ええよ 私が悪者で
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「侑くん 山本さんと付き合うとるらしいで」
通りがかりにそんな噂話を耳にした
山本さん 侑と同じクラスの子やな
その山本さんが 侑のことが好きやって噂はちょっと前に聞いた
一時 かなり積極的にきてたっぽいけど 最近は落ち着いとるて侑言うとったのに
山本さんは男ウケ良さそうな可愛らしい雰囲気で ザ・女子って感じや
守ってあげたくなるタイプっていうか…
男子からはかなり人気がある
せやけど ちゃうねん
そんなことはどうでもええ
侑の彼女は私のはずやねんけど
この噂はどこから?
誰が言い出したん?
「なぁ それ誰が言うとったん?」
噂話をしとった子を捕まえて 聞いてみる
「えっ これは本人が教室で『私 侑くんと付き合っとる』言うとったんやけど…」
山本さん本人が?
どういうことやねん
「そうなん ありがとう」
それだけ言うて 自分の教室へ戻った
「わっ」
ぼーっと歩いてたら何かにぶつかる
「治やん ごめん」
「すまん 大丈夫か?」
「うん」
同じクラスの治とスナ
この二人は 私と侑が付き合うとるん知っとる
「なぁ、私って侑に二股掛けられてたりする?」
「何を言うとんねん。考えられへんわ」
治が言うたら 不思議とめっちゃ信用できて 安心する
「あ、もしかして山本?」
何かを思い出したかのようなスナ
私はコクンと頷く
「なんやさっき誰か言うとったやつか。あれ何やねん」
「わからんの。聞いたところによると、山本さん本人が 侑と付き合っとるて言うとるらしいとか」
「わけわからんな」 そう言うて治はスナと顔を見合わせた
「で ツムはなんて言うとるん?」
「まだ会うてへんから知らん。ちょっと侑んとこ行ってくる」
侑の彼女は私やんな?
早足で廊下を歩いた
胸がザワザワする
山本さんは一体何を言うとるん
侑は なんて言うやろ
これがデマやとしたら「付き合うてへんわ アホ言うな」って怒るやろなぁ
これを機に
私と付き合うとること皆に言うてくれてもええのに
そしたら侑に寄ってくる女もちょっとは減るやろ
いらん心配せんでよぅなる
「侑、山本と付き合うとんの?」
教室に入る寸前 そんな会話が聞こえてきた
私は思わず足を止めた
侑の声が せん
何も 聞こえへん
えっ
なんで 否定せんの?
なんも言わんと黙ってたら おかしいやん
「えーそうなんやぁ」
「やっぱり」
とか 教室からそんな声が聞こえてくる
勢いよく教室から飛び出してきた侑とぶつかりそうになる
「っ!!!」
「ひかり!?なんでここに…」
あかん たぶん今普通でおられへん
踵を返して 猛ダッシュする
「ひかり!? 待ってや」
こんな逃げたくなるん 今までの人生で初めてやわ
どれだけ必死で走っても あっという間に侑に捕まる
当たり前やけど 足 早すぎんねん
「ちょぉ来て」
侑に手を引っ張られて
人がほとんどおらん校舎裏まで来た
たぶん 今私 顔死んどる
遊ばれとるんは私やったん?
山本さんが本命なん?
頭の中ではそんなことがぐるぐると回る
「ひかり、さっき教室で騒ぎになったやつ聞いとったよな?」
侑にそう聞かれて コクンと頷く
「すまん」
なんで謝るん 泣きそう
私振られるん?
いやや
「あん時、あっこにあいつも居って 否定したらかわいそうや思ったらなんも言えんかった」
「えっ…どういう意味?私が遊びなんやないん?」
「ちゃうわ!遊びて何やねん。俺が付き合うとるんはひかりやんか!」
よかった
侑の言葉で さっきまでの不安が嘘のように消えていく
「なんか知らん間にあんな話になっとったねん。たぶんあいつが勝手に言うとるんやけど…」
つまり
「山本と付き合うとんの?」って誰かに聞かれた時
山本さんもクラスの皆もその場におったから よぅ否定せんかったってこと
かわいそうやんかって まぁわからんでもない
あの子 侑のこと好きやって噂あったし
なんかの間違いで侑と付き合うとるって言うてしもたんかもしれん
でもな
「…かわいそうかもしれんけど 侑 巻き込まれてんやで?付き合うてもないのに、勝手にそんなん言う方が悪くない?」
「ひかりの言う通りやねんけど」
困った顔 両手で頭抱えとる
「山本さんが可愛えから 別に勘違いされてもええわて?」
「アホか、いらんわ」
急に怒った顔するやん コロコロ変わる表情がちょっと面白い
冗談は程々にしとこ
「で、どないするん」
「俺から山本に話するわ 彼女おること言う」
侑がそう言うから 任せといて大丈夫かなってこの時は思った
______________
「あかん 泣かれてもうて 話にならん」
侑の話によると 山本さんを呼び出して 「俺ら付き合うてへんやんな?」って言うたらしい
そしたら急に泣かれて
それで周りが「なんや喧嘩か?」ってザワザワし始めて 話しするどころやなくなったとか
げんなりした顔の侑見てたら
ちょっと気の毒になってくる
「山本さんて大丈夫?なんか心 不安定そうやなぁ」
「ひかり 怒らへんの?」
「何を怒ることあるん」
「俺があん時ちゃんと否定しとったら、こんなことなってへんやん」
「あー まぁそうやな。でもな 侑 優しいとこあるんやなぁって思たんよ。まぁ本音を言うたら… 他に彼女おるってみんなの前で言うて欲しかったけど、
それ言うたら山本さん たぶんあのクラスでやっていけんやん」
「ひかり……めっちゃ好きや」
改めてそう言われると照れるなぁ
ぎゅっと抱きしめてくれた侑
私には侑がおる 大丈夫
「これ落ち着いたら、ひかりと付き合うとること皆に言うてもええ?」
「うん、ええよ」
そうしてくれたほうが ありがたい
先ず 山本さんをなんとかして
侑の為にも周りの誤解を解いておきたい
翌日
「山本さん はじめまして」
廊下を歩いとる山本さんに声を掛けた
「…?」
誰って顔に書いとる
「1組の佐藤って言います」
山本さんはぺこりと頭を下げた
「山本さん ほんまは侑と付き合うてへんよな?」
返事はないけど かなり驚いた顔をしとる
「私な、侑と ちょっと前から付き合うとるんやけど」
「えっ」
山本さん動揺しとるやん
手震えとるし 今 どう思っとるんやろ
なんでこっちが悪いことしとるみたいな気持ちになるんやろう
「急に声かけて 驚かせてごめんなさい。侑に関することで ほんまやないことは これ以上言わんとってほしいんよ」
私なりに かなり柔らかく伝えたつもりや
「佐藤さんは ほんまに侑くんと付き合うてるん?」
「うん 付き合うてる」
「そんな…私のほうが侑くんのこと好きやのに…」
山本さんは なんやぶつぶつ言い始めた
「彼女おるなんて聞いてないし」
なんやこの女
彼女おらんかったら 何言うてもええんかいて
「もう嘘つかんて約束してほしい。侑のことは 私も好きやし、譲られへんの」
「知らんかったんやもん!」
そんなこと言うた後 両手で私のことを押した
突き飛ばされて ドンって音がしたと思った時には 私はもう壁にぶつかっとった
「いった……」
「私の方が侑くんのこと好きやのに なんなん!?」
勢いよく振り上げられた手
あ 殴られる
これ 顔ぶたれるわ そう思って歯食いしばった
でも 何も起きん
「なんしとん」
聞いたことないくらい怒りを含んだ 低い声
どこからか現れた侑が 山本さんの腕を掴んどった
「侑くん!」
山本さんの声が 一気に女の子らしくなるんやけど 表情はびびってしもてる
「ひかり 大丈夫か?」
侑はそんな山本さんに構うことなく 私の手を取った
「女やからって 大目に見とったけど もう黙ってられへんなぁ」
やばい
侑 完全にキレとる
「侑! 私大丈夫やから 一旦落ち着こ」
侑の腕を引っ張る
「ごっ…ごめんなさい…」
涙目になって 逃げるように去っていった山本さん
侑はキレとるから すぐ追いかけようとしたけど
でも私は もうこれ以上あの子に関わってほしくない
思いきり侑の腕を引っ張って引き止める
「ちょぉ離せて」
「いやや離さん。行かんとって。もう関わらんといて」
侑は「なんやねんあいつ」
そう呟いて 大きなため息を溢した
「ひかり、痛かったやろ?ほんまごめん」
「ううん。全然大丈夫や」
この一件から 私と侑は学校での休憩時間を共に過ごすようになった
なんも知らん連中は
「侑は山本さんと喧嘩別れして すぐに佐藤と付き合った」と思っとるっぽい
軽いとか思われてるんやろうけど
いちいち訂正する必要もないし それでええと思っとる
皆の中で 私らのイメージが悪くなろうと
私と 侑が お互いに誠実でおって
それをわかっとったら もうええかなって
「最初っから隠すようなことせんとオープンにしとったら あんなんに付きまとわれんかったんとちゃう」
呆れ顔の治は 侑に向かってそう言うた
「自分のファンの子が、ひかりに嫌がらせしないか心配だったんでしょ」
スナの言葉を聞いて
嘘やろて 驚いてしまう
「侑、そうなん?」
侑のほうを見ると 「知らん」って気恥ずかしそうな顔しとる
侑 そういうとこあるよな
今回のも侑の変な優しさが招いたようなとこあるし
いつもみたいに人でなし発動せんかったんは不思議でしゃーないで ほんま
なんで私と付き合っとることを隠したいんやろって 不安になった時もあった
でもこんな理由やったんやと知ってしまったら
ますます侑のこと好きになってしまうわ
「ツムのファン 過激そうな子 多いもんな」
宮兄弟の人気はすごいから仕方ないんやけど
今回みたいなんはもういらん
これで皆に付き合うとることわかったやろし
もうあんなことはさすがにないと思うんやけど
もし似たようなことがあったらそん時は
「俺 ひかりと付き合うとる」って
はっきり言うてくれたら嬉しいな
「なんや ひかりが浮気相手で山本からツムんこと略奪した っちゅー話になっとったな」
ドラマみたいやなって笑っとるけど
笑いごととちゃうで
っちゅーか そんなに拗れてんの?
風評被害や
侑が人気者故 その噂には尾鰭がつくのもわからんでもないけど
私が完全に悪者やん
「好きに言わせとってええんか?」
治はチラッと私の方を見て 侑にそう尋ねた
「俺は腹立つけど…ひかりが何言われてもほっとけ言うねん」
侑は不服そうにしとる
せやけど
「ええよ 私ら悪いことしてへんやん。いちいち相手してられへん」
私の言葉を聞いて ほっとしたような笑みを浮かべた
嫌な思いはしとる
気分ええわけない
でもええん
治もスナも 私の仲ええ友達も
ほんまのことわかってくれとる人はおるし
心を強く持たんと 侑の女は務まらん
侑はこの先もずっとバレーを続ける言うとる
たぶん今以上にもっと有名になる
いつか プロの選手になるやろう
そん時 もし まだ私のことを隣においてくれるなら
今以上に あることないこと言われたり
嫌な思いするかもしれん
そう思ったら こんなん通過点に過ぎん
修行の一環や思たるわ
好きに言うたらええ
私には侑がおる
悪者や思っとったらええで
そんかわり 侑の隣は絶対譲ったらへんけどな
通りがかりにそんな噂話を耳にした
山本さん 侑と同じクラスの子やな
その山本さんが 侑のことが好きやって噂はちょっと前に聞いた
一時 かなり積極的にきてたっぽいけど 最近は落ち着いとるて侑言うとったのに
山本さんは男ウケ良さそうな可愛らしい雰囲気で ザ・女子って感じや
守ってあげたくなるタイプっていうか…
男子からはかなり人気がある
せやけど ちゃうねん
そんなことはどうでもええ
侑の彼女は私のはずやねんけど
この噂はどこから?
誰が言い出したん?
「なぁ それ誰が言うとったん?」
噂話をしとった子を捕まえて 聞いてみる
「えっ これは本人が教室で『私 侑くんと付き合っとる』言うとったんやけど…」
山本さん本人が?
どういうことやねん
「そうなん ありがとう」
それだけ言うて 自分の教室へ戻った
「わっ」
ぼーっと歩いてたら何かにぶつかる
「治やん ごめん」
「すまん 大丈夫か?」
「うん」
同じクラスの治とスナ
この二人は 私と侑が付き合うとるん知っとる
「なぁ、私って侑に二股掛けられてたりする?」
「何を言うとんねん。考えられへんわ」
治が言うたら 不思議とめっちゃ信用できて 安心する
「あ、もしかして山本?」
何かを思い出したかのようなスナ
私はコクンと頷く
「なんやさっき誰か言うとったやつか。あれ何やねん」
「わからんの。聞いたところによると、山本さん本人が 侑と付き合っとるて言うとるらしいとか」
「わけわからんな」 そう言うて治はスナと顔を見合わせた
「で ツムはなんて言うとるん?」
「まだ会うてへんから知らん。ちょっと侑んとこ行ってくる」
侑の彼女は私やんな?
早足で廊下を歩いた
胸がザワザワする
山本さんは一体何を言うとるん
侑は なんて言うやろ
これがデマやとしたら「付き合うてへんわ アホ言うな」って怒るやろなぁ
これを機に
私と付き合うとること皆に言うてくれてもええのに
そしたら侑に寄ってくる女もちょっとは減るやろ
いらん心配せんでよぅなる
「侑、山本と付き合うとんの?」
教室に入る寸前 そんな会話が聞こえてきた
私は思わず足を止めた
侑の声が せん
何も 聞こえへん
えっ
なんで 否定せんの?
なんも言わんと黙ってたら おかしいやん
「えーそうなんやぁ」
「やっぱり」
とか 教室からそんな声が聞こえてくる
勢いよく教室から飛び出してきた侑とぶつかりそうになる
「っ!!!」
「ひかり!?なんでここに…」
あかん たぶん今普通でおられへん
踵を返して 猛ダッシュする
「ひかり!? 待ってや」
こんな逃げたくなるん 今までの人生で初めてやわ
どれだけ必死で走っても あっという間に侑に捕まる
当たり前やけど 足 早すぎんねん
「ちょぉ来て」
侑に手を引っ張られて
人がほとんどおらん校舎裏まで来た
たぶん 今私 顔死んどる
遊ばれとるんは私やったん?
山本さんが本命なん?
頭の中ではそんなことがぐるぐると回る
「ひかり、さっき教室で騒ぎになったやつ聞いとったよな?」
侑にそう聞かれて コクンと頷く
「すまん」
なんで謝るん 泣きそう
私振られるん?
いやや
「あん時、あっこにあいつも居って 否定したらかわいそうや思ったらなんも言えんかった」
「えっ…どういう意味?私が遊びなんやないん?」
「ちゃうわ!遊びて何やねん。俺が付き合うとるんはひかりやんか!」
よかった
侑の言葉で さっきまでの不安が嘘のように消えていく
「なんか知らん間にあんな話になっとったねん。たぶんあいつが勝手に言うとるんやけど…」
つまり
「山本と付き合うとんの?」って誰かに聞かれた時
山本さんもクラスの皆もその場におったから よぅ否定せんかったってこと
かわいそうやんかって まぁわからんでもない
あの子 侑のこと好きやって噂あったし
なんかの間違いで侑と付き合うとるって言うてしもたんかもしれん
でもな
「…かわいそうかもしれんけど 侑 巻き込まれてんやで?付き合うてもないのに、勝手にそんなん言う方が悪くない?」
「ひかりの言う通りやねんけど」
困った顔 両手で頭抱えとる
「山本さんが可愛えから 別に勘違いされてもええわて?」
「アホか、いらんわ」
急に怒った顔するやん コロコロ変わる表情がちょっと面白い
冗談は程々にしとこ
「で、どないするん」
「俺から山本に話するわ 彼女おること言う」
侑がそう言うから 任せといて大丈夫かなってこの時は思った
______________
「あかん 泣かれてもうて 話にならん」
侑の話によると 山本さんを呼び出して 「俺ら付き合うてへんやんな?」って言うたらしい
そしたら急に泣かれて
それで周りが「なんや喧嘩か?」ってザワザワし始めて 話しするどころやなくなったとか
げんなりした顔の侑見てたら
ちょっと気の毒になってくる
「山本さんて大丈夫?なんか心 不安定そうやなぁ」
「ひかり 怒らへんの?」
「何を怒ることあるん」
「俺があん時ちゃんと否定しとったら、こんなことなってへんやん」
「あー まぁそうやな。でもな 侑 優しいとこあるんやなぁって思たんよ。まぁ本音を言うたら… 他に彼女おるってみんなの前で言うて欲しかったけど、
それ言うたら山本さん たぶんあのクラスでやっていけんやん」
「ひかり……めっちゃ好きや」
改めてそう言われると照れるなぁ
ぎゅっと抱きしめてくれた侑
私には侑がおる 大丈夫
「これ落ち着いたら、ひかりと付き合うとること皆に言うてもええ?」
「うん、ええよ」
そうしてくれたほうが ありがたい
先ず 山本さんをなんとかして
侑の為にも周りの誤解を解いておきたい
翌日
「山本さん はじめまして」
廊下を歩いとる山本さんに声を掛けた
「…?」
誰って顔に書いとる
「1組の佐藤って言います」
山本さんはぺこりと頭を下げた
「山本さん ほんまは侑と付き合うてへんよな?」
返事はないけど かなり驚いた顔をしとる
「私な、侑と ちょっと前から付き合うとるんやけど」
「えっ」
山本さん動揺しとるやん
手震えとるし 今 どう思っとるんやろ
なんでこっちが悪いことしとるみたいな気持ちになるんやろう
「急に声かけて 驚かせてごめんなさい。侑に関することで ほんまやないことは これ以上言わんとってほしいんよ」
私なりに かなり柔らかく伝えたつもりや
「佐藤さんは ほんまに侑くんと付き合うてるん?」
「うん 付き合うてる」
「そんな…私のほうが侑くんのこと好きやのに…」
山本さんは なんやぶつぶつ言い始めた
「彼女おるなんて聞いてないし」
なんやこの女
彼女おらんかったら 何言うてもええんかいて
「もう嘘つかんて約束してほしい。侑のことは 私も好きやし、譲られへんの」
「知らんかったんやもん!」
そんなこと言うた後 両手で私のことを押した
突き飛ばされて ドンって音がしたと思った時には 私はもう壁にぶつかっとった
「いった……」
「私の方が侑くんのこと好きやのに なんなん!?」
勢いよく振り上げられた手
あ 殴られる
これ 顔ぶたれるわ そう思って歯食いしばった
でも 何も起きん
「なんしとん」
聞いたことないくらい怒りを含んだ 低い声
どこからか現れた侑が 山本さんの腕を掴んどった
「侑くん!」
山本さんの声が 一気に女の子らしくなるんやけど 表情はびびってしもてる
「ひかり 大丈夫か?」
侑はそんな山本さんに構うことなく 私の手を取った
「女やからって 大目に見とったけど もう黙ってられへんなぁ」
やばい
侑 完全にキレとる
「侑! 私大丈夫やから 一旦落ち着こ」
侑の腕を引っ張る
「ごっ…ごめんなさい…」
涙目になって 逃げるように去っていった山本さん
侑はキレとるから すぐ追いかけようとしたけど
でも私は もうこれ以上あの子に関わってほしくない
思いきり侑の腕を引っ張って引き止める
「ちょぉ離せて」
「いやや離さん。行かんとって。もう関わらんといて」
侑は「なんやねんあいつ」
そう呟いて 大きなため息を溢した
「ひかり、痛かったやろ?ほんまごめん」
「ううん。全然大丈夫や」
この一件から 私と侑は学校での休憩時間を共に過ごすようになった
なんも知らん連中は
「侑は山本さんと喧嘩別れして すぐに佐藤と付き合った」と思っとるっぽい
軽いとか思われてるんやろうけど
いちいち訂正する必要もないし それでええと思っとる
皆の中で 私らのイメージが悪くなろうと
私と 侑が お互いに誠実でおって
それをわかっとったら もうええかなって
「最初っから隠すようなことせんとオープンにしとったら あんなんに付きまとわれんかったんとちゃう」
呆れ顔の治は 侑に向かってそう言うた
「自分のファンの子が、ひかりに嫌がらせしないか心配だったんでしょ」
スナの言葉を聞いて
嘘やろて 驚いてしまう
「侑、そうなん?」
侑のほうを見ると 「知らん」って気恥ずかしそうな顔しとる
侑 そういうとこあるよな
今回のも侑の変な優しさが招いたようなとこあるし
いつもみたいに人でなし発動せんかったんは不思議でしゃーないで ほんま
なんで私と付き合っとることを隠したいんやろって 不安になった時もあった
でもこんな理由やったんやと知ってしまったら
ますます侑のこと好きになってしまうわ
「ツムのファン 過激そうな子 多いもんな」
宮兄弟の人気はすごいから仕方ないんやけど
今回みたいなんはもういらん
これで皆に付き合うとることわかったやろし
もうあんなことはさすがにないと思うんやけど
もし似たようなことがあったらそん時は
「俺 ひかりと付き合うとる」って
はっきり言うてくれたら嬉しいな
「なんや ひかりが浮気相手で山本からツムんこと略奪した っちゅー話になっとったな」
ドラマみたいやなって笑っとるけど
笑いごととちゃうで
っちゅーか そんなに拗れてんの?
風評被害や
侑が人気者故 その噂には尾鰭がつくのもわからんでもないけど
私が完全に悪者やん
「好きに言わせとってええんか?」
治はチラッと私の方を見て 侑にそう尋ねた
「俺は腹立つけど…ひかりが何言われてもほっとけ言うねん」
侑は不服そうにしとる
せやけど
「ええよ 私ら悪いことしてへんやん。いちいち相手してられへん」
私の言葉を聞いて ほっとしたような笑みを浮かべた
嫌な思いはしとる
気分ええわけない
でもええん
治もスナも 私の仲ええ友達も
ほんまのことわかってくれとる人はおるし
心を強く持たんと 侑の女は務まらん
侑はこの先もずっとバレーを続ける言うとる
たぶん今以上にもっと有名になる
いつか プロの選手になるやろう
そん時 もし まだ私のことを隣においてくれるなら
今以上に あることないこと言われたり
嫌な思いするかもしれん
そう思ったら こんなん通過点に過ぎん
修行の一環や思たるわ
好きに言うたらええ
私には侑がおる
悪者や思っとったらええで
そんかわり 侑の隣は絶対譲ったらへんけどな
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