっと休んだら マシになるかもしれへん」
「無理せんでええよ 今日は帰ろ?な? 買い物やったらまたいつでも来れるやん」
ちゃうねん
ほんまはしんどいとか嘘やし
「まだなんか欲しいもんあった?ネットで買えるやつやったら後で…」
「そうやなくて せっかくのお出掛けやし 侑くんの買い物まだ全然してへんやん」
「何言うてんねん そんなんどうでもええわ ひかりちゃんしんどいんやろ 無理させたない」
ベンチに座る私の肩を抱くようにして 顔を覗き込んでくる侑くん
「っちゅうか俺が帰りたいねん せやから今日は帰ろや なっ?」
これはたぶん 私が帰るって言い出しにくいと思って気を使ってくれとるんやろう
侑くんは 私のこと 本気で心配してくれてる
そんなこと この侑くんの顔見てたら嫌でもわかるわ
もう 十分やわ
こんなに想ってくれとるし 相変わらず優しくしてくれるのに
なんで昨日から変やったん?
ここから先は ストレートにいかなわからへんわ きっと
「侑くん 大丈夫やから もうよくなった」
「へ?」
「もう元気なった」
「ほんまに?しんどいの治ったん?」
「ごめん 嘘 …身体はしんどないねん 気持ちが なんかちょっとしんどかっただけ」
「え…なん? なんかあった…?」
侑くんは なんのこと?と言わんばかりの顔 そして心配そうに私のことを見つめた
「侑くん もしかしたら私のこともう好きやないかもしれへんって」
「はぁ⁉︎」
いつも以上に大きな声 周りの人の視線が一気に私達に集中する
しーっと人差し指を口に当てて侑くんに見せる
「すまん」
侑くんは小声でそう言って 帽子を深く被り直した
「昨日は可愛いて言うてくれへんかったし キスもしてくれへんかった 侑くん もう私に飽きたんかなって」
さっきまでそう思ってた けど 絶対ちゃうねん
飽きたり 好きやない人間のこと さっきみたいに本気で心配したりせぇへん
今みたいに優しい目で こんな愛しそうに見つめてきたりせぇへん
「アホか そんなことあるわけないやろ」
気ぃ悪くしたやろうか そう思ったけど 全然ちゃう 侑くんの表情は優しい
「会社でな 社員の女の子らが言うとったねん」
「?」
「あんまり好き好き言われすぎたら 女は冷めるねんって」
そう言うた侑くんは ちょっとばつの悪そうな顔
「俺 たぶんひかりちゃんに好き言い過ぎとるやん 一緒におったらくっつきたなるし ほんっまに可愛いから素直に可愛い言うたりたいし」
恥ずかしそうに口元を隠した侑くん
「ひかりちゃんと居れる時間は ひかりちゃんのこと めちゃくちゃ甘やかしたろと思とるから」
久しく見たことないほどに 顔は真っ赤や
「ひかりちゃんに冷められたら 嫌やんか」
「まって なに その可愛い理由…」
思わず侑くんの腕を掴む
「私が冷めるわけないやん」
いつもよりちょっと大きな声が出てしまう
また周囲の視線がこちらに向けられて 今度は侑くんが 人差し指を口元に当てて 苦笑い
「ごめん…侑くん。私な 侑くんが可愛い言うてくれるんめちゃくちゃ好きやねん。昨日みたいなんは嫌や
いつもの優しい侑くんがええん。大好き。最高の彼氏やと思ってる」
「…もー なんやねん」
私の言葉を聞いて 侑くんは頭を抱えた
「試すようなことしてごめん」
「ちゃうやん それ俺やんか。まぁでも結果としてはアリなんか だってひかりちゃん…俺のことめちゃくちゃ考えてくれたんやんな?」
「アリとちゃう ナシや! 昨日みたいなんはもう嫌や言うてるやん。私と侑くんの間に そんな駆け引きみたいなんいらん。私は 私のこといっぱい愛してくれる侑くんがええ」
そう言って侑くんを睨みつけると
「わかった、ごめんて」
侑くんに頭をぽんぽんとされる
「…ひかりちゃん 今日はもう帰ろか」
「えっ? 私もう大丈夫やって…」
「俺が大丈夫とちゃう 。昨日の分もひかりちゃんのこと抱きしめたい いっぱい可愛いて言うたりたいねん」
片手に大量のショッパーを持った侑くん もう片方の空いた手で私の手を取り 引っ張るようにした
「帰るで ひかりちゃん」
誰に見られとるかわからへん 頭の片隅でそんなことを思うんやけど 繋がれた手を 離したくなかった
いつもやったら人目を気にして「侑くん あかんよ」って言うんやけど
今日はもうええわ
こうやって 手繋いだまま外を歩くんは いつぶりやろうか
いつもより ほんの少し早足になってしまう帰り道
待て ができへんのは私も一緒みたいやねん
家に着くまでにも 数え切られへんほどの愛を囁いてくれた侑くん
今日の私は昨日の分も 一層笑顔にさせられてしまうのだった
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